ひらがなテキスト

昨日までの「強者4曲」の小謡本との格闘が一段落して、今日は一転してゆるゆると「ひらがな」と戯れておりました。

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今週から岡山の吉備津神社での「子供能楽教室」が開講します。

その時に使う小学生向けの謡のテキストを、「ひらがな」で作っていたのです。

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例えば「高砂」の千秋楽の謡を、節使いも含めて全部そのまま平仮名変換すると、

「せええんしうらくは たみをなで

まんざいらくには いのちをのおぶうう

あいおいのお まつうかぜ さああっさんの

こえぞお たのしむう さああっさんのお

こええぞ たのしいいむうう」

という感じになります。

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これでもテキストにはなるかもしれませんが、少しでもわかりやすくしたいと思いました。

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「せエエんしうらくは たみなで

まんざいらくには いのちをオぶウ…」

というように、”生み字”といわれる母音はカタカナにしてみました。

更に、強吟は”ハネる”という、音を一瞬だけ高くする技巧が多用されるので、その”ハネる”部分を太字にしました。

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これでちょっと謡いやすくなったのではと思うのです。

「せエエんしうらくは たみなで

まんざいらくには いのちをオぶ

あいおいのまつウかぜ さアアさん

こえオオ たのしむ

さアアさんオ こエぞ たのしイイむウウ」

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…如何でしょうか?

この平仮名で謡ってみて、違和感や改良点があればどうか御指摘くだされば有り難く存じます。

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とりあえずこのテキストをもとに、岡山の子供達に、この夏休みに宝生流の謡を楽しく体験してもらえたらと思っております。

枚方市能楽体験教室の開講式

今日は大阪香里能楽堂にて、枚方市子供向け能楽体験教室の開講式に出席して参りました。

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開講式には小学校低学年くらいを中心に40人ほどの元気一杯な子供たちが参加してくれました。

これから夏休みの間に、8回にわたって稽古して仕舞を一番覚えてもらい、最後に香里能楽堂で発表会をするのです。

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実は平行して枚方市社会人向け能楽体験教室も開講されており、こちらも30人ほどの方が参加されています。

発表会は子供と合同なので、なんと合計70人規模になるのです。

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これだけの人数を集めるのは大変なことで、企画、広報など、よほど優秀なスタッフがいないと難しいと思われます。

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その枚方市のスタッフの皆様は、今日の子供向け教室開講式にも朝早くから5〜6人でいらしてくださいました。

開講式の流れから、足袋や扇の準備の段取りまで非常に綿密に計画されており、またスタッフの皆さんからは「この教室を盛り上げて成功させたい!」という強い情熱が感じられました。

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これだけしっかりとした企画で講師の一人を任せていただいたのは大変有り難いことです。最後の発表会まで全身全霊をかけて稽古させていただきます。

そして参加した子供たちや社会人の皆さんにとって、この能楽体験教室が楽しい夏の思い出になってほしいと願っております。

子供達との夏休み

京都紫明荘組の稽古場として、最近毎月「ゲストハウス 月と」さんを使わせていただいております。

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築100年以上の京町家を改装したこのゲストハウスで、夏休みに地域の子供達を主な対象とする「寺子屋」形式のイベントが開催されることになりました。

そしてなんとその「寺子屋」の先生として、私にも参加のオファーが届いたのです。

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寺子屋の先生というと、非常に厳格であり、また何でも知っている博学の人、というのが私のイメージです。

そのイメージとは対照的に何ごともいい加減な私などに、何故白羽の矢を立ててくださったのか実に不思議です。。

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しかし歴史ある京町家で、地元の子供達に能楽を体験してもらうというのは貴重な機会です。

せめて1日だけでも真面目な寺子屋の先生になったつもりで頑張ります。

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今年の夏は、大阪の枚方市と岡山の吉備津神社でも子供向けの仕舞教室があります。

京都の寺子屋と合わせると、ひと夏で60〜70人の子供達に能楽を教えることになるのです。

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子供達の夏休みの記憶に「能を経験して楽しかった!」ということが残るように、各地の教室を精一杯頑張りたいと思います。

日本女子大新歓ワークショップ

今日は午前中に五雲会申合で能「鵜飼」を舞いました。

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そして午後からは目白の日本女子大学に移動して、「日本女子大学能楽部宝生会」復活に向けての新歓ワークショップを開催いたしました。

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久しぶりに訪れた日本女子大学は、新しく壮麗な図書館などが出来ていて驚きました。

新歓ワークショップも、新図書館に隣接した、やはり真新しい学生向けのフリースペースのような建物で行いました。

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このような新歓イベントを日本女子大で開催するのは初めてのことなので、色々試行錯誤でした。

申合をお客様の前で行い、申合に拍手をいただいてしまうなど…。

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とは言え、日本女子大学の学生さん以外にも郁雲会や澤風会関係者を始め大勢の方にいらしていただいて、結果的に60人分の椅子が足りなくなる程の盛況になりました。

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今回のワークショップが新歓活動としてどれ程の効果があったのか、結果が出るのは少し先になると思います。

しかし今年の経験は、来年以降により改善されたワークショップを開催するための礎になったと思います。

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本日お越しくださった皆様どうもありがとうございました。

今後とも日本女子大学宝生会復活に向けた活動に、どうかご支援をよろしくお願いいたします。

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そして今春から稽古を始めてくれた日本女子大新入生の皆さん。

指導する側も手探りで恐縮なのですが、きっともう少し先に歩んで行くと、色々な素晴らしい出会いや新しい経験が待っていると思います。

一歩一歩新しい足跡を刻んでいきたいと思っております。

どうかよろしくお願いします。

うれしい”ご質問”

このホームページには、今まで様々な読者の方から「お問合せ」をいただきました。

昨日もまたそのような「お問合せ」をいただいたのですが、今回はこれまでとは少々違う内容でした。

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“能に関するご質問”という題名で、都内の高校生からの問合せだったのです。

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その生徒さんは、以前小学生の時に夏休みの自由研究で「能楽」を取り上げてくれたそうです。

そしてそれから数年経って、今高校で伝統芸能について調べる課題に取り組んでおり、そこで再び「能楽」を、今度はより深く調べてみたいと考えたそうなのです。

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その後に質問がいくつか箇条書きで書いてありました。

「お忙しい立場だと思いますが、答えていただけるとありがたく思います」と最後に丁寧に書いてありました。

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全く接点のない私に、こうして能楽の事を質問するメールを書くのは大変な事だったと思います。

そして高校生が自発的に能楽に興味を持って調べてくれるとは、本当にありがたいことです。

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先ほど新幹線に乗りながら、早速質問に対するお返事を書かせてもらいました。

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拙い内容の回答ですが、どうか高校の課題に役立ててもらえるとうれしいです。

そして今回の課題で終わることなく、「能楽」に今後もずっと興味を持ち続けてもらいたいと願っております。

思春期世代の能楽教室

今日は千葉の中学校にて能楽教室をして参りました。

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対象は中学3年生30数人。

思春期真っ只中のなかなか難しい年頃です。

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いつものように正座しての挨拶から始めましたが、やはり「よろしくお願いします!」と声を出すのがとても恥ずかしそうで、最初は蚊の鳴くような声でした。

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「声が小さい子供達なのかな?」

と思いましたが、その後の実際に体を動かしての「型」の体験では一転して元気になりました。

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例えば私が「面切り」の見本を見せると、女の子達は全員なぜか大受けで、笑いが止まらない感じなのです。

成る程、これが「箸が転がっても可笑しい年頃」というやつなのだろうかと、こちらもつられて可笑しくなってしまいました。

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そして合間の休憩時間には、今度は皆別人のように賑やかにはしゃいでいます。

しかし後半の「高砂待謡」の体験では、また恥ずかしそうな小さな声に戻ってしまったのでした。。

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きっと1学年30数人という人数が微妙で、誰か1人が目立つ行動はしないようにお互いに牽制し合っているのかな、と推察しました。

思春期の人間関係は我々が考えているよりも繊細微妙で、大変なのだろうなあと思いながら能楽教室を終えたのでした。

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幼稚園児から大人まで、色々な世代向けの能楽教室をしておりますが、「思春期世代」向けの能楽教室というのもまた独特の雰囲気があるなあと、私自身大変勉強になった本日の能楽教室でした。

先生方どうもありがとうございました。

今後の能面のサイズ問題…

今日は松本稽古日だったのですが、その前に昼から松本の少し手前の「岡谷」で、小中高生向けの能楽教室をして参りました。

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特急あずさで一度「上諏訪駅」で降りて、普通電車に乗り換えて岡谷に向かいました。

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その乗り換えの「上諏訪」の辺りで、車窓から満開の桜がたくさん見えたのです。

東京では終わってしまった桜です。

乗り換え時間が20分近くあったので、せっかくなので花見をしようと思い立ち、桜が見えた方に歩いて行きました。

大きな駐車場の向こう、幼稚園の園庭で大きな桜が満開でした。

そして横には”鯉のぼり”がはためいています。

「桜と鯉のぼりの共演」というのも、信州らしいと思いました。

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そして普通電車で岡谷へ。

岡谷で会った50人程の子供達は、やはり元気と好奇心に溢れていました。

ちょっと年かさの高校生達が司会などをしてくれて、また小さな子供達の事を何となく気にかけてくれていたのに感心いたしました。

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能楽教室の最後に質問コーナーを設けました。

やはり高校生くらいの割と大きな男の子が、

「能面は何故顔よりもちょっと小さいサイズなのですか?」

と質問してくれました。おお、良い質問です!

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「能面の外側に少し顔の輪郭が見えて、それが謡う時に動くのが見えると、能面も生き生きと動いているように見えるからです。」

と答えようと思い、しかしふと思いついて、質問してくれた男の子に「小面」をかけてもらうことにしました。

彼を前へ呼ぶと、「よっしゃ!」と嬉しそうにガッツポーズして出て来てくれました。

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身長は私と同じくらいです。

「では能面に一礼して、面紐の所を持って、目の高さに合わせてあててくださいね…」

と言ってあててもらうと…

なんと彼は小顔なので、能面がすっぽりと顔にはまってしまったのです。。

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最近は背が高くて小顔の若者が多いので、

「能面の効果を出すには、もっとサイズを小さくしないといけないのかな…」

と一瞬思いましたが、

「しかし身長は高いから、ちょっと大きめのサイズにしないと似合わないだろう…」

とも考えられて、「今後の能面のサイズ問題」はなかなか難しいと思ったのでした。

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岡谷でお世話になった皆様どうもありがとうございました。

おかげさまで今日も充実した能楽教室になりました。

柏の幼稚園能楽教室2019

毎年恒例になっている柏の幼稚園での能楽教室に、先ほど行って参りました。

今年は年長組の園児63名を前にしての能楽教室です。

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今回は内藤飛能さんに手伝ってもらいました。

彼にはちょうど同じ年頃のお子さんがいるので、その意味でも適役と思ったのです。

朝JR柏駅で待ち合わせて、コーヒーを飲みながら簡単な打ち合わせをしつつ話をしました。

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私「飛能君の子供の幼稚園でも、能楽教室をやれば良いと思うよ。」

内藤氏「い”〜や”〜。。うちの子を見てると、とてもやれそうには思えないですね…」

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などと話しつつ、駅から徒歩3分の幼稚園へ。

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能楽教室を始めてみると、毎回のことですが幼稚園児たちは大変なハイテンションです。

テンションを維持しつつ、混乱させずに、尚且つ飽きないように…と進めていくのは確かに少々大変なことでした。

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しかし、毎度の型や足運びの体験に加えて今年は「高砂 四海波」を平仮名で謡うという稽古も出来て、充実した能楽教室になりました。

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途中で能面「小面」を見せて、先生に代表して掛けてもらったのですが、子供達から「僕も掛けたい〜❗️」「私も〜‼️」という声が多数上がりました。

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以前は私の高校の同級生の子供がいて、その子に掛けてもらっていました。

今回はどうしよう…63人に掛けてもらう時間は無いし…

とやや困っていると、先生が「3月がお誕生日の人〜!」と手を挙げさせて、素早く数人の子供を選んでくれたのです。

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おお!さすが幼稚園の先生はこういった事に慣れておられる!と感心して、なんとか無事に能楽教室を終えることが出来たのでした。

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最初と最後には、正座をしての正式な挨拶も全員きちんと出来ました。

礼儀作法も含めて、能楽を幼稚園のうちに体験するのはとても良いことだと思います。

内藤飛能さんに、やはりお子さんの幼稚園で能楽教室をやった方が良いよ!と再度勧めながら柏を後にしたのでした。

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色々考えながら謡うこと

今日は慶応初等部の能楽鑑賞会で、能「経政」の地頭を勤めて参りました。

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対象が小学生だったので、一番の能を途中で飽きないように観てもらうにはどうしたら良いだろう…などと色々な事を事前に考えておりました。

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よく「考えて謡っては駄目だ」と言われるのですが、私はまだ全くの未熟者なので、能が始まって謡いながらでも実に多くの事を考えてしまいます。

「シテの出の運びがゆったり目なので、地謡も少しスピードを緩めよう」

「お囃子方はこう謡ったらどう反応してくるかな…?」

「見所の子供達の話し声がちょっと大きくなってきた!これは飽き始めた危険信号かも。頑張って盛り上げていかねば!」

などなど、場面場面で無数の考えが泡のように次々と浮かんできます。

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しかし気が散っている訳ではなく、むしろ集中力が増しているので、舞台上のことはごく小さな事でもわかってしまいます。

そして今日は他の地謡メンバーも集中していたようで、終わって楽屋で話してみると、そういった細かい出来事を皆が共有していたのが面白かったです。

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頑張って勤めた「経政」が、慶応初等部の子供達の心に少しでも響いていると良いと思います。

能楽師みたい!

今日は昼から江古田稽古場で、3月9日の東京澤風会郁雲会の舞囃子の稽古をしました。

その後矢来能楽堂に移動して、夕方から2月11日開催の辰巳大二郎さんの同門会「橙白会」の申合がありました。

更にその後に夜の田町稽古にすぐに移動しました。

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このような時には、洋服と着物を着替える時間が無いので一日中着物で行動します。

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しかし私は普段洋服で移動や稽古をすることが多いので、先ずは江古田で「まあ先生、着物だとまるで能楽師みたい!」と言われました。。

そして矢来能楽堂での申合が終わってすぐに足袋だけ黒足袋に履き替えて「ありがとうございました!」と帰ろうとすると、「あれ、今日は珍しく着物なんだ!」と驚かれました。

更に田町稽古場に到着しても、やはり同じような驚きの反応が…。

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実はこれは逆パターンもあって、先日の岩手正法寺でのワークショップでは、終わって洋服に着替えて姿を見せると「おお、先生が洋服に!」と驚かれたのです。

昨年夏の岡山子供能楽教室でも、ずっと浴衣で稽古していたのが最終日の最後に洋服で出ていったら子供に笑われました。。

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私としては、洋服も着物も等しく着慣れているので驚かれるのがやや不本意ではありますが、この仕事をしていると仕方ないことなのかもしれませんね。