今年も幼稚園に行って参りました

今日は毎年恒例の、千葉県柏の幼稚園での能楽教室に行って参りました。

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昨年は教室に入るなり、「あ〜!侍だ〜!!」と言われましたが、今年の子供達はどうでしょうか…?

また人数が昨年の48人に比して今年は73人と、かなり大勢です。

果たして収拾がつくのか、ちょっと心配でもありました。

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朝9時半にいよいよ教室に入ると…

「あ〜!着物着てる〜!!」

おお。今年は至極真っ当な反応です。

挨拶から始めて、「摺り足」や「シオリ」、「六つ拍子」などの稽古では、やはり何人かハイテンションになって、全体が賑やかになりかけました。

するとすかさず園長先生が「みんなうるさい!」と一喝。

そして「騒ぐと先生こうなっちゃうよ…」と、今稽古したばかりの「シオリ」でしくしくと泣いてくださったのです。

そんなこんなで、何とか最後まで終えることができました。

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そして最後の質問コーナーで、ちょっと驚く事がありました。

先ずひとりの男の子が、「先生たちは”文楽”もやりますか?」と質問して来ました。幼稚園で”文楽”を知っているとは大したものです。

「我々はやりませんが、文楽と能はとても近い関係ですよ。」と答えたのですが、ひと通り質問コーナーが終わったところで再びその男の子が手を挙げて、大きな声で、

「僕を弟子にしてください❗️」

と言ったのです。すると隣の男の子もやはり

「僕も弟子にしてください❗️」と言って、2人できちんと正座してさっき覚えたばかりの「よろしくお願いします‼️」という正式な挨拶をしてくれたのです。

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もう10年もこの幼稚園で能楽教室をやっておりますが、弟子入りの希望者は初めてでした。

帰り際に園長先生に「彼らが本気で稽古したいようなら、いつでも連絡をください」とお願いして帰って参りました。

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思えば色々な場所で「能楽教室」をやっておりますが、その場で弟子入りというパターンは皆無です。

果たして今回が初めての例になるのか、しばらく楽しみに待ちたいと思います。

贅沢な能楽教室

今日は京王線沿線の女子中学校で能楽教室のお手伝いをして参りました。

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中学2年生を対象に毎年この時期に開催される能楽教室で、私ももう5回目くらいの参加になると思います。

「今年の子供達は、ちょっとやんちゃらしいですよ」と事前に聞いていたのですが、始めてみると騒ぎもせず、飽きて余所見したりもせずに、面白いところでは良く笑ってくれるという、非常に有り難い素直な生徒さんたちでした。

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朝9時から午前中いっぱいをかけて、四種類の能楽囃子と仕舞の所作を全て体験して、最後に「船弁慶」の一部を鑑賞するというとても贅沢な能楽教室です。

おそらく大半の生徒さんが「能楽」というものに初めて触れる機会だったはずです。

これはある意味で責任重大です。もしここでマイナスの印象を持たれてしまったら、この人たちは今後の長い人生で能楽に二度と接してくれないかもしれないのです。

逆に「能楽は面白かった」という記憶が強く残ってくれたら、将来舞台を観に来てくれたり、稽古を始めたりしてくれる可能性もあります。

果たして今日の生徒さん達の反応はどうでしょうか…?

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例えば大鼓の体験の時のこと。

大鼓は構えて打つのもさることながら、「よ〜オ〜、ほ〜オ〜」という「掛け声」がなかなか難しいのです。特に「オ〜」の部分で裏声になるのが、大人でも恥ずかしくて出来ないことが多いのです。

しかし今日は声を揃えて「よ〜オ〜!」と裏声もしっかり出してくれていました。

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最後の能楽鑑賞でも、ほんの数人が眠そうでしたが大半はとても熱心に鑑賞してくれました。

つい先程自分たちが体験したお囃子の音や掛け声や、また仕舞の動きなどが、すぐ目の前で演じられるのですから、舞台への心の入り方が全く違うのでしょう。

この生徒さんたちの心に「能楽」が良いものとして残ってくれているように願っております。

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終わって教頭先生に、「やんちゃどころか非常に大人しく素直な良い生徒さんでした」と話したところ、先生は「いや〜、それはお互いに牽制し合っていたのでしょう」と仰いました。

成る程。やんちゃしたり牽制し合ったり、色々難しい年頃なのですね。。

高校駅伝の思い出

昨日は全国高校駅伝が京都で開催されたと、今朝の携帯ニュースで知りました。

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毎年12月のこの時期になると、京都市内で陸上部のジャージを着た集団をよく見かけ、「懐かしいなあ」と思います。

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私も高校時代には、この高校駅伝の予選に参加したことがあるのです。

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「都大会の予選会」という、本当に一番最初の予選だったのですが、都立富士高校陸上部の中長距離の7人がチームを組んで、多摩川沿の42.195キロコースを走りました。(私は第6走者で5kmだけでしたが)

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「団体競技では周りに迷惑をかけてしまう」という理由で個人競技の陸上部に入部した私なので、駅伝チームに入るのは実はあまり気が進まなかったのです。

しかし、チームで毎日のように練習していると、団体競技特有の連帯感のようなものが生まれてきました。

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そして多摩川沿コースの予選の結果はさっぱりだったのですが、その日のレースの有様や応援の様子などは、強く心に残りました。

目の前を駆け抜ける選手に「○○ファイットォ‼︎」「△△先輩ファイットォ‼︎」と独特の抑揚でかける掛け声など、今でもありありと心に浮かんで来ます。

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高校を卒業してからは、私は同窓会などには一度も参加しなかったのですが、何故かこの駅伝チームのメンバーとは細々と交流が続きました。

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その後私は能楽師になりましたが、例えば駅伝チームの1人は小学校教師になり、彼の小学校で能楽教室を企画して私を講師として呼んでくれました。

今でもその縁は続いており、彼の同僚が異動した先の稲城市立南山小学校で、毎年能楽教室をさせていただいています。

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また別のメンバーは千葉県柏に居を構えて、彼の子供が入園した柏駅前のみくに幼稚園にて、これまた能楽教室を企画して講師を私に依頼してくれました。

幼稚園での能楽教室は初めてだったのですが、こちらも有り難いことに毎年恒例行事になり、来年も3月に能楽教室を開きます。

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更にメンバーの一人は英語の通訳になりましたが、なんと江古田稽古場で澤風会に入門してくれて、忙しい通訳の合間に稽古を積んで、能俊寛のツレまで勤めてくれました。

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という訳で、駅伝チームのメンバーは今はそれぞれ別の道を走っていますが、上に書いたような不思議な縁で繋がっていて、それはおそらく生涯続くことでしょう。

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全国大会で都大路を疾走する高校生達とは全くレベルの違うチームではありましたが、我々のチームも実に良いチームだったと、駅伝のニュースを見る度に思い出すのです。

日本最古の小学校にて

松本にある「開智小学校」は、日本最古の小学校のひとつである「開智学校」の流れをくむ歴史ある小学校です。

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実は澤風会松本稽古場で稽古している女の子「ふうちゃん」がこの開智小学校で学んでいます。その縁で、一昨年から毎年開智小学校で能楽教室を開いているのです。

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今日は第3回能楽教室でした。

重要文化財である明治初期の洋風建築「旧開智学校」の建物。重厚な歴史を感じる、味わい深い建造物です。

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その「旧開智学校」に隣接して、広い敷地の「開智小学校」があります。

校内に入ると、玄関にはこんな貼り紙が。

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歯医者さんの先生と並んで書いていただいておりました。なんだかこそばゆい感じです。

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能楽教室は体育館に6年生全員が揃って行われました。

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壇上には私と共に、お手伝いいただいた松本澤風会の会員の方々が。よく見ると、私の隣にとても小さなシルエットが見えます。

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来年から開智小学校に入学する、澤風会最年少の男の子です。今日は幼稚園をお休みして、能楽教室に参加してくれました。

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彼が入学してくれたら、あと少なくとも6年は能楽教室が続けられると思います。

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そして能楽教室が続いている間に、「開智小学校に能楽クラブを作る」というのが、私の密かな目標なのです。(書いてしまっていますが…)

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国宝松本城からは徒歩2分、日本最古の小学校である旧開智学校の流れをくむ「開智小学校」の子供達に、世界最古の舞台芸術である「能楽」を学んでもらうのは、とても意義深いことだと思うのです。

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その目標に向かって、今後も地道に努力して参りたいと思います。

南山小学校能楽教室

今日は東京都稲城市にある南山小学校で能楽教室をして参りました。

南山小学校では1年前にも同じように能楽教室をしたのですが、その時の参加者は6年生がたったの5人だけだったのです。

京王相模原線の稲城駅を降りて南東方向に15分程歩くと、道は段々と登り坂になります。

そして造成中と見られる広大な空き地の向こうに立派な校舎が見えて、そこが南山小学校でした。

1000人の児童でも対応出来そうな真新しい建物に、ほんの少しの生徒さんたち。

副校長先生「宅地の造成などがこれから始まる新しい街なのですが、街が出来る前に小学校が先に出来てしまったのです」

成る程そういう事情だったのですね、と腑に落ちて、5人の元気な生徒さん達を前に頑張って能楽教室をしたのが去年のこと。

今年再び稲城駅で降りて、街はどうなっているだろうかと同じ道を登っていくと、まだまだ空き地は多いのですが、新しい大型マンションや、分譲住宅地が増えて、お店や建物も新しいものが多く見られました。

街が段々に成長している感じです。

そして能楽教室参加者は、なんと去年の約5倍増の23人でした!

5人でも元気一杯だった子供達が、23人です。

非常に高いテンションで、充実した能楽教室をすることが出来ました。

風邪気味で喉は本調子ではありませんでしたが、子供達に元気をもらった感じで、終わった時には何か気分がスッキリしておりました。

来年またこの街に来れたら、今度は何人の子供達に会えるのか楽しみです。

そしてこの新しい街がどんな風に成長していくのかを見るのも、また楽しみのひとつになりました。