2件のコメント

遠隔稽古の可能性と問題点

昨日と今日は、先週に続いて”遠隔稽古”をいたしました。

.

Skype稽古は先週から3人増えて、かなり様子がわかって参りました。

そして今日は、新たに「zoom」という会議用のアプリを使った集団稽古にもチャレンジしてみました。

.

.

zoomもやはりSkypeと同様のタイムラグがあるようでしたが、私と一緒に全員一斉に謡っていただく分には問題無いと感じました。

こちらも今後、集団での遠隔稽古が出来る可能性が出てきて、非常に有意義な経験になりました。

.

.

しかし同時に問題点もいくつか明らかになってきました。

.

例えば、人によって、あるいは日によって通信状況が悪くなる時があります。

鸚鵡返しの途中で突然「通信障害」のアイコンが表示されて画像と音声が途絶え、何度も稽古が中断してしまう事がありました。

.

.

そしてビデオ映像で長く稽古をしていると、通信容量が膨大になることもわかりました。

しかし遠隔稽古では京都や長野など遠くの人でも東京の稽古場から稽古出来るので、私の場合これまでの毎回の新幹線などの交通費に比べれば、通信料は微々たるものだと考えることにしました。。

.

.

さらにこれはアンラッキーなことなのですが、江古田稽古場があるマンションが今”耐震工事”の真っ最中なのです。

平日昼間には、断続的にものすごい騒音が響きます。とても稽古どころではありません。

なので、江古田での稽古時間が「土日」か「平日の夕方以降」に限られてしまうのです。

.

.

問題点解消のために、まずはスマホだけでなくPCを併用して、スマホの通信容量を抑えることを考えたいと思います。

あとは、平日昼間に遠隔稽古をする場所をなんとか探す必要があります。

.

一度野外からの遠隔稽古が出来ないか試してみたいと思っております。

京大若手OBあたりで、実験台になってくれる人を探してみたいと思います。

.

.

遠隔稽古が軌道に乗るまでには、今少し時間がかかりそうです。

また途中経過をご報告させていただきます。

3件のコメント

宝生夜能 有料WEB配信公演

先月以来、水道橋宝生能楽堂での定例公演は殆どが延期になっております。

本当は明後日4月18日に私が能「兼平」を舞う予定だった「五雲会」も、8月15 日に延期になりました。

.

.

その中で、来週4月24日に予定されている「夜能」が

「有料WEB配信公演」

という形で開催されることになったと、宝生会事務局より知らせがありました。

.

.

.

舞台の映像を流すだけでなく、一歩も二歩も進んだ先進的な企画が用意されているようです。

これはこの緊急事態のみならず、この先未来の能楽の発信方法への大きな道標になる企画だと思います。

.

詳しい視聴方法は以下をクリックしてご確認をお願いいたします。

http://www.hosho.or.jp/1676/

.

.

今後宝生流でも有料WEB配信が増えていくと思われます。

また情報が入りましたら都度皆さまにお知らせいたします。

.

コロナウイルスに負けることなく、むしろ逆境を逆手にとって未来に繋がる新しい道を模索する。

そんな能楽師を、どうか応援していただければと存じます。

ご視聴よろしくお願いいたします。

遠隔稽古 試運転中

今日も江古田稽古場に行き、「Skype」による遠隔稽古の試運転をいたしました。

.

.

今日は3人の方々に、鸚鵡返しによる謡の稽古をさせていただきました。

.

画面上にはいつもの会員さんの姿があり、私の説明を受けて小さく頷かれるのも良く見えて、普通に稽古をしているのと非常に近い感覚です。

.

.

会員さんと一緒に謡おうとすると、先方の声が0.5秒ほど遅れて聴こえてくるのが唯一の難点です。

しかし確認したところ、先方では全く音の遅れはないようで、私の方が音の遅れに慣れれば大丈夫なようでした。

.

.

3人の方々の稽古を無事に終えると、何か15年以上前に初めて澤風会稽古をつけ終えた時のような、新鮮な達成感がありました。

今日でかなり慣れて来たので、これから徐々に遠隔稽古の人数を増やしていけたらと思います。

.

.

Skypeのアカウント取得から、最初に繋がるまでの手順が若干面倒ではあります。

しかし、遠隔稽古のために今回私が改めて用意したのは、百均で購入した小さなスマホ用三脚だけです。

.

他の楽師の皆様も、スマートフォンかノートPCをお持ちならば一度お試しになる価値があるように思います。

また回数を重ねていく過程で、問題点やコツなどを書いて参りたいと思います。

トレーニング期間延長

先日も書きましたが、来週末に予定されていた「五雲会」が夏まで延期になり、私がシテを勤める能「兼平」もしばしお預けになってしまいました。

.

これも少し以前に書いたのですが、「兼平」を勤めるにあたって、武将のような身体にわずかでも近づきたいと思い、この半年ほど節制をしつつ少々身体を鍛えておりました。

.

それも4月18日の「兼平」まで、その後のリバウンドが怖いかも…

と思っていたら、なんとトレーニング期間も夏まで延長になった訳です。。

.

.

現在のところ、体重、筋肉量ともに高校で陸上部をやっていた頃とほぼ同じになっています。

高校3年生の自分と駆けっこしても、割と良い勝負になるのでは…と思うくらい身体が軽く、体力も増加した感覚があります。

.

この調子をなんとか夏まで保って、屈強な武将である「兼平」らしい舞台を思い切り勤めたいと思います。

スマホでの遠隔稽古の試み

今回のコロナウイルスでは、こちらの予測と対策を嘲笑うかのように、事態は日々悪い方向へと進んでいくようです。

.

通常の稽古は最早望むべくもありません。

しかもこの状況がいつまで続くのか、誰にもわからないのです。

.

.

しかし何もせずに、ただウイルスに押さえつけられるだけでは口惜しいものがあります。

私は「スマートフォン」を使った遠隔稽古を模索することにいたしました。

.

今日はその手始めとして、

①Dropbox

②YouTube

③Skype

という3つのアプリを使ってみました。

.

①のDropboxを使うと、録音した音源を大勢で共有できます。

京大宝生会で今稽古している仕舞の地謡を、私が一曲ずつ謡ってスマホに録音しました。

それをDropboxの中にアップロードして、京大宝生会部長にリンク先をメールで送りました。

仕舞6番を録音してアップロードするのに40分ほどかかりました。

.

.

②YouTubeは、江古田稽古場のパワフルでポジティブなボイストレーナーさんに勧めていただきました。

特定のグループで動画を共有できます。

.

今日は松本の初級者向け謡「田村」を私があしらいながら謡っている動画をスマホで撮影しました。

張り扇の動きが見えるので、より稽古に近い形態になりました。

.

そしてやはりそのリンク先を松本の初級者組の皆さんにメールしました。

こちらの作業時間は30分ほどでした。

.

.

更に、

③Skypeを使うとスマホの画面で対面しながらの稽古が可能なのです。

こちらは松本稽古場の方に勧めていただいて、先ほどその方と遠隔稽古の試運転を行いました。

.

田村の後クセ上げ〜クセの留までを鸚鵡返ししてみたのです。

.

若干のタイムラグがあり、最初は違和感を感じました。

しかし、その時間差にも、回数を重ねれば徐々に慣れることが出来ると思いました。

.

.

今日1日で3種類の”遠隔稽古”の可能性が見えて、少しホッといたしました。

あとは稽古対象を如何に広げていけるかが課題です。

.

人によって、3種類の方法を使い分けていけたらと考えております。

私なりの方法で、コロナウイルスに負けないように進んで参りたいと思います。

この災厄を乗り切った時

3月が間もなく過ぎようとしています。

.

この1ヶ月で事態は好転することなく、むしろ悪化していくばかりでした。

私の周囲に限っても、澤風会稽古は京都、江古田、田町で一回ずつ出来ただけ。

京大宝生会は、新歓活動どころか部としての活動も当面の間自粛が求められてしまいました。

.

.

この状況で前を向いて生きていくのは非常に困難です。

しかし、出来ることはあると思います。

.

とにかく今は一人一人が自分の健康に気をつけること。

これが何より最優先です。

.

.

そして能楽に関して言えば、録音や録画を元に1人でも稽古が出来ます。

むしろ1人だけで謡う経験を積むことで、それまでよりも上達出来る可能性すらあるのです。

.

.

特に京大宝生会現役の皆さんは、最近習ったばかりの何曲かを1人で通して謡ってみてください。

習った記憶があるうちに謡うのはとても効果的な稽古になるのです。

.

この大きな災厄を乗り切って、再び皆で集まった時に、それぞれが驚くほど上達していたとしたら。

そんな光景を見られることを願って、今は悪化する状況の中でもがきながら、何とか進んで行きたいと思っております。

桜神社の桜

東京ではこの週末は「不要不急の外出」を控えるように言われています。

.

しかし食料の買い出しに行く必要があり、雨の止んだ昼頃に三ノ輪の家を出て近所に買い物に行きました。

.

.

そのついでに、人の少ない道を選んでちょっと足を伸ばして千住大橋の方に行ってみました。

実は年始に散歩した時に見つけた小さな神社に、春になったら必ずもう一度詣でてみたいと願っていたのです。

.

この神社です。

千住大橋駅近くの再開発地区にあり、おそらく比較的新しい神社かと思われます。

.

.

小さな社殿はたくさんの桜に囲まれており、神社の名前は…

.

.

「桜神社」というのです。

年始の散歩で見つけた時に、「桜が満開の時期にはさぞ綺麗だろう」と想像しました。

.

そして今日、満を持して行ってみたわけです。

.

.

お花見自粛のためか社殿に入る門扉が閉じられており、残念ながらお参りは出来ませんでした。

しかし隣にある公園から社殿の裏手にまわってみると…

社殿を囲む満開の桜のすぐ側まで行って眺めることができました。

他に見る人もいない、密やかな今年のお花見でした。

.

.

帰り際、隅田川にたくさんの花びらが散り浮くのを見ました。

「隅田川が桜川のようだな…」

と思いながら写真に撮ると、ガス状星雲に星が散りばめられた宇宙のようにも見えました。

.

.

皆でお花見が出来るような日常が戻ってくるように、心から祈っております。

2020年春の院展に行って参りました

昨日の昼間に、日本橋三越に「春の院展」を見に行って参りました。

.

昨日が初日でしたが、平日昼間というのとコロナウイルスの影響で、人は例年よりもかなり少なめでした。

.

.

人口密度の低い会場で、いつもよりも自由に絵画の迷宮をふらふらと行ったり来たりして楽しみました。

しばらく色々な絵を見てまわって感じたのは、「今回は”扉”のモチーフが多いなあ」ということです。

固く閉ざされた、重々しい木の扉の絵などが印象的でした。

.

閉じられた扉の向こう側には何があるのだろうか…

やはり重厚な寺院だろうか、それとも広々とした庭園なのか、あるいは深い森の奥に続く道が現れるのか…

と想像力を非常に掻き立てられます。

そして、何となく閉塞感を感じる昨今の状況を表しているのかな…とも思いました。

.

.

田町稽古場の会員さんの絵もじっくりと拝見しました。

黄金色と白銀色に描かれた”アザミ”の花に、静かな強い力を感じました。

今回もお誘いいただきありがとうございました。

.

.

帰って間もなく都知事の会見があり、東京はますます大変な状況になって来たようです。

「院展」に行くのも中々困難になってしまうかと思われますが、4月6日まで開催されているそうですので、状況が落ち着いてきたら皆様どうか見にいらしてくださいませ。

マスクを作ってみました

先日も書きましたように、最近ではずっとマスクを着用して稽古しております。

.

そのマスクが全く手に入らないので、自分で作ってみました。

作り方はスマホのニュースで見つけた「日本手拭でマスクを作る方法」というのを少しアレンジしました。

.

.

用意するのは、

・ハンカチ(写真のものは100均で購入した白地の40㎝×40㎝のもの。家にある適当なハンカチで大丈夫です)

・輪にしたゴム(同じく100均で購入したゴムを直径10㎝弱ほどの輪に結んだもの。ゴムの太さは市販のマスクと同程度のものを選びました)

これだけです。

.

①先ず向かい合う2つの角を中心まで折り込みます。

.

.

②更にもう一回折り込みます。

.

.

③手前側に向かって二つ折りにします。

.

.

④上になっている方を向こう側に少し折り返します。

どのくらい折り返すかというと…

ひっくり返してみた時に、折り返した部分が約1㎝ほどはみ出して見えるくらいです。

.

.

また元のようにひっくり返して、輪にしたゴムを両端から通します。

2つのゴムの距離がそのままマスクの幅になるので、好みの幅に調節できます。

.

.

あとはゴムを挟むように左側を折り…

同様に右側を折って…

ひっくり返すと完成です。

.

.

着用するとこんな感じになります。

上下に少し引っ張ると、上下幅も調節可能です。

.

.

使用後は広げて洗えば何度でも清潔に使えます。

慣れると1分足らずでハンカチがマスクに早変わりします。

.

ちなみに最初に日本手拭で作ったものは分厚くなってしまい、稽古には不向きでした。

私にはこの40㎝×40㎝のサイズの小さめのハンカチが最適なようです。

.

皆様もしよろしければ、お持ちのハンカチで試作してみてくださいませ。

気に入らない時には、すぐにただのハンカチに戻せますので。。

.

私はしばらくの間は、このハンカチマスクをお供に稽古を頑張って参りたいと思います。

力強い書のような

昨日は水道橋宝生能楽堂にて「春の別会能」が開催されました。

.

留の能は辰巳大二郎さんの「道成寺」でした。

.

.

私は今回は能「隅田川」の地謡だったので、「道成寺」は楽屋で拝見しておりました。

.

能は演者によってカラーが異なるのが面白いところです。

辰巳大二郎さんの道成寺は、輪郭のはっきりとしたとても力強い謡と舞でした。

.

例えるならば、

“太い筆で雄渾にしたためられた一幅の書”

を見ているような感覚をおぼえました。

.

.

今回はコロナウイルスの影響でギリギリまで開催そのものが危ぶまれた「春の別会能」でした。

その状況で「道成寺」という大曲へのモチベーションを高く維持して稽古を積み、同時に記念扇など様々な準備を進めるのは、非常に困難だったと思います。

.

その困難を乗り越えての、大変素晴らしい「道成寺」でした。

この大きな経験を経て、辰巳大二郎さんは名前の通りますます大きく羽ばたいていかれることでしょう。

道成寺成功おめでとうございます。