変わること、変わらないこと

今日は、能楽ではない伝統芸術をされている方々に、能楽を見ていただく機会がありました。

私はお手伝いに行っただけなのですが、色々と興味深い事がありました。

能楽がその成立期から殆ど変わらずに現代まで続いて来たという事は、言葉としては理解していました。

しかしこれは本当に特殊な例で、能楽と同時期に興った同じ日本の伝統文化でも、時代と共に多様に変化しながら今日に至ったものもあるのですね。

能楽のように古から変わらず現代に伝わるのは素晴らしい事ですが、その為に現代人には理解し辛いという面もあります。

また時代に則して変化していけば、各時代毎の日本人に分かり易くはなりますが、その芸術の原初にあった思想や技術を正確に後世に伝える事はむしろ困難になるのかもしれません。

どちらが良いのかを判断する立場には勿論ありませんが、どちらのあり方も共に日本の誇るべき伝統文化なのだと思います。

私は能楽一本槍で、他の伝統文化にあまり眼を向けずにこれまで走って来ました。

でもこれから先、若い世代や海外の方に対して能楽を伝えていく為には、能楽以外の様々な日本の伝統芸術を知っておく事も大切だと思いました。

兼平稽古

今日は来月4日に七宝会でシテを勤める能兼平の稽古を受けて来ました。

今井四郎兼平は木曽義仲配下の四天王と呼ばれた一人で、能のストーリーも義仲最期のシーンが最も重要な位置付けになっています。

同じく義仲の最期を描いた巴という能がありますが、興味深い事があります。

能兼平の中に「巴」という名前は一度も出て来ず、また能巴にも「兼平」は全く登場しません。

そしてどちらの能のシテも、義仲に最後まで付き従ったのは自分であると語っているのです。

主君への敬愛の念は自分が一番強いという事を、幽霊となってまで互いに譲らず主張している巴と兼平。

どちらも義仲への想いの強さをひしひしと感じます。

しかし今回気が付いた事があります。

巴は曲の最後に、自らの執心を弔って欲しいと言って消えて行きます。ところが兼平は最後まで自分の心中には全く触れず、先ずは主君義仲の弔いをして欲しいとワキに頼んでいるのです。

兼平には、修羅道の苦しみや妄執を超えたレベルでの主君への想いがあるのかもしれません。

修羅としては異色の存在と言える兼平。その心持ちに少しでも近付けるよう、本番まで試行錯誤しながら稽古していきたいと思います。

北の町2

昨日は雪が生活を脅やかす一面があると書いたのですが、北の町を歩いてみると雪を逆手にとって楽しむイベントもあることがわかりました。

雪合戦のすごいやつですかね。

雪女は能には出て来ないのですが、信州などでは雪女は山姥の姿で出て来るようです。葛城の前シテがむしろ雪女に近い気がします。金剛流には「雪」という雪の精をシテにした能があります。

今シーズンはまだまだ雪ネタがありそうな気がします。。

北の町

京都から新幹線で本州を縦断して、今日は私の行動範囲で最も北の町での仕事でした。

この町も当然雪の中でした。今シーズンは各地で雪に会うことが例年よりも多いです。

京都の雪と大きく違うのは、ここでの雪は生活を脅やかすものだという事です。

雪かきや雪下ろしは本当に重労働な上に、ようやく終わってもすぐまた雪が降って元に戻ってしまうそうです。それが長い冬の間延々と続くのです。

京都の雪を見て風情があるなどと思った自分を反省してしまいました。

能鉢木のシテ謡でも、同じ雪が立場によって全然違うものに感じられる、という意味の事が謡われています。

雪に限らず、ひとつの事柄を見た時に、人によって見え方が全く違うのだという事を、常に心に置いて行動したいと思いました。

大山崎新年会も雪でした

今日は大山崎の新年会でした。

今日は止むかと思ったら、雪がまだまだ降っていました。

大山崎新年会では、この10数年変わらずに、謡をうたった後にある鍋を食べる慣わしになっています。

この鍋がシンプルなのにとても美味しいのです。

先ず鍋に水と日本酒を同量入れて沸騰させます。具材は、ちぎったレタスと豚バラ肉だけ。軽く火を通したらもう完成です。

取り皿には大根おろしとネギを沢山入れて、これにポン酢と「かんずり」という新潟の辛い調味料(全国で買えるようです)を加えます。

これだけで驚くほど美味しいので、読んだ方は是非お試しください。

…と言うより、大山崎稽古にいらしていただければ毎年必ず食べられます。大山崎稽古は、毎月1回月曜日朝10時から、大山崎の宝積寺でやっております。

宝積寺には、本物の「打ち出の小槌(正確には打ち出と小槌)」があったり、1200年以上続く「鬼くすべ」という珍しい追儺式があったり、国宝級の閻魔大王像があったりと、お寺自体が大変に見所の多い所です。

大山崎稽古と鍋に興味を持たれた方は、お問い合わせフォームよりどうかお気軽にお問い合わせくださいませ。

雪の京都

下鴨の初稽古は雪になりました。

新幹線が1時間遅れで、お弟子さんもさぞかし少ないかと思いきや、皆様元気に沢山いらしていただいて、賑やかに初稽古をさせていただきました。ありがとうございました。

京都の冬の寒さは未だに慣れないのですが、京都の雪景色は何故か他の所とは違う味がある気がします。

今朝の新幹線から

稽古場の御庭

平成29年七宝会年間予定

平成29年七宝会年間予定です。

舞台出演予定のページにもアップしてあります。何故かそちらの方が文字が鮮明です。

どうかよろしくお願いいたします。

受験シーズン

今日は寒い中を五雲会に沢山の方がいらしてくださいました。ありがとうございました。

今日明日はセンター試験ですね。大学に限らず、小中高でも受験シーズンが本格的に始まっています。

能の舞台は合格、不合格がつく訳ではないのですが、それでも本番は大変緊張します。

ましてや受験生の皆さんの心中を思うと、我が身に非ずとも胸に苦しき手を置く気持ちになります。

この時期に必ず京大宝生会で話題になるのですが、この春に入部するかもしれない誰かが、今まさに受験を闘っているのです。

そう思うと、まだ顔も名前も知らない誰かに「頑張れ!」と言いたくなってしまいます。

どうか受験生の皆さんが出来るだけ良いコンディションで本番を迎えられますように。

そして春になったら、自分の学校か或いは近くの学校の能楽部宝生会の扉を叩いてほしいです。

健闘をお祈りします。

新幹線

今朝新幹線で富士山を見ながら西へ向かい、夜に十六夜の月を見ながら東へ帰って来ました。

師匠ほどでは無いのですが、私も比較的多く新幹線を利用します。

一番多いのは東海道新幹線で京都往復です。だいたい過ごし方も決まっています。

東京で乗車→謡本を出して覚え物開始→富士山を見る頃に一段落して、仮眠→名古屋到着の放送で起きる→京都まで読書か、覚え物の続き。

謡を覚えるのは何故か新幹線が一番捗ります。適度な雑音と景色の変化は、記憶する作業に良い効果があると思うのですが、私だけの感覚かもしれないです。。

謡を覚える方法も決まっているのですが、それはまた別の日に書きます。

明日は正午から水道橋宝生能楽堂にて今年最初の五雲会です。どうか暖かくしてお出でくださいませ。


定点観測  今朝の富士山です。

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江古田稽古始め

今日は江古田稽古場の稽古始めでした。

江古田稽古場は西武池袋線江古田駅近くにあります。

ホームページの冒頭の写真は、この稽古場の鏡板です。この鏡板にまつわる話もあるのですが、それは別の機会にします。

江古田稽古場合は、下は小学3年生から上は卒寿を迎えられる方まで、幅広い層で稽古をしています。

時間は12時~21時で、14時半~16時迄が謡の団体稽古、その前後に個人稽古です。主に木曜日に稽古しています。

実は今日新しい方が見学に来られました。一番最初は絃上という仕舞をやることが多く、それを半分稽古して、ずいぶん長い時間見学していただきました。続けてくださると良いです。

興味を持たれた方は、お問い合わせフォームよりメールをお送りくださいませ。どうかよろしくお願いいたします。