2019全宝連無事終了いたしました

今日も金剛能楽堂にて全宝連の第2日目が開催され、盛会のうちについ先ほど幕を閉じました。

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見所は終日大勢の学生とお客様で賑わい、おかげさまで最後の鑑賞能もほぼ満席になりました。

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昨夜のレセプションでは全国の各大学の部長から部の紹介がありました。

その中で、今年の新歓で10人近くの新入生が入った学校が金沢支部、名古屋支部、京都支部で3校もあり、それらの大学は全体人数が20〜25人になったそうです。

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他にも、部員が2人だけになっていたのが今年の新歓で人が入って、存続の危機を乗り越えたという学校もありました。

現在部員が少ない学校も希望を持ち続けてほしいと思いました。

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舞台では、京大宝生会は幸いに全員ミスも無く、稽古の成果を充分に発揮出来たと思います。

他にはやはり東大宝生会が良い舞台でした。先日の水道橋での関宝連から、更に稽古を積んでレベルを上げてきたのがわかりました。

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そして同志社宝生会の素謡「玉葛」は、舞台からはみ出すほどの20数名の大人数ながら、男女で良く声が揃っていました。

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逆に、シテ1人に地謡1人という最小人数の仕舞も何番かありましたが、それぞれ安定した舞と謡で感心しました。

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仲間の人数や、部を取り巻く環境がそれぞれ異なる中で稽古している学生達が、同じ舞台に集まり2日間にわたって時間を共有する。

これは実に尊いことだと思うのです。

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今回の全宝連でも、他大学の舞台を見て「上手いなあ」と思ったり、「良い曲だなあ」と舞いたい曲候補が増えたり、「頑張っているなあ」と励まされたり、色々な想いが心に刻まれたはずです。

中には人生を変えるような出会いもあったかもしれません。

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そのような貴重な舞台である「全宝連」が、発展傾向の中で今年も無事に開催できたのは本当に喜ばしいことです。

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この盛り上がりを引き継いで、来年の金沢大会も、またそれ以降もこの全宝連がますます発展していくことを願っております。

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実行委員始め学生の皆さん、全宝連京都大会の大成功おめでとうございます。

解説→地謡→仕舞。

今日は水道橋宝生能楽堂にて「夜能」の舞台に出演して参りました。

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18時半に始まって20時半に終了した今回の「夜能」。

私は先ず冒頭18時半〜18時55分の”解説鼎談”に能楽師代表として参加いたしました。

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そして解説鼎談が終わり、長唄の舞台を挟んで19時20分〜20時10分まで能「土蜘」の地謡を勤めました。

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さらに「土蜘」が終わると、その後の仕舞3番のうちの最後の演目「富士太鼓」のシテを勤めて、舞い終えると丁度20時半だったのです。

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120分の催しの中で、3回にわたって計約90分舞台に出るのは、私としては珍しいことでした。

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3回の出番それぞれ役割が全く異なるので、身につける紋付袴で変化をつけることにしました。

着替えることでなんとなく気持ちもリセット出来る気がしたのです。

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最初の鼎談では、普段「後見」を勤める時の紋付袴セットを着ました。

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終わってから長唄20分の間に「地謡用」の紋付袴セットに着替えて能「土蜘」の舞台へ。

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そして「土蜘」が終わると、今度は「舞用」の色紋付と袴を素早く着付けて、最後の「富士太鼓」の仕舞に臨んだのです。

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今日の「夜能」は、おかげさまでお客様にも大変大勢いらしていただき、心地良い緊張感の中で最初から最後まで勤め上げることが出来ました。

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能のシテの時とはまた違った意味で、とても良い経験を積ませていただきました。

本日いらしてくださいました大勢の皆様、誠にありがとうございました。

また改めて

今日は熱海で舞台があり、能「杜若 沢辺之舞」の地謡を勤めました。

帰ってから来週末の「全国宝生流学生能楽連盟自演会 京都大会」までの諸々の準備をしていると、いつのまにか時計は23時45分になっていました。

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大変恐縮なのですが、本日のブログは短く終わらせていただきます。

今日の舞台のお話などは、また改めて。

本日はこれにて失礼いたします。

第9回七葉会に向けて

今日は午後に少しだけ江古田稽古、その後に田町に移動して夜まで稽古でした。

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江古田と田町で今稽古している仕舞と謡は、大半が8月10日、11日に宝生能楽堂にて開催される「第9回七葉会」に出す演目です。

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例えば今日は仕舞「是界」、「松虫クセ」、「田村クセ」、「笹之段」、「嵐山」などを稽古したのですが、いつの間にか皆さんほぼ完成していて驚きました。

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私の場合、仕事のひとつの山場を越えるまでは、次の舞台のことをあまり考えられない傾向があります。

最近では能「鵜飼」と「草紙洗」の稽古をしている間は、頭の中はその2曲でいっぱいいっぱいでした。

しかしもちろんその間も、澤風会稽古は変わらないペースで淡々と積み重ねていたのです。

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そして「鵜飼」と「草紙洗」が終わって冷静になってみると、江古田田町の皆さんが夏の「七葉会」へ向けての準備を順調に進めてくださっていた事に気がついた訳です。

これは大変有り難いことでした。

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もちろんまだ改善する余地はありますし、謡の方はまだこれから役の稽古をする段階です。

ここから暫くは、江古田田町は「七葉会」に向けて力を入れて稽古して参りたいと思います。

江古田田町の皆様、この調子で本番までどうかよろしくお願いいたします。

自治医科大学能楽部との初顔合わせ

一昨日の五雲会には、新しく出来た「自治医科大学能楽部」の学生さんと顧問の先生が観に来てくれました。

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京大宝生会から今春自治医科大学に転学して、2ヶ月で能楽部を立ち上げた青年も勿論来てくれて、終了後には京大宝生会の現役やOBと一緒に食事をしました。

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「僻地医療」を目的とした自治医科大学。

これまでに唯一、私が出会った自治医大の関係者は石川県出身で、卒業後に能登半島の先、日本海に浮かぶ絶海の孤島に数年間赴任したと聞きました。

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一昨日聞いた話では、自治医大では6年間の大学生活の後に、9年間の出身都道府県での医療勤務が待っており、その勤務地の大半が僻地なのだそうです。

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東京芸大1年生の、能楽師の卵の青年もその食事に来ていました。

私「我々は、芸大4年間の後に水道橋での内弟子10年間なのだから、大分恵まれているよね」

青年「そうですね、ははは…💧」

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そのような厳しい修行(?)への覚悟が出来ているからか、自治医大の学生さん達は若いのに肝が据わっている雰囲気で、また人間的にとても魅力的な人ばかりでした。

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笑ったのが自治医大での飲み会の話です。

酔い潰れた学生が出ると、「台車持ってこ〜い」と言って、台車に載せて運んでいくそうなのです。

私「医大なのに、担架じゃないんだ?」

自治医大生「ええ、だって担架はエレベーターに入らないですから」

成る程。

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そして、酔っ払いを介抱するのは皆医療の心得がある人達なので、まず心配は要らないということでした。

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このように、京大とも芸大とも全く違うカラーを持つ自治医科大学に、新たに能楽部が出来たわけです。

今後彼らが宝生流の稽古を始めてくれて、その活動がもしかしたら僻地医療の赴任先にも広がっていけば、とても素晴らしいことだと思うのです。

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それはまだ遠い目標ですが、今回の五雲会での初顔合わせはとても有意義な第一歩になった気がします。

自治医科大学能楽部の皆さん、今後ともどうかよろしくお願いいたします。

名古屋宝生会の能「草紙洗」

今日は朝9時前に名古屋能楽堂に入りました。

能「草紙洗」の申合が10時開始で、更にその前に下合わせをすることになっていたのです。

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「草紙洗」は、子方天皇、シテ小野小町、ツレ紀貫之、立衆3人にワキ大伴黒主と、舞台に同時に7人が立ち並ぶ華やかな曲です。

謡の合わせどころや、立ち居の場所とタイミングなどをよくよく合わせておく必要があるのです。

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広めの名古屋能楽堂の舞台での立ち位置、座り位置を十分に確認して、申合に臨みました。

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申合が約1時間で終わり、その後に今度は仕舞「兼平」、「杜若クセ」、「野守」の地謡を合わせました。

それからお昼のお弁当を手早く食べると、もう時間は12時。

「草紙洗」は13時開始なので、ぼちぼち装束を付け始める時間でした。

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そしてシテ方6人が装束に着替えると、すぐに本番が始まりました。

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…実は、能「草紙洗」は、ツレの足が痺れることで有名な曲でもあるのです。

私はツレと言っても、途中で4回ほど立ち上がる場面がある”貫之”なので、他の3人の”立衆”に比べれば、まだ足は楽なはずでした。

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しかし今朝からの申合と仕舞合わせ、そして昨日の五雲会の「鵜飼」シテの影響もあってか、今日は本番冒頭から足が痺れてしまいました。。

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一旦痺れると、むしろ途中4回も立ち上がることが難行苦行になってしまいます。

終盤に小野小町に”烏帽子”を付けに行って、戻って座ると「これで最後まで立ち上がらなくていいんだ!」と密かに喜びを感じてしまったのでした。

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その「草紙洗」のツレ紀貫之も大過なく終えることが出来、これで今年上半期の役は全て無事に終わったことになります。

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次の役は9月になる予定なので、後半もまた気持ちを新たに頑張ろうと思います。

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名古屋宝生会にいらしてくださった皆様、また昨日の五雲会から名古屋に移動して観に来てくれた学生の皆さんどうもありがとうございました。

能「鵜飼」無事終了いたしました

皆様 本日は雨の中五雲会に大勢お越しくださいまして、誠にありがとうございました。

おかげさまで私の能「鵜飼」もなんとか大過なく終えることが出来ました。

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今回の「鵜飼」では、謡の強弱や調子の高低などを、普段よりも細かいところで文字単位で調整してみました。

終わってからの打ち上げでは、京大宝生OB会の皆様に、その謡に関しての御感想をじっくりと伺い、大変勉強になりました。

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そして同時刻、その打ち上げ会場から徒歩30秒の居酒屋では、京大宝生会、東大宝生会、自治医科大学能楽部の皆さんが別途打ち上げをしていました。

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打ち上げ一次会を終えて、私は何人かで別途打ち上げ居酒屋に合流し、更にそこに東京芸大の新入生も加わっての二次会になりました。

自治医科大学の教授や、ドイツからのOBなども交えて盛り上がっていたところに、なんと今度は今日の能「加茂」でツレを勤めた先生が、お弟子さんと一緒にお店に入って来られました。

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なんだか気分としては、京大百万遍か芸大上野仲町通の頃のような混沌とした楽しい盛り上がりのひと時を過ごしました。

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楽しい打ち上げを終えて、私は宝生能楽堂に戻りました。

つい先ほど鵜飼を終えて、干していた胴着などを片付けて一つにまとめ、今度は新幹線で名古屋に移動です。

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明日は名古屋宝生会で能「草紙洗」の紀貫之を頑張って勤めたいと思います。

記憶に残る日にするために

私が能「鵜飼」のシテを勤める「五雲会」が、いよいよ明日本番を迎えます。

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今回は澤風会郁雲会の皆さんに加えて、京大宝生OB会の方々、また京都からは京大宝生会現役達、そして松本から、仙台から、青森からも、合わせて50人を超える知己の方々が観にいらしてくださる予定です。

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そして驚いたことに、15年前に京大宝生会で能「鵜飼」のシテを舞ったOBが、ドイツから今回の私の「鵜飼」に合わせて一時帰国して観に来てくれることになりました。

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さらに。

京大宝生会から今春自治医科大学に転学した青年が、早速能楽部を立ち上げた話を先日ブログに書きました。

その自治医科大学能楽部員と顧問の教授が、明日初めて宝生能楽堂にやって来るというニュースもあるのです。

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明日は色々な意味で記憶に残る日になることでしょう。

でも先ずは能「鵜飼」の舞台を無事に勤めることが第一です。

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今朝は渋谷のNHKに行き、ラジオ録音で「采女」の地謡を謡いました。

その後に水道橋に行き、昨日の申合で御指摘いただいた点をいくつか修正するための稽古をしました。

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胴着など明日必要なものの準備も終わって、あとは静かに本番を待つばかりです。

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皆様明日はどうかよろしくお願いいたします。

秘密の稽古スペース

私は今週土曜日開催の五雲会にて能「鵜飼」のシテを勤めますが、その申合がいよいよ明日に迫りました。

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一方今日は夕方に京都駅前の「メルパルク京都」に学生と一緒に行って、全宝連レセプションの打ち合わせをするという用事がありました。

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京都駅に到着すると、学生が来るまでまだ少し時間があります。

普段ならコーヒーでも飲んで待っているところですが、今日は…

「鵜飼」の稽古をしたい!

と無性に思いました。

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京都駅構内には、実は広くて人気が殆ど無いスペースが何箇所かあるのです。

私は烏丸中央口から東側に上がっていくエスカレーターに乗りました。

そしてエスカレーターを4本乗り継ぎます。

改札前は観光客や修学旅行生でごった返しているのですが、上に昇っていく程にその喧騒が嘘のように静かになっていきます。

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4本目のエスカレーターを降りると、結婚式に使うと思われる西洋風の鐘が下がっています。

その鐘の横手のスペースが、能の稽古にちょうど良い感じなのです。

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もちろん結婚式があると人が大勢集まるのでしょうが、平日午後には人は滅多にここまで上がって来ません。

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駅構内のスペースでは、色々と禁止されている行為があると思われます。

しかし控え目の声量で、5m四方を摺り足で動くだけならば、まず迷惑行為にはならないと判断して、稽古を始めました。

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思えば「国栖」、「舎利」、「夜討曽我」、「雲林院」など最近舞った能は全て、一度はこのスペースで稽古した覚えがあります。

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今日もやはり人は殆ど通りかからず、じっくりと「鵜飼」の稽古をすることが出来ました。

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このブログを読んだ方が稽古に殺到するとちょっと困りますが、今後もこの秘密の稽古スペースを年に数回、大事に使わせてもらいたいと思います。

良きライバル心

今日は夕方から京大宝生会の稽古でした。

先月の「関西宝連」以来の稽古になるので、ちょっと久しぶりの京大BOXでした。

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稽古の前に、一昨日に水道橋宝生能楽堂にて開催された「関東宝生流学生能楽連盟自演会」通称「関宝連」の感想を少しだけ話しました。

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東大の無本の素謡「葵上」が非常にハイレベルだったこと。

やはり東大の最後の舞囃子「敦盛」がとても良い舞台だったことなどなどです。

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東大宝生会の皆さんは、実は昨年末の関西宝連で京大宝生会が出した能「経政」をわざわざ東京から観に来てくれたのです。

勿論京大宝生会の面々はその東大さんの熱意を覚えていて、今回東大宝生会のレベルが高かったという話を聞くと

「うおお…!」

と感嘆の声を上げました。

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そしてなにかメラメラとやる気が燃え上がるのが見えたような気がしたのです。

ライバル心というやつでしょうか。

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稽古を始めてみると、大半の学生が関西宝連から仕舞を変えてきていました。

それにもかかわらず、皆ほぼ八割がた仕上がっていたのです。

関西宝連からわずか2週間で、しかも自分でここまで稽古してくれるとは嬉しい驚きでした。

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本番の全国宝生流学生能楽連盟自演会は、6月29、30日の朝11時より京都金剛能楽堂にて開催されます。

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東大さん始め全国から集まるたくさん学生さん達と、それをお迎えする関西の学生達。

先ほども書きましたが、良いライバル心は上達に繋がると思います。

色々な大学の舞台を観て、お互いに大いに刺激し合ってくれることを期待しております。