力強い書のような

昨日は水道橋宝生能楽堂にて「春の別会能」が開催されました。

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留の能は辰巳大二郎さんの「道成寺」でした。

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私は今回は能「隅田川」の地謡だったので、「道成寺」は楽屋で拝見しておりました。

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能は演者によってカラーが異なるのが面白いところです。

辰巳大二郎さんの道成寺は、輪郭のはっきりとしたとても力強い謡と舞でした。

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例えるならば、

“太い筆で雄渾にしたためられた一幅の書”

を見ているような感覚をおぼえました。

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今回はコロナウイルスの影響でギリギリまで開催そのものが危ぶまれた「春の別会能」でした。

その状況で「道成寺」という大曲へのモチベーションを高く維持して稽古を積み、同時に記念扇など様々な準備を進めるのは、非常に困難だったと思います。

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その困難を乗り越えての、大変素晴らしい「道成寺」でした。

この大きな経験を経て、辰巳大二郎さんは名前の通りますます大きく羽ばたいていかれることでしょう。

道成寺成功おめでとうございます。

“正座耐性”が…

今日は朝から水道橋宝生能楽堂にて、日曜日開催の「別会能」の申合がありました。

私は能「隅田川」の地謡を勤めました。

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ここ半年ほどで体重を少し絞ったので、地謡での正座が楽になった気がしておりました。

ところが今日は隅田川申合の後半になると、完全に足が痺れてしまって感覚が無くなっていたのです。。

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「思ったより時間が長かったのかな…?」

と思い、切戸から入るとすぐに時計を見てみました。

しかし実際には50分足らずしか経っていませんでした。

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思えば今月に舞台で正座したのは、国立能楽堂での半能「石橋」だけでした。

時間にして20分程度です。

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推測するに、おそらく正座にも”耐性”のようなものがあるのではないでしょうか。

頻繁に長く正座していると”正座耐性”が高まり、逆にあまり正座しなくなると”耐性”が無くなって痺れやすくなるのでは。

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別会能申合の後は久しぶりの江古田稽古でしたが、昼過ぎから夜まで稽古すると、やはり普段よりも足が痺れてしまいました。。

これから舞台や稽古が増えていくので、早く”正座耐性”をつけてまた楽に座れるようになりたいものです。

稽古再開を目指して

連日コロナウイルスのニュースに戦々恐々とする日々ですが、ウイルス対策や注意点も徐々にわかって来たようです。

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そして今月22日の「宝生会別会能」も、様々な対策を講じた上で予定通り開催されるとの知らせが今朝届きました。

久しぶりに希望を持てるニュースでした。

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このニュースを受けて、澤風会稽古も東京の稽古場から徐々に再開して参りたいと思っております。

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稽古再開にあたっては、

①マスクがある方は着用していただく。

②可能な限り窓や扉を開けて換気をする。

③咳や微熱など、少しでも体調に不安のある方は無理せずお休みいただく。

という対策をとりたいと思います。

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①のマスクが中々入手できませんが、先日「日本手拭いで作る手作りマスク」というニュースを読みました。

そして実は今日、家にある手拭いでマスクを試作してみたのですが、中々使い心地が良いものでした。

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また「次亜塩素酸水」がウイルスを不活性化させるという話を聞いたので、方々探してようやく「次亜塩素酸水スプレー」を1本だけ購入出来ました。

これも稽古場に持って参ります。

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今回の新型コロナウイルスは非常に恐ろしいもので、人類が被った身体的、精神的、経済的なダメージは途轍もない規模になってしまいました。

しかし、負けてばかりはいられないと思います。

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出来る対策をとりながら、日常を取り戻すために少しずつでも進んで行きたいと思っております。

非公開の研修修了発表会

今日は国立能楽堂にて、「能楽三役研修修了発表会」に出演して参りました。

私は半能「石橋」の地謡を勤めました。

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5年にわたる研修を終えた狂言方と太鼓方の研修生のお2人が、それぞれ「奈須与市語」と、半能「石橋」の太鼓を勤めた今日の舞台。

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当初一般公開の予定が、コロナウイルスの影響で非公開の舞台になってしまい、晴れの舞台を迎えたお2人にはお気の毒だったと思います。

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しかし、舞台上の我々は勿論のこと、国立能楽堂の職員の方々は一般公開の舞台と全く変わらぬ段取りで、非常に厳密に丁寧に仕事に臨んでおられました。

パンフレットも、急遽決まった非公開にもかかわらず、非公開用の立派なパンフレットが出来上がっていて驚きました。

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一般非公開とは言え、おそらくお2人の御家族などと思われる関係者の方々が20人程、それぞれ遠く離れて見所に座っておられます。

開演や終了のアナウンスも勿論全ていつも通りに行われ、御覧になった関係者の皆様は喜ばれたことと思います。

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そして半能「石橋」を無事に終えた太鼓方研修生の方は、安堵と誇りが入り混じったような、とても良い表情をされていました。

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非常に特殊な状況下の舞台でしたが、ある意味でとても心に残る経験になりました。

無事に研修を修了されたお2人には、この先にたくさんあるであろう一般公開の舞台で、思う存分に活躍していただきたいと願っております。

我慢の時

3月に入ってから、澤風会の稽古を全てお休みにしております。

ブログの更新も滞ってしまっておりますが、私自身は全く健康に過ごしています。

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今日は本当に久しぶりの仕事で国立能楽堂に行きました。

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楽屋で何人かの仲間と話したのですが、やはり全て休みにしている人、また稽古は希望者のみ続けている人など様々でした。

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まだ終息の見通しは全く立たない状況ですが、今のところ来週から澤風会稽古は再開したいと思っております。

当面はマスク着用で稽古させていただきたいと思います。

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時間が急に空いてしまったのですが、この期間に自分の稽古をみっちりとしたり、これまで出来なかった事に色々挑戦したりしております。

またこのウイルス禍がおさまったら、ブログも頑張ってもりもりと更新して参りたいと思います。

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今しばらくはじっと我慢して、力を蓄えておきます。

皆様もどうか健康を保っていただき、また稽古や舞台で元気に再会出来ることを願っております。

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澤風会郁雲会大会延期のお知らせ

3月になりました。

そして本来なら今は、週末の3月7日に迫った「澤風会郁雲会大会」の準備が大詰めを迎えている筈の時期です。

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しかしながら、「澤風会郁雲会大会」は延期させていただくことにいたしました。

延期日程は、

5月9日土曜日

になります。場所は変わらずセルリアン能楽堂です。

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お願いしていた能楽師の皆様、また出演を予定されていた方々、そして会場のセルリアン能楽堂にはご迷惑をおかけして大変申し訳ございません。

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舞台に向けた日々の稽古。

当日朝から夕方までかかる舞台。

観に来てくださるたくさんのお客様。

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現状では、それら全ての要素から感染拡大の恐れがあると思います。

今はとにかく健康上の安全確保が何よりも優先される時だと考えて、延期を決断させていただきました。

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何とか5月までにこのウイルス禍が終息して、5月9日にはセルリアン能楽堂で皆様と笑顔でお会い出来ますことを、心から願っております。

そしてそれまでどうか皆様お一人お一人が健康でいらっしゃいますように、心から祈っております。

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延期で各方面にご迷惑をおかけいたしますこと、重ねて深くお詫び申し上げます。

ご理解のほどどうかよろしくお願いいたします。

汐入大橋の大寒桜

今日は家の近くの隅田川まで歩いて行きました。

「千住大橋」と「汐入大橋」の間の河原には広いスペースがあるので、「盤渉楽」の舞の稽古をしようと思ったのです。

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澤風会の番外舞囃子「邯鄲 盤渉」は、笛の流儀が当初の”一噌流”から”森田流”に変わることになりました。

なので稽古も一からやり直しなのです。

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型付けを手に舞い始めてみると、一噌と森田では”時間の余るところ”と”忙しいところ”が全く異なることがわかりました。

また足拍子の数も違います。

そして、一噌では足拍子が通常の楽と盤渉楽で全く一緒なのですが、森田では通常と盤渉で足拍子も異なる箇所がありました。

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中々難しい”森田流盤渉楽”ですが、この機会に一噌流盤渉楽と同時に身に付けるようにしたいと思います。

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帰り際に、「汐入大橋」のたもとでこんな光景を見かけました。


桜が咲いていたのです。

見たところソメイヨシノに見えましたが、いくらなんでも開花が早過ぎます。

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今年の暖冬の影響はここまで極端なのか…

と暗い気持ちになりかけましたが、調べてみたら別の品種なのでした。

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「大寒桜(オオカンザクラ)」という種類で、寒緋桜と大島桜の交雑種だそうです。

ちょっと安心いたしました。

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ソメイヨシノがこのように綺麗に開花する頃には、新型肺炎が何とか沈静化していることを祈るばかりです。

第65回同明会に出演して参りました

今日は京都観世会館にて、京都の御囃子方主催の「同明会」に出演して参りました。

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今回はシテ方五流が揃っての、舞囃子を中心とした舞台でした。

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曲の位取りや、舞の種類や寸法、またシテが謡う箇所などが流儀によって異なるということは、頭ではわかっています。

しかし、喜多流の舞囃子「三輪」などを拝見すると、途中で何度も驚きがありました。

「ここでシテ謡が来るのか!」

というように宝生流との違いに驚くことがある一方で、

「神楽」のいわゆる”直り”の後が宝生流とほぼ同じ位取りだったことに逆に驚いたりしました。

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大変勉強になる舞台でした。

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今日の京都観世会館はお客様も多く、普段と変わらない様子に見えました。

しかしこの数日で、延期や中止になった舞台の話をいくつか聞くようになりました。

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感染拡大の事態は急には改善されそうにありません。

皆様の健康を第一に考えて、また自分自身が感染を拡大させるようなことが無いように、適切な判断をしつつ行動したいと思っております。

隙間花壇〜応援したい花々〜

今日は朝から渋谷のセルリアン能楽堂にて「尚月会」の申合でした。

「尚月会」は七葉会の仲間である東川尚史君のお社中会で、今回が5周年記念になるそうで誠におめでたいことです。

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舞囃子がたくさん出て、京都女子大宝生会OGでもある奥様も、舞囃子「船弁慶」で元気一杯に長刀を振り回していました。

日曜日の本番は、仕舞や素謡も多く出るので更に賑やかな舞台になることでしょう。

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その申合への行き掛けに「隙間花壇」をのぞいてみると、隙間花壇では今年初めてとなる「梅」が開花していました。


隙間花壇は陽の当たる時間が限られているので、開花の時期が遅く、枝振りも小さめな梅です。

しかしその分、懸命に咲いているように見えて応援したくなるのです。

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難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花

という、能「難波」のシテ王仁の詠んだ有名な歌が思い出されました。

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そして今年の隙間花壇で応援したいと言えば「ツツジ」です。


前回見た時よりも、若い芽が着実に育っていました。

この分ならば2年ぶりの「ツツジの花」が見られそうです。

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能「難波」の中には、「梅は春になるとどの花よりも1番早く咲くので、”花の兄”とも言われる」という謡も出てきます。

隙間花壇においても、”花の兄”である梅がいち早く咲いてくれた訳です。

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その梅を皮切りにして、今年もこれから様々な花たちが「隙間」を彩っていくことでしょう。

松本城本丸御殿に能舞台が…

昨日の松本稽古で、ある会員さんがとても興味深いものを見せてくださいました。

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松本城の古い絵図がたくさん載っている図録です。

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その中の1枚、今から300年程前の江戸時代の絵図は松本城の「本丸御殿」の見取り図でした。

そしてその見取り図を詳細に見ていくと、なんとどうやら当時の松本城本丸御殿には「能舞台」があったようなのです。

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と言っても「能舞台」という記述はどこにもありません。

しかし、「大広間」と「次の間」という広いスペースがあり、そのすぐ隣に「鏡の間」という小部屋が描かれてあったのです。

更に「鏡の間」の隣には「楽師の間」という部屋も。

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鏡の間から大広間までは、長い廊下で繋がっています。

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つまり恐らくは、「大広間」の畳を一部剥がすと、板の間の「能舞台」が出現したのだと思われるのです。

そして廊下が”橋掛り”に、次の間が”見所”になったのではないでしょうか。

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江戸時代の一時期、松本城では確かに能楽が演じられていたのです。

流儀は何流だったのか、どの程度の規模でどんな曲が演じられたのか…

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想像するととてもわくわくします。

古文書などに資料が残っていないか、何とか調べてみたいものです。