能楽師としての着付け方

今日は午前中の五雲会申合の後に、午後から夜まで江古田稽古でした。

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江古田稽古場では、来春に東京藝術大学を受験する高校3年生の男の子が稽古に励んでいます。

先日芸大邦楽科の実技試験の課題曲が発表され、今日はそのうちの仕舞「嵐山」と謡「羽衣」を稽古しました。

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それが終わると更に、紋付袴の着付けを稽古しました。

芸大の実技試験では、紋付袴を自分1人で着られないといけないのです。

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とてもぎこちない手つきで帯を締めている彼を見ていて、20数年前に芸大受験を控えた頃の自分を思い出しました。

私は京大宝生会では一応自分で着付けしておりましたが、それは紐を2本使ったりした「素人向け」の着付け方だったのです。

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当時楽屋に入れていただいていた七宝会で、能楽師としての正しい着付けと、紋付袴を畳んで纏める方法を先輩達から教わりました。

着付けはとにかく最短の時間で、綺麗に着る方法です。

畳んで仕舞うやり方も、紋付袴など一揃いをコンパクトにしかも皺にならないで、素早く仕舞えるという優れた方法でした。

「下っ端は、装束運んだりして最後に着替えを始めて、尚且つ先輩達よりも早く着替え終わって仕事にかからないといけないのだ」と言われ、家で毎日着付けを稽古したものです。

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江古田稽古場の彼も、ここから先ずは受験までの4ヶ月ちょっとの期間、毎日のように着付けと、畳んで仕舞うやり方を稽古してほしいと思います。

平成30年松本澤風会

来たる10月21日の日曜日に、松本郊外の美ヶ原温泉の旅館「月の静香」にて、「平成30年松本澤風会」が開催されます。

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実はこの会は「第○回」という回数が曖昧なのです。

最初に開催したのが2011年3月だったのですが、直前に東日本大地震がおきてしまい、参加人数が半分ほどになってしまいました。

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以来開催時期も1月、5月、10月、11月などと試行錯誤を重ねました。

1月は寒さが非常に厳しく、11月開催の時にも雪が降って大変でした。

また10月初めの澤風会京都大会の日程との兼ね合いなどもあり、今回はこの日取りになったのです。

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松本澤風会のメンバーを中心に、幸流小鼓の住駒充彦さんの会や、金春流太鼓を習っている方々なども参加されて、素謡「鵺」、舞囃子「高砂」、「箙」、「班女」、「野守」などを始めとして仕舞、独調、独鼓などバラエティに富んだ番組構成になっております。

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松本澤風会の特徴のひとつとして、「会員さんの大半が現役でバリバリ仕事をされている」ということがあります。

また主婦の方も多く、皆さん仕事や家庭のことで本当にお忙しいのです。

その中で何とか毎年松本澤風会を開催させていただいて、松本の皆さんと全国各地から応援にいらしてくださる皆様には心より感謝申し上げます。

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松本市内からは若干離れておりますが、どうか多くの方に御覧いただければと思います。

よろしくお願いいたします。

“うしびて”?

今日は松本稽古からの帰りに、松本駅前にある美味しい鰻屋さん「山勢」で昼ごはんを食べました。

松本城薪能前座の時に、初舞台仕舞「鶴亀」を見事に舞われた会員さんがなさっているお店です。

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ここではいつも鰻重の前に、季節の美味しい物を一品出してくださり、それがまた楽しみでもあるのです。

今回は”きのこと菊の花のお浸し”というようなものでした。

出された時に「これは◯△×☆という名前のきのこです」と言われ、元々耳があまり良くないので「上手く聞き取れなかったなあ…」と思いながら一口食べてみました。

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外見は黒っぽくてゴツゴツした印象ですが、柔らかくて適度な歯ごたえもあり、風味もしっかりとあるとても美味しいきのこでした。

やはり名前を知りたいと思い、「あの〜すみません、これは何というきのこでしたっけ?」と尋ねてみました。

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「うしびて、という名前です。由来はわからないのですが、この辺の人はそう呼んでるみたいです。」

なるほど、「うしびて」。

不思議な名前です。

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鰻が焼きあがるまでに携帯で検索してみると、ちゃんと出て来ました。

「牛額」が訛って「うしびて」になったようです。牛の額は確かに黒くてゴツゴツしていそうです。

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そしていよいよ出てきた鰻重に添えられたお吸い物の具が、また普段見慣れない菜っ葉でした。

「このお吸い物には何が入っているのですか?」

「ああ、これは”きんじそう”と言います。金沢では良く食べるみたいですよ。」

これもすぐ調べると、「金時草」という字でした。

少しぬめりのある食感で、独特な風味があってこれまた美味しかったです。

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美味しい鰻とともに、初めて食べる「うしびて」や「金時草」もいただいて、幸せな昼食でした。

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店主さん「来年は、もう少し早い時期に”こうたけ”というきのこを是非食べていただきたいです。僕は”松茸”よりも美味しいと思いますよ。ただ出回る時期が短いので、運が良くないと食べられないんです。」

なんと、それでは来年の10月初めくらいに何とか”こうたけ”を食べてみたいと思います。

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完全にグルメリポートになってしまいましたが、今回はこれにて。

最後に”四柱神社”の色づき始めた紅葉です。

松本の秋

澤風会京都大会が終わってから1週間。

あれから夏は足早に遠ざかって、すっかり秋の気配になりました。

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松本という土地は、私が次の季節をいち早く感じるところです。

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今日の松本稽古で、私は今シーズン初めて長袖シャツを着ていきました。

極端な暑がりの私は、昨日まで頑固に真夏と同じ薄着で過ごしてきたのです。

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月曜日の松本稽古は夕方に始まって、大抵終わるのが20時半頃です。

稽古を終えて公民館の外に出ると、空気は秋というより最早冬の走りのようで、冴えた空には星が明るく光っておりました。

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今週末の21日には「松本澤風会」を開催いたしますが、その頃にはまた一層秋が深まっていると思われます。

松本に来られる皆さまは、どうかくれぐれも暖かい格好でいらしてくださいませ。

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先ほど稽古の終わりに、会員さんから”松茸ご飯のおにぎり”を頂戴しました。

今年初めての松茸、宿で美味しくいただきました。御馳走様でした。

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今日は肌でも味覚でも、秋の深まりを感じた松本稽古でした。

お休みの理由は…

澤風会京都大会の後片付けなども一段落して、昨日は田町稽古、今日は江古田稽古と、通常モードの稽古日が続きました。

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田町、江古田ともにいつもの会員さん達がたくさんいらしてくださいましたが、何人かお休みの方もおられました。

たまたまなのでしょうが、そのお休みの理由がなかなか多彩でした。

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①お勤めの高校の文化祭の準備でお休み。(美術の先生なので、文化祭では何かと忙しそうです。)

②ご夫婦で四国のお遍路さんにいらしてお休み。(10年かけての巡礼の、最後の行程だそうです)

③澤風会京都大会でお疲れになって、熱が出てしまったのでお休み。(ご無理をさせてしまいすみませんでした…)

④そして最後はボイストレーナー兼ボーカリストの方で、お休みメールには「昨日ライブで弾け切ってしまい、体調が優れません。」とありました。(弾けるライブ、拝見したかったです。)

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澤風会には実にバラエティに富んだ人々が集っているのだなあと再認識いたしました。

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また夕方やって来た高校生は、珍しくジャージ姿でした。

仕舞「野守」をやるから、スポーティな格好にしたのかな?と思って聞いてみたところ、

「今日は高校の体育祭で、終わって直接来たのです!部活対抗リレーでは、バスケ部に次いで2位でした!」

因みにその子は演劇部です。演劇部すごい走力なのですね。

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というわけで、来る会員さんたちもまた色々と面白い人ばかりなのでした。

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昨日も今日も充実した稽古になりました。

今回お休みされた皆さん、特に②と④の方には、次回そのお休みのことを聞くのが楽しみです。

舞台に漂う”熱気”

日曜日の澤風会京都大会では、今回も舞台上において、出演者の皆様の”熱気”を強く感じました。

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充分に稽古を重ねた人の本番の舞台では、独特の熱が発散されている気がします。

自らの気力、体力、或いは時間を、相当な割合で能や仕舞や謡に注いで来られた人は、やはり並々ならぬ覚悟で本番に臨まれるのでしょう。

その”気迫”や”気合”というようなものが目に見えない熱になって放射されて、見所や地謡にまで届いていくのだと思います。

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例えば能「小袖曽我」の十郎五郎兄弟の火を噴くような強い演技。

曽我兄弟の母の愛情を込めた怒りの謡。

初めての舞囃子「玉葛」のシテの、究極の緊張感。

無本の素謡「熊野」に臨む京大宝生会OBOGの若々しい矜持。

小学生ながら物怖じせずにクールに舞台を勤めた男の子の弾けるような自信。

などなど…

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それぞれ種類は異なりますが、今回の澤風会の全ての舞台には”熱気”が漂っていました。

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私の仕事は、ある視点から見ると「誰かの潜在的なパワーを、稽古によって”熱の込もった舞や謡”に変換して、それを舞台上で発散させるためのお手伝いをする」

とも言えるかもしれません。

そしてその熱気の発散を澤風会の舞台で味わうのが、私にとっては無上の幸せなのです。

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また次の舞台に向けて、皆様のパワーをいただきながら稽古して参りたいと思います。

会員の皆様どうかよろしくお願いいたします。

大山崎ウォーキングから京大稽古へ

昨日の第13回澤風会京都大会はおかげさまで無事に終了いたしました。

お世話になりました先生方、会員の皆様、またたくさんいらしていただいたお客様方に心より御礼申し上げます。

どうもありがとうございました。

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今朝は眠い目をこすりながら阪急電車に乗って、大山崎に向かうました。

普段は稽古で降りる大山崎駅から出発して、今日は大山崎の名所ウォーキングだったのです。

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千利休が建てた国宝の茶室「待庵」の精巧なレプリカや、様々な知恵と趣向を凝らした名建築である「聴竹居」などを、大山崎ふるさとガイドの会のメンバーでもある会員の方に案内していただき、非常に有意義な時間を過ごしました。

「聴竹居」のことはまた改めて書きたいと思います。

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その後夕方に京大宝生会の稽古に行き、21時まできっちり稽古して、これから最終新幹線で東京に戻ります。

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流石に少々眠いです。

明日から、働きながらぼちぼち疲れを取って参りたいと思います。

第13回澤風会京都大会無事終了いたしました

本日おかげさまで第13回澤風会京都大会が無事に終了いたしました。

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終了後の宴会で、澤風会の舞台で頑張られた皆さまと楽しくお話ししたのですが、早速「次の謡は○○をお願いします!」

とか、「次の仕舞は△△でそれが終わったら次は××でお願いします!」

などと言って来られる方がいらして嬉しく思いました。

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ただ、今夜の私の記憶は明朝まで保たない恐れが大なので、また次の稽古からぼちぼち再スタートさせていただければと思います。

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本日お世話になりました全ての皆様に心より御礼申し上げます。

今回もどうもありがとうございました。

今日は七宝会、明日は澤風会

今日は香里能楽堂にて、「七宝会」に出演して参りました。

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朝四条烏丸の宿を出ると、粒の小さな雨がサッと降ってはまた止むのを繰り返しています。

空は灰色の雲と、その合間から青空が覗くという不思議なまだら模様。

空気は湿気をたっぷりと含んでムッと暑い感じです。

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この天候は、沖縄でよく体感したものと同じです。

やはり台風25号が熱帯の空気を連れて来たのでしょう。

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そして香里能楽堂で午前中に能「班女」の申合が終わる頃には、雨が上がって今度は強烈な陽射しが差して来ました。

気温が上昇してまるで夏に逆戻りしたようです。

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その暑さの中、舞囃子「熊坂」の地謡を謡い、能「班女」の後見を勤め、さらに能「舎利」の地謡も謡いました。

「熊坂」と「舎利」はどちらもパワーが重要な”体育会系”の曲です。

ゴリゴリと力一杯謡ったら、何かスポーツをした後のように疲労してしまいました。。

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今日は早めに休んで、明日はいよいよ「第13回澤風会京都大会」です。

大江能楽堂にて午前11時始曲です。

能「小袖曽我」、舞囃子「忠度」「玉葛」「草紙洗」を始め素謡、仕舞など盛りだくさんの番組です。

ギリギリまで頑張って稽古して参りました。

その成果を思う存分発揮していただきたいと思います。

皆さまどうか応援にいらしてくださいませ。

よろしくお願いいたします。

“秋”のつく食べ物

昨日は大江能楽堂をお借りしての稽古の後に、夜は芦屋で稽古いたしました。

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21時頃に終えて京都の宿に戻るともう22時半を過ぎていました。

まさに空腹のピークです。

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烏丸錦西入ルの目当てのお店に急ぎました。

ビールと枝豆を頼んで、改めてゆっくりメニューを見ると秋の食べ物が沢山並んでいます。

とりあえず”秋刀魚の炙り”と”秋茄子の揚げ出し”を注文。

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秋刀魚が驚きの美味しさで、至福の時間を過ごしました。

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その季節の名前がついた食べ物を食べると、何か季節そのものを味わったような幸せな気持ちになります。

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充分に秋の栄養をいただいて、今日はまた昼間に澤風会の能「小袖曽我」と舞囃子「玉葛」などの仕上げの稽古をいたしました。

そして夜には香里能楽堂にて、明日開催の「七宝会」の申合があり、能「舎利」の地謡を頑張って参りました。

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今は全部無事に終わって帰りの京阪電車です。

またもや腹ペコなので、今日もどこかで秋の食べ物を味わいたいと思っております。