小さなベテランさん

今日は松本稽古に行って参りました。

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久しぶりに小学1年の男の子がお母さんと一緒に来てくれました。

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親子で仕舞「安宅」を稽古したのですが、お母さんの方は、

「実は昨日の太鼓の稽古で足を捻挫しまして…」

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なんと、それはお気の毒です。。

正座で痺れた状態で立ち上がろうとすると、転んで捻挫したり、ひどい時は骨折をすることもあるのです。

爪先が返るまでは決して無理に立ち上がらないことをおすすめいたします。

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それでもお母さんは「安宅」の座る型を立ったままでやるようにして、普通に稽古してくださいました。

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そして男の子の稽古になりました。

昨年末以来で本当に久々の稽古です。

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しかし私が「シテ謡は覚えてるかな?一緒に…」

謡おうか?と言おうとすると、男の子は「出来る!」と言って、

「鳴るは〜ンン、滝の水〜❗️」

と正確に謡ってくれました。これには驚きました。

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思えば、彼が稽古を始めたのは幼稚園の頃で、既に稽古歴4年目になるのです。

私が思うよりもずっと成長していて、謡も型も基礎がしっかりと身についていたのですね。

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男の子「今まで何回くらい舞台に出たかなぁ?」

私「うーん、年2回ペースだから、もう7回は出てるだろうね。」

すると彼は「そのくらいになるね❗️」とちょっと誇らしげな笑顔になりました。

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最近稽古を始めたばかりの大人の新人さん達も、この小さなベテランさんに触発されて張り切って稽古されていました。

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そしてなんと今日もまた新しい方がいらして、早速稽古を始めてくださいました。

ベテランさんと新人さん、どちらも非常に勢の感じられた今日の松本稽古でした。

続・レッド扇!

昨日は午前中に国立能楽堂にて「囃子科協議会」の能「羽衣 盤渉」の申合があり、終わって午後から松本稽古に移動しました。

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松本駅を出ると、昨夜降ったという雪がまだ残っています。


なんとなく「なごり雪」という言葉が思い浮かぶ風景でした。

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稽古が始まって少しすると、先日ブログで紹介したサッカー少年がやって来てくれました。

本格的に稽古を始めてくれるそうで、早くも「稽古扇」が欲しいとメールがあったので持って参りました。

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宝生流の稽古扇は、白地に五雲模様で雲の色が”赤、青、緑、紫”と4色あります。

そして彼の希望は”赤い五雲”だったのです。

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2年ほど前のブログで、京都の男の子がやはり”赤”の稽古扇を希望して、おそらく戦隊ヒーローの主役が「レッド」だからなのでは、と書きました。

やはり彼もそうなのでしょうか。

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そして稽古扇と一緒に”扇袋”も適当に見繕って欲しいと頼まれておりました。

こちらも”レッド”が良いのかな、とも思いましたが、ちょっと考えて松本にあるJリーグのチーム「松本山雅FC」のチームカラーである”グリーン”の袋にしてみました。

扇袋を見たサッカー少年は、幸いとても喜んでくれました。

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そして夜になり、今度は先日見学にいらした「山岳カメラマン」の男性がまた来てくださり、こちらも本格的に稽古を始めてくださるとのことでした。

稽古の最後に「稽古扇が欲しいです」と言われたので、五雲模様の4色の説明をして「何色にしましょうか?」と尋ねると…

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「そうですね…じゃあ、赤で!」

…。

どうやら戦隊ヒーローとか関係無く、赤が人気のようなのです。ちょっと驚きました。

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昨日はその山岳カメラマンの方と色々お話しをしたのですが、中でも興味深い話がありました。

その方は「イグルー」と呼ばれる”雪の家”を山の中で作る技術にかけては日本一らしいのです。

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実は昔、冬の京都北山に「イグルー」を作りに行って途中であっさり挫折した経験があります。。

いつか山岳カメラマンさんと雪山に行って、イグルー作りを体験したいという新たな夢が生まれた昨日の松本稽古だったのでした。

変わるための力、変わらないための力

あの震災から8年が経ちました。時は流れていきます。

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時が流れて変わっていくものもあれば、変わらない事もあります。

一昨日の澤風会郁雲会の時のこと。

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朝に仕舞「大江山」を舞った男の子は、この4月から中学生になるそうです。

私が彼に初めて会ったのは、彼が0歳の時。つまり生まれて間もない頃でした。

最初はお姉さんの稽古についてくるだけ、そしてやがて自分も稽古を始めて、成長と共に着実に舞台を重ねて来ました。

足の運びや仕舞の型が今回の「大江山」で随分と良くなって、「本当に成長したなあ…」と地を謡いながらしみじみと嬉しい気持ちで見ていました。

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そのお姉さんの方は、幼稚園の時に宝生能楽堂の謡曲仕舞教室に入門してからずっと熱心に稽古を続けて、この春にはもう高校3年生になります。

今回の澤風会では、ほぼ同時期に稽古を始めたもう一人の高校生の女の子とペアで仕舞を舞いました。「船弁慶キリ」と「野守」という大人でも難しい曲を、高校生の2人は元気良く伸び伸びと舞ってくれて、素晴らしい舞台でした。

2人とも内面的にも非常にしっかりして来て、もう間もなく巣立って社会に出て行くのだろうと、こちらも何となくしみじみと感慨深い気持ちで地を謡っておりました。

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一方で今回仕舞「葵上」を舞われた澤風会最高齢91歳の方は、やはり宝生能楽堂での「ジパング倶楽部謡曲教室」に入門されてから10数年、驚くべきことに稽古はただの一度もお休みにならず皆勤で、お1人で電車を乗り継いで江古田まで来てくださっています。

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見た目も初めてお会いした時から少しも変わらず、本当に若々しくお元気なのです。

「ずっと変わらずに稽古を続けて、舞台に立つ」というその姿勢、というよりその存在そのものが、全ての会員さん達の目標になっています。

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時の流れとともに変わっていく人と、変わらずにいる人。

両者は一見正反対に思えます。

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しかし、上記の子供達と最高齢の方には、何故か共通した”力強さ”のようなものを感じてしまうのです。

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「日々の様々な困難に負けずに乗り越えて前進していく」という点において、実は両者は同質な力を持っているのではないかと、一昨日の舞台を見て思ったのでした。

澤風会、月並能、そしてその後…

昨日はおかげさまで澤風会郁雲会大会を無事に終えることが出来ました。

お世話になりました皆様、改めまして誠にありがとうございました。

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明けて今日は水道橋宝生能楽堂にて「月並能」が開催されました。

私は能「春日龍神」の地謡でした。

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無事に謡い終わって用事でロビーに行くと、昨日出演してくださった京大OBの先輩と、やはり昨日出演してくれた京大宝生会現役の何人かに会いました。

現役達は、来たる5月25日(土)に京都大江能楽堂にて開催の「第120回記念京都宝生流学生能楽連盟自演会」において舞囃子「春日龍神」を出すことになっているのです。

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澤風会の後に1泊して、能「春日龍神」を観て勉強してから京都に帰るということなのでしょう。

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私は「月並能」の終了後に、3月24日開催の「別会能」で演じられる能「安宅 延年之舞」の稽古に参加いたしました。

ツレの”同行山伏”を勤めることになっているのです。

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昨日の会のことをゆっくり思い出してブログに書いたりしたいのですが、早くも次の舞台に向けて私も周りも動き出しています。

また少し落ち着いてから昨日の模様を書いてみたいと思います。

第6回東京澤風会・郁雲会大会御礼

本日おかげさまで「第6回東京澤風会・郁雲会大会」が無事に終了いたしました。

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朝からお世話になりました先生方、京都や松本などご遠方から来てくださった方々、いつもながら大勢でご参加くださいました京大宝生OB会の先輩方、そして郁雲会と東京澤風会の会員の皆様誠にありがとうございました。

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また今回も本当に沢山のお客様にいらしていただき、見所が終日にわたり賑やかで有り難い限りでした。

渋谷セルリアン能楽堂は久しぶりに使わせていただきましたが、スタッフの皆様に何かと親切にしていただいて、運営をとてもスムーズに進めることが出来ました。

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今は御礼の言葉だけが浮かんで参ります。

今日の舞台を終えられた会員の皆様は、先ずはゆっくりお休みくださいませ。

そしてまた疲れが取れましたら、次の舞台に向けて動き出しましょう。

まだこれから遠く京都や松本まで帰られる皆さんは、どうかくれぐれもお気をつけて。

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全ての皆様のおかげさまで、今回も熱量のある舞台になったと感じております。

今日の舞台で生まれた熱がまた次の舞台に繋がっていくように、明日からまた頑張って参りたいと思います。

いよいよ明日。

澤風会郁雲会の前日です。

明日に向けての準備は一応全て終わったと思います。

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毎度思いますが、会に向けての稽古を始めてからここまで長い道のりでした。たくさんのことがありました。

会員の皆様にも、稽古の出来具合や体調や、お仕事との兼ね合いなど諸々の事柄を乗り越えて明日の本番を迎えられることと存じます。

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それらの努力や苦労や色々を飲み込んだ明日の舞台が良い結果になるように、全力で頑張りたいと思います。

皆様どうかよろしくお願いいたします。

もう一踏ん張り

昨日も書きましたように、今日は澤風会郁雲会本番前の最後の江古田稽古でした。

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皆さん殆ど完成しているのですが、どこか一箇所くらいは「あれ?」と思うところがあるものです。

その部分に的を絞って直したつもりですので、あと2日で修正していただければ、より良い舞台になると思います。

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今日は私自身は出来るだけ動かず、本番を想定して見ているだけの時間が多かったはずなのに、何故かいつもよりも体力気力を使ったような気がします。。

明日も午後に舞囃子中心の稽古をして、それが本当に本番前最後の稽古になります。

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明日稽古の方はもう一踏ん張りよろしくお願いいたします。

そうでない方々はどうか体調を整えて、明後日万全のコンディションでセルリアン能楽堂でお会いいたしましょう。

春の風は空に満ちて…

今日は二十四節気のひとつ「啓蟄」だそうです。

最近の東京では、冬眠から目覚めた動物や虫などに出会うことは中々ありませんが、あたりの空気は確実に春を感じさせます。

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春になると頭に浮かぶ好きな謡があります。能「嵐山」の一節に「春の風は空に満ちて 春の風は空に満ちて」というリフレインの部分があるのです。

何となく現代的な言い回して、しかもあえて繰り返しているのが如何にも「春が辺りに満ちている」と感じさせて好きなのです。

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実際にはまだ日が暮れると寒いくらいで、冬と春がせめぎ合っている所だと思われます。

しかし、次の二十四節気である「春分」までには完全に”春の風が空に満ちる”のでしょう。

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…その前に、先ずは土曜日に迫った「澤風会郁雲会」です。

今日は渋谷で当日のお菓子や飲み物などを予め買い物して、セルリアン能楽堂に預けて参りました。

宴会の座席表を作成して、夕方からは大会前最後の田町稽古でした。

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そして明日は大会前最後の江古田稽古です。

ギリギリまで稽古を頑張って良い舞台にして、良い春を迎えられたらと願っております。

セルリアン能楽堂での申合

先ほど澤風会郁雲会の申合が終わりました。

舞囃子9番を約3時間かけての申合でした。

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今回は会場が渋谷の「東急セルリアンタワー能楽堂」です。

随分前に使ったことがありますが、殆どの会員さんにとっては初めて上がるか、経験の少ない舞台になります。

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申合前に時間の許す限り稽古したのですが、やはり場所取りがなかなか難しいと感じられました。

水道橋宝生能楽堂や京都大江能楽堂ならば、「ここの板が真ん中になります」ということまで言えるのですが、今回は私自身がセルリアン舞台の細かい特徴を把握しながらの申合になりました。

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しかしその中で皆様、事前の短い稽古の経験を活かして早速場所取りの修正などしておられて流石だと思いました。

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まだ本番までに1〜2回の稽古があります。

今日の申合を踏まえて微調整をすれば、本番に向けて万全の仕上がりになると思います。

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本番まであと5日ほど、皆さまもうひと頑張りどうかよろしくお願いいたします。

仕舞や舞囃子は能の一部だということ

来たる3月9日に開催の「第6回東京澤風会・郁雲会大会」では、京都から京大宝生会の現役と若手OBOGがたくさん出演してくれます。

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その中で、若手OBの舞囃子「東北」と現役の仕舞「国栖」は、たまたま先週の七宝会で出た能「東北」と能「国栖」と同じ曲目です。

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舞囃子「東北」を舞う若手OBと、仕舞「国栖」を舞う現役達は、共に七宝会を観に来てくれました。

そして昨日は昼間の紫明荘組稽古と夜の京大稽古で、その「東北」と「国栖」の稽古をしたのです。

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まず紫明荘稽古での舞囃子「東北」を見て驚きました。

前回とは全く次元が違う程良くなっていたのです。

本三番目物の位になっていました。

待ち合いの部屋でお茶を飲んで話していた会員さん達の目が、いつか自然に「東北」に吸い寄せられていき、静けさの中で稽古が進んでいきました。

そして稽古が終わるとまた自然に拍手が起こりました。

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シテである若手OBのT君は、七宝会で能「東北」を観て、その位取りを理解して自分の舞囃子に反映させたのでしょう。

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その後夕方に京大稽古に移動して、今度は仕舞「国栖」でまた驚きました。

シテの謡の声が何だか前回よりも格段に大きくなって、全体的に勢いが増していたのです。

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これもおそらく七宝会で能「国栖」を観たイメージを謡と舞に投影させたのでしょう。

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仕舞や舞囃子だけを稽古しても、もちろん上達はします。

しかし、それらは元々はある能の一部なのです。

その元になっている能を観て、全体像を把握してから稽古するのはやはり大切なことなのだと、昨日の「東北」と「国栖」の稽古で改めて思ったのでした。