あの震災から8年が経ちました。時は流れていきます。
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時が流れて変わっていくものもあれば、変わらない事もあります。
一昨日の澤風会郁雲会の時のこと。
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朝に仕舞「大江山」を舞った男の子は、この4月から中学生になるそうです。
私が彼に初めて会ったのは、彼が0歳の時。つまり生まれて間もない頃でした。
最初はお姉さんの稽古についてくるだけ、そしてやがて自分も稽古を始めて、成長と共に着実に舞台を重ねて来ました。
足の運びや仕舞の型が今回の「大江山」で随分と良くなって、「本当に成長したなあ…」と地を謡いながらしみじみと嬉しい気持ちで見ていました。
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そのお姉さんの方は、幼稚園の時に宝生能楽堂の謡曲仕舞教室に入門してからずっと熱心に稽古を続けて、この春にはもう高校3年生になります。
今回の澤風会では、ほぼ同時期に稽古を始めたもう一人の高校生の女の子とペアで仕舞を舞いました。「船弁慶キリ」と「野守」という大人でも難しい曲を、高校生の2人は元気良く伸び伸びと舞ってくれて、素晴らしい舞台でした。
2人とも内面的にも非常にしっかりして来て、もう間もなく巣立って社会に出て行くのだろうと、こちらも何となくしみじみと感慨深い気持ちで地を謡っておりました。
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一方で今回仕舞「葵上」を舞われた澤風会最高齢91歳の方は、やはり宝生能楽堂での「ジパング倶楽部謡曲教室」に入門されてから10数年、驚くべきことに稽古はただの一度もお休みにならず皆勤で、お1人で電車を乗り継いで江古田まで来てくださっています。
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見た目も初めてお会いした時から少しも変わらず、本当に若々しくお元気なのです。
「ずっと変わらずに稽古を続けて、舞台に立つ」というその姿勢、というよりその存在そのものが、全ての会員さん達の目標になっています。
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時の流れとともに変わっていく人と、変わらずにいる人。
両者は一見正反対に思えます。
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しかし、上記の子供達と最高齢の方には、何故か共通した”力強さ”のようなものを感じてしまうのです。
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「日々の様々な困難に負けずに乗り越えて前進していく」という点において、実は両者は同質な力を持っているのではないかと、一昨日の舞台を見て思ったのでした。