あっという間に正月三が日が明けてしまいました。
私はまだ少し休みが残っております。
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年末に下町散策をした時のちょっと不思議な出来事を書きたいと思います。
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午後に三ノ輪を出発して、全く行き先を決めずに気の向くまま歩き出しました。
小一時間ほど歩いたところで、
「木母寺」
というお寺の前を通りかかりました。
すると、お寺の名前の下に「梅若塚」と書いてあるのが見えたのです。
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「梅若塚」の存在は知っていましたが、何となく”言問橋”の辺りにあるのかと思っていました。
今いる場所は言問橋よりも随分と北のほうの隅田川沿いになります。
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とにかく境内に入ってみると…
「梅若堂」という小さなお堂があり、その横にひっそりと「梅若塚」がありました。
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小さな塚の横にはやはり小さな柳の木が立っています。
この辺りであの能「隅田川」終盤の慟哭の場面が繰り広げられたのか…
としみじみと思いながら、塚に手を合わせて人気の無い境内を後にしました。
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木母寺を出てすぐのところに綺麗なトイレがありました。
散歩中は綺麗なトイレが中々見つからないものです。ここは寄って行くか、と歩きかけた時のことです…
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私は最近はいつもツイードのジャケットを着ており、ボタンをひとつだけ留めるようにしています。
そのボタンが不意に外れて、ジャケットの前がハラリと開きました。
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「ボタンが取れたのかな?」
と見てみると、ボタンはちゃんと付いています。
なんとなく不思議に思いながらボタンをはめ直してトイレに行って、また先に行こうと歩きかけた時…
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今度はそのボタンがポロリと取れてその場に落ちたのです。
ジャケットは再びハラリと開きました。
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思わず木母寺の梅若塚を振り返っていました。
もしかしたら”梅若丸”が悪戯をしているのでは…
ジャケットのボタンは、丁度子供が手を伸ばして取りやすい高さについているのです。
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その後は何事も起こらずに散歩を再開したのですが、ランダムに歩く先々で、例えば…
“梅若保育園”とか…
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“業平橋”
など、隅田川や在原業平に関わる場所に行き会いました。
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まるで梅若丸に導かれていたような下町散策だったのです。
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今年は何度か能「隅田川」の地謡を謡います。
その折には、またあの「梅若塚」にお参りに行こうかと思っております。