冬の純白、秋の真紅

11月最後の今日は亀岡稽古でした。

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朝に東京から新幹線に乗って、少しウトウトしかけた頃。

「ただ今車窓に富士山の全景がご覧いただけます」

という車内放送が入りました。

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この放送が入るのは富士山が綺麗に見える時です。

眼を開けて右手の車窓を眺めてみました。

すると…

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なんと今日の富士山は、山頂から麓近くまで殆ど白一色になっていたのです。

下半分は、雪というよりもカチコチに氷結しているように見えました。

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これは私が小学生の時に見た、今までの人生で一番綺麗な富士山に近い光景だと思われます。

長年にわたり、もう一度見たいと思っていましたが、ついに夢が叶ったのです。

非常に感動いたしました。

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そしてしみじみと「もう冬が来たのだなぁ」と思いながら亀岡稽古場に到着すると、なんと…

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亀山城址は眼が覚めるような紅色に染まっていたのでした。

特にこの紅葉は、明るい陽射しを浴びて眩いくらいに輝いて見えました。

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富士山の氷雪の純白と、亀岡の紅葉の真紅。

どちらもここ数日の厳しい冷え込みによって生み出された、冬と秋の絶景でした。

様々なお便り

今日は江古田稽古でした。

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夕方にメールが届いていたので、稽古の区切りで確認しました。

先日岩手県の正法寺で「地水火風」の舞台を共にした尺八奏者ラルフ・サミュエルソンさんからのメールでした。

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今成田空港で、間もなくアメリカに帰ること。

そして来年は是非東京で再び「地水火風」の舞台をやりたいということが書いてありました。

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今頃は太平洋上空を飛んでいるであろうラルフさんに、正法寺での御礼と、こちらこそ来年は是非東京で「地水火風」をやりたいという返信をお送りしました。

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昨日はまた別のお便りが読者の方より届きました。

亀岡のことを書いた昨日のブログへのコメントとして届いたお便りです。

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亀岡で毎年フジバカマに飛来する「アサギマダラ」という旅する蝶。

そのアサギマダラを巡る物語が、NHKのラジオドラマとして放送されたという内容でした。

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私の好きな蝶がドラマになったとは、何とかして聴いてみたいと思いました。

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今週は他にも、あまねく会の記事へのコメントも頂戴いたしました。

この場で御礼申し上げます。ありがとうございました。

2019松本の秋景色

昨日は京都から名古屋経由で松本稽古に移動しました。

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台風19号による土砂崩れで、新宿発の特急あずさが暫く運休になってしまったのです。

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名古屋から特急しなので木曽路を辿って松本へ。

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松本はすっかり秋の装いでした。

稽古場近くの「四柱神社」に立ち寄ってみると…

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綺麗な紅葉が始まっていました。

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まだ一部だけの色づきですが、今年初めての紅葉狩になりました。

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おそらく去年紅葉狩に行った山奥の白骨温泉や乗鞍の辺りは、今頃紅葉のピークを迎えているはずです。

あの紅葉の絶景をまた見たいものです。

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松本駅から遠く望む乗鞍岳は、もう雪を被った姿でした。

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そして最近ではハロウィンがすっかり定着して、松本でも其処彼処にカボチャの飾りがありました。

宿の隣のレストランには…

かなり個性的なジャックオーランタンがいました。。

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11月17日の「松本澤風会大会」に向けて、来週も松本稽古に行く予定です。

更に深まり行く秋の風景が見られることでしょう。

陸奥の海の幸・山の幸

今日は朝からラジオ録音に参加しました。

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曲は「融」で、私は地謡でした。

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昼前には録音を終えて、水道橋で能「葵上」の稽古をしてから午後の東北新幹線に乗り込みました。

今日は夕方から仙台稽古だったのです。

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能「融」に出てくる”千賀の塩釜”は、仙台からほど近い場所にあります。

ちょっと足を伸ばせば行けるのですが、今日は葵上の稽古時間を優先しました。

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塩釜には行けませんでしたが、せめてもと思い仙台稽古場に向かう途中にある”市場”を覗いて行くことにしました。

何か秋を感じる陸奥の海山の幸に会いたいと思ったのです。

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先ずは今年は不漁と言われる「秋刀魚」。

私が京大現役の頃は、1匹50円でしたが…。

そういえばまだこの秋に秋刀魚を食べておりません。どこかで食べたいものです。

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シーズン終盤と思われますが、「戻り鰹」も沢山並んでいました。

鰹はタタキも刺身も好きなので、みているとお腹空いてきました。。

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山の幸も色々ありました。

毎年見る「アケビ」や「栗」。

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「ナメコ」に「アミタケ」。

ナメコはかなり大振りです。

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そして天然物と思われる見事な「ヒラタケ」の隣には、なんと「原木舞茸」が。

木の根元に生えているのを見つけると、嬉しさに舞い踊ってしまうのでその名がついた「舞茸」。

市場で見つけたので舞い踊る訳にはいきませんでしたが、こちらも出来ることなら食べてみたいなぁと思いました。。

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秋刀魚に戻り鰹、ナメコとヒラタケに原木舞茸。これ全部買うと3500円です。

舞茸を諦めれば2000円。

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買って帰って、秋の夜長に仲間たちと酒宴でも開けたら良いだろうな…

と頭の中で楽しい想像をしつつ、気持ちを切り替えて仙台稽古場へと急いだのでした。

2件のコメント

遠い国を想う日

昨日は松本稽古で、今日は松本から亀岡に移動しての稽古でした。

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長野県から電車を乗り継いで亀岡へ。

その道すがら、私は「亀岡で”アサギマダラ”に会えるだろうか…」と考えていました。

秋に日本の高原地帯を飛び立って、遠い遠い南の島まで渡っていく蝶です。

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そしてアサギマダラは渡りの途中で「フジバカマ」という花に立ち寄るのです。

亀岡稽古場には秋になると「フジバカマ」がたくさん咲き、毎年アサギマダラがやって来ます。

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しかし、今年は10月の亀岡稽古日が例年より少し遅くなってしまいました。

アサギマダラはまだいてくれるだろうか…

と淡い望みをいだきつつ亀岡に到着しました。

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雨が上がったばかりの亀岡稽古場には、「フジバカマ」がやはりたくさん咲いていました。

しかし、あの鮮やかな翅の「アサギマダラ」は見当たりません。

違う場所のフジバカマも探してみましたが…

やはりアサギマダラは見つかりませんでした。

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雨上がりなのでどこかに隠れているのか、それともすでに南を目指して旅立ってしまったのか…

懐かしい彼らとの一年ぶりの再会は叶いませんでした。

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昨夜は松本の宿で、遠い国に住む古い友人と久方ぶりに電話で話しをしました。

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友人から悲しい報せのメールが日曜日にあり、慌てて無料通話の出来るアプリに登録して電話したのです。

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辛い事があった友人ですが、電話では以前と変わらない穏やかな声でした。

慰める適切な言葉も見つからず、しばし静かに昔の話をして電話を切りました。

友人は少し気が晴れたと言ってくれました。

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一方で、昨日のブログに書いた、京都とプラハを撮影している写真家の方から素敵な写真が送られて来ました。

“プラハの修道院のビール”だそうです。

世界一と言われるチェコのビールを、いつか現地でこの写真のように飲んでみたいものです。

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遠い国へ旅するアサギマダラ。

遠い国の古い友人。

遠い国の素敵な写真。

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昨日今日は、広い世界にしみじみと想いを馳せる日になりました。

10月に”夏バテ”とは…

昨日の青森稽古では、さすがに秋の涼しさを感じられるだろうと期待しておりました。

むしろちょっと肌寒いかな…と思っていたくらいです。

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ところが、夜は18〜19℃くらいで少し涼しいと思いましたが、今朝青森駅前の宿を出るとムッとして暑い陽気だったのです。

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10月に入った青森でこの暑さか…

とややげっそりしながら新幹線で東京に戻ると、当然ながら青森よりも一層高い気温でした。

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一体いつまでこの暑さは続くのだろう…と更にげっそりしながらも江古田の個人稽古に向かい、続けて夜の田町稽古に移動しました。

稽古を終えると、なんだか”夏バテ”のような状態になっていました。。

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明日はまた小学校巡回公演で、能「黒塚」のシテを勤めます。

今日よりも少し気温が低い天気予報ですが、なんとかその通りになってほしいものです。

静御前と記念撮影…!

去年長野県の小学校を回った「巡回公演」に参加しましたが、今年もまた参加することになりました。

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今日はその初日で、埼玉県栗橋の小学校で能「黒塚」のシテを勤めました。

元気一杯の小学生600人のパワーに圧倒されながらも、なんとか無事に舞台を終えることができました。

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そして今日の楽屋で、ちょっと驚くことを聞いたのです。

金野泰大君が「行き掛けに”静御前のお墓”にお参りしてきました!」

と話していたのです。

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「え、栗橋に静御前のお墓があるの⁈」

と聞くと、

金野君「はい、この辺りで亡くなったそうで、栗橋駅のすぐ近くにお墓がありました!」

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それは是非にも行ってみなければと、公演が終わってから何人かの若手楽師とお墓参りに行きました。

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確かに栗橋駅からほど近い所に「静御前の墓」の看板が立っています。

例によってお墓そのものの撮影は遠慮しますが、静御前らしい慎ましやかな墓碑でした。

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ただ、その横には少々派手な立て看が…

僭越ながら静御前と記念撮影を。

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町には下のようなポスターがそこら中に貼ってあります。

“静御前パレード”、”合唱静を偲ぶ”など、色々とても魅力的な催しで是非見に来たいと思いました。

しかし残念ながら、今年の10月19日は五雲会で能「葵上」のシテを勤める日なのです。。

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来年以降、いつかなんとしても「静御前まつり」に来てみたいものです。

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今日はこれから「自治医科大学能楽部」の稽古に行って参ります。

そして明日はまた違う学校での「巡回公演」で能「黒塚」のシテを勤めます。

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色々書くことは盛りだくさんですが、今日はこれにて。

電車で快眠

昨日の木曜日は、午前中に宝生能楽堂にて「五雲会」申合。その後江古田に移動して夜まで稽古しました。

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そして今日金曜日は松本稽古でした。

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普段は働きながら疲れを癒す生活に慣れておりますが、今回の竹生島合宿では2日間非常によく歩いてよく稽古したので、まだ身体の芯に疲れが残っており、今朝は起きるのが少々辛く感じました。。

そんな身体を奮い立たせて新宿駅に移動して、”特急あずさ”に乗り込みました。

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特急あずさでは、道中の景色を眺めながら本など読んだり、謡を覚えたりするのが常です。

しかし今日は、席に座るとすぐに猛烈に眠くなってきました。。

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そして気がつくと寝ている(?)状態だったようで、夢うつつで「次は岡谷…」「次は塩尻…」と聞いて、

「間も無く終点松本です」

というアナウンスでハッと目が覚めました。

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どうやら2時間40分キッチリと眠ったようです。しかも私の場合電車の眠りは身体に合っているらしく、疲れが嘘のように取れてスッキリした気分です。

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元気一杯に夜まで稽古して、先ほどまた”あずさ”に乗り込みました。

今度は座っても眠くならないので、帰り道は本を読んで謡を覚えながら電車に揺られていこうと思います。

龍神様に届いたから…?

昨日は竹生島能合宿を昼過ぎに終えて、京都から14時過ぎの新幹線で田町稽古に直行しました。

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京都駅で京大宝生会と別れた時、京都は凄い雷雨でした。

「皆は無事に家に帰れるだろうか…」

と心配しながら東京方面に向かいましたが、間も無く品川で新幹線を降りるという頃に急に外が暗くなって来ました。

稲光も光り始めています。

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どうやら東京も雷雨になりそうです。

本降りになる前に急いで稽古場に行こうと思い、やや慌てて山手線に乗り換えました。

そして乗ってすぐに、

「次は大崎…」

というアナウンスに打ちのめされました。

「逆方向に乗ってしまった。。」

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そして大崎から引き返す山手線に乗る頃から、大粒の雨が窓に当たり始めたのです。

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田町は「ゴロゴロ、ピカッ、ドカーン」というまるで漫画の擬音のような雷鳴が轟き渡って、滝のような雨です。

この夏初めてというくらいに、土砂降りの雨に降られてしまいました。。

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折り畳み傘で何とか稽古場に到着すると、すぐに自治医大の青年がやって来ました。

私「雨大丈夫だった?」

すると…

青年「ええ、もう止んでますよ」

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え?そんな馬鹿な…と思い外を見ると、確かにもう嘘のように雨は止んでいたのです。

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龍神は雨を呼ぶ、と聞いたことがあります。

京都と東京で遭遇した雷雨は、竹生島詣でをして能「竹生島」を奉納した京大宝生会の願いが龍神様に届いた証拠かもしれない…

と前向きに捉えて、田町稽古に突入していったのでした。

緑樹影沈んで…

京大宝生会の竹生島能合宿2日目です。

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我々は宿を出て、近江今津港に向かいました。

左端に見える島影はそう、「竹生島」です。

そして中央部、点のように見える船は、竹生島からやって来た渡し船です。

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その船に乗り込んで、いよいよ「竹生島クルーズ」に出発しました。

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空は晴れて、波は穏やか。ちょうど心地よい風が吹く実に快適なクルーズでした。

全員が2階のデッキに上がって、風に吹かれながら竹生島を目指しました。

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いよいよ…

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到着です。

島の周囲が切り立った崖になっており、樹々が湖上に張り出しています。

魚影も見えて、正に「緑樹影沈んで 魚木に登る景色あり」という謡の通りの光景でした。

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到着後、観光客の皆さんが去るのを待って竹生島港にて能「竹生島」を一部奉納。

皆気分良く謡い、舞っていました。

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その後は能「竹生島」の展開を辿ります。

シテ「此方へおん入り候へ…」

シテを先頭に急階段を上って”弁財天”の社に。

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弁財天社は大きな建物です。

私「この土台が”一畳台”、この建物が”宮”の作り物ね…」

そして先ず前ツレが「社壇の扉を押し開き 御殿に入らせたまひ…」と社に入って行きました。

全員お参りした後に、今度は後ツレが「現れ給うぞかたじけなき…」と社から出て行きました。

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「竹生島ごっこ」を楽しみながら、順路を進んで行き、最後に皆で「かわらけ投げ」をしました。

直径5センチほどの土器の皿を投げて、鳥居を潜れば成功なのですが、中々難しいのです。

全員が上手くいかない中、最後にシテが投げたお皿が鳥居の真上を通過しました。

「これは成功と言って良いでしょう!」

と満足して、港への帰路につきました。

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途中ザッと降り出した雨も、幸いにすぐに止んでまた青空です。

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港近くの建物を見たシテが、

「先生、あれって後シテが持っている”宝珠”では…」

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おお、確かに屋根の天辺に”宝珠”が載っています。

これはどういう意味なのでしょうか…?

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そして竹生島への名残を惜しみつつ、再び船に乗って出発しました。

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出航直後に、竹生島のすぐ横に一艘の舟を見つけました。

なんとこの舟に、シテとツレに見える2人の人影が!

「リアル竹生島だ!」

と喜びながら、鏡のように凪いだ琵琶湖上を風に吹かれて近江今津へと向かったのでした。

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密度の濃いとても充実した良い能合宿でした。

部員それぞれの心に、琵琶湖や竹生島や、この2日間の出来事がしっかりと記されたことでしょう。

この合宿の経験を糧にして、京大宝生会は能「竹生島」へと向かう旅を、全員で力を合わせて続けて参ります。