サードマンと彼方のアストラ

今日は松本から移動して、夕方から矢来能楽堂にて辰巳大二郎君の「橙白会」の申合でした。

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松本からの特急あずさでは、専ら読書に専念いたしました。

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と言ってもいつものように比較的読みやすい内容の文庫本です。

今日は新潮文庫の「サードマン」という本でした。

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探検家が海や山で遭難した時に、自分以外の不思議な”存在”が現れて生還に導いてくれたという「サードマン現象」を科学的見地から研究した本です。

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サードマン現象そのものよりも、それが現れるまでの遭難の凄まじい状況に圧倒されました。

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ヒマラヤの8000m峰での滑落事故、南極大陸での壮絶な越冬、また大海原に放り出された小さな救命艇での絶望的な漂流…

私ならばきっと”サードマン”が現れる前に音を上げてしまうでしょう。。

しかし、極限状況を強かに生き延びた人々の話に勇気をもらえた気がいたしました。

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特急あずさ車内では、最近スマホで雑誌や本が読めるサービスが始まったのでそれも利用してみました。

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と言っても漫画です。。

以前から一度読みたいと思っていた

「彼方のアストラ」

という漫画の1、2巻を読んでみました。

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私の好きな漫画家の星野之宣さんの作品に通じるような、宇宙SF漫画でした。

そう言えばこの作品も、宇宙での”遭難”を描いています。

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今日の特急あずさの旅は、様々な遭難エピソードを終始ドキドキしながら読んで過ごしました。

新宿駅に無事に到着したのが何か奇跡のように有り難く思えたのでした。

松本の雲海

今週は目まぐるしく気候が変わり、予想外の景色を見てばかりいる気がします。

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今朝の松本では、雲海の上に浮かぶ北アルプスが見られました。

撮影の腕が足りず、実際の荘厳な雰囲気をお伝え出来ず申し訳ございません。。

しかし松本でこういうスケールの大きな雲海を見るのは初めてでした。

この後すぐに、また山は雲に覆われてしまいました。

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東京に戻ると、早速江古田で郁雲会の皆さんの舞囃子と仕舞の稽古をしました。

そして田町に移動して、夜までみっちり稽古いたしました。

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今年も早ひと月が過ぎようとしております。

そして3月7日の郁雲会澤風会の舞台も近づいて参りました。

ここから徐々にエンジンをかけて、本番に向けて盛り上げていきたいと思います。

トンネルを抜けるとそこは…

昨日松本から東京に戻って、国立能楽堂の稽古会にて袴半能「石橋」の地謡を勤めました。

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そして今日また別の仕事で松本にとんぼ返りしたのです。

ちなみに一昨日のブログに載せた写真がこちら。

塩尻の手前くらいの松本平です。

晴天でした。

北アルプスの上の方だけが雪を被っていますが、平地には全く雪は見られません。

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そして今日、諏訪からトンネルをくぐって松本平に出て、ほぼ同じ位置で撮った写真がこちらです。。

なんと1日で一面の雪景色になっておりました。

このような経験をすると、”自然の力の気まぐれさ”のようなものを改めて実感します。

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私の乗った特急あずさは雪による倒木の影響で15分遅れで松本に到着しました。

今日はまた一昨日とは別の方々に、能楽の魅力をお伝えして参ります。

南海電車の混雑

今日は大阪の堺能楽会館にて開催の「羽衣学園能楽鑑賞会」に出演して参りました。

私は能「通小町」の地謡を勤めました。

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朝に東京を出て、電車を乗り継いで最後に「南海なんば駅」から堺に向かう南海電車に乗りました。

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その時に、南海なんば駅が意外に混んでいるなあと思いました。

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そして舞台が終わって、夕方に帰りの南海電車に乗ろうとして驚きました。

車内がとても混んでいて、ほとんど満員状態だったのです。

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よく見ると大半の人がアジア系観光客で、それぞれ大きなトランクを持っており、それも混雑に拍車をかけているようでした。

そこで、「ああ、今は”春節”の期間なのか」

と気がつきました。

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調べてみると正に今日1月25日が今年の”春節”にあたり、昨日から春節の連休が始まっていたようなのです。

大挙して関西空港に到着した中国からの観光客が、南海電車で大阪方面に移動するところに乗り合わせたということなのでしょう。

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この春節連休は来週木曜日まで続くようです。

新型肺炎の心配なニュースが流れていますが、特にこの連休期間中はマスクや手洗いなどの予防を徹底したいと思っております。

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雪の少ない青森

昨日は青森稽古で、私は日が暮れてから青森駅に到着しました。

この冬の時期には、駅前の青森港周辺がライトアップされます。

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そのライトが、雪だるま型をした”雪だるま〜る”という提灯で、中々可愛らしいのです。

今年も見に行ってみました。

やはり港の周りには”雪だるま〜る”がたくさん並んでいます。

しかし今年はその背後に見慣れないものがありました。

港の大規模な再開発事業が行われていて、クレーン車やパワーショベルなどの巨大な重機が何台も置かれていたのです。

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再開発が終わると、青森港はどんな姿になるのでしょうか。

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そして今年の青森はやはり雪がとても少ないです。

私が7年前の冬に初めて稽古に来た時には、駅前でも2m近く積雪があったのに、昨日は上の写真程度しか雪がありませんでした。

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雪が無いのは地元の人には有り難いことなのでしょう。

しかし春先の雪解け水が少ないと、農家の方々は困ってしまうということです。

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やはり冬にはある程度雪が降る方が良いのだろうなあ…と思っていると…

今朝の青森は雪になりました。

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昨日とは打って変わって、寒々とした冬の東北らしい景色の中を、帰りの新幹線で東京に向かったのでした。

虹の力

松本稽古始めから一夜明けて、今日は午後から亀岡稽古でした。

朝に宿を出て松本駅に向かったのですが、北アルプスの山々は雪雲に覆われてほとんど姿が見えません。

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特急しなのに乗って、木曽路を名古屋方面に向かいました。

すると途中でその雪雲が段々と下に降りてくるように見えました。

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やがてついに雪雲の中に入ったようで、外は雪が降りしきっています。

視界も悪くなり、実に寒々とした風景です。

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しかし、それから少しうたた寝をして目覚めると、特急はもう名古屋の市街地に出ていて、空はすっかり晴れていました。

なんとなくホッとして、新幹線に乗りかえて京都方面へ。

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ところが今度は米原あたりで再び怪しい天気になって、雨が降って来ました。

琵琶湖の向かいの比良山系や比叡山は、先ほどの北アルプスのように厚い雲に隠れています。

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京都に到着しても雨は止んでおらず、山陰線で亀岡に向かう間も先頭車両のワイパーはずっと動いていました。

困ったことに今日私は傘を持っていません。

「亀岡駅から稽古場まで、走るしかないかな…」

と覚悟を決めて電車に揺られていました。

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保津峡のトンネル地帯を抜けて亀岡盆地に入ると、驚くことに空の様子が全く変わっていました。

青空がのぞいており、どうやら雨も降っていないようなのです。

そして馬堀駅を過ぎて終点の亀岡駅に近づくにつれて、青空の範囲が見る見る広がっていきます。

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その時車内で、

「うわー、虹!」

という声が聞こえました。

「こんなに近くで見るの初めて…」

という声も。

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ハッとして外を見ると、新しく出来たサッカースタジアムのすぐ横の、手が届きそうなところに見事な虹がかかっていたのです。

画面からはみ出す程の大きな虹でした。

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能「石橋」クセの中で「虹」という言葉が出て来ます。

千丈に及ぶ深い谷に架かる”石橋”の有り様が、

「たとえば夕陽の雨の後に 虹をなせる姿」

のようだ、という内容です。

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そしてこの「虹をなせる姿」という部分を、何故かひときわ強い気迫を込めて謡うことになっているのです。

“虹”という自然現象には、人の心を高揚させる力がある気がします。

その”虹の力”が謡にも反映されたのでしょうか。

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今日の私は雨が上がった有り難さと虹を見た高揚感で、とても気分良く亀岡稽古場に向かうことが出来たのでした。

梅若丸の悪戯…?

あっという間に正月三が日が明けてしまいました。

私はまだ少し休みが残っております。

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年末に下町散策をした時のちょっと不思議な出来事を書きたいと思います。

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午後に三ノ輪を出発して、全く行き先を決めずに気の向くまま歩き出しました。

小一時間ほど歩いたところで、

「木母寺」

というお寺の前を通りかかりました。

すると、お寺の名前の下に「梅若塚」と書いてあるのが見えたのです。

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「梅若塚」の存在は知っていましたが、何となく”言問橋”の辺りにあるのかと思っていました。

今いる場所は言問橋よりも随分と北のほうの隅田川沿いになります。

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とにかく境内に入ってみると…

「梅若堂」という小さなお堂があり、その横にひっそりと「梅若塚」がありました。

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小さな塚の横にはやはり小さな柳の木が立っています。

この辺りであの能「隅田川」終盤の慟哭の場面が繰り広げられたのか…

としみじみと思いながら、塚に手を合わせて人気の無い境内を後にしました。

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木母寺を出てすぐのところに綺麗なトイレがありました。

散歩中は綺麗なトイレが中々見つからないものです。ここは寄って行くか、と歩きかけた時のことです…

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私は最近はいつもツイードのジャケットを着ており、ボタンをひとつだけ留めるようにしています。

そのボタンが不意に外れて、ジャケットの前がハラリと開きました。

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「ボタンが取れたのかな?」

と見てみると、ボタンはちゃんと付いています。

なんとなく不思議に思いながらボタンをはめ直してトイレに行って、また先に行こうと歩きかけた時…

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今度はそのボタンがポロリと取れてその場に落ちたのです。

ジャケットは再びハラリと開きました。

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思わず木母寺の梅若塚を振り返っていました。

もしかしたら”梅若丸”が悪戯をしているのでは…

ジャケットのボタンは、丁度子供が手を伸ばして取りやすい高さについているのです。

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その後は何事も起こらずに散歩を再開したのですが、ランダムに歩く先々で、例えば…

“梅若保育園”とか…

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“業平橋”

など、隅田川や在原業平に関わる場所に行き会いました。

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まるで梅若丸に導かれていたような下町散策だったのです。

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今年は何度か能「隅田川」の地謡を謡います。

その折には、またあの「梅若塚」にお参りに行こうかと思っております。

懐かしい空気感

今日は三重県の父親の住む家、つまり私の生まれた家を訪ねています。

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名古屋から近鉄特急に乗り換えると、車窓から見える風景に明らかな”懐かしさ”を覚えました。

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「山の姿、川の流れ。遠の里、橋の景色…」

これは能「頼政」のワキの詞ですが、そう言ったものが、他のあらゆる土地とは何故か微妙に違って見えるのです。

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最近読んだ本で、「動物の持つ超能力」の話がありました。

その例として「鮭が生まれた川に正確に戻って産卵するのは謎の現象だ」

とあったのですが、私には何となく”鮭の気持ち”がわかります。

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似たような川は無数にあれど、本当に”懐かしい”と感じる川は、近づいていくとその匂い、水温、石の形、生態系、などを総合した「空気感」(水ですが…)のようなものが違って感じられると思うのです。

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今日は昨年同様に父親と散歩して、遠くなだらかな低い山並み、ゆったり流れる広い川、静かに広がる田圃、などの懐かしい風景を見てその空気を吸ってこようと思います。

2019大晦日下町散歩

日曜日の急な発熱も、その後の30時間睡眠で何とか回復しました。

そして昨日今日は完全休日で、頑張って部屋の掃除をいたしました。

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掃除は無事に終わりましたが、私にはもう一つ年内にやり残したことがありました。

“歩くこと”です。

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今年1年は、とにかく去年よりもたくさん歩くことを心掛けて過ごして参りました。

順調に歩数を増やして来て、今月にはかつて達成したことのない「月間40万歩」を密かな目標に設定していたのです。

目標達成には毎日1万3千歩以上歩くことが必要です。

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しかし一昨日の日曜日は発熱のため、まさかの「17歩」…

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回復した昨日午後と今日1日、掃除の合間を縫って私は東京の下町を歩き回りました。

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能「隅田川」ゆかりの「梅若塚」のあるお寺。

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「2014全国頑張る商店街30選」に選ばれたという人情味あふれる商店街。

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逆さ富士ならぬ「逆さスカイツリー」。

どこから撮ったかわかりますか?

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猪の牙に似た形の「猪牙舟」の模型が置いてあった山谷堀公園では…

「正法寺」という今年お世話になった岩手のお寺と同じ名前を冠する橋に行き合い驚きました。

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そして今年最後の夕陽が沈んで家に帰り着く頃に、目標の「月間40万歩」を達成することができました。

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昨日今日の下町散歩では、ちょっと不思議な体験などもしたのでまた改めて書きたいと思います。

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令和元年も残すところあと3時間になりました。

今年も本当にたくさんの方々に助けていただいて1年を送ることができました。

心より感謝申し上げます。

そして来年もどうかよろしくお願いいたします。

今年最後の東北新幹線

今日は仙台稽古に行って参りました。

東北新幹線に乗るのは今年最後でした。

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好きな車内誌「トランヴェール 」を読むのも今年最後…

としみじみ思いつつ、ゆっくり頁をめくりながら日光や磐梯の山々を横目に北上しました。

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夕方に到着した仙台は予想通りあまり寒くなくて、東京と同じ格好で稽古場まで20分ほど歩くとむしろちょっと暑くなったくらいでした。

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稽古場の市民センターでは別の団体も謡の団体稽古をしていて、皆さんなかなかの美声でした。

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こちらも負けじと能1番、舞囃子3番、仕舞数番を頑張って稽古いたしました。

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次の稽古は来月末になります。

その頃は流石に寒かろう…と思いながら、帰りの最終新幹線に乗り込み、再び「トランヴェール 」を開いて、行きに読み残した記事に目を落としたのでした。