今日はいよいよ吉備津神社にて、岡山子供能楽教室の発表会がありました。
この1ヶ月で4回も吉備津を訪れて、私はすっかりこの土地と人々が好きになっていました。
今回で一旦終了かと思うと、なんだか学校の卒業式に行く時のような寂しさを感じます。
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いつものように桃太郎線に乗って無人の吉備津駅で降りて、松並木を通って吉備津神社へ。
昼前に社務所に到着して待っていると、年上チームが先ずやって来ました。
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色とりどりの自前の浴衣に、こちらで用意したカラフルな袴をはいてもらいます。
「すっごいかっこいい〜❗️」
と如何にも高校生らしい反応で、お母さんに写真を撮ってもらったりして、テンションが急上昇していくのがわかりました。
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しかし私が「じゃあ一回羽衣キリを稽古しようか」と言った途端に、
「うえ〜…」というような声をあげて、テンション急降下です。。
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それでも、稽古してみるとシテ謡も正確に謡っているし、型もほぼ出来ていました。
皆とても緊張している様子ですが、本番はまず大丈夫だろうという目処が立ちました。
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続いて年少チームが到着して、仕舞「猩々」の稽古です。
こちらはやはり少し苦労している感じでしたが、中には完璧に覚えている子供もいて感心しました。
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稽古を終えて、いよいよ本番の舞台である”拝殿”に向かいます。
今日の岡山は晴れて残暑が非常に厳しく、拝殿も屋根はあるもののムッとする暑さです。
直前に水分補給などは終えており、子供達と我々能楽師は拝殿内にスタンバイしました。
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観覧にいらした子供達の御家族なども席につかれ、宝生和英家元の御挨拶からついに発表会がスタートしました。
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年少チームの「猩々」から、1人ずつ順番に仕舞を発表していきます。
全員もちろん初舞台で、構造も通常の舞台とは異なる難しい環境の中、全員持てる力を全て出し切って、正に必死で舞っているのがわかりました。
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僅か1ヶ月の稽古でしたが、「羽衣」の年上チームまで1人も欠けることなく舞い終えてくれました。
我々能楽師の奉納仕舞を挟んで、最後に全員で「四海波」を謡いました。
こちらも実に大きな声で元気に謡ってくれて、最初の稽古で苦労した事を思い出すと実に感慨深いものがありました。
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こうして吉備津の神様に無事宝生流の仕舞と謡が奉納されました。
ひとつの新しい歴史が生まれたわけです。
しかしここで終わりではなく、この歴史をこの先積み上げていかねば意味がありません。
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年少チームの子供の中には、「来年は妹と一緒にまた来る!」と宣言してくれた子もいました。
今年から始まって、第1回目を今日無事に終えることが出来た岡山子供能楽教室。
来年再来年と繰り返していって、いつかこの吉備津の地にもまた能楽宝生流が根付いて欲しいと願いながら、あの小さな吉備津駅から小さな桃太郎線に乗って帰途に着いたのでした。
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子供能楽教室の関係者の皆様、また吉備津の皆様、色々どうもありがとうございました。