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桜島、御楼門、そしてアサギマダラ

昨日今日と「皓月会50周年記念大会」と「かごしま能」に出演するために鹿児島に来ております。

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せっかく鹿児島に来たので、桜島を見て帰りたいと思って朝早くに路面電車に乗って港の方に行ってみました。

終点の「鹿児島駅前」で降りて少し歩くともう港で、目前には桜島が堂々たる姿を見せていました。

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港からフェリーで20分で桜島に渡れるということで、渡し船好きの私としては「渡ってみたい…」と一瞬思いましたが、流石にそれは我慢して港から出て行くフェリーを見送るだけにしました。

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港を後にして皓月会会場の「県民交流センター」へ。

そして午前中に「皓月会」が無事に終わった後、会場近くの「鶴丸城御楼門」を見学に行きました。

明治期に焼失したこの御楼門ですが、県民の皆さんの願い叶って今年復元されたそうです。

門と言っても見上げるように巨大で立派な建造物でした。

そして御楼門から遠く見晴るかす桜島からは、先程は見られなかった噴煙が上がっているのが見えて「おお…!」と何か感動してしまいました。

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“日本の歴史”と”地球の息吹”が、現代のリアルタイムに共存しているのです。

鹿児島は不思議で、非常に魅力的な街でした。

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実は今日はもうひとつ感動したことがありました。

朝に港から県民交流センターに向かう途中、私の目の前を一匹の「アサギマダラ」がヒラヒラと横切って飛んでいったのです。

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秋になると南の島へ”渡り”をする蝶「アサギマダラ」。

毎年10月初めに京都亀岡稽古場の「藤袴」という花に立ち寄るのを見ていたのですが、今年はコロナ禍でその時期に亀岡稽古に行けず、アサギマダラにも会えずに残念な思いをしていたのです。

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そのアサギマダラに10月最後の日に、まさかこの鹿児島で会えるとは。

なんとか撮影しようと追いかけたのですが、アサギマダラは強い風に乗ってあっという間に空高く飛び去っていきました。

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舞台のことを書きませんでしたが、2日間とも晴天に恵まれて、会員の皆様の温かさと熱意に満ち溢れた素晴らしい舞台になりました。

今の時期にこれだけの大きな催しを成功させるために、石黒実都師はじめ関係者の皆様のご苦労は並々ならぬものだったと拝察いたします。

2日間お世話になりまして、誠にありがとうございました。

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亀岡の花々〜ようやくの再開〜

今日はおよそ3ヶ月ぶりに亀岡稽古に行って参りました。

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亀岡稽古場はすっかり秋の装いです。

毎年会うのを楽しみにしている旅をする蝶「アサギマダラ」が立ち寄る藤袴の花も、既に終わりかけでした。

アサギマダラ達は、ほんの数日前まではこの藤袴に戯れていたそうですが、今はもう南国への旅に出てしまった後でした。

来年はまた会えると良いです。

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女郎花の花も、かろうじて少しだけ咲き残っていました。

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今回初めて気がついたのは、「カラタチ」でした。

鉄条網を拡大したような極太の刺に武装された枝に、ピンポン球をひと回り程大きくしたサイズの美味しそうな橙色の実が成っています。

しかしこの実は酸味が強くて食べられないそうです。。

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かなりインパクトの強い見た目のカラタチでしたが、不思議に今回初めて気がつきました。

やはりまだまだ亀岡稽古場の植物には驚かされる事が多いようです。

ようやく稽古再開できましたので、これからまた亀岡の花木をご紹介していけたらと思います。

光秀公ゆかりの稽古場

今日は大山崎稽古のために早朝に東京を出ました。

新幹線はかつて無いほどがら空きで、私の乗った車両には10人ほどしか乗客の姿がありません。

新型肺炎の影響は徐々に大きくなっているように感じます。。

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しかしJR山崎まで来ると、全く普段と変わらない様子でホッとしました。

いや、厳密にはちょっと普段と違っていました。

まず下のようなポスターが駅などに何枚も貼ってあります。

そう、今年の大河ドラマは”明智光秀公”が主人公です。

そして山崎や隣の長岡京はその光秀公や、娘の細川ガラシャゆかりの地なのです。

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稽古場の「宝積寺」も天王山の中腹にあるので、境内には上のような「いざ!天王山」という幟がたくさんはためいていました。

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そして午前中の大山崎稽古を終えて、私が午後に移動した先は…

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亀岡です。

こちらには光秀公が築城した「亀山城址」があり、やはり大河ドラマで盛り上がっているようでした。

稽古場もその亀山城址の中にあるのです。

亀岡駅には明智光秀グッズがたくさん並び…

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城址のお堀端には新しく作られた”明智光秀公像”が立っていました。

亀岡には新しいサッカースタジアムも完成して、今年は色々と賑やかになるのでしょう。

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しかし稽古場に到着すると、城址の中は普段と変わらない静謐な雰囲気でした。

そして今年も梅の花が音も無く開花していました。

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世間は色々大変ですが、変わらず静かに咲く梅を見て、また何かホッとしたのでした。

数十年ぶりの”牛若丸”

今日は亀岡での新年会に参加して参りました。

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最後の満次郎師の番外仕舞が「橋弁慶」で、私は”牛若丸”の役を仰せつかりました。

この橋弁慶の牛若丸は、実は私にとっての初役(生まれて初めて演じる役)でした。

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本来なら”牛若丸”は子方が演じる役です。

私はまだ小学生の時に、能「船弁慶」と能「鞍馬天狗」の子方を勤めたことがあります。

ちなみに船弁慶の子方は義経、鞍馬天狗の子方は牛若丸の役でした。

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そして今回、数十年ぶりの”子方”がやはり牛若丸。

これもひとつの御縁なのかと思い、なにか新鮮な気持ちで勤めさせていただきました。

動きは「十二、三ばかりなる小男」に見えたかどうか定かではありませんが。。

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子方は中学生の頃に卒業するものですが、今後もこうした珍しい機会があればまた頑張って勤めてみたいものだと思います。

虹の力

松本稽古始めから一夜明けて、今日は午後から亀岡稽古でした。

朝に宿を出て松本駅に向かったのですが、北アルプスの山々は雪雲に覆われてほとんど姿が見えません。

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特急しなのに乗って、木曽路を名古屋方面に向かいました。

すると途中でその雪雲が段々と下に降りてくるように見えました。

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やがてついに雪雲の中に入ったようで、外は雪が降りしきっています。

視界も悪くなり、実に寒々とした風景です。

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しかし、それから少しうたた寝をして目覚めると、特急はもう名古屋の市街地に出ていて、空はすっかり晴れていました。

なんとなくホッとして、新幹線に乗りかえて京都方面へ。

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ところが今度は米原あたりで再び怪しい天気になって、雨が降って来ました。

琵琶湖の向かいの比良山系や比叡山は、先ほどの北アルプスのように厚い雲に隠れています。

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京都に到着しても雨は止んでおらず、山陰線で亀岡に向かう間も先頭車両のワイパーはずっと動いていました。

困ったことに今日私は傘を持っていません。

「亀岡駅から稽古場まで、走るしかないかな…」

と覚悟を決めて電車に揺られていました。

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保津峡のトンネル地帯を抜けて亀岡盆地に入ると、驚くことに空の様子が全く変わっていました。

青空がのぞいており、どうやら雨も降っていないようなのです。

そして馬堀駅を過ぎて終点の亀岡駅に近づくにつれて、青空の範囲が見る見る広がっていきます。

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その時車内で、

「うわー、虹!」

という声が聞こえました。

「こんなに近くで見るの初めて…」

という声も。

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ハッとして外を見ると、新しく出来たサッカースタジアムのすぐ横の、手が届きそうなところに見事な虹がかかっていたのです。

画面からはみ出す程の大きな虹でした。

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能「石橋」クセの中で「虹」という言葉が出て来ます。

千丈に及ぶ深い谷に架かる”石橋”の有り様が、

「たとえば夕陽の雨の後に 虹をなせる姿」

のようだ、という内容です。

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そしてこの「虹をなせる姿」という部分を、何故かひときわ強い気迫を込めて謡うことになっているのです。

“虹”という自然現象には、人の心を高揚させる力がある気がします。

その”虹の力”が謡にも反映されたのでしょうか。

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今日の私は雨が上がった有り難さと虹を見た高揚感で、とても気分良く亀岡稽古場に向かうことが出来たのでした。

冬到来のサイン

今日は先週土曜日に引き続いて亀岡稽古でした。

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土曜日には実に鮮やかな紅葉が見られました。

今日同じ木の下に行ってみたのですが、早くも盛りは過ぎて、僅かですが色褪せて見えました。

季節は足早に移ろっていきます。

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稽古場のすぐ横には、見上げるような大銀杏が立っています。

昼過ぎに襖を閉めて稽古をしていると、襖の向こうで雨のように頻りに何かが降り落ちるシルエットが見えました。

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稽古の切れ目に襖を開けてみると…

辺り一面には、降り落ちた銀杏の葉が絨毯のように敷き詰められていたのです。

木々達も急ぎ足で冬支度をしているようでした。

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そういえば、昨日の深更に京大稽古を終えて百万遍から四条河原町の宿に歩く途中、冴えた冬の夜空に高く昇ったオリオン座と冬の大三角形を今シーズン初めて見ました。

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そして時間は更に戻って昨日夕方。

宿から京大稽古へと歩く途中、疎水の夷川発電所辺りでは…

冬空の下で水鳥達が羽を休めていました。

向こうに見える山は嵐山です。

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昨日と今日で、様々な”冬のサイン”を見つけました。

またあの京都の寒い冬がやって来たのだな…

と、しみじみ実感したのでした。

冬の純白、秋の真紅

11月最後の今日は亀岡稽古でした。

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朝に東京から新幹線に乗って、少しウトウトしかけた頃。

「ただ今車窓に富士山の全景がご覧いただけます」

という車内放送が入りました。

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この放送が入るのは富士山が綺麗に見える時です。

眼を開けて右手の車窓を眺めてみました。

すると…

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なんと今日の富士山は、山頂から麓近くまで殆ど白一色になっていたのです。

下半分は、雪というよりもカチコチに氷結しているように見えました。

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これは私が小学生の時に見た、今までの人生で一番綺麗な富士山に近い光景だと思われます。

長年にわたり、もう一度見たいと思っていましたが、ついに夢が叶ったのです。

非常に感動いたしました。

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そしてしみじみと「もう冬が来たのだなぁ」と思いながら亀岡稽古場に到着すると、なんと…

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亀山城址は眼が覚めるような紅色に染まっていたのでした。

特にこの紅葉は、明るい陽射しを浴びて眩いくらいに輝いて見えました。

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富士山の氷雪の純白と、亀岡の紅葉の真紅。

どちらもここ数日の厳しい冷え込みによって生み出された、冬と秋の絶景でした。

様々なお便り

今日は江古田稽古でした。

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夕方にメールが届いていたので、稽古の区切りで確認しました。

先日岩手県の正法寺で「地水火風」の舞台を共にした尺八奏者ラルフ・サミュエルソンさんからのメールでした。

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今成田空港で、間もなくアメリカに帰ること。

そして来年は是非東京で再び「地水火風」の舞台をやりたいということが書いてありました。

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今頃は太平洋上空を飛んでいるであろうラルフさんに、正法寺での御礼と、こちらこそ来年は是非東京で「地水火風」をやりたいという返信をお送りしました。

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昨日はまた別のお便りが読者の方より届きました。

亀岡のことを書いた昨日のブログへのコメントとして届いたお便りです。

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亀岡で毎年フジバカマに飛来する「アサギマダラ」という旅する蝶。

そのアサギマダラを巡る物語が、NHKのラジオドラマとして放送されたという内容でした。

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私の好きな蝶がドラマになったとは、何とかして聴いてみたいと思いました。

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今週は他にも、あまねく会の記事へのコメントも頂戴いたしました。

この場で御礼申し上げます。ありがとうございました。

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冷たい半月

昨日は午後から亀岡稽古でした。

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この時期の常で私は「半袖シャツにジャケット」という格好でした。

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日中は半袖で過ごすくらいだったのですが、日が落ちるとともに急速に気温が下がって来ました。

夜にはジャケットを来て仕舞の稽古をしてもまだ寒いくらいで、途中暖房が恋しくなる程でした。

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稽古を終えて外に出ると、夜空には冷たい半月がかかり、冬の星が出て来ていました。

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次に亀岡稽古に来るのは月末になります。

その頃には、きっともう冬が静かにやって来ていることでしょう。

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亀岡の花々と次に会えるのは、もしかして来年の春になるのかもしれません。

亀岡の花々〜冬が来る前に〜

昨日は朝に水道橋で五雲会稽古を受けた後に、日帰りの亀岡稽古でした。

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亀岡は秋の青空が広がり、爽やかな気候です。

稽古場に到着すると、私は真っ先に「フジバカマ」の花の方へ向かいました。

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おそらくもう遅いとは思いますが、もしかして旅をする蝶「アサギマダラ」に再会出来ないかと思ったのです。

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しかしやはりアサギマダラはおらず、フジバカマの花もすでに終わりかけでした。。

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それでももう一ヶ所の群生地を一応覗いてみることにしました。

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状況は先程の場所とあまり変わらず、盛りを過ぎたフジバカマが目に入るばかり…

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いや、今奥の方で何かが動いたような…!

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上の写真の中央やや上部を拡大して撮影したものです。

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思わず鳥肌が立ち、「おお…!」と感動の声を上げてしまいました。

たった一匹だけ、しかし紛れもなくアサギマダラが、フジバカマの花に止まって静かに羽を動かしていたのです。

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今年はもう会えないと思っていました。

「残っていてくれてどうもありがとう」

「南の国で仲間たちによろしく」

と心で念じて、長い旅の無事を祈ってから稽古に向かいました。

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去年出会った三匹のアサギマダラの子供なのでしょうか。

“繋がっていく生命”

という言葉が思い浮かびました。

来年もまた旅をする蝶達に再会出来ますように。

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稽古の合間に花を探しに行ってみました。

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本物の霜柱のような「シモバシラ」の花。

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そして「ベニバナヤマシャクヤク」の実を見ると、何故か私は”クリスマス”を思い浮かべてしまいます。

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ついこの前まで夏の陽気だったのに、昨日はもう「冬の足音」を微かに感じる植物達に出会いました。

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夜に稽古を終えて、帰りに暗闇に沈むフジバカマの前を通りました。

先程のアサギマダラが、冬が来る前に無事に暖かい国に辿り着けるように、今一度祈ってから亀岡を後にいたしました。

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明日はいよいよ「葵上」の申合です。

今日も水道橋で稽古をして、やるべき事は全てやりました。後は平常心で申合に臨みたいと思います。