京大春合宿2019

今日は京大宝生会の春合宿でいつもの京都大原の民宿にやって参りました。

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4回生はもうOB枠なので、人数的にはちょっと少ないかと思っておりました。

しかし蓋を開けてみると今回は舞囃子が「船弁慶」「春日龍神」「雲雀山」の3番と、更に半能「高砂」もあって、中々密度の濃い稽古になりました。

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因みに舞の稽古は民宿離れの大広間でやっておりますが、この大広間が真ん中で仕切られており、その”鴨居”がちょっと低いのです。

身長172cmの私でも、背伸びすると頭がつくくらいの高さです。

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そして、舞囃子「春日龍神」のシテY君は、身長が190cm以上あります。

スピーディな展開の「春日龍神」を稽古していると、Y君は鴨居の下を通過する度にヒョイヒョイと頭を器用に下げて鴨居をかわして行きます。

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しかし、キリの「明恵上人、さて入唐は…」

でワキ座から後ろ向きに素早く下がって常座で飛び返りする所では、さすがに思わず「危ない!」と言いそうになりました。

ところがY君は、後ろに目があるかのように鴨居を避けて下がっていったのです。

彼曰く「稽古の時は集中しているからか、これまで一度も頭をぶつけたことはありません」

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おお、それはすごいと思ったところで、

「でも、夜に宴会している時はよくぶつけますね…」

成る程。酔って春日龍神を舞わないようにしないといけないですね。。

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という感じで、今回も色々面白いエピソードを重ねつつ春合宿は進んで行きます。

続きはまた明日。

隙間花壇〜隙間の隙間から〜

少し前にも書きましたが、三ノ輪の自宅マンションは今大規模な改修工事に入っています。

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今朝「隙間花壇」の前を通りかかると、下のような有様になっていました。

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足場とフェンスで、ますます”隙間”が無くなっています。。

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ちなみに昨年2月の写真がこちらです。

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そして今朝似たアングルで撮影した写真がこちら。

ただでさえ陽当たりの悪いのが、たくさんのフェンスで一層遮られてしまっています。

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しかし、良く見ると…

フェンスとフェンスの間から紫陽花の芽が萌え出ています。

やがては網目の間からも顔を出して来そうに見えました。

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改修工事は夏まで続くようなので、隙間花壇の躑躅や紫陽花の花がちゃんと咲いてくれるかちょっと心配です。

でもきっと力強く咲いてくれると思うので、また花の季節が来たら経過をご報告させていただきます。

小さなベテランさん

今日は松本稽古に行って参りました。

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久しぶりに小学1年の男の子がお母さんと一緒に来てくれました。

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親子で仕舞「安宅」を稽古したのですが、お母さんの方は、

「実は昨日の太鼓の稽古で足を捻挫しまして…」

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なんと、それはお気の毒です。。

正座で痺れた状態で立ち上がろうとすると、転んで捻挫したり、ひどい時は骨折をすることもあるのです。

爪先が返るまでは決して無理に立ち上がらないことをおすすめいたします。

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それでもお母さんは「安宅」の座る型を立ったままでやるようにして、普通に稽古してくださいました。

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そして男の子の稽古になりました。

昨年末以来で本当に久々の稽古です。

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しかし私が「シテ謡は覚えてるかな?一緒に…」

謡おうか?と言おうとすると、男の子は「出来る!」と言って、

「鳴るは〜ンン、滝の水〜❗️」

と正確に謡ってくれました。これには驚きました。

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思えば、彼が稽古を始めたのは幼稚園の頃で、既に稽古歴4年目になるのです。

私が思うよりもずっと成長していて、謡も型も基礎がしっかりと身についていたのですね。

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男の子「今まで何回くらい舞台に出たかなぁ?」

私「うーん、年2回ペースだから、もう7回は出てるだろうね。」

すると彼は「そのくらいになるね❗️」とちょっと誇らしげな笑顔になりました。

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最近稽古を始めたばかりの大人の新人さん達も、この小さなベテランさんに触発されて張り切って稽古されていました。

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そしてなんと今日もまた新しい方がいらして、早速稽古を始めてくださいました。

ベテランさんと新人さん、どちらも非常に勢の感じられた今日の松本稽古でした。

面白写真〜平成最後〜

今年最初の、そして平成最後の”面白写真”シリーズです。

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先ずは自宅の近所にて。

これまで”美容室 翁”とか”そば処 おきな”などがありましたが、今回はマンションでした。

しかし夜の路地裏に浮かび上がる看板は、むしろ”スナック オキナ”という雰囲気でした。

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次は江古田にて。

ディナーは女人禁制、ランチは男子禁制なのでしょうか…⁇

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そして次は私がよくやる、「逆に読んでしまう看板」です。

根津辺りにて。

…「しゃば祭」。

「出所して娑婆に戻った人が大宴会をしているところ」を想像したところで、下の壁の文字が目に入りました。。

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次は仙台にて。

夢のような企画です。

しかし、お店の経営とお客さんの身体、どちらも非常に心配です。大丈夫なのでしょうか…?

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そして京都にて。

別に獣じみた人々がうろついてる訳ではなく、普通の小さな公園でした。

とは言っても、実はこのあたりが「本能寺町」なのでこのネーミングはまあ当たり前かも…

と思ったところで、振り返った先にあった町家の壁に下のポスターが。

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「本能ボウリング大会」…ッッ!

これは思わず笑ってしまいました。

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野獣のような参加者達が、目をつぶって投げたり、場外乱投を繰り広げたりする破茶滅茶なボウリングを想像してしまったのです。

密かに愛好する漫画家の荒木飛呂彦さんか、島本和彦さんなどが描いたら、きっと面白い漫画になると思うのですが。。

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最後に、上野駅構内の毎年恒例のあれです。

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今年のお花見パンダのテーマは、「ジャイアント・ジャイアントパンダ」のようです…。

身長5〜6m。可愛いというより、むしろちょっとホラーな感じもします。。

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最近「アンドレ・ザ・ジャイアントパンダ」

という巨大な着ぐるみレスラーがいるそうですが、こんな感じなのかもしれませんね。

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…というわけで、平成最後の面白写真でした。

次は新元号になって少し経った頃にまたお届けいたします。

柏の幼稚園能楽教室2019

毎年恒例になっている柏の幼稚園での能楽教室に、先ほど行って参りました。

今年は年長組の園児63名を前にしての能楽教室です。

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今回は内藤飛能さんに手伝ってもらいました。

彼にはちょうど同じ年頃のお子さんがいるので、その意味でも適役と思ったのです。

朝JR柏駅で待ち合わせて、コーヒーを飲みながら簡単な打ち合わせをしつつ話をしました。

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私「飛能君の子供の幼稚園でも、能楽教室をやれば良いと思うよ。」

内藤氏「い”〜や”〜。。うちの子を見てると、とてもやれそうには思えないですね…」

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などと話しつつ、駅から徒歩3分の幼稚園へ。

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能楽教室を始めてみると、毎回のことですが幼稚園児たちは大変なハイテンションです。

テンションを維持しつつ、混乱させずに、尚且つ飽きないように…と進めていくのは確かに少々大変なことでした。

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しかし、毎度の型や足運びの体験に加えて今年は「高砂 四海波」を平仮名で謡うという稽古も出来て、充実した能楽教室になりました。

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途中で能面「小面」を見せて、先生に代表して掛けてもらったのですが、子供達から「僕も掛けたい〜❗️」「私も〜‼️」という声が多数上がりました。

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以前は私の高校の同級生の子供がいて、その子に掛けてもらっていました。

今回はどうしよう…63人に掛けてもらう時間は無いし…

とやや困っていると、先生が「3月がお誕生日の人〜!」と手を挙げさせて、素早く数人の子供を選んでくれたのです。

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おお!さすが幼稚園の先生はこういった事に慣れておられる!と感心して、なんとか無事に能楽教室を終えることが出来たのでした。

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最初と最後には、正座をしての正式な挨拶も全員きちんと出来ました。

礼儀作法も含めて、能楽を幼稚園のうちに体験するのはとても良いことだと思います。

内藤飛能さんに、やはりお子さんの幼稚園で能楽教室をやった方が良いよ!と再度勧めながら柏を後にしたのでした。

“若武者”を目指して

今日は水道橋宝生能楽堂にて、明後日開催の「五雲会」の申合がありました。

私は能「箙」の地謡を勤めました。

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能「箙」のシテは梶原源太景季という源氏方の若武者です。

一ノ谷の合戦で背中の”箙”に梅のひと枝を挿して奮戦し、その名を上げたのです。

今回シテを勤める川瀬隆士君は30代前半の若手能楽師。若々しく張りのある謡と型は、この曲にぴったりだと思いました。

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そして今日の申合の楽屋には、彼よりも更に若々しい詰襟制服の男子2人の姿がありました。

2人はこの度、東京芸術大学邦楽科能楽専攻に合格が決まって、挨拶のために宝生能楽堂にやって来たのです。

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明後日の「箙」で凛々しい若武者姿を披露する川瀬君も、やはり10数年前に東京芸大に入学して、それから厳しい修行を経て五雲会のシテを勤めるまでになったのです。

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詰襟の2人が今日の川瀬君のような一人前の”若武者”になるまでには、長く厳しく、しかし充実した修行の日々が待っていることでしょう。

未来の若武者2人に心からエールを送りたいと思います。

1件のコメント

励ましのお便り

私のこのブログをいつも読んでくださっているという、観世流をお稽古されている方からお葉書をいただきました。

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先日の澤風会郁雲会を観にいらしてくださったということで、色々な感想が書いてありました。

例えば「元気いっぱいの可愛い男の子」

「清々しい舞の女の子」

「京大生の美しい足運び、無駄のないしなやかな動き!」

などなど、暖かい視点で観てくださったのがわかり、読んだ私もとても暖かな気持ちになりました。

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今回の澤風会郁雲会は朝から夕方まで、本当に大勢のお客様で見所が賑やかでした。

これは私は勿論のこと、出演者の方々にとって何より有り難いことで、大きな力になりました。

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そして更にその舞台の感想を書いて送ってくださるとは、より一層有り難く、次の舞台に向けて何よりの励みになります。

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他にも個々の出演者にきっと色々な感想が寄せられたことと思います。

それら全ての方々にお礼のお返事が出来ず申し訳ございませんが、この場をお借りして心より感謝申し上げます。

そしてまた次回の舞台もどうかいらしていただき、私と出演者の皆さんを励ましていただければ何より有り難く思います。

どうかよろしくお願いいたします。

続・レッド扇!

昨日は午前中に国立能楽堂にて「囃子科協議会」の能「羽衣 盤渉」の申合があり、終わって午後から松本稽古に移動しました。

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松本駅を出ると、昨夜降ったという雪がまだ残っています。

なんとなく「なごり雪」という言葉が思い浮かぶ風景でした。

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稽古が始まって少しすると、先日ブログで紹介したサッカー少年がやって来てくれました。

本格的に稽古を始めてくれるそうで、早くも「稽古扇」が欲しいとメールがあったので持って参りました。

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宝生流の稽古扇は、白地に五雲模様で雲の色が”赤、青、緑、紫”と4色あります。

そして彼の希望は”赤い五雲”だったのです。

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2年ほど前のブログで、京都の男の子がやはり”赤”の稽古扇を希望して、おそらく戦隊ヒーローの主役が「レッド」だからなのでは、と書きました。

やはり彼もそうなのでしょうか。

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そして稽古扇と一緒に”扇袋”も適当に見繕って欲しいと頼まれておりました。

こちらも”レッド”が良いのかな、とも思いましたが、ちょっと考えて松本にあるJリーグのチーム「松本山雅FC」のチームカラーである”グリーン”の袋にしてみました。

扇袋を見たサッカー少年は、幸いとても喜んでくれました。

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そして夜になり、今度は先日見学にいらした「山岳カメラマン」の男性がまた来てくださり、こちらも本格的に稽古を始めてくださるとのことでした。

稽古の最後に「稽古扇が欲しいです」と言われたので、五雲模様の4色の説明をして「何色にしましょうか?」と尋ねると…

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「そうですね…じゃあ、赤で!」

…。

どうやら戦隊ヒーローとか関係無く、赤が人気のようなのです。ちょっと驚きました。

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昨日はその山岳カメラマンの方と色々お話しをしたのですが、中でも興味深い話がありました。

その方は「イグルー」と呼ばれる”雪の家”を山の中で作る技術にかけては日本一らしいのです。

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実は昔、冬の京都北山に「イグルー」を作りに行って途中であっさり挫折した経験があります。。

いつか山岳カメラマンさんと雪山に行って、イグルー作りを体験したいという新たな夢が生まれた昨日の松本稽古だったのでした。

変わるための力、変わらないための力

あの震災から8年が経ちました。時は流れていきます。

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時が流れて変わっていくものもあれば、変わらない事もあります。

一昨日の澤風会郁雲会の時のこと。

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朝に仕舞「大江山」を舞った男の子は、この4月から中学生になるそうです。

私が彼に初めて会ったのは、彼が0歳の時。つまり生まれて間もない頃でした。

最初はお姉さんの稽古についてくるだけ、そしてやがて自分も稽古を始めて、成長と共に着実に舞台を重ねて来ました。

足の運びや仕舞の型が今回の「大江山」で随分と良くなって、「本当に成長したなあ…」と地を謡いながらしみじみと嬉しい気持ちで見ていました。

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そのお姉さんの方は、幼稚園の時に宝生能楽堂の謡曲仕舞教室に入門してからずっと熱心に稽古を続けて、この春にはもう高校3年生になります。

今回の澤風会では、ほぼ同時期に稽古を始めたもう一人の高校生の女の子とペアで仕舞を舞いました。「船弁慶キリ」と「野守」という大人でも難しい曲を、高校生の2人は元気良く伸び伸びと舞ってくれて、素晴らしい舞台でした。

2人とも内面的にも非常にしっかりして来て、もう間もなく巣立って社会に出て行くのだろうと、こちらも何となくしみじみと感慨深い気持ちで地を謡っておりました。

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一方で今回仕舞「葵上」を舞われた澤風会最高齢91歳の方は、やはり宝生能楽堂での「ジパング倶楽部謡曲教室」に入門されてから10数年、驚くべきことに稽古はただの一度もお休みにならず皆勤で、お1人で電車を乗り継いで江古田まで来てくださっています。

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見た目も初めてお会いした時から少しも変わらず、本当に若々しくお元気なのです。

「ずっと変わらずに稽古を続けて、舞台に立つ」というその姿勢、というよりその存在そのものが、全ての会員さん達の目標になっています。

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時の流れとともに変わっていく人と、変わらずにいる人。

両者は一見正反対に思えます。

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しかし、上記の子供達と最高齢の方には、何故か共通した”力強さ”のようなものを感じてしまうのです。

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「日々の様々な困難に負けずに乗り越えて前進していく」という点において、実は両者は同質な力を持っているのではないかと、一昨日の舞台を見て思ったのでした。

澤風会、月並能、そしてその後…

昨日はおかげさまで澤風会郁雲会大会を無事に終えることが出来ました。

お世話になりました皆様、改めまして誠にありがとうございました。

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明けて今日は水道橋宝生能楽堂にて「月並能」が開催されました。

私は能「春日龍神」の地謡でした。

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無事に謡い終わって用事でロビーに行くと、昨日出演してくださった京大OBの先輩と、やはり昨日出演してくれた京大宝生会現役の何人かに会いました。

現役達は、来たる5月25日(土)に京都大江能楽堂にて開催の「第120回記念京都宝生流学生能楽連盟自演会」において舞囃子「春日龍神」を出すことになっているのです。

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澤風会の後に1泊して、能「春日龍神」を観て勉強してから京都に帰るということなのでしょう。

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私は「月並能」の終了後に、3月24日開催の「別会能」で演じられる能「安宅 延年之舞」の稽古に参加いたしました。

ツレの”同行山伏”を勤めることになっているのです。

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昨日の会のことをゆっくり思い出してブログに書いたりしたいのですが、早くも次の舞台に向けて私も周りも動き出しています。

また少し落ち着いてから昨日の模様を書いてみたいと思います。