東西合同学生zoom稽古

昨日の日曜日は江古田稽古場にて終日リモート稽古でした。

.

SkypeやLINEを使って、松本、京都、東京の澤風会会員さん達と1人ずつ謡の稽古をしていきます。

.

.

日が暮れて最後のリモート稽古になりました。

zoomのリンク先にアクセスすると、それまでの個人稽古と違って何やら賑やかな雰囲気です。

.

.

zoom会議室には、8人の大学生が集まってくれていました。

京大宝生会の2回生から大学院生、また日本女子大、國學院大の学生達です。

普段はこれに自治医科大も加えて、東西4大学が合同で「夜討曽我」の謡の稽古をしているのです。

.

当初は8月に2回だけ、夏休み特別企画として東西合同zoom稽古をするつもりでした。

しかしやってみると意外にスムーズに稽古できて、それぞれの学校にとって良い刺激になっていると感じたのです。

.

そこで9月に入っても東西合同稽古を継続して、昨日で4回目になりました。

.

.

未だに大学ではオンライン授業が主で、友達と皆で賑やかに過ごす事もできない大学生達です。

せめてこのzoom稽古の中で、全国に同じ宝生流を稽古している仲間がいる事を実感してもらえたらと思います。

.

そしてそう遠くない未来に、彼らが現実の舞台で思う存分に競演してほしいと願っているのです。

谷中を歩けば…

おとといの院展鑑賞記に、「今は行ける場所がごく限られてしまっている」と書きました。でも裏を返せば「限られてはいるが行ける場所はある」のです。

.

その場所のひとつが”徒歩で行けるご近所”です。

.

今日は午前中に水道橋宝生能楽堂にて「五雲能」の申合があり、その後に自宅から歩いて行ける「谷中」の界隈を散策して参りました。

.

.

谷中は東京芸大からも近く、芸大生だった頃にも度々散歩した思い出深い街です。

.

小さな路地が迷路のように入り組んでおり、その奥には例えば…

小さなお稲荷さんがひっそりとあったり…

.

.

.

古いお地蔵さんが祀られていたりします。

山手線の内側とは思えないような風景が点在しているのです。

.

.

.

“現代版・黒塚”みたいな物凄い家を発見。

.

.

味のある石垣と石段、そして猫一匹…

よく見ると陶器の猫でした。

.

.

猫と言えば、今日の谷中では何故か猫にたくさん会いました。

ねこ注意。この写真だけで何匹の猫がいるでしょうか?

.

ところがこの電信柱を回り込むと…

.

.

.

.

なんとさらに猫だらけでした。

「谷中を歩けば猫にあたる」という感じです。

谷中は猫好きな方には是非おすすめいたします。

.

.

まだまだ歩いていくと…

三ツ辻の角に大きな木が。樹高15m以上はあるでしょう。

その大木の根元に隠れるように…

.

.

なんとも懐かしい佇まいのパン屋さんがありました。

まるで私の子供の頃のような”昭和の風景”です。

.

.

売っている物は割と現代的でした。

あの木はどうやら「ヒマラヤ杉」のようですね。

.

.

.

散歩の最後にもう一本、ある木を見に行きました。

.

.

知る人ぞ知る、谷中の最北端、つまり台東区最北端に立つ木(枝垂れ桜)です。

写真右下の尖った角までが台東区、ここより北は私の家のある荒川区になります。

.

.

.

という訳で、ご近所の谷中を散策するだけでも、たくさんの楽しい風景や出来事に遭遇する事ができました。

皆さんもよろしければ谷中を歩いて、写真の場所を探してみてくださいませ。

きっと別の意外な風景ともたくさん出会えると思います。

院展鑑賞記〜2021年秋〜

今日は上野の東京都美術館にて開催中の「院展」を見て参りました。

今年春と昨年秋の院展は鑑賞出来なかったので、1年半ぶりの院展でした。

.

250枚を超える絵画の迷宮に久々に足を踏み入れます。

桜の花びらが立体的に浮き出て見える絵に驚き、雪と岩の剱岳に曙光が差す荘厳な風景に圧倒され、幼稚園児達が手を繋いで輪になって木を見上げる姿に思わず微笑みながら迷宮を進んでいきました。

澤風会田町稽古場の会員さんの絵も久々に拝見しました。やはり重厚な色彩の植物がモチーフで、今回はお城の石垣が背景になっているのが新鮮でした。

.

.

現実と非現実、写実と空想の境界線を跨ぎながら絵の世界を彷徨っているうちに、ふいに不思議な感情に襲われました。

それは、これまでの人生の中で「心を揺さぶられる風景や物事」を見た時に沸き起こった強い感動と同じようなもので、コロナ禍以降久しく感じていなかった感覚でした。

.

.

コロナ以前には、強く望めば世界の大抵の場所には行ける可能性がありました。

実際私も、仕事や旅行で日本や海外の様々な街や村、山や海に行き、たくさんの景色や出来事を見てそれを心に刻んできました。

.

しかし今では、海外どころか国内でも行ける場所はごく限られています。

.

.

ドイツの古都の何気ない朝を描いた絵や、珊瑚礁の海でウミガメが迫ってくる絵などを見て、実際にそんな風景を見た時の感動が、強烈な懐かしさを伴って蘇ってきたのです。

それと同時に「今はそこには決して行けないのだ」という痛みも感じました。

絵の中でしか会えなくなってしまった風景達。

.

.

しかしいつかまた自由にこの世界を飛び回れる日が、きっと訪れることでしょう。

そしてどこかの街でふとした出来事に心が動いたり、目を見張る自然の絶景に感動したりすることが、再びできるようになると信じています。

.

今日は院展の絵画に、忘れそうになっていた大切な感覚を思い出せてもらいました。

ブログ再開のお知らせ

皆様 大変ご無沙汰しております。

私は新型コロナワクチンの2回目接種を終えてから今日で丁度ひと月が経ちました。

.

接種後には熱が出て3日間寝込みましたが、新型コロナウイルスの攻撃を防御する最低限の鎧を体内に装備出来た感覚があります。

.

.

昨年以来、まるでずっと呼吸を止めて潜水しているような重苦しさを感じながら生活していました。

ブログ更新をする心の余裕すら無かった状態でした。

.

しかしそろそろ、少しずつでも水面に顔を出していこうかと思っております。

なかなか元の世界には戻らないでしょうが、コロナウイルスと折り合いをつけながら出来る事を探っていきたいと思います。

ブログも可能な限り更新して参りますので、またどうかよろしくお願いいたします。

4月夜能「杜若」の動画配信

4月になってからは、昨年同様に稽古も舞台もめっきり減ってしまいました。

しかしそれでも全く活動していない訳ではありません。

.

動画配信の企画に、ゴールデンウィーク前後にいくつか参加いたしました。

その内で4月30日に収録された「宝生夜能〜語り部たちの夜〜」について紹介させていただきます。

.

今回の演目は能「杜若」シテ高橋憲正です。

.

番組の最初には、いとうせいこうさんによる「杜若」の現代語訳を、声優の森田成一さんが朗読します。

森田成一さんは能装束を着けて、途中で”物着”を挟んでの長い朗読でした。

場面毎に繊細に変化する声色や、迫真の表現力に圧倒されます。

.

.

そして朗読の後には、

「いとうせいこう能楽紀行〜東下り編〜」

が続きます。

ここに私が解説者として出演しております。

.

「いとうせいこう能楽紀行」も3回目になり、私もその撮影スタイルにやや慣れてまいりました。

ただ今回は、4月30日に生放送で配信が始まるという事で、時間を20分前後にまとめる必要がありました。

舞台の前に大きなデジタル時計が置かれて、常に時間を気にしながら話すのは、また違った緊張感がありました。

.

.

能楽紀行に続いて、いよいよ能「杜若」が演じられます。

そして能「杜若」の後には、業平に因んだ演目として仕舞「隅田川」もご覧いただきます。

.

更に演能終了後には、宝生和英家元とシテ高橋憲正、声優森田成一さんの鼎談もあり、非常に充実した内容になっております。

.

各地で緊急事態宣言が継続中で、活動が制限される日々が続きます。

能楽堂に足を運んで実際の舞台を観るのが難しい方も、是非この機会に動画配信で能楽を多角的に楽しんでいただければと思います。

どうかよろしくお願いいたします。

https://nohlife.myshopify.com/collections/streaming/products/4-30%E9%87%91%E5%A4%9C%E8%83%BD-%E6%9D%9C%E8%8B%A5-%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E9%85%8D%E4%BF%A1

嬉しい報せ

昨日5月22日は、本来なら大阪香里能楽堂にて「春の関西宝連」という学生自演会が開催されるはずでした。

しかしその舞台は緊急事態宣言中のために来月に延期になってしまいました。

.

私の予定も空白になったのですが、水道橋宝生能楽堂の舞台がやはり催し延期のために空いていることがわかりました。

私は来月6月12日の「七宝会」で能「氷室」のシテを勤めるので、その稽古をしに水道橋に向かいました。

.

.

そして夕方稽古を終えて、楽屋でスマホのメールを見てみると、とても嬉しい報せが届いていたのです。

.

今年はゴールデンウィーク期間から何度か、「新歓企画・鶴亀謡体験」というのをzoomで開催していました。

その時に参加してくれた新入生の1人が入部を決めてくれたようなのです。

.

今年はすでに2回生が2人入部してくれていました。

更に、この春に東大から京大大学院に進学した院生が、”東大宝生会出身”というかつて無い経歴で京大宝生会に加わってくれていたのです。

.

そして今回は1回生、しかも待望の男子が入ってくれました。

これで4月以降に4人の新しいメンバーが増えたことになり、京大宝生会は昨年の新入部員ゼロという状態から何とか息を吹き返したと言えます。

.

.

コロナウイルスはまだまだ予断を許さない状況ですが、新しい顔ぶれを加えてまた合宿したり、大きな舞台に立ったりする日を夢見て、今出来る活動を地道に続けていきたいと思います。

2件のコメント

2年ぶりの新歓ワークショップ

今日は京大能楽部BOX舞台にて、京大宝生会の新歓ワークショップを開催いたしました。

.

事前に申し込みのあった人に限っての参加、人数制限、全員マスク着用と換気の徹底、またアクリル板の使用など、出来る限りの安全対策を施しての開催でした。

.

.

それでも今の状況で果たして参加者がいるのかどうか…?

始まるまで期待と不安が拮抗した気持ちでドキドキしておりました。

.

しかし蓋を開けると、新入生や留学生など10人近い参加者が来てくれて、とても充実した新歓ワークショップをすることが出来たのです。

対面での新歓活動が一切出来なかった去年を思うと、とても大きな成果だと思います。

.

今後もおそらくサークル活動には様々な制限がかかると思われます。

それでも何とかして新しい部員に入ってもらい、可能な方法で稽古を続けていきたいと思っております。

.

.

また今日はとても驚く出来事がありました。

新歓ワークショップの開始前、1人の新入生らしい青年がBOXに入って来ました。そして…

「澤田先生、私は○○と申します」

その苗字を聞いて、改めて青年の顔を見てすぐにピンと来ました。

.

青年のお母様は、私の京大宝生会時代の同期の女性。

そしてお父様は当時の京大宝生会OBだったのです。

卒業後にめでたく結婚されて、2人のお子さんたちと私の舞台を何度も観に来てくれました。

子供達に最後に会ったのは、私の「道成寺」の披きの時でした。

.

そのお子さんが大きくなって今年見事に京大合格し、今日能楽部宝生会の新歓ワークショップに来てくれたという訳なのです。

.

.

時の流れをしみじみ感じると共に、えも言われぬ深い喜びに包まれました。

青年は宝生会への入部はまだ躊躇しているようでしたが、何とか初の”親子二代での宝生会”というのが実現してほしいものです。

新歓ワークショップの成功とともに、とても嬉しい日になりました。

新人アナウンサーは…

昨日は水道橋宝生能楽堂にて「月浪能特別公演」が開催されました。

.

宝生能楽堂の定例公演では、開演前などにアナウンスが流れます。

携帯電話の電源をお切りいただくことや、様々なコロナウイルス対策など重要な内容のアナウンスです。

.

.

そして昨日、そのアナウンスの声が初めて聴く人のものになっていました。

年度がわりで人も入れ替わったのかな…

と思いながら聴いていたのですが、途中で

「何か聴いたことのある声だな…」

と気が付いたのです。

.

.

放送マイクのある事務所に行ってみると…

.

.

やはりマイクの前に立っていたのは良く知っている顔でした。

幼稚園の時からずっと私が稽古をつけている、大学生の女の子だったのです。

.

彼女がまだ幼稚園の時に、この宝生能楽堂で開講された謡曲仕舞教室に自分の意思で(!)入門してきました。

それ以来小学生の頃までは、毎回必ず着物を着て(!)稽古に通ってくれました。

その後も江古田稽古場で中学、高校と稽古を続けて、昨年大学に入学してからは「関東宝生流学生能楽連盟」の一員としても活躍してくれているのです。

.

その大学生が新年度からの宝生能楽堂定例公演手伝いのアルバイトに入ることになった、というのは前もって聞いていました。

しかし、バイト初日にアナウンスを任されるとは…

しかも長い原稿を淀みなくスラスラと読んでいて驚きました。

.

.

幼稚園から慣れ親しんだ宝生能楽堂で、おそらく能楽公演も少しは観ることができるであろうこのアルバイトは、正に彼女のために打って付けだと思います。

これから事務所の皆さんや先輩に色々と教わって、長く続けてもらいたいと願っています。

.

私にとっては、定例公演のアナウンスを聴くのも楽しみのひとつになりました。

サクラサク

今月から亀岡稽古がようやく再開されて、昨日行ってまいりました。

.

亀岡稽古場の亀山城址には、「このはなざくら」という珍しい桜があります。(2018年4月10日のブログに詳しく書きました)

.

.

昨日の稽古の合間に、その「このはなざくら」の原木を見に行ってみると…

幸運な事にちょうど満開を迎えていました。

これまで私は毎年のように「このはなざくら」を見てきましたが、その中でも今年の花が一番美しく感じられました。

ソメイヨシノほどの派手さはありませんが、自然に逆らっていない「やさしい美しさ」とでも言える上品な咲き姿なのです。

.

.

昨日は他にも…

カタクリが咲いていたり…

.

.

シャクナゲがもう咲き始めていたり、”春爛漫”という風情でした。

.

.

.

そして一夜明けて今日は、京大宝生会の稽古に行ってまいりました。

こちらもようやくBOX舞台の使用が解禁されたのです。

.

そしてBOXに到着すると、なんと去年見学に来て一度だけ体験稽古をした学生の姿が。

学生「入部することにしました。どうかよろしくお願いします」

.

おお…!

京大宝生会にとってはほぼ2年ぶりの新入部員です!

新しい春の訪れとともに、京大宝生会もまた新たな歴史を刻んでいくことになりました。

.

.

現役達は早速新入部員に構えや運びを教えたり、「4回生の○○です。よろしくお願いします」と挨拶したり、何となく気恥ずかしそうで、しかし嬉しそうな様子です。

昨日の満開の「このはなざくら」のように、新入部員を迎えてパッと華やいだ春の京大宝生会の風景なのでした。

集大成の能「鶴亀」

先日の「第15回澤風会大会」では能「鶴亀」と能「小督」の2番の能が出ました。

.

そのうちの能「鶴亀」のシテを勤めた京大若手OBは、今回が初シテでした。

彼は卒業して10年にもならない本当の若手なのですが、この度”教授嘱託免状”をとる事になり、その披露の意味の演能でもあったのです。

.

.

数ある能の中で何故「鶴亀」を選んだのか。

実は彼は、京大宝生会に入部してすぐの”初舞台”が大江能楽堂で開催された「京宝連」での素謡「鶴亀」でした。

更に彼は同じく大江能楽堂での「澤風会」における初舞台も仕舞「鶴亀」だったそうなのです。

.

そして今回は能の初シテとして、やはり大江能楽堂で能「鶴亀」を舞う事になったわけです。

初舞台から10年と少しの間、たゆまずに稽古を続けた成果のひとつの集大成としての能「鶴亀」を、彼は堂々と演じてくれました。

若いながら風格のある重厚な皇帝でした。

.

.

またこの能「鶴亀」には曲名にもある”鶴”と”亀”が登場します。

子方が演じる事が多いこの鶴と亀ですが、今回は京大宝生会を今年卒業する4回生の2人に舞ってもらう事にしました。

.

.

この1年はコロナ禍の影響で、学生自演会が軒並み中止や延期になってしまいました。

京大宝生会の最高学年として、2人は本来ならば難しい曲に挑戦したり、沢山の地頭を経験したり出来た筈なのに、結果的に無観客の「冬の関西宝連」だけしか舞台に立てなかったのです。

.

.

現役時代の最後にせめて、お客様の前で華やかな舞台に立ってほしいと鶴亀のオファーを出したところ、2人は快諾してくれました。

.

実は京大宝生会の2人にお願いしたのは別の意味もありました。

京大能楽部BOX舞台には能「鶴亀」で使うのと同じサイズの「一畳台」があり、四隅の柱になる棒も完備されています。

そこで稽古すれば、能面をかけての「相舞」も合わせやすいと考えたのです。

ところが…

.

今年に入って早々に発令された緊急事態宣言により、京大能楽部BOX舞台が使用禁止になってしまったのです。。

コロナウイルスはとことん意地が悪いと、やり場の無い憤りを感じてしまいました。

しかし鶴亀の2人はその逆境にもめげずに頑張ってくれました。

.

自分で公民館などを借りて自主練をして、卒論や卒業研究の合間に澤風会稽古にも頻繁に通ってくれたのです。

大江能楽堂での申合、また当日朝の最後の合わせを経て、相舞のシンクロ率は急速に上がっていきました。

.

そして本番では、鶴と亀の相舞もその後の座る場所も、すべて完璧な舞台を見せてくれました。

.

.

シテにとっては初舞台から今までの10年あまりの稽古の集大成でもあり、また鶴と亀の4年間の現役生活の集大成でもあった今回の能「鶴亀」。

この能もまた記憶に残る素晴らしい舞台になりました。