2019亀岡浴衣会

今日は亀岡・大本宝生会の浴衣会でした。

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いつも「亀岡の花々」のレポートばかりなのですが、会員の皆さまは普段から非常に熱心に稽古を積み重ねておられます。

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今日の浴衣会では、半分以上の仕舞を会員さんだけで地謡をうたわれて、私と満次郎師は拝見しておりました。

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初舞台「鶴亀」の仕舞の方も、先週の稽古から大きく進歩しておられて、ご自分でしっかりとおさらいされたのだなぁと嬉しく思いました。

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ベテラン組の方々の仕舞の時間帯になると、さすがに皆さん落ち着いておられて型も正確です。

ほんの数年前には、この中の何人かの方々は仕舞初舞台だったのかと思うと、その上達ぶりにまたしみじみと嬉しくなりました。

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これだけの歴史があって技術レベルの高い能楽グループは、実は全国的にもそうそう存在しないと私は思います。

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今日初舞台や2回目の舞台だった方、またこの数年で順調に上達された方、そして数十年単位で続けてこられた大ベテランの方々が融合して、大本宝生会はこの先数年でまた大きく発展すると思われます。

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未来への希望を感じた今日の亀岡浴衣会でした。

大本宝生会の皆様どうもありがとうございました。

第2回吉備津神社発表会

今日は早朝に新幹線で東京を出て、岡山での「第2回吉備津神社能楽教室発表会」に行って参りました。

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幼稚園年中組から中学3年生までの13人の子供達が、この夏に稽古した仕舞と謡を吉備津神社の拝殿にて奉納するのです。

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天気予報は朝から夜までずっと雨マークでした。

半屋外の舞台なので、強く降ったら困るな…と心配しながら現地に到着しました。

やはり吉備津は雨が降っています。。

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…ところが超・晴れ男の家元がいらした効果によって、全く不思議なことに本番前に雨は上がりました。

殆ど超常現象と言ってもいいレベルの晴れ男パワーです。

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先ず拝殿に参集してから、普段は入れない本殿に子供達と能楽師全員で昇殿させていただき、参拝をいたしました。

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そして厳かな雰囲気の中で仕舞の本番が始まりました。

鶴亀、西王母、猩々…

皆真剣な表情で懸命に舞っています。

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途中休憩を挟んで、最後の中学生2人による相舞「小袖曽我」まで、13人が全員無事に舞い終えてくれました。

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そして我々能楽師の番外仕舞の後に、全員で「高砂 四海波」の謡をうたって、発表会の舞台が滞りなく終了いたしました。

幼稚園の子供も、作法まで含めてきちんと勤め上げて大変立派でした。

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その後社務所にて、家元より参加者全員に修了証が授与されました。

そして修了証を手に全員並んで記念撮影をして、名残を惜しみつつ解散いたしました。

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帰り道、神社の駐車場を通りかかると、停まっていたワゴン車の扉が開きました。

そして中から小学1年と幼稚園年中の姉妹が並んで顔を出し、笑って手を振りながら、

「来年もよろしくお願いしまーす‼️」

と大声で言ってくれたのです。

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この夏の汗と頑張りが全て報われた気がしました。

こういう出来事が私にとっては一番嬉しいのです。

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去年から人数が倍増した吉備津神社能楽教室。

来年もまたこの子供達と、更にまた新しい子供達とも会えると良いなと祈りながら、笑顔で吉備津を後にしたのでした。

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吉備津神社の皆様を始め関係者の方々に心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

お囃子方が増えました

昨日のブログで、澤風会及び京大宝生会には今お囃子を稽古している人が多いと書きました。

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試みに数えてみると、本当にたくさんの人がいたのです。

大鼓…7人。

小鼓…5人。

笛…6人。

太鼓…4人。

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なんと現在20人以上がお囃子を習っていることになります。

しかもその8割がこの3年ほどの間に新しく始めた人なのです。

お囃子ブームが来ているのでしょうか。

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流儀は中々バリエーションに富んでいます。

大鼓…石井流3人、観世流3人、大倉流1人。

小鼓…幸流4人、幸清流1人。

笛…森田流6人。

太鼓…金春流4人。

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また、つい先日驚くニュースがありました。

出来たばかりの「自治医科大学能楽部」において、葛野流大鼓の先生がなんと毎月大学までいらしてくださり、稽古をつけてくださることになったそうなのです。

つまり上の表に、大鼓葛野流が何人か加わることになります。

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これら澤風会関係者でお囃子を稽古している人達が、全員揃ってお囃子を披露する会をするというのも、ひとつの可能性としてあるかと思っております。

この人数ならば1日がかりの舞台になるでしょう。

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ただし、師匠である御囃子方能楽師を全員呼ぶと12〜3人になるので、ちょっと規模が大きくなり過ぎるかもしれません。。

将来的な夢として考えたいと思います。

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先ずは習い始めの皆さんは、どうか根気よく長く続けてくださいませ。

第14回澤風会京都大会に向けて

今日は来たる9月21日(土)に大江能楽堂にて開催の「第14回澤風会京都大会」に向けて、合宿形式の稽古を終日行いました。

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舞の稽古をする大部屋に加えて、謡稽古用の小部屋も3つ借りて、同時進行で色々な稽古をしました。

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今日の稽古のメインは能「羽衣」でした。

これを、大鼓、小鼓、太鼓、笛の4つのお囃子を実際に入れて、本番さながらの状態で稽古することにしていたのです。

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澤風会には、お囃子を習っている会員さんがたくさんいるのですが、今日は大倉流大鼓、幸清流小鼓、金春流太鼓、森田流笛という組み合わせになりました。

因みにそれぞれ習っている場所は、大鼓の方が神戸、小鼓が名古屋、太鼓が京都、笛が浜松と、見事に地域が分かれました。

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シテはこの度教授嘱託の免状を取られる、紫明荘組生え抜き(?)の方です。

稽古面をかけて、自作の衣を着て、作り物の”角台”も私が製作したものを正先に置きました。

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そして地謡は、今回女性5人が前列に並ぶことになり、今日はそのうちの3人が参加してくれました。

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このメンバーで合わせるのは今日が最初で最後です。

もちろんその状況でシテ、囃子、地謡が完璧に合うのは難しいのですが、能「羽衣」の生の空気感は見事に表現できて、大きな成果がありました。

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「羽衣」の他にも舞囃子「高砂」、仕舞、素謡、独調などを11時〜19時近くまでモリモリ稽古しました。

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人によっては、「仕舞、能の地謡、独調の地謡、小鼓」とか、「仕舞、素謡のシテ、笛」など1人何役もこなして大車輪で稽古してくれました。

日帰りですが、泊りがけの合宿に匹敵する内容の稽古が出来たと思います。

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本番まではまだ1ヶ月近くあります。

今日の成果を踏まえて、本番まで更に頑張って稽古して参りたいと思います。

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第14回澤風会京都大会

9月21日(土)午前11時始曲 於大江能楽堂。

能「羽衣」は午後12時40分頃からの予定です。

皆様是非ご来場くださいませ。

亀岡の花々〜秋に向けて〜

今日は早朝に青森を出て、またもや新幹線で日本を縦断して亀岡稽古に移動しました。

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亀岡の暑さは前回よりは少し和らいでいましたが、やはり歩くと汗が吹き出てきます。

稽古場に到着する頃には、短時間で夏バテ気味になってしまいました。。

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バテ気味とは言え、稽古の合間に夏の終わりの花を探しに出てみました。

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先ずは昨年も出会った花々です。

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紫と白の「鈴虫花」です。

本当に秋の虫が鳴き出す頃に咲くのですね。

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「鷺草」に今年も会えました。

この花の咲く一角だけが涼しそうに見えるのは何故なのでしょうか。

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「メハジキ」の花が咲いていました。

昔の子供達の遊びに、この草の茎を短く切って目蓋に挟み、勢いよく目蓋を閉じて茎を弾き飛ばす、というのがあったそうです。

今なら絶対に危険だと止められるでしょう。。

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これは「イワギボウシ」です。初めて見ました。

透き通るような清楚な花です。

閉じている蕾が、橋の欄干にある”擬宝珠”に似ているのが名前の由来です。

この花の蕾は、随分と細っそりした”擬宝珠”に見えました。

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そして、秋に向けて準備をしている植物を見つけました。

「ムラサキシキブ」の実が、仄かに色づき始めていたのです。

緑、白、薄紫と、色とりどりです。

これが秋の深まりとともに、濃紫一色になっていくのでしょう。

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秋の確実な訪れを植物から感じた今日の亀岡稽古でした。

晩夏の青森港にて

昨日の岡山吉備津神社から、今日は新幹線で本州を縦断しての青森稽古でした。

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カラッとして涼しい青森を期待して夕方に青森駅に降りたのですが、意外にも湿度が高い空気でした。

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いつもの宿のフロントで、

「もっと涼しいかと思ったら、そうでもないですね…」と聞いてみると、

「今年は変な天気で、梅雨からずっとジメジメしているのですよ」と言われました。

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そんな空気の中で、駅のすぐ前の青森港に行ってみました。

思えば今年の夏は”海”をしみじみと見ていない気がしたのです。

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すると港の入り口にこんな看板が。

え、青森港にビーチが出来たのかな?

と驚いたのですが、実はこれは「これから素敵なビーチを作ろう」というアイデア募集のような内容でした。。

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桟橋の上に行くと、港が一望出来ます。

右端にはアスパム、左手のクルーズ埠頭にはどこかの国の豪華客船が停泊していました。

大きな客船で異国を旅してみたいものです。

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こちらは下北半島方面。

一番遠くまで海が広がっています。

港内は風も穏やか、ベタ凪状態です。

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八甲田丸と北海道方面です。

雲がとても綺麗でした。

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日暮れ間近で辺りには人も少なく、10分ほど微風に吹かれて何も考えずにベタ凪の海を眺めました。

たまにカモメが飛んでいくだけで、あとはゆっくり雲が動くだけの時間でした。

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アスパム上空の雲が、なんとなく”龍”に見えてきたので撮影してみました。

右から左へと飛んでいるイメージなのですが…。

静かな海は”琵琶湖”のようにも見えて、この11月に京大宝生会が出す能「竹生島」に向けて、何か吉兆だと良いな…と思いながら、稽古に向けて青森港を後にいたしました。

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今年の夏の”海”の思い出は、どうやら今日の青森港になりそうです。

吉備津神社での最終稽古

今日は岡山吉備津神社での子供能楽教室に行って参りました。

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今回が最後の稽古で、来週にはいよいよ本番です。

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稽古場所は社務所のお座敷です。

吉備津神社拝殿での本番を想定して、番組順に待機スペースから拝殿への移動から、正座しての作法まで含めて稽古しました。

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今回の番組では仕舞「鶴亀」、「西王母」、「猩々」の3番の組み合わせが多かったのですが、そのうちのいくつかの組みでは「鶴亀」をお姉さん、「猩々」を妹が舞うという姉妹共演が実現しました。

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先に「鶴亀」を終えたお姉さん達は、例外無く妹さんの「猩々」になると、

「心配だなぁ…」

という表情で妹さんの一挙手一投足を見守っています。

それがまた実に微笑ましく見えました。

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来週の本番は半野外なので、天気と気温が気になるところです。

今日の吉備津は猛暑が少しおさまった高曇りの天気で、願わくば本番もこのような気候のもとでやりたいと思いました。

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また本番の模様もご報告させていただきます。

下からの突き上げ

今日は熱海のMOA能楽堂にて、親子向け能楽教室の舞台に出演して参りました。

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能は「土蜘」で、シテが辰巳大二郎さん、頼光が辰巳和磨さん、小蝶が藤井秋雅さん、トモが上野能寛さんと、とても若い能楽師たちの舞台でした。

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私と同時期の内弟子世代よりも、ふた世代ほども入れ替わった下の世代達が、500人の満員の見所の前で堂々と「土蜘」を演じていました。

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これまで私は先輩達の舞台を見て、「なんとかあのように謡ったり舞ったりしたいものだ」と、少しでも追いつくために努力をして参りました。

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しかし今日若手の舞台を地謡から見ていて、「下からの突き上げ」という言葉が頭に浮かんできたのです。

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少しでも気を抜いていると、この若者達に追いつかれ、追い越されてしまうかもしれないな…

と、改めて気を引き締めました。

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しかし一方で、そのような勢いのある若手がいてくれるのはとても有り難いことだとも思いました。

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先輩達に追いつこうとする努力と、下の世代に追いつかれないようにする努力。

この先は二重の努力が必要であり、結局はその努力が私自身の芸を磨くことに繋がるのでしょう。

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「下からの突き上げ」のおかげで、自分の立ち位置と今後の方針を自覚することが出来た、有り難い舞台でした。

能「竹生島」の大鼓の手付

昨日の夜の京大稽古でのことです。

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いつも元気の良い2回生が途中でBOXに到着して、

「先生!竹生島の大鼓の手付が入手出来ました!」

と謡本を差し出してくれました。

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彼女が習っている大鼓の先生が自ら朱色の墨で書き入れて下さった手付が、能「竹生島」の謡本に書き込んでありました。

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おお!これは有り難いと、私はその場で手組を確認することにしました。

ふむふむ、ここは”続け”でこちらは”コイ合”か…とやっていると、なにやら周りに人が集まる気配が。

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いつの間にやら現役達が、私を取り囲んで、興味津々という様子で大鼓の手付を覗き込んでいたのです。

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せっかくなので、

「この点の記号は”コイ合”と言って”持ち”を入れずに謡います。こっちの縦長の”リ”のような記号は”ツヅケ”で、謡も”持ち”を入れてツヅケ謡になるのです」

などと簡単なレクチャーを始めました。

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大鼓の手組に合わせて私が「竹生島」の地謡を謡うと、まだ2回生の現役もちゃんと両膝を叩いて拍子を取りながらついてきてくれます。

その拍子取りの正確さに私は驚きました。

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彼らの能「竹生島」へ向ける熱量と目の色の真剣さに、何かちょっと羨ましいような眩しさを感じた昨日の京大稽古でした。

リアル「加茂」状態

今朝起きると、昨日の「約60人の初舞台」でパワーを使い過ぎたのか、若干身体が重い感じです。

3泊した宿をチェックアウトして、相変わらずのムシっとした京都の暑さの中を「ゲストハウス月と」に向かいました。

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今日は京都紫明荘組稽古だったのです。

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「ゲストハウス月と」に到着すると、中はエアコンがよく効いています。

そして亭主さんが出て来られて、「お盆過ぎてからの暑さは何故かとてもこたえますね…」

とややお疲れの様子でした。

昨日まで2日間にわたる大きなイベント「月と 寺子屋キャンプ」で、やはりパワーを相当使われたのだろうと想像しました。

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今夏は「月と」稽古ではまだエアコンを使わずにいたのですが、流石に今日は2階の稽古場のエアコンを入れて稽古いたしました。

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途中午後3時頃に、急に外が暗くなったかと思うと”ホロホロ…”と賀茂別雷神の足音がし始めました。

そしてあっという間に雨を起こして、”トドロトドロ!!”という、リアル「加茂」状態に。

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稲光が光った直後に”ドドオーン!”と大音響が鳴り渡りました。

どうやらすぐ近所に雷が落ちたようです。

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私は雷は平気なのですが、今日の雷は中々の迫力でした。

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夕方「月と」稽古を終えて京大宝生会に向かう時にも、まだ雨が残っていました。

あれだけ降っても気温は下がらず、むしろ湿度が上がって、熱帯の国を歩いているような息苦しい暑さです。。

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京大BOXに到着して、「さっきの豪雨は皆大丈夫だった?」

と聞くと、部長が「僕は甚大な被害を受けました…」

なんと、彼は濡れ鼠でBOXに辿り着いたらしく、シャツや靴下が干してあり、靴には丸めた紙が詰めてありました。

しかし元気に「箙」の仕舞を稽古していたので、風邪などの心配はなさそうでした。

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稽古途中で、中国に留学している筈の若手OBのK君が突然顔を見せてくれました。

2週間ほど京大での学習プログラムがあり京都に帰っていたようで、またすぐ中国に戻るということでした。

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彼は永平寺で修行中のOBのT君と同学年で、皆世界の中のそれぞれの場所で自分を磨いているのだなぁと、感慨深く思ったのでした。

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京大稽古も終えて外に出ると、ようやく雨は上がっていました。

「次に京都に来る時には、少しでも暑さがましになっていてほしいものだ…」

と思いながら、まだ蒸せるような湿気の中を、東京への帰路についたのでした。