サプライズ大成功…!

昨日は夕方から京大宝生会の稽古に行きました。

新入生3名を加えて、来週末に迫った京宝連の仕舞稽古が佳境に入っています。(部長は”謡い放題2時間コース”と表現していました。実際は”謡い放題3〜4時間コース・仕舞付き”です)

最後の1人を残して、もう一息だと思った所で部長から声がかかりました。

「澤田先生、今日はお誕生日おめでとうございます。実はお祝いを持って外で控えている人達がおります」

私「え?なになに⁇」

そしてBOXの扉が開いて、ケーキを持った部員が入ってくると、室内にいた部員達がおもむろにクラッカーを取り出しました。

「おめでとうございます🎉🎉🎉」


私「なんと〜❗️ありがとうございます‼️」

びっくりです‼️‼️

また別の部員は、私の好きな日本酒「風の森」をわざわざ奈良県御所市まで出向いて買って来てくれました。

ケーキは、ケーキ屋さんでバイトしている部員のレシピでの3人がかりの手作りだそうで、見ると砂糖で模様が描いてあります。

5月15日の葵祭に因んで、葵の葉を切絵で描いてくれたのです。


私「…(嬉しさの余り言葉が出ない)」

昨年も松本稽古場でサプライズケーキを頂戴しましたが、まさか京大宝生会でのサプライズがあるとは、露ほども予想しておりませんでした。

部長「稽古中に皆相当不審な動きをしていたので、気付いておられるかと…」

いやいや、全く気付きませんでした。サプライズ大成功です。

他にもメールなどで、有形無形のお祝いを沢山頂戴いたしました。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。

林檎のケーキとても美味しかったです。

2件のコメント

山紫水明

今日は朝から大山崎稽古でした。

その後に葵祭を少し見ようかと思い、電車で北大路駅まで移動しました。

しかし人の多さに、あっさり方針転換。賀茂川で暫しのんびりと過ごすことにしました。


今頃の京都は、年間でほんの僅かにある暑くも寒くもない最高の季節です。

河原には歩く人、走る人、自転車の人、ランチの人などがたくさんでした。

上の写真は左端が比叡山、右端が大文字山です。シロツメクサとアカツメクサが咲き乱れて、山は紫で賀茂川の水は澄み透り、まさにここは山紫水明の地です。

「山紫水明」から名前をとった紫明荘稽古場もすぐ近くにあり、これと同じ眺めが見られるのです。

北大路駅前で購入したお弁当を河原のベンチでゆっくり食べて、歩いて京大へ。

これから京大宝生会で夜まで稽古です。

新入生は今日も来てくれるでしょうか。

平穏な誕生日を過ごしております。

1件のコメント

稽古用の長刀

能には何番か「長刀」を使うものがあります。更にそのうちの何番かは仕舞や舞囃子になっているので、澤風会でも常にどなたかが長刀の稽古をされています。

この長刀は扱いがなかなか難しいのですが、実はそれ以前の難しい問題があります。

「稽古用の長刀をどう調達するか」

ということです。

本物の長刀は2メートル以上あって、とてもかさばります。

出来れば折りたためて持ち運べる軽量のものが望ましいのですが、例えばこれまでのお弟子さんの例を挙げると…

①押入れの突っ張り棒に100円ショップで購入したスポンジ状の刀を結びつける。

②折りたたみ式の釣竿に、ご主人お手製の刃をテープで固定。

③園芸用の支柱をそのまま使用。刃は無し。

④頑張って自分で木工作業をして作製(本番にも使えるレベルでした)

といった感じです。

そして昨日の紫明荘稽古。

新しく長刀物の稽古を始めるお弟子さんが、実に素晴らしい長刀を持って来られました。

やはり突っ張り棒を柄にする点は①と同じなのですが、刃の部分に調理用の「木べら」をテープで固定されていたのです。

へらを刃に使うと大きな利点があります。

・しゃもじと違って形が非対称なので、どちらが峰でどちらが刃なのかが良く分かる。

・軽量でかさばらない。

・稽古が終われば料理にも使える。

何より、「家の中にある物だけを使って、全く違う用途の物を作製する」という行為が私自身実はとても好きなので、このような長刀は大変好ましく思うのです。

という訳で、これから長刀の稽古をしようという方は、釣竿か突っ張り棒に、調理用の木べらを固定することを強くお勧めしたいと思います。

…勿論、折り畳み式の立派な稽古用長刀も販売されております。念のため。

1件のコメント

なりひらのかきつはた

先日亀岡の杜若のことを書きましたが、それを読んでくださった方からまた面白いお便りが届きました。「唐衣 着つつ慣れにし 妻しあれば 遥々来ぬる 旅をしぞ思ふ」という在原業平の折句から連想して、下のような歌を作ってくださったのです。

なぜなるか

理由知りたき

日は過ぎつ

らうらうなるは

野に歌ふる歌

これは頭文字と最後の文字で「なりひらのかきつはた」という二重の折句になっています。これはすごい!と感心いたしました。
私には歌の心得はありませんが、頑張って同じルールで一首詠んでみました。

浪華女か            

凛と気高き        

人を見つ        

羅綾の衣は        

残り香もまた 

…あくまで折句なので、細かい所は目をつぶって読んでくださいませ。。

「浪華女」という字を当てたのは、一応若山牧水の元歌に対するオマージュだからです。

興味ある方は調べてみてください。

こういう言葉遊びを考えるのは、非常に楽しいですね。

せっかくなので、我もと思う方は同じルールの折句をお送りください。私が「これはすごい!」と思った歌は、作者の許可を得られたらブログで発表させていただきたいと思います。

最後にもう一首。

波遥か

理想も高き

光満つ

楽土に立つは

希望込めし旗

暑がりなのです

今日は朝から水道橋で月並能の申合だったのですが、家から能楽堂まで移動して着物に着替えただけで汗だくになってしまいました。

私は大変な暑がりなのです。
昔沖縄に行った時に、島の人達がTシャツかアロハシャツに短パン、島ぞうり(ビーチサンダル)でずっと生活しているのを見て、大変羨ましく思ったものです。

伝統芸能に携わる者の端くれとして、四季折々の着物のルールは守ることが当然、と思ってはいるのです。

…しかしながら、昨今の日本の暑さでは、ついつい「ちょっと早いけど浴衣にしようかな…」とか、「暑いからまだ絽の紋付にしたいな…」などと思ってしまいます。

スーツでは夏用の清涼感のある素材が出ているので、紋付にも「見た目は単衣、着心地は絽」のようなものがあれば良いなあ、などと汗を拭きながら考えるのでした。

…あと、手軽に洗える紋付も欲しいものです。

世界一になれます

昨日、田町稽古が終わって帰りの電車に乗ろうかと思っていたら電話がかかって来ました。

「先生!遅くなってすみません、今稽古場の前に来ました!」

元気な声は、京大宝生会で稽古していた韓国人留学生のIさんでした。

大学院に無事に入学して、また稽古を再開してくれることになっていたのです。

稽古場が閉まっていたので、前の駐車場で仕舞の稽古をしました。(四角いスペースがあれば何処でも稽古するのは、京大ではよくあることなのです)

これまで京大宝生会や澤風会では、何人かの外国からの留学生が稽古をしてくれました。

京大では、ルーマニア、中国、韓国、台湾から。澤風会でもドイツから来た高校生が稽古していました。

外国の方が日本の伝統文化を習う場合、能はおすすめだと思います。

何故なら日本人にとっても難しいので、スタートラインにそんなに差が無いからです。

京大宝生会で何年か稽古した留学生は、日本人と同様か、むしろ上手になって舞台に出ています。

しかも更に素晴らしいのは、おそらく彼らは高確率で「世界で一番宝生流が上手な○○国の人」という「世界一」の称号を手に入れられるのです。

という訳で、日本で何か日本らしい習い事を始めたい外国の方は、是非ご連絡ください。大歓迎いたします。

ただし、同じ国の方が増えると、「世界一決定戦」を開催しないといけないかもしれませんが…。

みなもとの…

今日は田町稽古で、団体稽古の謡「融」を稽古しました。

シテは源融。読みは「みなもとのとおる」ですね。

これは、謡を習っていないとちょっと読み辛い名前です。

しかし更に読めない名前がありました。

田町では和漢朗詠集などに詳しいお弟子さんに色々教えていただく時間があるのですが、まず前シテの「今宵ぞ秋の最中なる」という謡の元歌の作者が「源順」だそうです。

「源順」…読めますか?

因みに源順の詠んだ元歌はお菓子の「もなか」の名前の由来となった「水の面に照る月並みを数ふれば  今宵ぞ秋の最中なりけり」。

次に、後シテの謡「光を花と散らすよそほひ」の元歌の作者は「源忠」。

更に源融の息子は「源昇」だそうです。

現代においてはいわゆる「キラキラネーム」が全然読めないと言われますが、なんの昔の名前もなかなかの読み辛さです。

上の名前の答えは、

「源順」…みなもとのしたごう。

「源忠」…みなもとのほどこす。

「源昇」…みなもとののぼる。

だそうです。

他にも源定や源挙など、源姓には読めない人がいっぱいです。。

あまり関係ありませんが私の名前「宏司」は全くありふれた名前にもかかわらず、読みが「こうじ」なのに「ひろし」と読まれることが多いのです。

このブログを読んだ方はどうか「さわだこうじ」と読んでくださいませ。

三河の沢の杜若

げにや光陰とどまらず   春過ぎ夏も来て。  草木心無しとは申せども。  時を忘れぬ花の色。顔好花とも申すやらん。あら美しの杜若やな。

能「杜若」で、ワキ旅の僧は三河国八橋の沢辺に咲く杜若を見て、上のようにしみじみと述懐しました。

私はこの部分の謡がとても好きで、春から夏に移ろう今頃の季節になると口ずさみたくなります。

そしてまた毎年今頃になると、亀岡稽古場の杜若が開花するのです。

今日も松本から移動して、楽しみに稽古場のお堀を覗いてみました。すると…


目が覚めるような濃紫色が一面に広がっていました。

しかもこの杜若は、実は三河国八橋の杜若を移植したものだそうなのです。

つまり、在原業平が眺めて「からころも  きつつなれにし  つましあれば  はるばるきぬる  たびをしぞおもふ」と詠んだ、正に能「杜若」に出てくるその杜若と同じDNAを持った花という訳なのです。

この杜若の、思わず「はーっ」とため息をついてしまうような美しさを前にすると、冒頭のワキのような言葉が出てくるのも頷けるというものです。

旅僧の心持ちで暫し眺め入ってから、今年も満足して稽古に向かったのでした。

意外なところに…。

連休が終わって、世の中の皆様は今日からまたお仕事や学校が始まったことと思います。

私も、舞台が中心だった連休から稽古モードにシフトして、今日は松本稽古でした。

先月は甲府盆地の桃が綺麗でしたが、今日はどうでしょうか。

特急あずさで八王子を過ぎて山に入ると、今頃はやはり藤の花が目立ちます。

しかし同じ薄紫色の房状の花でも、藤とは逆に天に向かってスックと立ち上がって咲いている木が其処此処に見られました。

これは桐の花です。

桐は古代中国では鳳凰が巣を作る神聖な木だとされ、日本では平安時代に皇室が菊の紋に次いで格式ある紋として桐紋を使用しました。

その後も織田信長や豊臣秀吉など時の為政者が桐紋を重用した歴史があるようです。現在の日本国政府の紋章も桐なのです。

能装束にも「桐と鳳凰」のセットの模様のものがよく見られます。例えば「高砂」などの脇能物で後シテが着る狩衣に「紺地桐鳳凰模様狩衣」があり、他にも唐織や長絹でも見たことがあります。

このように紋様としては有名な桐ですが、現代においては「実物を見たことが無い」という人も多いかもしれません。

しかし実は皆さんは、おそらく毎日のように桐を見ているのです。

え、そんなはずは無い、と仰る方は、財布の中の500円硬貨を御覧ください。

表の図案が桐なのです。

葉っぱを緑に、その上部の房状の花を薄紫色にイメージすると、それがリアルな桐の木になります。

因みに水道橋の宝生能楽堂横の宝生坂にも桐の木があります。

今年はもう散りかけかもしれませんが、桜が終わって少しした頃に500円硬貨を手に宝生坂をのぞいてみてください。

天に向かって咲く桐の花を見つけることが出来ると思います。

大和宝生会

今日は朝から、奈良で催された大和宝生会40回記念大会に出演して参りました。

奈良に縁のある方々が集まる舞台で、澤風会からも「奈良に縁のある方に縁のある人」というスタンスで、何人かの会員が仕舞と謡に参加させていただきました。

このような地域主体の催しが年1回で40回も続いているのは大変素晴らしいことだと思います。

最高齢の方は93歳で、しかし「この人は最初はいなかったのよ」という人があり、それに対して「はい、私は第2回からの参加なのです」と返しておられたのが更に良かったです。

奈良という、古からの空気感が今も残されている大らかな土地で、この大和宝生会がこれからもずっと歴史を積み重ねて行かれることを、心より祈っております。

40回おめでとうございました。