満次郎先生の舞囃子稽古

昨日は香里能楽堂にて、全宝連東京大会に出す京大宝生会の舞囃子「高砂」と「班女」を辰巳満次郎先生に稽古していただきました。

超御多忙なスケジュールの中、学生にも熱い稽古をつけてくださる満次郎先生。

京大宝生会が到着した時には、舞台では神戸大学宝生会が熱い稽古の最中でした。

昨年復活して、今年もめでたく新入生を迎えた神戸大学。東京大会での舞台が楽しみです。

そして京大の稽古になりました。

満次郎先生の稽古は、皆本番と同様か、むしろ本番以上の緊張感で臨みます。

私もまた同じように緊張いたします。何しろ学生は、もしかすると一生に一度かもしれないという覚悟で舞囃子に挑戦するのです。

一通り舞い終えての先生のご注意を、シテは無論のこと地謡も頷きながら食い入るように見聞きしています。

「構えた時の上体はもっと力を抜いて、下に向かって力をグッと入れて」「中ノ舞の笛が吹き出す時の囃子の手を覚えること」と言った様々なご注意をいただき、最後に「大体良いでしょう」というお言葉をいただいて、稽古は無事終わったのでした。

あとは京大で最後の仕上げの稽古をして、全宝連当日の早朝にある申合を迎えるわけです。

この他に仕舞や素謡もあり、学生は授業やバイトの合間を縫って、本番までBOXで毎日稽古することでしょう。

彼らの熱い舞台を是非ご覧いただければと思います。

全国宝生流学生能楽連盟自演会:

6月24日(土)25日(日)  水道橋宝生能楽堂にて両日とも朝10時始曲。

因みに舞囃子は土曜日の12時半〜13時頃からです。

食堂に入れない話

今日はひと際ゆるいお話です。

ここ最近、京都で晩御飯を食べようと行ったお店に何故かことごとく入れない、というお話。

最初は、京都駅近くの「じじばば」というすごい名前のお店でした。稽古が終わってから遅めの時間に行ったので、まあ入れるだろうと思ったらサラリーマンの皆さんで満席でした。

これはまあよくある事で、仕方ないです。

次は一昨日。

京大稽古が23時半過ぎまでかかり、四条河原町の宿近くに着いた時には日がかわっていました。

もう空腹で目が霞みそうです。

しかし私は、四条河原町近くで安くて美味しい晩御飯を、その時間からでも確実に食べられるお店を知っていました。

午前0時開店、朝8時閉店の「深夜食堂」のようなお店で、「夢屋」という名前です。

頼む物まで考えながら店の前に行くと、無情にも「月曜定休」の看板が…。仕方なく晩御飯はチェーン定食屋で簡単に済ませました。

そして昨日。

曲名看板シリーズの撮影も兼ねて、下のお店に行ってみました。敷居の低い大衆居酒屋さんで、私の好きなタイプの非常に気軽なお店です。火曜日は営業しているようです。今度こそは入れるでしょう。

…と思ったら入口が閉まっています。あれあれ?と思って扉をよく見ると…。

なんと!これはさすがに「がーん」とショックを受けてしまいました。

もしや私が食べに行こうと思った為に、店主が骨折したのでは…とまで思いました。

今夜も晩御飯を何処かで食べないといけないのですが、今度は何が起こるのか、こわいような楽しみのような気分です。。

紛らわしい地謡

昨日は京大宝生会現役の稽古でした。

全宝連東京大会の舞台を約2週間後に控え、大変熱のこもった稽古になりました。

先月の関西宝連から仕舞の演目を変える部員が沢山いる為、シテもさる事ながら地謡が苦労することがあります。

謡の中には、非常に似通った言い回しが出てくることがあるのです。

例えば羽衣クセと半蔀クセで「内外の神の御末にて」と「御嶽精進の御声にて」。「みすえにて」と「みこえにて」が紛らわしいのです。

また竹生島と嵐山で「有縁の衆生の諸願を叶え」と「悪業の衆生の苦患を助け」。同じ曲で「国土を鎮め」と「国土を照らし」。

また国栖と嵐山でも、同じ「一足を引っさげ」という文句の後に「東西南北〜」と続くか「悪業の衆生の〜」と続くか等々、キリがありません。

別々の舞台で謡うならばそれ程問題にはならないのですが、これら全部が同じ日にある時には結構大変です。

しかも昨日の稽古は19人フル参加だった為、長い人では「謡い放題7時間コース、舞囃子付、食事無」だったので、気力体力も限界に近かったと思います。何度か地謡が上のような紛らわしい文句の罠にはまって、ちょっとだけ混乱していました。

まだ本番まで2週間ありますし、地謡は一番につき4〜5人いるので、何とか頑張ってほしいものです。

曲名看板5  舞物編

曲名看板シリーズ、今回は曲名ではなく「舞」の名前です。

「ギャラリーかけり」と読んでください。

これは「」のかっこみたいですが、あえて「羯鼓」と脳内変換してみてください。

「楽」が寝ているので、これは「邯鄲」の楽だと思われます。


「完全個室」に「隠れ」る神楽ならば、これは「三輪」でしょう。

おまけです。そのうちやりたい「舞の型編」の予告です。

今日はこの辺で失礼いたします。

ご当地ソング

昨日の京大OB会十和田大会では、「錦木」「遊行柳」「善知鳥」といった素謡が出ました。

これは東北地方の「ご当地ソング」とでも言える曲目で、秋田、福島、青森などが曲の舞台になっています。

ある場所が舞台の曲を、その土地に行って謡うのは、その曲への理解が一層深まる気がします。

また東北地方を旅する前にこれらの曲を勉強することで、東北地方の風土を理解する助けになる気もするのです。

「東北」の素謡が出たのはちょっと笑いましたが。。

「善知鳥」の素謡では、最後の仕舞の部分を謡わずにとっておいて、今日の観光で青森市内の「善知鳥神社」に行った時に境内で謡って奉納するということでした。

私は水道橋の月並能に出演する為に観光には参加しませんでしたが、善知鳥神社で謡う善知鳥は、また思い出に残るものだったろうと思います。

「ある曲の舞台に行って、その曲を謡って楽しむ」というのは、交通機関が発達した現代における「謡十徳」のひとつだと言えるのではないでしょうか。

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京大宝生OB会全国大会

本日青森の十和田市民文化センター能舞台にて、京大宝生OB会の全国大会が開催されました。

幹事の高橋さんの尽力により、盛大な素晴らしい舞台になりました。

全国から約30人のOBOGが集まり、また見所には高橋さんのお仲間の十和田宝生会の皆様始め、驚く程大勢のお客様がいらしてくださいました。

京大の舞台は皆さん出来るだけ沢山謡ったり舞ったりしたいので、時間が延びるのが常なのですが、本日もきっちり20分延びたのもまたOB会らしいと思いました。

OBの皆さんは全国それぞれの土地で、色々な職分に付いて宝生流を続けておられるのですが、年に一度しか顔合わせしない人でも謡うと声が良く揃うのは、宝生流の強みだと改めて実感いたしました。

これから宿で、これまた恒例の賑やかな宴会が始まります。

取り急ぎご報告まで。

京大宝生会の同級生達

私が京大宝生会の現役だった頃、同学年は私も含めて4人いました。

文学部が2人、医学部が1人、私が農学部でした。

その後みんな色々な人生を経て、文学部は1人がインド哲学の博士になってドイツ在住。

もう1人の文学部は青森県で高校の先生に。

医学部の1人は、宝生会の先輩と結婚して東京で耳鼻科の先生になりました。

そして農学部の私は能楽師に。。

ドイツの同級生とは、数年前にミュンヘンの能楽ワークショップで久々に再会しました。

東京の同級生は、私の舞台をご家族と一緒に度々見に来てくれます。

そして青森の同級生は、卒業後も宝生流をずっと続けて、今では教授嘱託になって藪克徳師の門下で活躍しています。

その青森の同級生が幹事になって、今年の京大宝生OB会全国大会が週末に青森県の十和田で開催されるのです。

私も数年ぶりにOB会全国大会に参加させていただきます。

京大宝生OB会は世代や立場に全く関係無く、同じノリの人々の集まりなので、いつも参加すると「またここに帰って来たなあ」としみじみ嬉しく思います。

皆さんとの再会を楽しみに、十和田に向かおうと思います。

中学校ワークショップ

今日は千葉県の中学で能楽教室をやって参りました。

体験型ワークショップで、型や謡などを少しずつ稽古して、最後に仕舞羽衣と鞍馬天狗を観てもらいました。

その後に質問の時間を設けたのですが、中学生らしい質問がいくつか出ました。

①舞台に出ると緊張すると思いますが、緊張感を克服する方法はありますか?

②舞台で大きな失敗をしない為に、何に気をつけていますか?

③能楽師という仕事をする上で、特に必要とされることは何ですか?

おそらく、日々の中学校生活の中で緊張したり失敗したりすることも沢山あるのでしょう。

また将来どんな職業に就てどんな大人になるのかを考える時期でもあると思います。

この世代の質問に答えるのは、ある意味責任重大です。

うーむと考えて、答えた内容は…

①緊張感を克服するには、やはり稽古するしかありません。稽古が足りない舞台は、不安で緊張してしまうので、その為に間違えることもあります。また「慣れ」という要素もあります。同じ内容でも、何度も繰り返し経験することで過度に緊張しなくなります。

②失敗は気をつけていてもしてしまうものです。寧ろ失敗した後が大切です。狼狽えずに何事もなく舞台を続けられたら、観客には間違いと気付かれないものです。失敗した瞬間に如何に冷静になれるかが重要と思います。

③一見理不尽に思える稽古にも耐えられる、忍耐力でしょうか。これは体育会系の部活でも同じ経験をするかもしれません。あとは謡を覚える記憶力です。

こんなことを、もっと取次筋斗に話して来ました。

中学生達は最後まで集中して見聞きしてくれました。

この中から将来1人でも2人でも、能を稽古したり舞台を観に来たりするようになってくれたら。

そう期待しながら、今後も学生向けの能楽教室を頑張って参ります。

御依頼があればいつでも何処でも参りますので、もし御希望の方はお気軽にご連絡くださいませ。

着物が好きな子供達

昨日6月6日は、子供が6歳になると芸事の稽古を始めるのに良い日だそうです。

世阿弥も満年齢の6歳位で稽古を始めるのが良いと書いていますが、最近はもう少し早く稽古開始する子が多い気がします。

澤風会松本稽古場でも、5歳にして早くも3番目の仕舞を稽古している男の子がいます。

一昨日の月曜日に稽古に行くとお母さんが、「子供が今日はどうしても紋付を着て稽古したいと言うのです」。

その子はこの8月の合同浴衣会「七葉会」で宝生能楽堂デビューも決まっています。本番を想定した稽古も良いと思い、きちんと紋付袴を着付けて仕舞「鶴亀」を稽古しました。

とても嬉しそうで、帰った後も「幼稚園にも紋付袴で行きたい!」と言ってお母さんに宥められているそうです。

そう言えば、江古田稽古場で今はもう高校生になった女の子も、稽古を始めた幼稚園の頃はいつも着物で、幼稚園にも着物で行っていたようです。中学生になった頃からさすがに洋服になりましたが、今では芸歴10年のベテランです。

松本の男の子も、8月に能楽堂デビューして、今後もずっと続けて行ってくれたらと思います。

着付けはいつでもしますので。

面白写真1

すみません、今回は能には殆ど関係無いのですが、毎日いろんな場所に行く中で見つけた面白い看板や事象などの写真をいくつか紹介させていただきます。

家の近くで。何故背後を威嚇するのでしょうか…?

この猫が行ったら、心の叫びにこたえてただで魚くれるのでしょうか…?

以前の「開花宣言」というブログに載せた写真の裏手には、子パンダが遊んでいました。

「落雪注意」

「鹿注意」

「武井砂糖店」の隣は、良く見ると「武井歯科」です。上手い商売です。

最後は多少能に関わるものを。この椅子は本気で欲しかったです。残念ながら売り物ではありませんでした。
今日はこの辺で失礼いたします。曲名看板も鋭意蒐集中です。