京大OBの結婚式

今日は浜松で、京大宝生会OBの結婚式がありました。

私を含めて、宝生会OBも何人か参列させていただき、披露宴で仕舞を出しました。

色々新鮮な場面があり、とても良い式でした。

「人前式」というのは初めての経験でしたが、形式張らず好感が持てました。

また入場からずっと、新郎が仕舞の「かまえ」をしていたのが微笑ましかったです。

披露宴の余興として仕舞「加茂」をOB代表が舞った後に、サプライズで新郎自ら立ち上がり、「あら面白の音楽や〜」と仕舞「難波」を舞い始めて、会場も盛り上がりました。

そしてお色直しの後に洋装で登場した新郎新婦は、なんと大量のシャボン玉が舞う中を自転車に乗って会場に入って来て、これまた大喝采を浴びていました。

イメージ図↓

新郎新婦の出身高校の応援団の、どことなくユルい応援パフォーマンスも何とも味があり、肩肘張らない非常に心地良い時間でした。

最後の御両親に向けての新郎新婦の挨拶の後に、式場のスタッフで涙ぐんでいる人がいて、「この式場のスタッフは、自分の仕事に対して本当に真摯に向き合っているのだなあ」と感心しました。

新郎は1週間後の澤風会で仕舞を舞ってくれる予定なので、またそこで今日の話が色々出来ると良いです。

本日はおめでとうございました。

ひこぼしくん

先日のブログで、枚方市から交野にかけて七夕伝説があると書きましたが、それに因んだゆるキャラ「ひこぼしくん」が、既に枚方市のPRのために活動していたようなのです。

因みにお隣の交野市のゆるキャラが「おりひめちゃん」です。

ひこぼしくん、なかなか好い男です。

そしてなんと今日は、香里能楽堂であった枚方市の小学生向け能楽教室に、その「ひこぼしくん」がやって来てくれました!


持っているのは、よく見るとなんと五雲の扇です。

ひこぼしくんは、今日は枚方市の名所や見どころを案内する仕舞を舞ってくれたのです!

ますます好い男ですね、ひこぼしくん。

ひこぼしくんは無口なのですが、今「ゆるキャラグランプリ」で上位進出を目指して、日々頑張って活動しているとそっと話してくれました。

皆さん、「ひこぼしくん  ゆるキャラグランプリ」で検索していただいて、かれと「おりひめちゃん」への投票を是非よろしくお願いいたします。

また彼が仕舞を舞ってくれそうな時には、皆様にもお知らせしたいと思います。

頑張れ枚方のひこぼしくん!

初めてのお問合せ

当ホームページを立ち上げてから9ヶ月と少し経ちました。

ホームページのそもそもの目的が「出会った方々に能楽の楽しさを知っていただく」ことと、それに付随して「澤風会のお稽古のPR」というものでありました。

しかしながら、お問合せフォームからのお問合せも中々無く、実質的に既に知り合いだった方々や、澤風会の会員の皆さんとの情報共有の場として、9ヶ月運営して参りました。

それが今月に入って、全く新規の方から「お稽古を始めたい」とのお問合せを初めて頂戴したのです。

また同じくつい最近、ホームページを見たという方より「能楽師を撮影したいのでモデルになってもらえないか」とのお問合せもありました。

私としては、このホームページが縁でお稽古を始めて下さったり、また知り合いになって下さる方が唯1人でもいらしたら、ホームページ立ち上げの意味があると思っておりました。

なので、今月に入ってのこの2件のお問合せは、実は嬉しくて仕方ないのです。

お稽古を始めたいという方は来週から、また撮影したいというカメラマンの方とは11月にお会いする予定です。

このホームページから始まるご縁がこれからどう広がり、また繋がっていくのか、本当にわくわくしながら日々を過ごしております。

このページを御覧になって能楽に興味を持たれた方は、お問合せフォームよりどうかお気軽にお問合せくださいませ。

大喜びで返信させていただきます。

どうかよろしくお願いいたします。

和氣乃會に出演致しました

今日は水道橋宝生能楽堂にて、ワキ方の御厨誠吾師主催の「第2回  和氣乃會公演」に出演して参りました。

ワキ方の「ワキ」と和氣藹々の「和氣」をかけたネーミング、素敵なセンスだと思います。

実は御厨さんと私は共に学生クラブ出身であり、その昔金沢の全宝連大会で私が酔い潰れた時に御厨さんに大変世話になったことがあります。。

しかも今日の会のテーマが「能とお酒の饗宴」…。

お酒が出てくる能は沢山ありますが、今回宝生流の演目は、お酒の神様である「松尾明神」をシテとする舞囃子「松尾」でした。

能楽堂には英国出身の日本酒杜氏フィリップ・ハーパー氏もいらして、御厨さんと対談をされるとのこと。

対談の題名「能とお酒〜時空を超えて旅するタイムマシン」というのも大変素晴らしい言葉だと思います。

昔の日本人の心がそのまま現代に運ばれて来て、今の能や日本酒がある訳で、確かに能や日本酒はタイムマシンと言っても良いのですね。

帰りには、フィリップ・ハーパー氏の醸した今日の公演のための特製の日本酒を頂きました。

今夜は潰れないように気をつけて、このお酒をゆっくりいただこうと思います。

御厨さん、ご盛会おめでとうございます。

子供パワー

松本稽古場は、何度も書いておりますが「子供率」が非常に高い稽古場です。

昨日も稽古に行くと、澤風会最年少の5歳の男の子が「ザリガニ獲った!」とペットボトルを改造した即席水槽を見せてくれました。

私も小学生の頃にはよくザリガニ釣りをしたものです。松本の子供達は今でもちゃんと(?)川で遊んでいるのだなあと嬉しくなりました。

しかしこの子、稽古が始まるとすごいのです。

今は「西王母」の仕舞を、お母さんの打つ太鼓に合わせて舞う稽古をしています。

合わせ所の謡もきちんと覚えて、待つ所はちゃんと待ってくれます。

この歳で「舞囃子」を舞えている訳で、これは本当に大したものだと思います。

しかも、次は立場を入れ替えて、お母さんの仕舞「西王母」に合わせて太鼓を打つ、ということまで稽古しているのです。

子供がこれだけ頑張っていると、そのパワーに触発されて自然大人も頑張らねば!と思って稽古場全体が活気付いてきます。

10月15日の「松本澤風会」がとても楽しみになって参りました。

昨日はまたもう一つ子供の嬉しい話題がありました。

「先生お久しぶりです」

おお、なんと!松本稽古場の立ち上げメンバーで、現在は結婚して静岡在住の「まきさん」が遊びに来てくれました。

しかもその足元には、そっくりな顔の小さな女の子が。

「2歳になりました」

前に会った時は0歳でお母さんに抱っこされていましたが、今はもうしっかり歩き回っています。

これまで子供達を稽古した経験からすると…

私「再来年くらいから稽古できますね!」

まきさんのお父様も松本澤風会で稽古されていて、上手くいけば三代で舞台で共演、という夢も膨らみます。

昨日は小学4年生のふうちゃんが、既にお姉さんの風格で2歳の女の子の世話をしていたのも、また微笑ましい光景でした。

松本の子供達に沢山の元気をもらった一日でした。

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コザの町、叫ぶ人

また台風が来ています。今回は勢力が強いらしく、被害が出ないように祈るばかりです。

私自身は、今日は松本稽古なので雨模様の中を特急あずさで松本に向かっております。

つらつらと台風の経験を思い出してみると、中でも印象深いのが沖縄で遭遇した台風でした。

私は内弟子時代にダイビングの免許を取り、短い休みの時には毎回沖縄に潜りに行っていた時期がありました。

もう10年以上前のある年、近づく台風のコースを気にしながらも無事にダイビングを終えて、あとは帰るだけだと翌朝空港に行ったら、なんと私の便から飛行機が欠航になってしまいました。

日程に1日余裕を持たせていたとは言え、これは困ったことです。。

とりあえず携帯で国際通り近くに宿を確保すると、あとは夜まで何もすることが無くなりました。まだ午前10時です。

空港のバスターミナルに出て、適当なバスで終点まで行ってみようと思いました。

見知らぬ町にバスで向かうというのは、何故知らず気分が高揚します。

目に止まったのが「コザ」という行き先表示でした。

何となく米兵が行き交うエネルギッシュな町、というイメージがあります。

しかし1時間ほどバスに揺られて到着した真昼のコザは私のイメージとは全く異なり、人影まばらな寂しい町でした。

商店街も台風に備えてなのか開いている店はあまりなく、かろうじて見つけた「元祖タコライスの店」という所で美味しいタコライスをいただき、またバスで国際通りまで戻りました。

宿に入ると今度こそする事がなくなり、ベッドでゴロゴロしているとメールが来ました。

今回のダイビングで世話になった、荒くれ男のインストラクター、忍さんからです。

「飛行機どうだった?」

「欠航でした。国際通りの宿にいます。」

返信すると、今度は電話が。

「海見に行こうや」

「いやいや、危ないですって!やめましょう!」

「絶対安全な場所があるから!これから車で迎えに行くよ」と言って電話は切れました。

忍さんは、ゴマモンガラ(気性が荒い魚)の模様をデザインした名刺を持っていて、本人も何となくゴマモンガラのイメージなのです。

忍さんの車で、空港近くの大きな橋に向かいました。

橋は高い所にあるので、路肩に停めた車内から、確かに安全に荒れ狂う海を見ることが出来ます。

驚いたことに、我々の車の側で外国人男性が1人、車外に出て橋の欄干に掴まり、シャツと髪を強風にはためかせながら海に向かって何か叫んでいました。

それを見た忍さん「お前もあれやってみるか?」

「絶対いやです。」

それから夜までをどう過ごしたのか、晩御飯を忍さんと食べたのかどうか、全く記憶に残っていません。

というか、その旅はダイビングの記憶も何故か殆ど無く、寂しいコザの町と、荒れ狂う海に叫ぶ外国人だけが今も強く印象に残っている、不思議な旅だったのです。

台風のことをつらつらと考えるうちに、特急あずさは甲府までやって来ました。

重ねて今回の台風の被害が少ないことを祈りつつ。

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夜討曽我の鬼王

今日は水道橋の五雲会にて、能「夜討曽我」のツレ鬼王を無事に勤めて参りました。

「夜討曽我」は7年前に京都において、チーム京大宝生会で思い出深い舞台を経験しております。

また私自身が鬼王を勤めるのも2回目で、稽古では山ほどやっているのですが、やはり本番に直面すると色々考えて緊張してしまいます。

特に本番だけでやる所作の「素襖の片袖を脱いで、また元に着直す」というのが、舞台上でスムーズに行くかが最大の問題でした。

「舞台に立つ時は緊張感を持って」とは良く言われることで、当然のことと思うのですが、一発勝負の所作をする場合には、むしろ「いかに緊張せずに静かな心持ちでいられるか」が大切なように感じます。

落語の古今亭志ん生師匠が高座で居眠りをして、それをお客様もあたたかく見守っていたという話を聞いたことがあります。

高座でそこまで弛緩出来るのは志ん生師匠ならではと思いますが、舞台上で「緊張」しながらもどこかで「リラックス」というか、「心に余裕を残しておくこと」が必要なように思います。

今日の舞台もまた勉強することが沢山ありました。

因みに来年5月には、今度は私がシテの能「夜討曽我」があります。

今日の経験も活かして、また良い舞台を作って参りたいと思います。

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隙間花壇  9月

今朝久々に隙間花壇に新しい花を見つけました。


まだまだ勢いのあるオシロイバナの向こうに、特徴的な赤い花が。


ヒガンバナでした。

葉っぱも無しに地面からいきなりズイッと伸びた茎の先端に、真紅の大きな花がひとつだけ咲く…と認識していたのですが、これは5〜7個の花が放射状に固まって咲いているそうです。

それにしても、インパクトのある立ち姿です。

その凄みさえ感じさせる外見から、あまり良くないイメージも持たれている花ですが、お彼岸の近い9月のこの時期。

列車の車窓などから、田圃の畦道がヒガンバナで赤く染まっているのを見るのは、また季節が深い秋へと進むのをしみじみ実感させてくれます。

埼玉県高麗の巾着田には、なんと500万本のヒガンバナが咲くそうです。

しかし「隙間花壇」のヒガンバナは「2本」…。何しろ隙間ですからね。

このくらいの本数が、この花にはちょうど良い気もします。

また、日本に無数に咲くヒガンバナは、何と総て遺伝的に同一の個体だそうです。

稲作の伝来と共に大陸から来たという、その時のままの個体を今自分が見ているということになります。

ヒガンバナにもまた、悠久の時間の流れを感じてしまいました。

桜井市民会館にて

今朝9月12日は信州松本で目覚めたのですが、携帯のニュースを見ると奈良で豪雨が降って、桜井市にも避難勧告が出たとか。

バスツアーで行った辺りは大丈夫だったのか心配です。。

その9月9日にあった「能楽師と周るバスツアー」は、桜井市民会館に到着して皆さんをホールの座席に御案内したところでなんとか無事終了いたしました。

私はツアコンから能楽師に戻って、急いで楽屋へ。

今度は「桜井外山座宝生流〜能の故郷公演〜」に出演するのです。

宗像神社では翁に続いて仕舞「高砂」を奉納された辰巳満次郎師による、仕舞「三山」。そして京都茂山家の狂言に続いて、最後には再び宝生和英宗家の能「三輪」という番組です。

天香久山、耳成山、畝傍山の「大和三山」がすぐ間近にあるこの地で舞われる仕舞「三山」。

そして先程参詣したばかりの大神神社周辺が舞台の能「三輪」。

朝からの宗像神社→多武峰→大神神社というツアーを経て舞台に臨むと、体験してきたばかりの光景と、眼の前で展開される能のシーンが奇妙にシンクロして、不思議な既視感を覚えました。

能「三輪」が終わったところで扇を置くかと思いきや、附祝言「五雲」がありました。

朝一番のバス車内での附祝言「五雲」鸚鵡返しから始まったこの日を、最後にまた「五雲」を謡ってめでたく締めくくれた訳です。

帰りの近鉄電車のホームで、東京から来られた3人組のお客様に声をかけられました。

それぞれ別の先生に宝生流を習っておられるのとこと。

また今日は他にも、遠くは熊本や、富山、福島などからいらした方々から「私は○○先生について宝生流を稽古しております。今日は宝生流発祥の地をひと目見たいとやって参りました。」とお声をかけていただきました。

普段はなかなか一堂に会することのない全国各地の流友が、今回のツアーと公演のおかげで宝生流発祥地にて集まることが出来たのです。

今後これらの方々に何処かの舞台でお会いした時に、「あの時のバスツアーに参加していたのです!」などと思い出話が出来る日が、きっと来ることでしょう。

私自身にとっても色々と貴重な経験を積むことが出来、また嬉しい御縁の沢山出来た今回の宝生流故郷公演でした。

関係者の皆様どうもありがとうございました。

大神神社にて

能楽師と周るバスツアーは、多武峰を発って今度は「大神神社(おおみわじんじゃ)」へと向かいました。

「大神」と書いて「おおみわ」と読む読み方は、古代に定められた読み方が現代まで伝わっているということで、ここは日本で最も古い神社のひとつなのです。

私にとっては今回のツアーで唯一、これまで何度も訪れたことのある地でした。

実は大神神社参道のすぐ横にある三輪素麺の有名店「森正」の店主森さんが、澤風会の会員なのです。

お店があまりに忙しく、お稽古は仕舞「三輪キリ」の途中でちょっとお休み中なのですが。。

その御縁で、数年前に澤風会の一行で大神神社を案内していただいたことがありました。

鳥居の起源を想像させる神秘的な結界「三ツ鳥居」を拝見させていただき、また御神体である三輪山に登拝させていただいたりしました。

その後も京大宝生会の葛城能合宿の時に訪れたり、初詣をしたりと何度もお参りさせていただいております。

それらの訪問の時、普段はそんなことを全く感じない私でも、「人知を超えた存在に見守られている」という不思議な感覚を味わう出来事が何度かありました。

そして今回久々に訪れた大神神社。

夕方の公演がある為にあまりゆっくりした時間がとれませんでしたが、参拝だけはしっかりしようと参道の階段を登りました。

土曜日で参拝客は多かったのですが、巨木の立ち並ぶ参道から、一転して明るい陽の降り注ぐ拝殿にかけて満ちている荘厳な空気感には、やはり圧倒されました。

能「三輪」で玄賓僧都の衣が掛けられていた「衣掛の杉」を見て、参拝を済ませて参道を降りていくと…

「澤田先生!」

なんと鳥居の脇に「森正」店主の森さんがわざわざ出てきてくださいました!

「夕方の公演、時間がとれたら観に行きますね。」

「ありがとうございます。紫明荘にもまたいつでもお稽古いらしてください!」

「そうですね💦アハハ…。」

森さんの変わらない笑顔に見送られて、バスツアーはいよいよ最終目的地、桜井市民会館へと出発。

大神神社参道横にはなんと新しく能楽堂が建てられるとのことで、その工事が始まっていました。

大神神社と能楽が、今後益々強い御縁で結ばれていくと良いと思います。

桜井市民会館での公演の模様はまた次回にさせていただきます。