隙間花壇〜遅咲きの梅と早咲きの桜〜

今日は伊豆の大仁での稽古でした。

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午後に家を出ましたが、久しぶりの晴れ間で嬉しくなりました。

気持ち的にも、昨日澤風会郁雲会の申合が終わって若干余裕が出てきました。

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そこで行き掛けに、これもちょっと久しぶりに自宅マンション横の「隙間花壇」をじっくり覗いてみました。

最近マンションの大規模な改修工事が始まり、「隙間花壇」の辺りに足場が組まれたりして心配していましたが、どうやら草木は無事のようです。

そして…

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短い時間しか差し込まない日光を懸命に吸収して、梅の花が開いていました。

亀岡で見た一番早い梅と比べると、3週間程も遅い開花だと思います。

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紫陽花の新芽も出ていて、ようやく「隙間花壇」にも華やかな季節が巡ってきたようです。

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嬉しくなって伊豆に移動して、夜まで稽古しました。

終わって伊豆箱根鉄道の駅まで来たところで、ちょうど三島行きの電車が行ってしまいました。。

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いつもなら残念に思うところですが、今日は次の電車までの15分で探したいものがあったのです。

駅から適当に道を歩いて、ほんの1〜2分でそれを見つけました。

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民家の庭先に、早咲きの桜「河津桜」が咲いていたのです。

しかもライトアップまでされていました。

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既に葉も出始めており、散りかけギリギリの時期だったようです。

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同じアングルでフラッシュを焚くと、立体感が出て花の色が濃くなりました。

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今年もまた桜に出会えたことをしみじみと幸せに思いつつ伊豆箱根鉄道に乗り込んだのでした。

“遅咲きの梅”で始まって”早咲きの桜”で締めくくる1日になりました。

春はもうそこまで

今日から全国で国立大学の入試が始まるというのに、東京は朝から中央線総武線が停電事故で止まってしまいました。

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この事故で28万人に影響が出たとニュースでやっており、その中には受験生も大勢いたことでしょう。何もこんな日に…とやり場の無い憤りを感じてしまいました。

受験生の皆さんは様々な困難をどうか乗り越えて、最善を尽くしてほしいと祈っております。

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三ノ輪の自宅マンション敷地内にある「隙間花壇」では、日当たりの悪い中でも梅の蕾が膨らんでいました。もう数日で開花すると思われます。

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松本稽古に向かう中央本線の特急あずさから見える八ヶ岳は、雪がほとんど無くなりました。

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春は確実にもうそこまで来ています。

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今春京大に入学して宝生会に入ってくれるはずの人達も、今まさに試験会場で闘っているのでしょう。

繰り返しですが、受験生の皆さん最善を尽くして良い結果が出るように、心から祈っております。

亀岡の花々・隙間花壇〜花実の時を違えず〜

「隙間花壇」のコーナーがすっかりご無沙汰になってしまいましたが、ちゃんと去年同様に夜には”オシロイバナ”がたくさん咲いており、また今朝は亀岡稽古の行きがけに真っ赤な”ヒガンバナ”が咲いているのを見つけました。

「草木心無けれども、花実の時を違えず」という謡の通り、ちゃんと昨年と同じ時期に顔を見せてくれました。

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その後亀岡に移動して稽古場に到着すると、こんな光景が目に入りました。

先日の台風21号の影響で、何十本という木が倒れてしまったそうなのです。

中には100年近い樹齢の木もあったとか。

痛々しい光景でした。

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そして去年ブログで書いた、渡りをする蝶”アサギマダラ”がやって来るという”フジバカマ”の花が今年も咲き始めていました。

何ヶ所かの”フジバカマ”を見てみたのですが、”アサギマダラ”はまだ時期が早かったのか見つかりませんでした。

これから来ると思われますが、「もしかしたら台風の影響を避けて、関西を迂回して渡ってしまった可能性もある」と聞きました。

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今年の異常気象は、蝶や鳥の渡りにも影響するのかもしれません。

アサギマダラがこの秋も無事に南国への旅を終えてくれるように、ただ祈るのみです。

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今回は新しい花を探す時間があまりありませんでした。

急いで探したのがこちら。

これは「イヌショウマ(犬升麻)」です。

食用になる「サラシナショウマ」に似ているけれど異なるので、「非升麻(イナショウマ)」から訛って「イヌショウマ」になったという、ちょっと可哀想なネーミングの花です。

花自体は白とピンクが混じった綺麗な色どりでした。

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熱帯植物園の中に鮮やかな花を見つけました。

これは「ショウキズイセン(鍾馗水仙)」という植物で、ヒガンバナの仲間だそうです。

黄色いヒガンバナがあると最近聞いたばかりなのですが、これがそうなのでしょうか。

写真は私の好きな田中一村の絵にありそうな構図になりました。

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今日はこれにて失礼いたします。

次回の亀岡稽古はもう10月半ばになるので、季節はだいぶ移ろっていることでしょう。

またその折の花をご紹介したいと思います。

隙間花壇〜梅雨入りの頃〜

今日は近畿から関東まで一気に梅雨入りしたようです。

思えば去年の梅雨入りの頃には、明け方の大きな雷で起こされたりしていました。

今年の梅雨は今の所、しとしと雨のおとなしい感じですね。

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喉を出来るだけ使わないように、昨日の亀岡稽古から帰った後は家から出ずに一言も口をきかずに、蜂蜜を舐めながら先ほどまで過ごしました。

何やら「くまのプーさん」になったような気分で、夜の田町稽古に向かおうと家を出ると…

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隙間花壇のガクアジサイがしとしと雨に濡れて、如何にも梅雨らしく咲いていました。

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しかしよく見ると、地面近くには違う花も見られます。

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なんと、もうオシロイバナが咲いていました。

紫陽花と白粉花の競演。

春が過ぎて、また暑い夏に確実に向かっていることを教えてくれました。

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「うりずん」の頃

昨日の雨から一転して、今日は朝から晴れ上がりました。

江古田稽古の行き掛けに「隙間花壇」を通ると、紫陽花の葉がすっかり繁っていて、地面にはオレンジ色の「虞美人草」もたくさん咲いていました。

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沖縄には冬と夏の間に「うりずん」という季節があるのをご存知でしょうか。

「潤い初め(うるおいぞめ)」が語源とされている言葉です。

沖縄の短い冬が終わって暖かくなり、草花が咲き出して大地を一斉に潤していく3月から4月にかけてが「うりずん」と呼ばれるそうです。

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今日の東京の陽気は、何となくこの「うりずん」に当たるように思えました。

そして、最近謡でもこのような内容を聞いたような…と思い起こしてみると、思い出しました。

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能「雲林院」の冒頭でワキ公光が「花の新たに開くる日 初陽潤えり」と春の陽気を謡っているのです。

「花・初・潤」と揃って、これは正に「うりずん」を謡にしたように感じられます。

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この謡は「和漢朗詠集」にある菅原文時の「春色雨中深」という漢詩が元になっています。

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少し調べたところ、また大変興味深い事がわかりました。

「うりずん」という言葉が最初に出てくるのは、「おもろさうし 」という沖縄最古の歌謡集です。この「おもろさうし 」が編纂されたのが16〜17世紀頃。

そしてこの頃までには「和漢朗詠集」などの本土の古典が琉球に持ち込まれて、琉球の歌や詩に影響を与えていたそうなのです。

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ということは、可能性として「春色雨中深」という漢詩の「初陽潤えり」という言葉が「うりずん」の語源になったということも有り得るのです。

あくまでも可能性ですが、ひとつの漢詩が一方で能楽に、もう一方で沖縄の季節を彩る言葉になったとしたら、これも雄大なスケールの話だと思うのです。

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…因みに、私が「うりずん」という言葉に初めて出会ったのは、ダイビングによく行っていた頃のことです。

那覇の安里という所に、その名も”うりずん”という大変素晴らしい沖縄料理屋さんがあって、沖縄に行くと何を置いても通っていたのです。

もう久しく行っていませんが、今でも「うりずん」の頃になると”うりずん”を懐かしく思い出します。

隙間花壇〜春から初夏へ〜

東京の桜は早くも散りかけになりました。

気温も一気に上昇して、まるで初夏の陽気です。

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隙間花壇の紫陽花の葉も、だいぶ大きくなりました。

そして、地面近くに咲く白い花を見つけました。

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「シャガ」の花です。

シャガも「ヒガンバナ」と同様に、大陸から伝来した植物であり、遺伝的に全国すべて同じものだそうです。

京都の山中でもよくこの花を見かけましたが、シャガは人間によって植えられたもので、以前に集落があった場所の目印になるということです。

まだ蕾がたくさんあり、これから次々と咲くのでしょう。

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ちなみにこのシャガの葉っぱを、能では小道具としてよく使用します。

能「敦盛」、能「項羽」では、草刈男が肩に担いでいる草が「シャガの葉」を束ねて竹に挟んだものです。

また能「芦刈」では、やはりシャガの葉を竹に挟んだものが「葦の葉」を表すのです。

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さらに隙間花壇に何か咲いていないか見回してみると…

紫陽花の奥の方に、低木に咲く白い花を見つけました。

しかし道路からではちょっと遠くて写真に撮りにくいです。

ここはひとつ、裏から回って隙間花壇の「隙間」に入ってみようと思い立ちました。

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自宅マンションの裏手の自転車置き場から、隙間に入ることが出来ます。

初めて入る「隙間花壇」。ちょっとドキドキします。

これが「隙間花壇」の内側です。

ほとんど日が差さず、ひんやりした空間です。

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例の低木には、薄い花びらの白い花が控え目に咲いている印象でした。

またよく見ると、黒い実がいくつか付いています。

調べたところ、これは「シロヤマブキ」という植物でした。

花や実のついた枝は、茶花にも用いられるそうです。

「山吹」と姿が似ているところから名付けられましたが、全くの別種だとのこと。

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シロヤマブキの下には、シャガがたくさん咲いていました。

シャガもシロヤマブキも、半分日陰のような場所を好む植物だそうで、やはり「隙間花壇」の主は、様々な植物の特性を考えて植えておられるのだなあと感心いたしました。

隙間花壇〜咲くやこの花〜

今から丁度1ヶ月前の2月7日の「隙間花壇」のブログに、梅の蕾の写真を載せました。

こちらの写真です。

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あれからひと月の間、私はバタバタしていて「隙間花壇」をゆっくり見る余裕もありませんでした。

そして郁雲会澤風会がようやく無事に終わった翌日、3月4日の朝。

崇宝会に向かおうと「隙間花壇」の前を通ったところ…

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いつの間に梅の蕾が開いていました!

しかしまだ三分咲きというところでしょうか。

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更に、ひと雨を挟んで今日。

ついに隙間花壇の梅は満開になりました。

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「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花」という有名な和歌は、能「難波」のシテでもある「王仁」の作であるとされています。

この和歌における「この花」とは、梅の花を指すそうです。

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隙間花壇の梅もこの数日で冬ごもりから目覚めて、ようやく花の春が巡って来たことを私に知らせてくれました。

次はどんな花が咲いてくれるのか、楽しみに待とうと思います。

隙間花壇 〜春待つ息吹〜

東京三ノ輪の私の自宅マンションと隣の建物の隙間に、四季の野の花が咲く不思議な空間があります。

私は「隙間花壇」と名付けて、日々前を通るのを楽しみにしております。

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とはいえ、秋が深まってからは新しく咲く花も無く、上の写真のように静かに眠っているような景色でした。

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しかし今日、隙間花壇の前を通る時に、何か微かな雰囲気の変化を感じました。

暫し立ち止まって眺めると…

きちんと剪定された紫陽花の枝えだの先に、新芽が顔を出していたのです。

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更に良く見ると、他にも芽の出た植物が。

こちらはガクアジサイの新芽でした。

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そして新芽だけでなく…

梅の蕾もありました。

まだまだ固く閉じられていますが、これから陽射しを浴びるにつれて、大きく膨らんでいくのでしょう。

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能「高砂」のクリの一節に「草木心無しとは申せども 花実の時をたがえず」とあります。

隙間花壇の草花達も、本当にまるで心があるように近づく春を感じとって準備をしているのだと思いました。

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隙間花壇  9月

今朝久々に隙間花壇に新しい花を見つけました。


まだまだ勢いのあるオシロイバナの向こうに、特徴的な赤い花が。


ヒガンバナでした。

葉っぱも無しに地面からいきなりズイッと伸びた茎の先端に、真紅の大きな花がひとつだけ咲く…と認識していたのですが、これは5〜7個の花が放射状に固まって咲いているそうです。

それにしても、インパクトのある立ち姿です。

その凄みさえ感じさせる外見から、あまり良くないイメージも持たれている花ですが、お彼岸の近い9月のこの時期。

列車の車窓などから、田圃の畦道がヒガンバナで赤く染まっているのを見るのは、また季節が深い秋へと進むのをしみじみ実感させてくれます。

埼玉県高麗の巾着田には、なんと500万本のヒガンバナが咲くそうです。

しかし「隙間花壇」のヒガンバナは「2本」…。何しろ隙間ですからね。

このくらいの本数が、この花にはちょうど良い気もします。

また、日本に無数に咲くヒガンバナは、何と総て遺伝的に同一の個体だそうです。

稲作の伝来と共に大陸から来たという、その時のままの個体を今自分が見ているということになります。

ヒガンバナにもまた、悠久の時間の流れを感じてしまいました。