ラジオ録音初めての…

今日は朝から渋谷のNHKでラジオ録音に出演して参りました。

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ラジオ録音では、いつも一曲を最初から最後まで通して録音します。

しかし短めの曲の場合、全曲録音しても放送時間に足りないことがあります。

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そのような時には、足りない時間の分だけ別の曲の一部分を追加で録音することになっています。

そして今日も、一曲録音したところ放送時間に5分ほど足りないことがわかりました。

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そこで別の曲のキリの部分を追加録音したのですが、私はその追加録音でシテを謡わせていただいたのです。

長いことNHK録音に出演して参りましたが、ほとんどが地謡での参加でシテは今日が初めての経験でした。

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わずか5分ほどですが、大変嬉しい録音になりました。

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そのラジオの放送日なのですが、実は3月の澤風会郁雲会の翌日の日曜日なのです。

しかも早朝6時からです。。

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私はまず間違いなく澤風会郁雲会で力尽きて寝ていると思われますが、起きられる方はどうか聴いていただければと思います。

よろしくお願いいたします。

第2回橙白会に出演して参りました

今日は矢来能楽堂にて、辰巳大二郎さんのお社中会「橙白会」に出演して参りました。

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昨年が第1回で今回は2回目の開催でした。

皆さん謡も舞もしっかりと稽古されていて、それぞれ昨年よりも着実に上達されていました。

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澤風会の田町稽古場の会員さんも、橙白会にお友達がいらっしゃるようで、朝からずっと見所で応援されていたようです。

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大二郎さんは来月には能「道成寺」を披くことになっており、その稽古や準備でも忙しい中を、今回のような盛大な会を主宰するのは大変なことだったと思います。

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橙白会の会員さん達は、今度はその「道成寺」を見所で応援されることでしょう。

橙白会の今後のますますの御発展と、大二郎さんの道成寺の成功をお祈りしております。

「安全な死に方」とは…?

今日は水道橋宝生能楽堂にて開催された「月並能」に出演して参りました。

私は能「錦戸」の立衆を勤めました。

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この立衆は、ワキ錦戸太郎の配下の武士で、シテ泉三郎と切り組んで討死する役です。

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切り組みの討死の仕方には、色々なバリエーションがあります。

①直立した状態からそのまま後ろに倒れる「仏倒れ」

②舞台から橋掛りへ向かって欄干を飛び越える「欄干越え」

③手を使わずに前転する「でんぐり返し」

④その場で飛び上がり平臥をする「平臥」

などです。

①が一番危険で、下に行くほど危険度は低くなります。

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そして今日の私の討死の仕方は…

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頭上に差しかざした太刀でシテの太刀を何度か受けて、押されて三足ほど下がって片膝をつく。

というものでした。

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膝にも足にも頭にも負担の全くかからない、いわば「最も安全な死に方」だったのです。

なんだか申し訳ないと思いながら片膝をついて、すぐに切戸に引いて帰りました。。

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来たる4月の「五雲会」で勤める能「兼平」では、ちゃんと(?)飛び上がり平臥をして、「自害の手本」となるような華やかな最期を遂げたいと思います。

サードマンと彼方のアストラ

今日は松本から移動して、夕方から矢来能楽堂にて辰巳大二郎君の「橙白会」の申合でした。

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松本からの特急あずさでは、専ら読書に専念いたしました。

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と言ってもいつものように比較的読みやすい内容の文庫本です。

今日は新潮文庫の「サードマン」という本でした。

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探検家が海や山で遭難した時に、自分以外の不思議な”存在”が現れて生還に導いてくれたという「サードマン現象」を科学的見地から研究した本です。

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サードマン現象そのものよりも、それが現れるまでの遭難の凄まじい状況に圧倒されました。

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ヒマラヤの8000m峰での滑落事故、南極大陸での壮絶な越冬、また大海原に放り出された小さな救命艇での絶望的な漂流…

私ならばきっと”サードマン”が現れる前に音を上げてしまうでしょう。。

しかし、極限状況を強かに生き延びた人々の話に勇気をもらえた気がいたしました。

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特急あずさ車内では、最近スマホで雑誌や本が読めるサービスが始まったのでそれも利用してみました。

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と言っても漫画です。。

以前から一度読みたいと思っていた

「彼方のアストラ」

という漫画の1、2巻を読んでみました。

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私の好きな漫画家の星野之宣さんの作品に通じるような、宇宙SF漫画でした。

そう言えばこの作品も、宇宙での”遭難”を描いています。

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今日の特急あずさの旅は、様々な遭難エピソードを終始ドキドキしながら読んで過ごしました。

新宿駅に無事に到着したのが何か奇跡のように有り難く思えたのでした。

立春の舞台

今日は水道橋宝生能楽堂にて「立春能」に出演いたしました。

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能「巴」、「吉野静」、「加茂物狂」、「鵜飼」と4番出て、私は留の「鵜飼」の地謡を勤めました。

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「鵜飼」は、数ある能の中でも地謡の謡出しが最も遅い曲だと思われます。

正午から始まった「立春能」の舞台で、私が留の「鵜飼」の地謡を謡い始めたのは17時頃でした。

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長く待った分、気合が充填されています。

そして「鵜飼」の地謡は、始まるといきなり「鵜之段」なので、一気に高いテンションで謡に入りました。

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そして中入の後も、”早笛”で後シテの閻魔大王が出てきて、最後まで力強い型やシテ謡が続きます。

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今日はシテの気持ちが非常に入っており、それに伴いやはり地謡もハイテンションで終始して、謡った時間は短いながらも謡い終えると全力を使い果たした感がありました。

私にとって今月最初の舞台で、また「立春」の名に相応しい、どこか爽快感のある「鵜飼」だったと思います。

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明日からまたしばらくは稽古の日々になります。

新型肺炎の心配などもありますが、気をつけつつ頑張って参りたいと思います。

悪夢にうなされずに済む方法

今日は朝から水道橋宝生能楽堂にて、日曜日開催の「立春能」の申合がありました。

私は能「鵜飼」の地謡でした。

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立春能申合に行くために起床する、その直前の夢の中でのお話です。

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以前にも書きましたが、私がたまに見てうなされる悪夢があります。

「やったことの無い曲のシテを舞うことになっており、鏡の間で幕が上がるのを待っている」

というシチュエーションの夢です。

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知らない型や謡を舞台上でどうやって誤魔化そうかと必死で考えるうちに目が覚めて、ホッと安堵するのが常のパターンでした。

しかし今日はちょっと違う展開になったのです。

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シチュエーションは常と同じで、今回は”勝修羅”の格好で”平太”の面までかけて鏡の間に座っていました。

一度も稽古しておらず、謡も型も全く頭に入っておりません。

「ああ、いつも見る悪夢と同じ状況だなぁ。ついに悪夢が現実になってしまうのか…」

と嘆いていたのです。

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しかし今日の私はそこでハッと気付きました。

「待てよ、今の状況ももしかしたら夢なのでは…」

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そして良く考えてみると、確実に夢だということがわかったのです。

夢の中で、

「なんだ夢か。良かった良かった。」

と安心して舞台に出て行ったあたりでアラームが鳴って目が覚めました。

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…というわけで今後はこのパターンの悪夢を見ても、夢の中で夢かどうか確認する事で、うなされずに熟睡出来そうです。

トンネルを抜けるとそこは…

昨日松本から東京に戻って、国立能楽堂の稽古会にて袴半能「石橋」の地謡を勤めました。

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そして今日また別の仕事で松本にとんぼ返りしたのです。

ちなみに一昨日のブログに載せた写真がこちら。

塩尻の手前くらいの松本平です。

晴天でした。

北アルプスの上の方だけが雪を被っていますが、平地には全く雪は見られません。

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そして今日、諏訪からトンネルをくぐって松本平に出て、ほぼ同じ位置で撮った写真がこちらです。。

なんと1日で一面の雪景色になっておりました。

このような経験をすると、”自然の力の気まぐれさ”のようなものを改めて実感します。

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私の乗った特急あずさは雪による倒木の影響で15分遅れで松本に到着しました。

今日はまた一昨日とは別の方々に、能楽の魅力をお伝えして参ります。

松本能楽堂建設に向けたワークショップ

今日は松本稽古で、今特急あずさで松本に向かっております。

しかし今回は稽古の前にもうひとつ重要な仕事があります。

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「松本に能楽堂を!」

という悲願を達成するための一歩として、松本城近くの老舗ホテルにて能楽ワークショップを開催するのです。

地元の方を中心に60人ほどの方々が集まると伺っております。

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主催者側は、私以外に「琥珀の会」シテ方囃子方メンバーが地元松本、東京、京都、そして浜松から集合してくれます。

そして松本澤風会で稽古している開智小学校の子供達も、仕舞を舞ってくれるのです。

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仕舞と舞囃子の実演。

型や謡の体験。

それらを通じて能楽の魅力を発信するだけでなく、

「松本能楽堂建設」に向けたPRをすることが求められる重要なワークショップです。

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途中の山梨県内は一面の銀世界でしたが、幸いに松本市内は晴天に恵まれました。

60人のお客様の良い反応が得られるように、精一杯勤めたいと思います。

南海電車の混雑

今日は大阪の堺能楽会館にて開催の「羽衣学園能楽鑑賞会」に出演して参りました。

私は能「通小町」の地謡を勤めました。

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朝に東京を出て、電車を乗り継いで最後に「南海なんば駅」から堺に向かう南海電車に乗りました。

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その時に、南海なんば駅が意外に混んでいるなあと思いました。

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そして舞台が終わって、夕方に帰りの南海電車に乗ろうとして驚きました。

車内がとても混んでいて、ほとんど満員状態だったのです。

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よく見ると大半の人がアジア系観光客で、それぞれ大きなトランクを持っており、それも混雑に拍車をかけているようでした。

そこで、「ああ、今は”春節”の期間なのか」

と気がつきました。

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調べてみると正に今日1月25日が今年の”春節”にあたり、昨日から春節の連休が始まっていたようなのです。

大挙して関西空港に到着した中国からの観光客が、南海電車で大阪方面に移動するところに乗り合わせたということなのでしょう。

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この春節連休は来週木曜日まで続くようです。

新型肺炎の心配なニュースが流れていますが、特にこの連休期間中はマスクや手洗いなどの予防を徹底したいと思っております。

数十年ぶりの”牛若丸”

今日は亀岡での新年会に参加して参りました。

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最後の満次郎師の番外仕舞が「橋弁慶」で、私は”牛若丸”の役を仰せつかりました。

この橋弁慶の牛若丸は、実は私にとっての初役(生まれて初めて演じる役)でした。

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本来なら”牛若丸”は子方が演じる役です。

私はまだ小学生の時に、能「船弁慶」と能「鞍馬天狗」の子方を勤めたことがあります。

ちなみに船弁慶の子方は義経、鞍馬天狗の子方は牛若丸の役でした。

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そして今回、数十年ぶりの”子方”がやはり牛若丸。

これもひとつの御縁なのかと思い、なにか新鮮な気持ちで勤めさせていただきました。

動きは「十二、三ばかりなる小男」に見えたかどうか定かではありませんが。。

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子方は中学生の頃に卒業するものですが、今後もこうした珍しい機会があればまた頑張って勤めてみたいものだと思います。