国立民俗学博物館にての公演

今日は大阪の国立民俗学博物館の特別展「驚異と怪異〜想像界の生きものたち」に関連した能楽公演に出演して参りました。

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この特別展は、私の好みの正にど真ん中ストライクの分野のものでした。

しかし今日はあくまでも能「土蜘」の地謡と楽屋の仕事に集中です。

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京都の宿から電車を乗り継いで、「万博公園駅」に到着しました。

あの有名な「太陽の塔」の足元を通って、民俗学博物館に向かいます。

同行した山内崇生さんのお姿も。

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民俗学博物館はかの黒川紀章氏設計の美しい建築物です。

そのエントランスホールにての能「土蜘」の演能でした。

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その「土蜘」以外にも、石黒実都さんが「龍女」に扮しての”動く彫像”というパフォーマンスもありました。

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世界中の妖怪や神獣達が集合した今回の特別展で、いわば日本代表として「土蜘の精魂」と「龍女」が活躍した今日の舞台。

能楽が「想像界の生きものたち」という方向からスポットを当てられるとは、大変に面白い企画だと思いました。

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ただ繰り返しですが、今日はゆっくりと特別展を拝見する時間はありませんでした。

特別展は11月26日までやっているようなので、何とかその期間中に改めて民俗学博物館を訪れたいものです。

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帰り道。

見たことのなかった「太陽の塔の背中」です。

今回の特別展に出てきそうな、なにやら怪しげな太陽が描かれていました。

行きと同様に、同行の山内師、石黒師と共に撮影タイムです。

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そして今は帰りの新幹線で、頂戴した「驚異と怪異」展の図録を開いて至福の時を過ごしております…。

まだ終わらない1日

昨日は春日部の小学校で能「黒塚」のシテを勤めた後に、最寄りの東武線の駅まで20分ほど歩きました。

車でも帰れたのですが、何となく「クーリングダウン」をしたいと思ったのです。

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ゆっくり歩いて、電車で三ノ輪に帰ると早めに休みました。

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今朝6時前に目がさめると、クーリングダウンの効果か昨日の疲れはそれほど残っていませんでした。

新幹線→近鉄→京阪電車と乗り継いで、香里能楽堂の「七宝会」へ向かいました。

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七宝会では舞囃子「井筒」地謡、能「枕慈童」後見、能「玉葛」地謡を勤めました。

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夕方に舞台は無事に終わりました。

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しかし今日はまだ終わりません。

これから北大路にある公共施設の和室で京大宝生会の稽古をするのです。

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そして更にその後には、永平寺での修行を無事に終えて先日下山した若手OBと、久しぶりに会って食事をする約束をしています。

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ちょっと詰め込み過ぎの盛りだくさんな1日ですが、あとひと頑張りしたいと思います。

難しい質問…

今日は昨日と同様に小学校巡回公演で、埼玉県春日部の小学校に行って参りました。

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昨日の栗橋公演では思いがけず「静御前のお墓」に参ることができました。

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私「今日の春日部は、何があるのかね?」

若手笛方「えーと、春日部と言えば”クレヨンしんちゃん”ですね!」

私「…」

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残念ながら、クレヨンしんちゃんは全く見たことがありません。。

しかし、最寄りの駅には下のような宣伝が。

確かに”クレヨンしんちゃん”の地元のようでした。

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小学校では昨日と同じく能「黒塚」のシテを勤めました。

終わった後の「質問コーナー」では昨年もかなり難しい質問が出て、何とか回答をひねり出した覚えがあります。

今回も…

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「ワキの呪文に出てくる神様は、どんな神様なのですか?」

という質問がありました。

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「え〜”不動明王”を中心とする”五大明王”とは…」などとスラスラ説明出来るはずもなく、

「日本には八百万の神様がいらして、能の色々な曲に交代で出てこられるのです…」

などと噛みながら答えるのが精一杯でした。。

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来週もあと2回の小学校巡回公演があります。

どんな子供達に出会えるか楽しみなのですが、「質問コーナー」の鋭い質問には心して臨みたいと思います。

静御前と記念撮影…!

去年長野県の小学校を回った「巡回公演」に参加しましたが、今年もまた参加することになりました。

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今日はその初日で、埼玉県栗橋の小学校で能「黒塚」のシテを勤めました。

元気一杯の小学生600人のパワーに圧倒されながらも、なんとか無事に舞台を終えることができました。

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そして今日の楽屋で、ちょっと驚くことを聞いたのです。

金野泰大君が「行き掛けに”静御前のお墓”にお参りしてきました!」

と話していたのです。

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「え、栗橋に静御前のお墓があるの⁈」

と聞くと、

金野君「はい、この辺りで亡くなったそうで、栗橋駅のすぐ近くにお墓がありました!」

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それは是非にも行ってみなければと、公演が終わってから何人かの若手楽師とお墓参りに行きました。

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確かに栗橋駅からほど近い所に「静御前の墓」の看板が立っています。

例によってお墓そのものの撮影は遠慮しますが、静御前らしい慎ましやかな墓碑でした。

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ただ、その横には少々派手な立て看が…

僭越ながら静御前と記念撮影を。

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町には下のようなポスターがそこら中に貼ってあります。

“静御前パレード”、”合唱静を偲ぶ”など、色々とても魅力的な催しで是非見に来たいと思いました。

しかし残念ながら、今年の10月19日は五雲会で能「葵上」のシテを勤める日なのです。。

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来年以降、いつかなんとしても「静御前まつり」に来てみたいものです。

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今日はこれから「自治医科大学能楽部」の稽古に行って参ります。

そして明日はまた違う学校での「巡回公演」で能「黒塚」のシテを勤めます。

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色々書くことは盛りだくさんですが、今日はこれにて。

「居囃子」と「独調」

昨日は松本稽古、今日は朝に松本を出て大阪香里能楽堂に移動して、今週土曜日開催の「七宝会」の申合がありました。

私は能「玉葛」の地謡でした。

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申合を終えて、今は綺麗で雄大な夕焼け雲を眺めながら新幹線で東京に向かっております。

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先週末の「澤風会京都大会」の話題をまた一つ。

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今回の澤風会の番組では、「居囃子」と「独調」が計5番も出ました。

これは14回の歴史の中でも初めてのことです。

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最初の居囃子「船弁慶クセ」は、京大宝生会の2回生が4人揃ってそれぞれ地謡、大鼓、小鼓、笛を勤めました。

御囃子の稽古を始めてまだ日が浅い彼らですが、実に一所懸命に稽古していました。

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本番では彼らの悲愴感すら漂う真剣な顔と、それとは相反してどこかほのぼのとした雰囲気の演奏とのギャップが、実に良い味を出していました。

2回生は本当はもう1人いて、彼が揃うと太鼓も含めた「五人囃子」が完成するのです。

次回以降の五人囃子が非常に楽しみです。

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続く「独調」も、小鼓と謡、大鼓と謡、太鼓と謡、というように楽器のバリエーションが豊富でした。

今回たまたま京大宝生会の現役同士、またOBOG同士だけの組み合わせになりましたが、京大以外の会員さんも御囃子を稽古している人が多いのです。

次回にはそのような方々も「居囃子」や「独調」に挑戦されると良いと思います。

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普段の澤風会や京大宝生会の舞台では、玄人の御囃子方が、舞や謡に合わせて演奏してくださいます。

しかし謡も御囃子も素人という今回の「居囃子」や「独調」のような番組では、互いに謡の節を覚えて、また御囃子の手を学ばないと上手く合わせることが出来ません。

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これは能を理解する上で大変に勉強になる経験だと思うのです。

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澤風会会員や京大宝生会は今後も「居囃子」や「独調」に積極的に挑戦して、その経験を能や舞囃子の地謡に、また自分の舞う能や舞囃子に活かしてもらいたいと願っております。

大事な意味を持つ「羽衣」演能

先週土曜日の「第14回澤風会京都大会」は、おかげさまで無事に終了いたしました。

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今回出た能「羽衣」は、大きな意味を持つ番組でした。

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シテの会員さんは、学生能などの経験も無く、紫明荘で全くのゼロから私が稽古を始めた方です。

その方が10年ほどを経て、「教授嘱託」といういわばセミプロの免状を取るまで上達されて、その嘱託免状取得の披露として今回「羽衣」の能を舞われたのです。

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澤風会だけで稽古を受けて嘱託まで上達されたのは、実はこの方が初めてです。

その披露の「羽衣」を何としても良い舞台にしたいと思い、澤風会の皆様にも色々とご協力をいただいて9ヶ月間頑張って稽古して参りました。

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その甲斐あって、本番は非常に良い舞台でした。

キリの最後の辺りでは、これまでの長い道のりや、植田竜二先輩のことなどが思い出されて、後見座で見ていて胸が熱くなりました。

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また今回「羽衣」の地謡前列は、女性の会員さん達に勤めてもらいました。

これはその方々に、この先いつか嘱託になってもらえたら、という願いを込めた布陣でもあったのです。

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今回の能「羽衣」はおかげさまで無事に終わりました。

しかしこの舞台は最終目標ではなく、ひとつの通過点なのだと思います。

嘱託になられた会員さんや、地謡前列の方々は、今回の経験を糧により高いレベルを目指して稽古を続けていただきたいと願っております。

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今は松本稽古に向かう特急あずさ車内です。

澤風会のことはまだまだ書きたいのですが、仕事のヤマ場が続いており、覚える謡や型が目白押しなのです。

しばし勉強時間に突入したいと思います。。

見事な熊坂、立派な牛若丸でした

今日は宝生能楽堂にて「和久荘太郎演能空間」に出演して参りました。

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秋分の日というのに真夏に逆戻りしたかのような暑さでしたが、空は晴れて絶好の能楽日和(?)になってくれました。

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昨年台風が直撃した名古屋の舞台を覚えていたので、今日の晴天、そして超満員の見所を見て私まで大変に嬉しくなりました。

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能「烏帽子折」はもちろん大変素晴らしい舞台でした。

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個人演能会の舞台は、熱気を帯びた独特の緊張感が漂っています。

その中で90分間の長丁場を立派に演じ切った子方の和久凛太郎くんが最後に幕に入る時、 万雷の拍手が湧き起こりました。

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こんなに盛大な拍手は久々に聴くと思うくらいでした。

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親子で大きな舞台を大成功させた和久荘太郎さんと凛太郎くん。

その姿は見ていて本当に格好良くて、私も負けずに頑張らねば!と決意を新たにいたしました。

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和久荘太郎さん本日も誠にありがとうございました。

そしておめでとうございました。

第14回澤風会が無事に終わりました

既に日がかわって昨日のことになりますが、「第14回澤風会京都大会」はおかげさまで無事に終了いたしました。

書くことは無限にあるのですが、ともかく皆様に心より感謝を申し上げます。

また明日以降に落ち着いて舞台の模様などを書かせていただきたいと思います。

今回お世話になりました皆様、重ねてどうもありがとうございました。

“秋”を満喫した薪能

今日は群馬県の甘楽町にある「楽山園」という”大名庭園”で開催された「甘楽薪能」に出演して参りました。

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午後に最寄駅の「上州福島」に到着すると、日差しがとても強くて夏の名残の暑さでした。

上州福島駅は、小さな電車の止まる小さな無人駅です。

私はこういう駅舎が何故か好きなのです。

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楽山園に到着して少しすると、日が傾いて気温が急速に下がっていきました。

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高く晴れた空には、数え切れないほど沢山のアキアカネが飛び交っています。

乾いた風に芒がたなびいて、辺りは一気に秋の景色に変わりました。

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そして日が暮れると、今度は秋の虫の大合唱です。

「面白や 千草にすだく虫の音の 機織る音は きりはたりちょう」

という能「松虫」の一節そのままの風情でした。

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薪能の演目は能「黒塚 白頭」で、こちらも秋の雰囲気にぴったりな曲です。

満員のお客様もきっと”秋”を満喫されたのではないでしょうか。

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舞台が無事に終わって、またあの小さな上州福島駅に戻って来ました。

やって来た電車に乗り込むと、車内のいたるところに絵が貼ってあります。

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これはなんの企画だろう…と思って見回すと、

「絵手紙列車」でした。

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こんな絵手紙や…

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こんな絵手紙。

終点の高崎駅まで、色んな絵手紙を楽しみました。

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三ノ輪の家に帰って少し休んだら、明日は早朝から京都に移動して、いよいよ「第14回澤風会京都大会」です。

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良い舞台になるように、精一杯頑張ろうと思います。

準備万端

今日は京都大江能楽堂にて、いよいよ明後日に迫った「第14回澤風会京都大会」前の最後の紫明荘組稽古をいたしました。

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仕舞、独吟、舞囃子、そして能「羽衣」を、本番と同じ舞台で稽古したのです。

細かな位置取りや見る方向などを最終確認することが出来ました。

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羽衣に使用する”羽衣の松”の作り物も、今日のうちに作りました。

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そして稽古の前には、楽屋に出す飴やお菓子や珈琲などの買い出し。

稽古の後には、宴会場のホテルに行って宴会の打ち合わせ。

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本番前にすることは、今日のうちに全部終えることができました。

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明日は一度群馬県の甘楽町に行って薪能に出演します。

そして明後日の朝にまた京都に戻って来るのです。

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澤風会の最早”名物”となっている台風がこのタイミングで発生したようなのですが、土曜日はなんとか天気持ち堪えてほしいです。

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皆さま明後日21日土曜日には、「第14回澤風会京都大会」にどうかお越しくださいませ。

大江能楽堂にて午前11時始曲です。

能「羽衣」は12時40分頃〜13時40分頃の予定です。

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どうかよろしくお願いいたします。