七葉會無事終了いたしました

本日水道橋宝生能楽堂にて、「七葉會」の舞台が無事に終了いたしました。

この大変な状況下にもかかわらずいらしていただきました沢山の皆様に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

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ひとつの舞台を企画してから本番を迎えるまでに、「中止されずに開催されること」をこんなにまで祈った舞台は初めてでした。

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様々な感染防止対策をとりつつも、直前までニュースの感染者数などに一喜一憂する毎日でした。

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何とか始曲にこぎつけて、久々にシテとして舞う舞囃子「井筒」の舞台に立ちました。

舞台上では、実際に生身で正対するお客様の微妙な空気感を肌で捉えながら舞うということの大切さ、難しさを改めて感じました。

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やはり生の舞台あっての能役者なのです。

今日の舞台が無事に開催出来て、多くのお客様にいらしたいただけたことは、重ねて本当に有り難いことだと思います。

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終了後にはいつもはロビーに出ていきますが、今回は屋外のスペースで距離を保って御挨拶をさせていただきました。

懐かしい七葉会会員の皆様にたくさんお会いできて、これもまた嬉しいことでした。

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全てが終わって着替えてから、七葉會の7人は再び楽屋に集合しました。

次回以降の「七葉會」のことを話し合ったのです。

そして来年中に第2回の「七葉會」を開催しようという意見でまとまりました。

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日時、番組などはまた決まりましたらお知らせいたします。

大変な状況はまだ終わりが見えませんが、我々7人は何とか前を向いて歩いて参りたいと思います。

皆様今後ともよろしくお願いいたします。

能楽における「広葉樹林」

皆様ご無沙汰しております。私は変わらず元気に過ごしております。

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今からちょうど2週間前のことになりますが、大阪で観世流大鼓方の森山泰幸さんのお社中会に出演して参りました。

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実は私の社中会「澤風会」の会員の中で、何人かが森山師に大鼓を習っているのです。

きっかけは一昨年の澤風会京都大会で、そこで森山師に大鼓を打っていただいたご縁で大鼓を始めた人から徐々に増えていったのです。

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今回の出演者の中には大鼓における「初舞台」の人もいて、その大切な初舞台の地謡を謡うのはとても緊張いたしました。

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この大変な時期に何とか無事に舞台を終えられたことは、森山師のみならず私にとっても非常に有意義でありがたいことでした。

そしてまた、この舞台は別の意味で私にとって嬉しい意味を持っていたのです。

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澤風会で長い間仕舞や謡を稽古していた人達が、澤風会の舞台で出会った大鼓方森山師に弟子入りする。

そしてその森山師の大鼓の会に、私が地謡として呼んでいただける。

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これは私の能楽における活動が森山師の活動と融合して、ひと回り大きく、またより豊穣な世界に踏み出した一歩なのだと思うのです。

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森山師のお社中には、もちろん宝生流以外の方々が多くいらっしゃるでしょう。

そういった方々と澤風会が交流することで、能楽界全体に通じる新しい活気が僅かでも生まれていくのではないでしょうか。

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森林に例えてみます。

「杉」しか植えられていない単一な植生の針葉樹林があるとします。

林床は暗く、生き物の気配は希薄です。

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一方で「橅」「楢」「楓」「栃」「朴」などの多様な種の木々が群生する広葉樹林。

そこには豊かな山菜や茸が生えて、動物達も集まり、たくさんのドラマが生まれていくのです。

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私というシテ方と、森山師という大鼓方。

2人の異なる種の能楽師がこの先に互いの社中会を盛り立て合っていけば、きっとそこからまた新たな縁が芽生えていくことでしょう。

そしてそれは私の能楽人生における理想の姿なのです。

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今回コロナ禍の中で万全の対策をして会を催していただいた森山師に心より御礼申し上げます。

今後ともよろしくお願いいたします。

「兼平」への再挑戦

長いことブログの更新が滞っておりました。

私は至って元気に過ごしております。

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今日は水道橋宝生能楽堂にて、8月15日に開催される「五雲会」の稽古がありました。

この「五雲会」は4月公演が延期になったもので、私は能「兼平」のシテを勤めます。

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4月初め頃に一度ほぼ出来上がった「兼平」でしたが、延期が決まってから一旦スッパリと忘れることにしました。

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その後は仕事が殆ど全て無くなって、家を出る用事も無い日々でした。

しかし「兼平」の延期公演までに身体がなまってしまうのは避けないといけません。

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私の三ノ輪の自宅からは、あまり人に会わずに「隅田川」と「荒川」という大きな川に行けます。

日々その河川敷などを長距離歩きまわりました。

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さらに、電車にも出来るだけ乗らずに歩くようにしました。

例えば三ノ輪から用事で江古田の実家に行く時には、先ず三ノ輪からJR鶯谷駅まで歩きます。

そして山手線で目白まで行き、目白から江古田まで歩くのです。

もちろん帰りも同様にします。

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このようなことを3ヶ月以上続けて、7月に入って再び「兼平」に取りかかりました。

すると4月頃よりもずっと身体が軽くて、今日の稽古でもキリの部分で舞台と橋掛を高速で往復しても、息が全く乱れなくなっていました。

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今身体的には「勝修羅」を舞うために申し分ない状態にあります。

あとは8月15日の本番までに、もう一度謡や型の細部を練り直していきます。

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4月にあった筈の「兼平」よりも更にグレードアップした舞台をお見せしたいと思っております。

七葉會 十周年記念公演のお知らせ

宝生流若手能楽師7人が集まっての合同社中会「七葉会」。

本年8月8日、9日には「七葉会10周年記念大会」を予定しておりましたが、情勢を鑑みて来年に延期させていただくことになりました。

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そしてその上で七葉会同人7人で、今我々に何か出来ることは無いか話し合いました。

その結果8月9日に「七葉會」という名前で7人による演能会を開催させていただく運びになりました。

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宝生能楽堂にて13時半〜16時半頃まで開催。

舞囃子6番に半能「橋弁慶」、仕舞、連吟などが演じられます。

私は舞囃子「井筒」と、「橋弁慶」の地謡などを勤めます。

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チケットは全席自由4000円(学生2000円)で7月9日朝10時より「能LIFE Online」にて、先着100名様限定で販売いたします。

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チケットご購入にあたっては、

①購入手続きの前に先ず「能LIFE Online」(http://nohlife.com )に登録をお願いします。

②その上で発売日以降にやはり「能LIFE Online」( http://nohlife.com )より購入手続きにお進みください。

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少々手間のかかる購入方法になります。

しかしながら、コロナウイルスが収まらない状況下での舞台開催にあたっては、万が一の場合にはお客様全員と連絡をとる必要があります。

「能LIFE Online」に事前にご登録いただくことでお客様により安全に舞台をご覧いただけると考えてこの方法をとらせていただきました。

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このような状況下の舞台で何かとご不便をおかけいたしますが、様々な安全対策をして開催させていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

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チラシ表面

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チラシ裏面

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※なお、七葉会各会の社中の皆様につきましては、チケットに関してはそれぞれの先生にお尋ねくださいませ。

全宝連があるはずだった日

今日6月27日と明日28日には、金沢の石川県立能楽堂にて「全国宝生流学生能楽連盟自演会」が開催される予定でした。

しかし残念ながらコロナウイルスの影響で開催見合わせになってしまいました。

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全国から舞囃子もたくさん出る予定だったので、間違い無くとても熱い舞台が繰り広げられたはずなのです。

誠に無念の極みです。

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しかしながらこのような状況でも、京大宝生会の学生達は出来る稽古に地道に取り組んでいます。

昨日もzoom稽古をいたしました。

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交代で声を出しての鸚鵡返しで、1人最低ひとつは改善すべき点を指摘するようにしています。

今回は特に2回生がいくつか大事な節を覚えてくれました。

皆着実に進歩しています。

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さらについ先日には部長から、

「活動再開したら見学したいという新入生がいます。zoom稽古でも見学してもらって良いでしょうか?」

という内容のメールが来ました。

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きっと全国の宝生流の学生達も同様に、今出来る活動を懸命に模索して頑張っているのでしょう。

その努力が報われる日が早く来るように、そしてたくさんの学生達が一堂に会しての賑やかな舞台がまた戻ってくるように心から願っています。

私も出来ることを地道に続けて参りたいと思います。

七葉会の話し合い

一昨日の土曜日には、水道橋宝生能楽堂にて「五雲会」が無事に開催されました。

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見所の座席の半数には、「全国宝生流学生能楽連盟」の学生達から募集した「能に出て来る和歌」が貼られて、地謡は顔の下半分を覆面でおおい、切戸は換気のために開け放してあり…

等々、これまでの舞台とはいくつかの点で異なる様子でした。

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それでも200人近いお客様にいらしていただき、華やいだ見所を前にして勤める舞台は本当に久しぶりで、「ようやく帰って来たなあ…」としみじみと嬉しく思いました。

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その五雲会終了後に、「七葉会」のメンバー7人がこちらも数ヶ月ぶりに顔を揃えて会合を開きました。

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8月に予定していた「七葉会10周年記念大会」は、残念ながら来年に延期することになりました。

7人が主宰する各会とも、稽古がほとんど出来ない状況が未だ続いているのです。

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しかし、七葉会として今年全く何もせずに終わってしまって良いのか、何か出来ることは無いだろうか…と7人で相談しました。

その結果、

「七葉会10周年記念公演」

という形で、我々7人の若手楽師を中心とした玄人による能楽公演を開催することにいたしました。

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日時は8月9日(日)13時半開演予定。

場所は宝生能楽堂です。

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夜までかけて話し合い、番組もほぼ決まりました。

仕舞、連吟、舞囃子、半能と盛り沢山の番組です。

早急にチラシなどを作成いたしますので、番組詳細はまた追ってお知らせいたします。

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七葉会のそれぞれの会員の皆様と、世の中の人々に、少しでも元気をお届け出来るような熱い舞台にしたい。

その意気込みで7人とも張り切って準備を進めて参ります。

どうか続報を今少しお待ちくださいませ。

4ヶ月ぶりの五雲会開催

今日は水道橋宝生能楽堂にて、明後日20日に開催の「五雲会」の申合がありました。

私は能「杜若」の後見を勤めました。

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「五雲会」の開催は2月以来なので、実に4ヶ月ぶりになります。

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この五雲会を皮切りにお客様を前にしての公演がようやく再開されるわけですが、これからの舞台は

「楽師が安全に演ずること」そして

「お客様に安心してご覧いただくこと」

が何より重要になってきます。

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今回の五雲会も、

「見所の座席数を定員の半数(約230席)に減らす」

「地謡は覆面をした上で5人が横一列に離れて座る」

などと言った沢山の対策をとりつつ開催されます。

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そして座席を減らすにあたっては、座らない座席の上にある工夫をすることで、お客様に少しでも楽しんでいただけるようにしてあります。

なんとその工夫には京大宝生会の学生も一部関わっているのです。

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能楽を含めた舞台芸術全体が、この先は感染症と共存しながら生き残る道を探っていかねばなりません。

明後日の五雲会にどのくらいのお客様がいらしてくださるか、またそのお客様の反応、ご感想は如何なるものなのか。

今後の舞台活動のひとつの基準となるかもしれない重要な「五雲会」になりそうです。

夜能「野守」まもなく配信されます

先日撮影された夜能「野守」と、私も出演しております「いとうせいこうの能楽紀行」の動画が、本日18時より有料動画配信されるそうです。

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配信に先駆けて、宝生和英宗家といとうせいこう氏の特別対談が以下より視聴できます。

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また18時より始まる有料動画配信の視聴方法は以下より調べられます。

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今回の動画配信のプラットフォームである「能LIFE Online」は、動画配信だけでなく公演情報やチケット、グッズの購入なども可能な、コロナ後の世界を見据えた宝生会の新しいプラットフォームです。

皆様是非この機会に体感してみてくださいませ。

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能「野守」と「いとうせいこうの能楽紀行」

をご覧いただき、御感想などコメントしていただけると大変有り難く思います。

どうかよろしくお願いいたします。

「コロナ後」を考える月に

6月に入りました。

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緊急事態宣言は解除されたとは言え、東京ではまだ連日2桁の感染者が出ており、決して気を緩める事が出来ない状況です。

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しかしながら、そろそろ先の事も考えていくべき時期だと思います。

先ずは延期している「第7回澤風会郁雲会大会」の開催日程を発表させていただきます。

9月21日(敬老の日)

に渋谷のセルリアン能楽堂にて、今度こそは何としても開催する所存です。

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そして澤風会の稽古は、今月いっぱいは様子を見て、7月より再開しようと考えております。

いきなりコロナ以前の頻度と密度には戻さずに、時間と空間に余裕を持って、”三密”を避けて稽古できるように心がけたいと思っております。

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そして通常稽古と並行して「遠隔稽古」も週末を中心に続けて参ります。

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6月は、「コロナ後」のことを色々と考える月にしたいと思います。

久々の舞台、「夜能」申合

全国の緊急事態宣言もようやく解除され、今日は水道橋宝生能楽堂にて「夜能」の申合に行って参りました。

私は能「野守」の後見を勤めました。

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宝生流の定例公演に出演するのは、3月の「春の別会」以来2ヶ月ぶりになります。

久々の宝生能楽堂の舞台は、感慨深いというよりは、何かフワフワとして頼りないような、どこか落ち着かないような不思議な気分でした。

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来月から五雲会も再開されて、徐々に舞台の数が増えていけば、またすぐに常の感覚を取り戻すことが出来るでしょう。

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明日本番の「夜能」は無観客で、有料動画配信の形で皆様にご覧いただきます。

そして配信される動画では、能「野守」の映像の前に、「いとうせいこうの能楽紀行」というコーナーがあります。

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これは作家のいとうせいこうさんと私が、対談形式で能「野守」の世界をナビゲートするというものです。

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対談というと、昨年秋に泉涌寺で偉い僧侶様と対談して大変に緊張したのを思い出します。

明日も緊張すると思われますが、お相手のいとうせいこうさんにお会いするのは楽しみです。

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いとうさんの本では「見仏記」という各地の仏像を見に行くシリーズを何冊か読ませていただいたことがあります。

コミカルな文体の中に深い思索が散りばめられた、大変面白い「旅本」でした。

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明日の撮影の模様などまたご報告させていただきます。

このブログも徐々にですが毎日更新の通常運転に戻して参りたいと思っております。