稽古場の一体感

今日は朝から、京都紫明荘組の稽古でした。

稽古場としての「紫明荘」に代わる場所をいろいろと試行錯誤しておりますが、今日は「リハーサル室」という名前の部屋で稽古しました。

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そこは大きさがちょうど能舞台と同じ三間四方くらいで、完全防音の部屋です。

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完全防音なので稽古中は扉を締め切り、会員さん達はリハーサル室の外の椅子が並んだスペースで待っていることになります。

しかしこれが稽古を始めてみると、意外にやり辛いのです。

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これまでの和室の広い空間だと、稽古しながら横目で隣の部屋で談笑している会員さん達が見えます。

そこで、稽古しながら私は「あの方はいらしてから大分待っておられるので、次に仕舞の稽古をしよう」とか、「遠くからいらしている方がそわそわしているので、早い順番にした方が良いか聞いてみよう」などと考えられるのです。

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それが密閉空間での稽古だと、外で何人待っておられるのか、どの順番でいらしたのかなど、いちいち外に出て確認しないとなりません。

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また会員さんにとっても、自分の稽古だけでなく他の人の稽古も見聞き出来る方が勉強にもなりますし、誰かが舞っている仕舞を見て、「いつかあの仕舞がやりたい」と思ったりも出来ます。

更に私は、仕舞の稽古の時には見ている人達に向けても「この型はさっきの仕舞にもありましたね」とか、「”行き掛かり”の足は、他の仕舞でも共通でこのように捻ります」などと解説したりします。

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なのでやはり稽古場は、舞台スペースと待合スペースが繋がっているところに限ると痛感したのです。

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たまに会員さん達の楽しいお喋りが、録音に差し障りがある程に盛り上がってしまう事もありますが、私の好みとしては「同じ時間と空間を全員で共有できる稽古場」というのが一番だと思ったのでした。

ずっと舞台にいること

今回の郁雲会澤風会の2日間では、私は一部の素謡を除いてはほぼ全曲で、地謡もしくは後見で舞台に出ておりました。

皆様これを比較的大変な事だと思われたようで、「さぞかしお疲れでしょう」「お身体は大丈夫ですか?」などと心配してくださいます。

しかし、私にとっては本番の舞台上にいるのはむしろ「喜び」であり、いっそ「ご褒美」のようにも感じられたのです。

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昨日は箇条書きのように、番組のそれぞれを短くご紹介いたしました。

しかし本当はそのひとつひとつに、本番に至るまでの長い長いドラマがあったのです。

嬉しい事もありましたが、大半は苦しく地道な努力の日々でした。いくつかのアクシデントもありました。

それらを乗り越えたクライマックスシーンが郁雲会澤風会の舞台であり、私はそのクライマックスシーンを主役と共に作り上げるという栄誉を与えられた訳なのです。

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これは私には大変光栄で喜ばしいことでした。

更にもう一点、本番の舞台は一発勝負なので、何が起こっても私は注意したり、やり直したりしないでも良いのです。

これも精神的にはむしろ稽古よりも楽な事に感じられました。

なので、2日間出突っ張りでも私には全く苦にならなかったのです。

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…とはいえ、やはり少々疲れはあるようです。

昨日はそうでもなかったのですが、今日の午後になってから、丁度時差ボケのような急激な睡魔に襲われました。

新幹線でスイッチが切れるように寝てしまい、危うく乗り過ごして大変な事になるところでした。。

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明日はようやく一日中何も無い休みなので、ゆっくり骨休めしたいと思っております。

郁雲会澤風会御礼

先週金曜土曜の郁雲会澤風会の2日間では、本当に無数のエピソードが同時進行的に起こっていたことと思います。

数多の物語がめでたく完結して、また多くの物語が次の章に進み、それと同時に未来に繋がるいくつかの新しい物語も始まりました。

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最年少5歳の男の子の初舞台「絃上」。

最高齢91歳の方の仕舞「葛城」。

桜色に美しく染められた着物で舞われた舞囃子「桜川」。

沢山の素謡(京大若手OBの素謡「大会」では、殆どのOBOGが無本で謡ってくれました)。

1人で無本で謡われた独吟「草紙洗」。

砧、忠度、笹之段を始めとする難しい仕舞や、一調「放下僧」独調「桜川」などの難曲に挑戦され、苦心して稽古を積んで本番を迎えられた皆さん。

早朝に京都や北陸や松本を出て来てくださった方々。

金曜朝一で仕舞を舞って、その後は受付などの仕事をよくやってくれた京大宝生会の現役や、若手OBOGのみんな。

初舞台や、稽古を始めて間もない会員さん達がとても堂々と演じられた素謡「橋弁慶」、また「羽衣キリ」などのいくつかの仕舞。

一人で何回も舞台に出てくれた人(素謡2番、仕舞、能のツレ、能の地謡の計5番をこなした人も)。

いつも母親を支えてくださっている郁雲会の皆さま。

毎回ゲスト出演いただく京大宝生東京OB会や、早稲田大学、東京大学OBの方々の重厚な舞と謡。

舞囃子を舞われた7人の会員さんはそれぞれ「楽」や「神楽」などの難易度の高い舞や、位の重い曲、思い入れのある曲に全力投球で挑まれました。

そして4番の能。

先ず金曜日には、松本から何度も東京にいらして稽古をしてくださった初シテの方が見事に舞われた「巻絹」。

土曜日にあった大曲「鷺」、「野宮」、「松風」では、今回もまた舞台上のシテ方、囃子方、ワキ方、狂言方に見所のお客様までも含めて、能楽堂が全部一体となって熱量を増していくような、気迫に満ちた舞台を体感することができました。

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…今思い出しながらつらつらと書いていっても、次々と色んな出来事が思い出されてとても書ききれません。

全てを書いたら1冊の本になるような、濃密な2日間だったと思っております。

宴会で辰巳満次郎師より「今回舞台に出ていて、”ああ、能って素晴らしいなあ。能をやっていて良かったなあ”と改めて思いました」という大変に有り難いお言葉を頂きました。

これはきっと私も含めて、参加してくださった皆様に共通の感覚であったと信じております。

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御礼の言葉もどれだけ尽くしても足りない気がいたしますが、今回の舞台でお世話になりました全ての皆様に、本当に心より御礼申し上げます。

どうもありがとうございました。

郁雲会澤風会初日終了いたしました。

おかげさまで郁雲会澤風会初日を無事に終えることが出来ました。

本日御出演いただきました皆様、また応援にいらしてくださった沢山の皆様、本当にありがとうございました。

また明日の2日目もどうかよろしくお願いいたします。

宝生坂に満月が昇りました。

いよいよ明日は…

明日に迫った郁雲会澤風会の前の、本当に最後の稽古を江古田でやって参りました。

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外に出ると、晴れ渡った夜空には大きな月が。

いよいよ明日は満月で、これまで長い時間かけて稽古してきた皆さんの舞台も、きっと満月のようにピッタリと丸く完成することでしょう。

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帰り道の夜風に混じって沈丁花の香りがしました。

秋の金木犀と春の沈丁花は、その季節の訪れをはっきりと知らせてくれて、私はどちらも好きな花です。

今日は早めに休んで、明日明後日は全力で頑張りたいと思います。

水道橋宝生能楽堂にて朝10時開始です。

皆さまどうかよろしくお願いいたします。

澤田宏司

もうひと頑張り

今日は朝10時から渋谷のセルリアン能楽堂にて、日曜日開催の崇宝会の申合→12時に終わって水道橋宝生能楽堂に移動して、郁雲会澤風会の会員さん達10人ほどと明後日の会の準備作業→16時に終えて、会の楽屋に出すお菓子を買いに行く→17時から秋葉原の行きつけの床屋で散髪→17時45分に散髪を終えて山手線で田町に移動→18時10分〜21時前まで仕上げの田町稽古。

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…というスケジュールで今に至ります。現在帰りの地下鉄です。

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そんなに動いた記憶も無いのですが、「万歩計アプリ」では1万2千歩くらい歩いたことになっています。

今日は帰ってからも、会に向けた作業が色々残っています。

会まであと2日、少しでも良い2日間になるように、私ももうひと頑張りしたいと思います。

自主練の成果

今日は松本稽古に行って参りました。

松本から郁雲会澤風会には、能1番、舞囃子1番、仕舞2番が出ます。今日はもちろんシテ全員が稽古に来られました。

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本番直前の稽古の時には大抵、「おお!前回よりも格段にうまくなっている!」と驚くのですが、今日も全くその通りでした。

能と舞囃子の方々は、先週の申合を踏まえてガッチリと稽古されたようで、申合で直した所がよく修正されていました。

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更に驚いたのが仕舞の2人です。

ひとりは小学生ながら稽古歴6年を超える女の子。そしてもうひとりは、御座敷での発表会では何度か舞っているものの、能舞台での仕舞は初めてという方でした。

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それぞれ、先月の稽古では不安定だった箇所がとてもスムーズになっていて、相当な自主練を積んで来たものと思われました。

実際女の子は、「上手くなったね。相当稽古してきたのでは?」と聞くと「うん!した!!」と満面の笑みで答えてくれました。

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稽古を終えて食事をしている時に、ある会員さんが「私は5年前の郁雲会35周年の時は、稽古始めたてで何もわからず、宝生能楽堂で大原御幸の能だけ観て帰ったのです」と仰いました。

確かに松本は、その頃はまだ稽古場を立ち上げてからそれ程日が経っておりませんでした。

それが僅か5年で、能や舞囃子や仕舞がどんどん出るようになったのです。

しかも今回、相当な自主練を積んで稽古に来られた熱心な皆さんを見て、5年後がまた楽しみになって参りました。

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皆さん申し分無い準備が出来ましたので、先ずは今週末の宝生能楽堂にて、どうか思い出に残る楽しく有意義な舞台を経験していただけたらと思っております。

北陸の春は遠く…

今日は郁雲会澤風会前の最後の京都稽古でした。

「先生ご無沙汰してすみません」

大雪の影響でJR北陸線が動かず、福井から見える会員さんがしばらくの間稽古に来られなかったのですが、今日は何とか来てくださいました。

しかし「サンダーバードが満席で、福井からずっと立って来ました」とのこと。それは大変なことでした。。

福井では昨日辺りからやっと生活が落ち着いてこられたそうで、気温が上がったこともあり、今日は人の移動が多かったのだと思われます。

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今日の京都は本当に寒さが和らいで霞がかかって、春を感じさせる陽気でした。

そこにもう1人、やはり北陸は金沢から若手OGが来てくれました。

OGさん「皆さん何故そんな春めいた格好を…?」

彼女は完全防寒装備で足元はスノーシューズでした。

とはいえ、冬の金沢では必携の「傘」は流石に持っていませんでした…と思ったら、「折りたたみ傘が鞄に入ってます。当たり前じゃないですか。」

失礼しました。。

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北陸の皆さんは、まだまだ雪や寒さで大変なことと思います。

1日も早く雪がとけて春が訪れることを祈っております。

申合の囃子の速さ

今日の江古田稽古では、一昨日の郁雲会澤風会申合で能や舞囃子を舞った人達が、早速その時に録音した音源を使って稽古をしました。

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申合の時には、基本的に囃子方は「正しい速さ」をキープして打つことになっています。

つまり、シテが間に合っていなくてもそのまま淡々と打ち続けて、足拍子のタイミングなどが合わない時には私がその場で素早く直したりするわけです。

極端な話、型が多少抜けたり間違えたりしたとしても、そのまま流して打っていただいて、全部終わってから私が直した方が良いのです。

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何故かというと、申合でシテに合わせて緩急を変えて打ってしまうと、その音源で稽古出来なくなってしまうからです。

今回の申合でも概ねそのように正しい速さで打っていただけたので、適切な速さの音源が録れたと思います。

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なので申合で早すぎたり遅すぎたりした人、型を間違えてしまった人も、申合音源であと1週間稽古して、それに合わせられるようになれば良いわけです。

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江古田稽古もあと残り1回になりました。

皆さん順調に手順を踏んで稽古されているので、次の稽古で最後の仕上げをすれば、当日は安心して舞台に臨んでいただけると思っております。

郁雲会澤風会申合が終わりました

今日は郁雲会澤風会の申合がありました。

ある意味で申合は本番よりも緊張します。

今日の申合の舞台を何とかくぐり抜けて下さった皆様は、きっとそれぞれ大変な思いをされたことと思います。

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あとはこの経験を踏まえて最後の調整をして、本番はどうか舞台を楽しんでいただければと思います。

短いですが今日はこれにて。