2019年初稽古

今日は江古田稽古場にて、芸大受験を控えた高校生の謡と仕舞の稽古をしました。

元日に宝生能楽堂にて「謡初め」はありましたが、私の本格的な始動は今日の稽古からでした。

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芸大受験は謡の場合、ある曲を一曲丸ごと覚えて、試験会場でその一部を指定されて謡うという試験です。

どこが指定されても大丈夫なように、かなり細かく稽古しなければなりません。

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しかし、そのように一曲を何度も細かく稽古するという意味は、実は芸大受験を越えたその先のために大きな意義を持つと今日感じました。

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彼は1年前の段階では、謡本の読み方や節の謡い方も殆ど知らなかったのです。

それが同じ曲を繰り返す中で徐々に節の意味を理解していき、また「クセ」や「キリ」などの大まかな位取りなども少しずつ出来るようになってきました。

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これから膨大な量の謡を稽古していくにあたって、今回の曲で身につけた知識が大きな助けになってくれるでしょう。

まだまだ受験までに稽古を積んで、より正確な謡を身につけて試験に臨んでほしいと思います。

一番下にあったのは…

昨日書きましたように、今日の私の最大のミッションは「机の上を片付ける」ということでした。

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思えば1年前の年末は、翌3月に控えた「郁雲会40周年・東京澤風会第5回記念大会」の番組作りに大半の時間を費やしておりました。

なので机の上の整理整頓まで全く手が回らなかったのです。

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おそらく2年ぶりとなる本格的な机掃除です。

上にあるものから順々に「要るもの・要らないもの」に仕分けしていきました。

それはまた今年の時間を徐々に遡っていく作業でもありました。

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つい先日の関西宝連番組と経政の絵のチラシ→11月の京大能と狂言の会の番組とサブパンフ→10月の松本澤風会番組と乗鞍高原の地図→澤風会京都大会の番組と大山崎聴竹居のパンフレット…

と遡っていき、更に8月の岡山子供能楽教室と吉備津神社のパンフレット、松本城薪能のチラシや前座発表会番組及び松本市民タイムズの記事、3月の郁雲会澤風会の番組とパーティやお弁当など諸々の書類…

と続いていきました。

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そして机の上の山はまだまだ残っており、去年の関西宝連や京大能狂、松本澤風会、澤風会京都大会…とまた少しずつ遡って行って、遂に一番下にはなんと一昨年平成28年春の「澤風会10周年記念東京大会」の番組が埋もれていたのでした。。

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つまり今日1日で、ほぼ3年前までの自分の足跡を振り返ったことになります。

色々とても懐かしい番組や資料があり、この機会に整理して保存しておこうと思います。

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そして机の上が見違えるように綺麗になり、非常に良い気分です。

明日はいよいよ大晦日です。

たまった本の整理などをして、あとは静かに新年の訪れを待とうと思っております。

江古田稽古場2018稽古納め

昨日は江古田稽古場での稽古納めが無事に終わりました。

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13年前に私が講師を担当した「ジパング倶楽部謡曲教室」から続く会員さんの多い江古田稽古場は、ベテラン揃いで年齢も私の両親と同じくらいの方々がいらっしゃいます。

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稽古納めの後の忘年会にて。

私の母親の挨拶の番になると、母は最近では口癖になっているらしく「この席ではおそらく私が最高齢になると思いますが…」

と話し始めました。ところが色んな方向から、

「いやいや私の方が上ですよ。もう90ですから!」

「私も再来年には米寿ですよ!」

などの突っ込みが入って笑ってしまいました。

ご高齢の皆さんも本当にお元気で、今年も稽古に舞台に励んでくださり、本当に有り難いことと感謝しております。

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またつい先日稽古を始められた方のご挨拶では、「昔気仙沼のマグロ漁船に乗っていたこともあります」と伺って驚きました。

また個性的な会員さんが増えて、今後がますます楽しみな江古田稽古場です。

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澤風会の2018年の稽古も昨日で全部終了しました。

年内の仕事は、来年芸大を受験する高校生の特訓が残っているだけです。

色々あった今年もいよいよ終わりが見えてまいりました。

一昨日の田町2018稽古納め

一昨日12月26日のブログが消えてしまったため、書き直してお送りいたします。

字体などがまだ不安定な恐れがありますが、明日以降改善して参ります。

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→今日は田町稽古場の2018年稽古納めと忘年会でした。

「この1年にあったこと」を思い出そうとすると意外に難しいものですが、皆さまに頑張って思い出していただきました。

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例えばある会員さんは、「河原で謡を稽古していたら、向こう岸のマンションの住人から”声が大きくて困る”と言われた」そうです。

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またこれまで何回も忘年会にゲスト参加していただいており、満を持して今年から稽古を始められた方などもいらっしゃいました。

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そして田町稽古場では能楽の他に御神楽をされている方などもいらして、願わくば来年はそういった能楽以外の発表の舞台を拝見したいと思います。

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さらに忘年会では9年前の謡曲仕舞教室発表会の写真も見せていただき、皆さま9年前と殆ど変わらないお姿で驚きました。

私は全体的に少々丸くなっておりました。。

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今年も色々あった田町稽古場でしたが、思えばこのホームページは田町の会員さんから勧められて始めたのです。

こうして丸2年ブログを続けられて、改めてこのホームページを開設出来て良かったと感謝いたします。

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田町の皆さま、来年もどうかよろしくお願いいたします。

76往復目

このところ連日「今年最後の…」という話題ですが、今日はまた「2018年最後の新幹線」に乗ったというお話です。

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試みに手帳を見て数えてみたのですが、今年は東海道新幹線(京都、大阪)と東北新幹線(青森、仙台)を合わせて76往復152本の新幹線に乗ったようです。

今は76往復目の帰りの新幹線に乗っている訳です。

改めて、私の日々の稽古や舞台は”新幹線”あってこそ可能なのだと感謝しております。

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思えば去年2017年は鉄道関係のトラブルに巻き込まれることが多かった気がします。

青森駅が全面停電で東京に戻れないとか、岡山駅でペットの犬がホームから線路に逃げて遅延とか…。

今年2018年は不思議にそんなトラブルが少ない年でした。

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今もクリスマスイブだからか新幹線はとても空いており、ゆったりと座って東京に戻れそうです。

次に乗るのは年が明けて少し経ってからになる予定です。

来年も今年と同じような移動の日々になりそうですが、願わくばトラブルの少ない1年になってほしいものです。

満月の稽古納め

今日は松本稽古場の2018年稽古納めでした。

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ブログを書くことで去年の自分の行動を思い出すことが出来ます。

実は去年も12月23日が松本稽古納めだったようなのです。

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そして去年の今日は「特急あずさ」新型車両のお披露目の日と重なってしまったらしく、新宿駅のホームや車内が混み合って大変だったことを思い出しました。

一方で今朝の新宿駅のホームは至って普通の光景で、車両も新型ではなく、車内はがら空きで静かなものでした。

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稽古では、狙った訳ではないのですがいらした会員さん達の仕舞・舞囃子・謡「三笑」が全て丁度最後まで一通り終わって、実にキリの良い稽古納めになりました。

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そして今日は2018年最後の”満月”の夜でもあるのです。

9月の満月の日に「クチーナにし村」さんの”満月ワインバー”で飲んだ一杯の赤ワインの物語をブログに書きました。

今年最後の松本稽古が”満月ワインバー”と重なるのも何かの御縁。

帰りにやはり一杯だけワインをいただきに「クチーナにし村」さんに立ち寄りました。

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座っていつものように「ワインはわからないので、お任せします…」と言うつもりでいると、その前に「今日は是非こちらをお飲みください。この前飲まれた赤ワインと同じ方が作られた白ワインです」

と言って一杯のワインを出していただいたのです。

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実は9月の時に「この方の白ワインもあります」というお話は聞いていながら、時間が無くていただけなかったのです。

今年の心残りだったのが、思いがけなく今日いただくことが出来ました。

今日は、「飲んで無くなってしまうのは惜しいけれど、それがワインなのです」というお話を思い出しながら、しみじみと一期一会の白ワインを味わいました。

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「クチーナにし村」さんをお暇して松本駅に急ぎました。帰りの特急あずさまであと数分。

しかし、もう一か所だけ寄りたいところがあったのです。

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「こんばんは!」

松本駅前の鰻屋さん「山勢」さん。

今年は松本城薪能で初舞台を踏んでいただき、また何度も美味しいお料理をいただきました。

一瞬だけご挨拶を…と思って寄ってみたのです。

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店内にはどうやら身内の方々とおぼしき団体さんがいらして、中に店主の奥様も。

そして奥様は小さな赤ちゃんを抱いておられます。

店主さん「いや〜実はつい先週生まれまして…」

なんと!それは今年最後にとてもおめでたいニュースです!

慌ただしくお祝いの言葉を交わして、「今年もありがとうございました!どうぞ良いお年を!」

とお店を出て出発間際に特急あずさに飛び乗ったのでした。

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そして今日も特急の窓の外には見事な満月。

今年は初の松本城薪能での前座発表会など、おかげさまで色々充実していた松本稽古場でした。

来年もまたより一層頑張って稽古させていただきます。

そして大きな夢である「松本に能楽堂を!」という目標に向けても進んで参りたいと思います。

松本の皆さまどうか来年もよろしくお願いいたします。

紫明荘組2018稽古納め

今日は京都紫明荘組の今年の稽古納めでした。

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思えば今年に入ってから「紫明荘」が借りられなくなり、稽古場としては試練の1年だったと言えると思います。

しかしそれをものともせず、紫明荘組の皆さんは能「小袖曽我」を出したり、初舞囃子に挑戦されたり、病いを乗り越えて元気に復帰されたりと、とてもパワフルな1年を過ごされました。

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今日は稽古の後に京都駅前のアサヒスーパードライにて紫明荘組忘年会をしたのですが、そこにはつい最近稽古を始められた会員さんや、今春京大宝生会を卒業して晴れてOBの仲間入りをした若手達などが参加してくれて、大いに盛り上がりました。

来年に向けた新しい試みや大きな挑戦の話も出て、おかげさまで来年も賑やかな年になりそうです。

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紫明荘組の皆さん今年も1年どうもありがとうございました。

来年もまたどうかよろしくお願いいたします。

9年前の今日

昨夜田町稽古場の会員さんより「9年前の今日」という題名のメールをいただきました。

内容は、今からちょうど9年前の平成21年12月17日に宝生能楽堂で「謡曲仕舞教室」の修了発表会があった、というものでした。

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「謡曲仕舞教室」は、内弟子が順番で講師になり、宝生能楽堂で2年間謡と仕舞の稽古をするという教室です。

教室卒業後、希望者はそのまま講師の先生について稽古を続けても良い、という決まりでした。

現在の澤風会の江古田と田町の稽古場はこの「謡曲仕舞教室」時代からの会員さんが母体になっています。

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平成21年に修了ということは、稽古を始めてからはもう11年が経つことになります。

そういえば、当時幼稚園児で教室に入って来た子供がもう高校生です。

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有り難いことに11年経過してなお、当時の教室修了生の半分以上の方々が稽古を続けてくださっています。

皆さんそれぞれ大変に上達されて、中には舞囃子や能の役までなさった方もおられます。

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毎年講師が入れ替わっていく謡曲仕舞教室で、偶々私の順番の時に教室に来てくださり、以来ずっと稽古を続けてくださっている皆様には本当に感謝しております。

この御縁が出来る限り長く続くように、来年以降も頑張って稽古して参りたいと思います。

幣とタルチョ

今日の午前中に能「舎利」の申合が終わりました。

最近舞台関係のことばかり書いておりますが、ちゃんと澤風会稽古もしております。

昨日は田町稽古、今日は申合の後に先ほどまで江古田稽古でした。

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昨日の田町稽古でのこと。

田町稽古場には「和漢朗詠集」などに詳しい会員さんがいらして、謡の稽古の前後に色々解説をお願いしています。

昨日は「龍田」の解説をしていただきました。

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龍田の地謡に「殊更にこの度は、幣とりあえぬ折なるに、心して吹け嵐、紅葉を幣の神慮…」という言葉があり、これは菅原道真公の有名な「この度は 幣も取りあえず手向け山…」という百人一首の歌などから取った文句です。

そこから、「”手向け”という言葉は”峠”の語源であり、旅人が峠の道祖神やお地蔵様に幣を手向けて旅の安全を祈ったのが元になっている」というお話になりました。

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私はこの話を知らなかったので、ちょっと感動しました。

京都北山に無数にある峠には、よくお地蔵様が祀ってあったことを思い出したのです。

芦生原生林に入る峠はその名も「地蔵峠」といいました。

昔の旅人達はあの峠のお地蔵様に”幣”を手向けていたのでしょう。

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更に稽古の後に色々考えました。

「峠に幣を手向ける」という事が何か引っかかったのです。

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チベットやネパールの峠には必ず、「タルチョ 」呼ばれる五色の祈祷旗が掲げられて、峠の風にはためいている、という話に思い至りました。

改めて「タルチョ 」を調べると、「旅の安全、世界の平和などを願って掲げられる」とあります。

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幣の中には「五色の幣」というものもあり、これを峠の道祖神などに手向けるのは、もしや「タルチョ 」=五色の祈祷旗が起源になっているのではないでしょうか。

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…もしかして有名な話で、私が知らなかっただけかもしれません。

しかし昨日の田町稽古での解説のおかげで、龍田山から一気にヒマラヤ山脈の高い峠にまで想像を飛ばすことが出来ました。

解説では「龍田の神は風の神である」というお話もあり、風にはためくタルチョの風景がますます思い浮かんだのでした。

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どなたか「幣とタルチョ」の関係をご存知の方がいらしたら、どうかお教えくださいませ。

カメムシ占い

今日は午前中に大山崎稽古、昼から松本に移動して夜まで稽古しました。

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大山崎宝寺の紅葉は、半分散りかけになっていました。

「秋寒き窓の内、軒の松風うちしぐれ、木の葉かき敷く庭の面…」

という能「三輪」の一節が思い浮かびました。

ただし、「秋寒き」というほど寒くありません。むしろお寺に向かう急坂を登ると汗ばむくらいの気温です。

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松本に移動したら寒いかと思いきや、松本駅前の気温計が15℃もあり、こちらもこの時期にしては暖かく感じました。

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実は先週の青森稽古の時に、今年は暖冬になりそうだという話を聞いたのですが、その根拠が大変面白いものでした。

「岩木山神社のカメムシの数が多い年は寒い冬になり、少ないと暖冬になる」

というのです。

岩木山神社は津軽国一宮で、”坂上田村麻呂”とも縁の深い神社だそうですが、年によってその境内にカメムシが大発生するということです。多い時は1万匹にもなるとか…。

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ちょっと背筋がゾワゾワする光景ですが、一方で今年のカメムシはというと、かつて無いほど数が少ないそうなのです。

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という訳で”カメムシ占い”によれば今年は暖冬になるはずです。

今のところ実際に気温は高めだと感じています。

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とは言えまだ冬は始まったばかりです。

この冬は”カメムシ占い”の精度に注目しながら過ごしたいと思います。