チラシ作成します

今日は夜明けとともに青森を始発の新幹線で出てから、先ほど終わった江古田稽古まで、幸いに移動の遅れなどもなく無事に1日の仕事を終えることができました。

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江古田稽古では、新しい方がお一人見学にいらしてくださいました。

早稲田大学宝生会OBで、江古田で稽古されている会員さんの後輩にあたる方です。

見学とは言え勿論謡本を持っていらしており、早速稽古をしていただきました。

来月から本格的に始めてくださるとのことで、また力強いメンバーが増えて大変嬉しく思います。

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今月はたまたま、京都と松本でも新しい方が稽古を始められました。

いずれも元々稽古されている会員さんの知人の方で、このように会員さんの御縁でメンバーが増えていくのはとても有り難いことです。

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一方でつい先日こんなことがありました。

京都紫明荘組の稽古で最近お借りしているゲストハウス「月と」のオーナーさんが、「澤風会のパンフレットなどがあれば、よろしければ受付に置いておきます。」

と言ってくださったのです。

しかしそこで、澤風会は発足から現在に至るまで”宣伝パンフレット”のようなものを一度も作っていないということに気がつきました。。

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折角なのでこの機会に、パンフレットまではいかないまでもせめて”チラシ”くらいは作りたいと思ったわけです。

どんな風に作ったら良いかも全くわからないので、これから色々勉強しないといけません。

年内か、年明けくらいには作成したいと思っております。

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会員さん達の御縁に加えて、自分でもメンバーを増やす努力をして、来年は一層多くの新しい方に出会って、稽古を始めていただくことを目標にしたいと思います。

穏やかな京の一日

今日は早朝に京都に移動しました。

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世の中は3連休明けです。

東京駅から乗った新幹線の自由席は、なんと出発時点では車両に私を含めて10人ほどしか乗っていませんでした。

こんなに余裕がある新幹線は本当に久しぶりで、静かな車内でゆっくり休みながら移動できました。

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京都に到着すると、すぐに熊野神社近くのゲストハウス「月と」さんに移動して紫明荘組稽古でした。

「月と」さんは昔の京都の雰囲気を残している旧い建物なので、実に落ち着いた雰囲気です。

夕方まで稽古したり、会員さん達と楽しくお喋りしたりして時間が過ぎていきました。

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そして夕方に今度は北白川瓜生山の麓にある京都造形芸術大で、ごく短い仕事がありました。

北白川のその辺りには、京大学部生の頃に4年間を過ごした下宿があったので、久々に訪れて何とも懐かしい気持ちになりました。

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その短い仕事の後は、近衛の京大BOXに移動して夜まで稽古しました。

京大は学園祭が終わったばかりで、大きな祭の後の静けさが漂っている気がしました。

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今日の仕事を全て無事に終えて、車で京都駅に向かう途中で川端四条に差し掛かった時、改修を終えた”南座”の煌びやかな灯りが一瞬見えました。

顔見世興行中なので、おそらく近くに行くとすごい人なのでしょう。

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最後に京都駅から乗った最終の新幹線も、自由席にはやはり余裕があって珍しく窓際の席に座れました。

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最近の京都は「オーバーツーリズム」でどこもかしこも酷く混み合っているイメージでしたが、今日は幸いにほとんど人混みを経験せずに、静かで穏やかな京の1日を過ごすことができました。

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明日は東京で早朝から、1人で小学校の能楽教室をすることになっております。

これから東京まで、少しの間ゆっくり休もうかと思います。

不思議な運転手さん

今日は少し不思議なことがありました。

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松本稽古の場所がいつもの大手公民館ではなく、お城の北側にある”城北公民館”だったので、松本駅からタクシーに乗ったのです。

初老の運転手さんは城北公民館を知らないようだったのでとりあえず「お城の北の、開智小学校の辺りまでお願いします」と頼んで走り出しました。

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しばし走ると、運転手さんが話しかけて来ました。

「お客さんは松本の人ですか?」

私が違うと答えると、

「私は生まれも育ちも松本なんですよ」

と言って、走りながら見える街並みが昔はああだった、こうだったと説明を始めました。

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そして松本城の横に差し掛かった時。

「お城も昔はこんなに綺麗じゃなかった。

お城そのものが南側にちょっと傾いていたのですよ。

冬になると、凍ったお濠でスケートをしたもんです。ほら、あの赤い太鼓橋の辺りで。」

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私はそんな時代があったのかと素直に驚き、傾いた城をなおすのはさぞや大変だっただろうと想像しました。

その工事の話などを聞きたいと思ったのですが、タクシーは間もなく城北公民館に到着してしまいました。

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稽古場でお城が傾いていた話を早速すると、会員さん達に「それは結構昔の話ですよ。その運転手さんはかなりのお年じゃないですか?」と言われました。

そこでお城の話は終わり、稽古が普通に始まりました。

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無事に稽古を終えて、特急あずさでの帰り道。

なんとなく傾いた松本城の話が気になり、スマホで調べてみました。すると…

「明治30年代頃から天守閣が大きく傾き、明治36年から大正2年にかけて”明治の大修理”が行われた」

と書いてあったのです。

大修理の期間を西暦になおすと、1903年から1913年です。

改めて書くまでもありませんが、今から100年以上前の出来事です。

しかしあの運転手さんの語り口は、伝聞ではなく確かに自分の目で見たという口調でした。

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…あの初老の運転手さんは何歳だったのか、そもそも一体何者だったのか。

能の定型パターンだと運転手姿は前シテで、この後に私の夢枕に後シテとして本来の姿を現す、ということになる筈です。

今夜は心して睡眠に入りたいと思います。。

左右逆転

今日は田町稽古でした。

仕舞の稽古を昨年から始められた方が、今は3つ目の仕舞「猩々」を稽古されています。

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「先生すみません、今日は先生の舞を後ろから撮影させてもらえませんか?」

稽古の冒頭で、その方から上のようなリクエストが。

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確かに、正面から撮影した映像を見て稽古すると型が逆に見えてしまいます。

一旦脳内で映像を逆転させて、それをなぞって稽古するというのは慣れて来ないと難しいと思われます。

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昔東京芸大時代に、太鼓の観世元信先生が手を完全に左右逆転させて稽古しておられました。

“カシラ”の手も、右撥を左肩に持っていく訳です。

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そしてシテ方でも、仕舞の稽古の時にはお弟子さんに正対して型を左右逆転でされる方がいると聞いたことがあります。

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私は不器用なのでそのようなことは出来ず、澤風会稽古の時は会員さんの斜め前に同じ方向で立って、顔だけ振り返って説明しながら稽古する方法をとっております。

しかしこれだと、私が振り返る時に会員さんまで一緒に後ろを振り返ってしまうという、笑い話のようなことが起こってしまうのです。。

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背後から撮影するか、正面から左右逆転で稽古するのか。これは意外と難しい問題です。

しかしおそらく近い将来には立体映像の撮影が可能になり、あらゆる方向からシテの動きが見られる時代が来るのではないでしょうか。

その時にはきっと、こういった苦労自体が笑い話になっていくのでしょう。

“気”を払い落とすこと

今日は江古田稽古でした。

先月私は2つの澤風会があってバタバタしておりましたが、やはり先月お忙しくてお休みだった会員さんが、若干久しぶりに稽古に来られました。

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元気溢れる方で、「忙しいけれど体力はまだ余っているのです!この間も1日働いたのに夜全然眠れなくて、夜中に起き出しておでんを作ってしまいました!」

その話を聞いて、思い出したことがありました。

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先日のブログに書いた「太極拳」のお話です。

太極拳を習っている方から聞いたのですが、太極拳の練習や試合をした後には、必ず”気”を払い落としてから帰らなければいけないそうなのです。

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そしてたまたま”気”を払い忘れて帰宅してしまった日があって、その日は夜に目が冴えて全く眠れず、それで”気”を落とすのを忘れたことに気がついたそうです。

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私が江古田の元気な会員さんにその話をすると、横で聞いていた別の方が「私も、以前に能を舞った後に全然眠れなかったことがあります。あれもやはり”気”が残っていたのでしょうね」と仰いました。

確かに大きな舞台の終わった夜に、なかなか眠れないことがたまにあります。あれは”気”の影響なのかもしれません。

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私の場合、舞台や稽古の後に”気を払い落とす”という行為はしたことがありません。

しかし考えてみると、稽古の帰りには必ず”文庫本”を読みながら帰ります。無性に読みたくなるのです。

これは、本の世界に束の間没頭することで、能の世界で受け取った”気”をリセットしているのかもしれません。

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なので読む本は読み易くて荒唐無稽なものが多く、今日はハヤカワ文庫のマイクル・クライトン著「パイレーツ」という海洋大冒険小説の世界に、しばし没頭しながら帰りたいと思います。

秋を満喫

昨日の午後に大山崎から松本へ電車で移動しましたが、名古屋から松本まで乗った中央西線の沿線では紅葉が見頃を迎えていました。

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木曽福島辺りの山はこんな景色でした。

能「江口」のクセに”黄葉の秋の夕、黄纐纈の林、色を含むといへども…”という謡がありますが、このような情景かと思いました。

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ちなみに特急しなのは、新幹線と違ってのんびり走るので撮影もしやすいのです。

オレンジや黄色に燃えるような山々の合間を縫って走る、2時間の紅葉列車の旅でした。

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松本市内もやはり紅葉真っ盛りで、四柱神社の境内は絢爛たる彩りでした。

お城の前の通りから見た境内の遠景。

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境内にて。黄昏刻の弱まる光に抵抗するように、強烈な赤。

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ちょっと渋めの赤。

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赤、黄、緑のバランスを保った共演。

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昨日の午後の数時間で、実にバリエーションに富んだ紅葉を堪能いたしました。

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因みに松本稽古の後は、鶏きのこ鍋と熱燗で味覚においても秋を満喫したのでした。

太極拳の師匠

今日は早朝に京都に移動して大山崎稽古、昼から松本に移動して夜まで松本稽古をしました。

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色々面白いことがあったのですが、その中でひとつ。

先日の「松本澤風会」に太極拳の先生が見にいらしていたというお話です。

会員さんの1人が太極拳も習っておられるのです。

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先生は舞台をご覧になって、色々細かく感想を述べられたそうです。

「○○さんは腰から下が微動だにせずに舞っていた。あの人は体幹が鍛えられている。これからすごく伸びていくでしょう。」

「△△さんは”気”の力が非常に強く、正面に向かって歩いてこられると思わず横に避けてしまった。」

「☆☆さん(お囃子)は、構えの姿勢と手の出し方と、呼吸が良いので、やはり良い音が鳴っていた。」

などなど。

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また能の構えをご覧になって、「これは太極拳の含胸抜背(がんきょうばっぱい)と同じ」と仰られたそうです。

“含胸抜背”とは赤ちゃんを大事に抱くように、或いは大きな木を抱くようにする姿勢だそうです。

確かに構える時に「大木を抱くようなイメージで」ということを以前に言われた記憶があります。

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その先生は、”気”の力で人間を回転させたり飛ばしたりも出来る方だそうです。

私は実際に見たことはありませんが、人間対人間ならばそのようなことは可能だろうと思っております。

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今回の松本澤風会では時間がありませんでしたが、いつかその太極拳の先生に改めてお会いして、お話を伺ってみたいと思いました。

新しい化学反応

今日から11月です。

今月は京都紫明荘組の稽古からスタートしました。

場所は今日で2回目の、熊野神社の近くの古民家ゲストハウス「月と」さんです。

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前回の稽古中に、スタッフの方が稽古の様子を覗きに来てくださったのですが、今回「月と」さんに到着して驚きました。

前回の稽古のレイアウトと全く同じになるように、机などを並べ替えてくださっていたのです。

こういった心配りは実に嬉しいものです。

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今日はもうひとつ嬉しいことがありました。

新しい方が稽古を始められたのです。

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現代詩の創作と朗読をされている会員さんのお知り合いで、大阪でアーティストをされている方です。

どのような作品を創られているのかまだ伺っていないのですが、芸術家らしくとても個性的な雰囲気の方でした。

またこの稽古場に面白い出会いの化学反応が起きるのではないかと期待しております。

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今日は他にも、1階のカフェのお客さんが2人、早速見学に来てくれました。

中国とアメリカから京大に来ている留学生ということで、邯鄲の舞囃子の稽古を見て「辺りがこれまで見たことの無い空気になって、驚きました。一生心に残ると思います。」と目を輝かせて言ってくれたのです。

これもまた嬉しいことでした。

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この稽古場は、建物や調度品の数々がとても趣き深く、またカフェやゲストハウスとの交流もありそうで、これまでとはまた違った面白い経験が色々出来そうなのです。

小本を探して

以前にブログで書いたことがありますが、私は仕事が一段落すると、それまでの期間に使っていた”小本”こと「袖珍一番本」を一気に片付ける習慣があります。

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今回も松本澤風会が終わったタイミングで、何十冊もたまっていた小本をずらりと並べて片付けようとしました。

するとなんと「梅枝」の小本だけが、どこを探しても無いということに気がついたのです。

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私の小本は、東京芸大を受験すると決めた頃に、小川芳先生に頼んで購入していただいたものです。

以来約25年の間、181番が1冊も欠けることはありませんでした。

いつかは失くなる本も出てくるだろうと思っていましたが、ついにその日が来た訳です。

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小本はバラ売りしていないので、古本を探すしかありません。

今日は水道橋宝生能楽堂で、藪克徳くんのお社中会「篁風会」の申合だったので、それが終わってから神保町の謡曲専門の古書店「高山本店」に足を伸ばしました。

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私の小本は表紙が深緑色の”昭和本”というタイプです。

しかし他のタイプも色々あるので、全く同じもので無くても仕方ないと思いつつ探し始めました。

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高山本店には、何故か古書店でよく行き合う小鼓方の田邊さんもいて、一緒に探してくれました。

しかし、「梅枝」は稀曲ということもあり、なかなか見つかりません。

田邊さん「梅枝の小本はさすがに無いですね…。」

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私もまあ無理かな…と思いかけた時。

目の隅に、見慣れた深緑色が見えたのです。

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よく見るとなんと大量の深緑色の小本が、ダンボールに入ってバラ売りになっていました。

喜び勇んで100冊以上ある小本を調べていくと…

私「ありました梅枝!」

田邊さん「おお〜!おめでとうございます!」

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という訳で、新品同様の小本「梅枝」を、再び入手できたのです。

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気を良くして更に店内を見ていると、これまた探していた「図解仕舞集第八巻」を発見。

この本は絶版で、やはり古本を探すしか無かったのです。

今日は探し物が見つかる日だったようです。

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今の時代、謡はスマホやタブレットに入れて覚える事も可能です。

その利点も確かにあると思うのですが、やはり私は”紙の本”を手繰って覚える方が良く頭に入る気がするのです。

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今回私の手元に来てくれた小本「梅枝」は、早速来月の仕事で活躍してもらうことになります。

この「梅枝」を含めて、今後は小本をもう失くさないように、大切に使おうと改めて思いました。

氷室と野守と鵜飼の共通性

今年の澤風会の舞台がおかげさまで3月の水道橋、8月の七葉会、10月の京都、先日の松本と全部無事に終わって、しばらくはゆったりと通常運転です。

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今日は夕方から田町稽古でした。

謡は「氷室」を稽古しています。

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後シテ氷室神が氷を持って現れる場面で、その氷を「萬境を映す鏡の如く」という謡で表現しています。

この”萬境を映す鏡”とは、すなわち能「野守」のシテが持つ”野守の鏡”のことです。

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前から不思議に思っていることがありました。

能「氷室」と「野守」の後シテは、同じ「小べしみ」という面を掛けており、装束もほぼ同じです。

更に持ち物である「氷」と「鏡」が似通っています。

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そしてもう1番、能「鵜飼」の後シテ閻魔大王もまた、能面「小べしみ」を掛けて上の2番と似た装束なのです。

「野守」の後シテは、曲の最後に「奈落の底」へと帰って行きます。

“奈落の底”は閻魔大王のいる”地獄”と同じか、若しくは近い場所だと思われます。

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①「氷室神」の持ち物”氷”と「野守の鬼」の持ち物”鏡”の類似性。

②「野守の鬼」と「閻魔大王」が同じ”奈落の底”に存在すること。

③3曲の後シテの能面と装束が似通っていること。

以上の①②③を考え合わせると、これら3曲の後シテは近い属性を持っているように思えるのですが、今のところ何も根拠が見つかりません。

「神」と「鬼神」と「閻魔大王」は、全く別個の存在とも思えますが、果たして…?

何かご存知の方は、ヒントでも良いので教えていただけると有り難く存じます。

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わかったことがあれば、またご報告させていただきます。