月曜日の京都謡蹟散策の解散後に、私は亀岡稽古に参りました。
実はその日の亀岡稽古では、密かに楽しみにしていることがありました。
8月27日のブログに写真を載せた「フジバカマ」を覚えていらっしゃるでしょうか?
秋の七草のひとつでもあるフジバカマには、実は10月初旬にある特別な来訪者があるのです。
「アサギマダラ」という蝶です。
私がこの蝶と初めて出会ったのは、中学校の「科学部」の夏合宿で訪れた山梨県の本栖湖畔でした。
都内では見たことの無い綺麗で大きな蝶が、私のすぐ近くで逃げもせずに植物と戯れていました。
しかしその時には、このアサギマダラに非常に特殊な習性があることは知りませんでした。
アサギマダラは「渡り」をする蝶なのです。
春から夏には主に本州の高原地帯に住み、秋になると南へと移動を始めます。
そして本州から九州へ、更になんと大海原を越えて南西諸島まで渡っていくのです。
中には遥か台湾まで2000キロ以上の渡りをする個体もいるとか。
途中は海上に浮かんで休み、栄養補給はしないということです。
なので、海上に出る前に食餌を済ませる必要があるのですが、アサギマダラが蜜を吸う植物は何種類かに限られます。
このうちのひとつが「フジバカマ」なのです。
私は昨年のちょうど今頃の亀岡稽古の時、フジバカマに飛来した沢山のアサギマダラと出会うことが出来て感動いたしました。
今年も出来れば、長い長い「渡り」の途中に亀岡に立ち寄った彼らと会いたいと、密かに願っていた訳です。
ところが、月曜日は本降りの雨。
フジバカマにはアサギマダラどころか、虫の影さえ一匹も見当たりません。
「今年は会えなかったか。また来年だな…」
と残念に思いながら稽古を終えて、帰りがけにお弟子さんにその話をした所、なんと「昨日フジバカマにアサギマダラが来ていて、写真を撮っていた方がいますよ」とのこと。
更に帰りの新幹線でその写真がメールで送られて来たのです。
この先遥か南西諸島を目指す長い旅の途中で、今年も亀岡のフジバカマに立ち寄ってくれたアサギマダラです。
直接は会えませんでしたが、今も飛び続けている筈の彼らの旅の無事を祈りながら、しみじみと写真に見入ったのでした。
来年はどうか顔を見られますように。