カメムシ占い

今日は午前中に大山崎稽古、昼から松本に移動して夜まで稽古しました。

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大山崎宝寺の紅葉は、半分散りかけになっていました。

「秋寒き窓の内、軒の松風うちしぐれ、木の葉かき敷く庭の面…」

という能「三輪」の一節が思い浮かびました。

ただし、「秋寒き」というほど寒くありません。むしろお寺に向かう急坂を登ると汗ばむくらいの気温です。

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松本に移動したら寒いかと思いきや、松本駅前の気温計が15℃もあり、こちらもこの時期にしては暖かく感じました。

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実は先週の青森稽古の時に、今年は暖冬になりそうだという話を聞いたのですが、その根拠が大変面白いものでした。

「岩木山神社のカメムシの数が多い年は寒い冬になり、少ないと暖冬になる」

というのです。

岩木山神社は津軽国一宮で、”坂上田村麻呂”とも縁の深い神社だそうですが、年によってその境内にカメムシが大発生するということです。多い時は1万匹にもなるとか…。

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ちょっと背筋がゾワゾワする光景ですが、一方で今年のカメムシはというと、かつて無いほど数が少ないそうなのです。

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という訳で”カメムシ占い”によれば今年は暖冬になるはずです。

今のところ実際に気温は高めだと感じています。

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とは言えまだ冬は始まったばかりです。

この冬は”カメムシ占い”の精度に注目しながら過ごしたいと思います。

勝負の3時間半

今週に入ってから、謡を覚える時間がなかなかとれずに四苦八苦しております。

今日は青森稽古に移動する日だったので、金曜開催の「宝生夜能」で地を謡う能「殺生石」、また来月の五雲会で自分がシテを勤める能「舎利」と、次の日曜日に開催される「宝門会」で地を謡う何曲かの小本などをまとめて持って、東北新幹線に乗り込みました。

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勝負の3時間半です。

先ずは「殺生石」。これはほぼ頭に入っているので、ざっと見直しただけで終了。

次に「舎利」。シテ謡と型を一通り、舞台で舞っているつもりでイメージトレーニングします。まだまだ細部まで詰められない状態ですが…。

そして宝門会の舞囃子「頼政」。何度も謡ってはいますが、中々手強い曲です。2〜3回通して脳内で謡ってみて、とりあえず終了。

さらに今回の山場で1番の難所、舞囃子「誓願寺」に取り掛かりました。

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罰当たりな話なのですが、仏教を題材にした曲はとても覚えづらいのです。

どの曲も似たような言葉が出てくる為に、他の曲に飛んでしまう恐れが多々あります。

例えば今回も、「舎利」と「誓願寺」という全く対極的な内容の曲に、「常在霊山」と「昔在霊山」という非常に似た文句が出て来たりしました。。

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仙台くらいまで頑張っていたのですが、やがて強力な睡魔が襲ってきました。

「溜まった疲れをとるのも大事だしな…」

と、一旦謡本を置いて眠りに入りました。。

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八戸辺りで覚醒して、新青森までの約30分、再び先ほどの順番で謡本を次々と開いていきました。

経験上、謡を覚える作業を一通りしてから、少しの時間を置いてもう一度お浚いすると、効果が倍増するのです。

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新青森に到着した時には、何曲かの謡の目処が立ち、さらに疲れもある程度とれているという理想的な状態になっていました。

明日の朝は、始発の新幹線で新青森を発って水道橋の「宝生夜能」申合に向かいます。

今日と同じ作業をまた繰り返して、なんとか「誓願寺」などの手強い曲をお浚いしたいと思います。

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青森駅に到着すると、1年ぶりに「雪だるま〜る」が点灯されていました。

ちょっと癒されたので、これから青森稽古頑張って参ります。

穏やかな京の一日

今日は早朝に京都に移動しました。

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世の中は3連休明けです。

東京駅から乗った新幹線の自由席は、なんと出発時点では車両に私を含めて10人ほどしか乗っていませんでした。

こんなに余裕がある新幹線は本当に久しぶりで、静かな車内でゆっくり休みながら移動できました。

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京都に到着すると、すぐに熊野神社近くのゲストハウス「月と」さんに移動して紫明荘組稽古でした。

「月と」さんは昔の京都の雰囲気を残している旧い建物なので、実に落ち着いた雰囲気です。

夕方まで稽古したり、会員さん達と楽しくお喋りしたりして時間が過ぎていきました。

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そして夕方に今度は北白川瓜生山の麓にある京都造形芸術大で、ごく短い仕事がありました。

北白川のその辺りには、京大学部生の頃に4年間を過ごした下宿があったので、久々に訪れて何とも懐かしい気持ちになりました。

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その短い仕事の後は、近衛の京大BOXに移動して夜まで稽古しました。

京大は学園祭が終わったばかりで、大きな祭の後の静けさが漂っている気がしました。

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今日の仕事を全て無事に終えて、車で京都駅に向かう途中で川端四条に差し掛かった時、改修を終えた”南座”の煌びやかな灯りが一瞬見えました。

顔見世興行中なので、おそらく近くに行くとすごい人なのでしょう。

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最後に京都駅から乗った最終の新幹線も、自由席にはやはり余裕があって珍しく窓際の席に座れました。

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最近の京都は「オーバーツーリズム」でどこもかしこも酷く混み合っているイメージでしたが、今日は幸いにほとんど人混みを経験せずに、静かで穏やかな京の1日を過ごすことができました。

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明日は東京で早朝から、1人で小学校の能楽教室をすることになっております。

これから東京まで、少しの間ゆっくり休もうかと思います。

秋を満喫

昨日の午後に大山崎から松本へ電車で移動しましたが、名古屋から松本まで乗った中央西線の沿線では紅葉が見頃を迎えていました。

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木曽福島辺りの山はこんな景色でした。

能「江口」のクセに”黄葉の秋の夕、黄纐纈の林、色を含むといへども…”という謡がありますが、このような情景かと思いました。

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ちなみに特急しなのは、新幹線と違ってのんびり走るので撮影もしやすいのです。

オレンジや黄色に燃えるような山々の合間を縫って走る、2時間の紅葉列車の旅でした。

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松本市内もやはり紅葉真っ盛りで、四柱神社の境内は絢爛たる彩りでした。

お城の前の通りから見た境内の遠景。

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境内にて。黄昏刻の弱まる光に抵抗するように、強烈な赤。

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ちょっと渋めの赤。

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赤、黄、緑のバランスを保った共演。

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昨日の午後の数時間で、実にバリエーションに富んだ紅葉を堪能いたしました。

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因みに松本稽古の後は、鶏きのこ鍋と熱燗で味覚においても秋を満喫したのでした。

面白写真〜2018夏秋〜

久々の旅先での面白写真です。

まずは居酒屋さんから。

三島にて。

ご主人が神主さんとかでしょうか…?

メニューもきっと面白そうです。この日は昼間だったので閉まっていましたが、機会があれば夜に行ってみたいと思います。

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パワースポットの次は”異空間”と来ました。

松本にて。

しかしこの料金設定は大丈夫なのでしょうか…。

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ここはやはり昼間で閉まっていたのですが、能面と関係があるのか聞いてみたいものです。

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次は青森にて。

この高さ4m程の梅沢富美男さんが”かかし”なのだそうです。

これが田んぼに立っていたら、カラスならずともビックリするでしょう。。

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JR京都線の車内にて。

京都水族館の11匹のペンギンの中から”推しペン”を選ぶ企画です。

こういうセンスは大好きです。

京都生まれのペンギン達の名前が、「しじょう」「てら」「まる」「たけ」など通りの名前なのもまた良いです。

しかも調べたら、東京のすみだ水族館との共同企画で、すみだ水族館でも同様の超選挙をやっているようです。時間があれば行ってみたいものです。

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最後は京都の路地にて。

窓に人形が並んでいるな…と思って通り過ぎようとしたら、

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本物が混じっていました。

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今日はこれにて失礼いたします。

紅葉、撮影失敗…

昨日のブログで、いわて沼宮内辺りの紅葉を今日の帰りがけに見るのが楽しみ、と書きました。

そして今朝のこと。

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朝方の青森はまだ昨夜来の雨が残っていて、どんよりした空模様でした。

しかし新幹線に乗って八戸を過ぎる頃には、徐々に青空が見えて来ました。

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紅葉も期待通りなかなか綺麗です。

車窓から紅葉の写真を撮ってブログに載せようと、私はスマホをずっとカメラ機能にして、シャッターチャンスを探していました。

…ところが、そのチャンスが中々巡って来ないのです。

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「お、綺麗だな」と思ってカメラを向けた途端に、新幹線はトンネルに入ってしまいます。

東北新幹線の岩手県内はトンネルだらけなのです。

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そして当然ながら、新幹線なので超スピードです。

新青森〜盛岡間は比較的遅めとは言え、調べたら平均時速260キロだそうです。

綺麗な紅葉はあっという間に背後へ飛び去っていきます。

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なんとか苦労して撮影を試みましたが、例えば…

窓枠が写ったり…。

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車内が反射したり…。

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遠くて色が良くわからなかったり…。

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という訳で、結局失敗作ばかりを載せることになってしまいました。。

本当はもっとずっと綺麗だったのです。

美しい景色は、記憶に留めるのが一番ということでしょうかね…。

陸奥への道行

昨夜は最終近い新幹線で京都から東京に戻りました。

そして今日は午後に家を出て、東北新幹線で青森稽古に移動しています。

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三ノ輪の自宅を出ると、午後の陽射しが強くてまるで初夏の陽気です。夏の最後の抵抗なのでしょうか。

しかしこれから向かう青森はきっと肌寒かろうと思うので、鞄にはジャケットとマフラーを詰めておきました。

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新幹線が北上するにつれて、車窓の秋が深まっていきます。

しかし仙台辺りまでは、紅葉にはまだ早い感じでした。

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盛岡の手前までくると、夕暮れが迫って来ました。

秋の夕暮れは、気温が急激に下がっていくのが車窓から見ても想像出来るようで、実に寂しさを掻き立てる風景でした。

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やがて盛岡を過ぎて、いわて沼宮内の辺り、時間にして16時45分くらいにはほぼ真っ暗になりました。

能「黒塚」の中でワキ阿闍梨祐慶が、秋の日暮れに陸奥安達ヶ原で一軒の灯を見つけて、女主人に宿を頼むという情景が頭に浮かんできます。

そして寒く侘しい秋の夜を、一人過ごしてやがて鬼女になった女主人の心持ちも、朧気ながら解りそうな気がしました。

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しかし暗くて撮影は不可能でしたが、最後の日の名残りで見透かしてみると、いわて沼宮内辺りの紅葉はとても綺麗そうでした。

明日午前中の帰り道を楽しみにしたいと思います。

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驚いたことに新幹線が新青森駅に到着してホームに出ると、”肌寒い”などとんでもない、本格的な冬の寒さでした。

在来線の乗り換えホームで、慌てて鞄からジャケットとマフラーを引っ張り出して着込み、ようやくホッとしました。

そして青森は雨です。

おそらくこの雨は”秋と冬の境い目”の雨なのです。

北海道ではこの雨が雪になっているのでしょう。

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夏から冬を一気に縦断した、東北新幹線での道行でした。

これから青森稽古に行って参ります。

松本澤風会無事終了しました

美ヶ原温泉の旅館”月の静香”大広間にて、昨日松本澤風会を無事に開催することができました。

小鼓方の住駒充彦さん始め、ご参加くださいました皆様誠にありがとうございました。

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松本澤風会は、来年で稽古開始から10年、再来年が第10回の舞台を迎えます。

最初の頃は仕舞と謡だけだった番組が、舞囃子、居囃子、独調なども増えて、多彩なものになりました。

また昨日は太鼓と小鼓、仕舞と笛、舞囃子シテと太鼓など、一人で複数回舞台に出る人が多くいらっしゃいました。

これはとても大変なことなのですが、どうかこれからも精力的に挑戦していただければと思います。

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一夜明けて今日は、京都や東京からいらした方々と紅葉狩に出かけました。

天気も良く、北アルプスの一足早い秋を満喫いたしました。

貴船神社の怖い思い出

今日は水道橋宝生能楽堂にて「五雲会」が開催され、私は能「鉄輪」の後見を勤めました。

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前シテは夜の京をヒタヒタと北へ歩いて、貴船神社へと丑の刻参りに通います。

女性の怨念がひしひしと感じられる、非常に不気味な雰囲気の”道行”謡です。

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今からもう8年ほども前のことになりますが、年末に貴船神社に詣でたことがあります。

大山崎のふるさとガイドでもある木村さんの案内で、半ば能「鉄輪」の取材のような貴船ウォーキングでした。

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クリスマスも終わった12月27日だったと記憶しています。

叡山電車の貴船口駅で降りて、くねくねした細い車道を登って貴船神社へと向かいました。

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辺りには意外にも人が多く、特に若い女性がひとりで歩いている姿が目立ちます。

「今流行りの”パワースポット”というやつだろうか…?」と思いながら、やがて貴船神社に到着しました。

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境内にもやはり結構人がいて、とりあえずお参りをした我々の横でも、手を合わせる女性がいます。

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お参りの後に、木村さんのガイドで境内を色々見てまわりました。

大阪湾から遡って来たという”磐船”などを見たりして、30分ほどゆっくりと境内で過ごした後に、「では帰りましょうか」と最後に辺りをぐるりと見回しました。

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そこで、「あれ?」と思いました。

何とも言えない異常な感じがしたのです。

もう一度見回した時、その違和感の原因に気づきました。

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先程30分前に我々がお参りした時に、横でお参りしていた若い女性。

彼女が先程と全く同じ場所で、同じ姿勢でじっと手を合わせているのです。

30分間も微動だにせずに、一体何を祈っているのか…?

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そう考えた時、行きの貴船口駅からの道を歩いていた沢山の女性のことが思い浮かび、背筋がスッと寒くなりました。

“パワースポット”などでは無く、彼女達はもっと切実で深刻な思いで貴船神社に詣でているのではないだろうか…。

それはまるでリアルな「鉄輪」のようだと思いました。

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能「鉄輪」の世界は、おそらく現代の京都にも、当時と同じように息づいているのです。

今日の舞台で”道行”を謡う前シテの後ろ姿を見ながら、あの時の怖さを思い出したのでした。

“うしびて”?

今日は松本稽古からの帰りに、松本駅前にある美味しい鰻屋さん「山勢」で昼ごはんを食べました。

松本城薪能前座の時に、初舞台仕舞「鶴亀」を見事に舞われた会員さんがなさっているお店です。

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ここではいつも鰻重の前に、季節の美味しい物を一品出してくださり、それがまた楽しみでもあるのです。

今回は”きのこと菊の花のお浸し”というようなものでした。

出された時に「これは◯△×☆という名前のきのこです」と言われ、元々耳があまり良くないので「上手く聞き取れなかったなあ…」と思いながら一口食べてみました。

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外見は黒っぽくてゴツゴツした印象ですが、柔らかくて適度な歯ごたえもあり、風味もしっかりとあるとても美味しいきのこでした。

やはり名前を知りたいと思い、「あの〜すみません、これは何というきのこでしたっけ?」と尋ねてみました。

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「うしびて、という名前です。由来はわからないのですが、この辺の人はそう呼んでるみたいです。」

なるほど、「うしびて」。

不思議な名前です。

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鰻が焼きあがるまでに携帯で検索してみると、ちゃんと出て来ました。

「牛額」が訛って「うしびて」になったようです。牛の額は確かに黒くてゴツゴツしていそうです。

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そしていよいよ出てきた鰻重に添えられたお吸い物の具が、また普段見慣れない菜っ葉でした。

「このお吸い物には何が入っているのですか?」

「ああ、これは”きんじそう”と言います。金沢では良く食べるみたいですよ。」

これもすぐ調べると、「金時草」という字でした。

少しぬめりのある食感で、独特な風味があってこれまた美味しかったです。

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美味しい鰻とともに、初めて食べる「うしびて」や「金時草」もいただいて、幸せな昼食でした。

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店主さん「来年は、もう少し早い時期に”こうたけ”というきのこを是非食べていただきたいです。僕は”松茸”よりも美味しいと思いますよ。ただ出回る時期が短いので、運が良くないと食べられないんです。」

なんと、それでは来年の10月初めくらいに何とか”こうたけ”を食べてみたいと思います。

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完全にグルメリポートになってしまいましたが、今回はこれにて。

最後に”四柱神社”の色づき始めた紅葉です。