京大OBの結婚式

今日は浜松で、京大宝生会OBの結婚式がありました。

私を含めて、宝生会OBも何人か参列させていただき、披露宴で仕舞を出しました。

色々新鮮な場面があり、とても良い式でした。

「人前式」というのは初めての経験でしたが、形式張らず好感が持てました。

また入場からずっと、新郎が仕舞の「かまえ」をしていたのが微笑ましかったです。

披露宴の余興として仕舞「加茂」をOB代表が舞った後に、サプライズで新郎自ら立ち上がり、「あら面白の音楽や〜」と仕舞「難波」を舞い始めて、会場も盛り上がりました。

そしてお色直しの後に洋装で登場した新郎新婦は、なんと大量のシャボン玉が舞う中を自転車に乗って会場に入って来て、これまた大喝采を浴びていました。

イメージ図↓

新郎新婦の出身高校の応援団の、どことなくユルい応援パフォーマンスも何とも味があり、肩肘張らない非常に心地良い時間でした。

最後の御両親に向けての新郎新婦の挨拶の後に、式場のスタッフで涙ぐんでいる人がいて、「この式場のスタッフは、自分の仕事に対して本当に真摯に向き合っているのだなあ」と感心しました。

新郎は1週間後の澤風会で仕舞を舞ってくれる予定なので、またそこで今日の話が色々出来ると良いです。

本日はおめでとうございました。

坪光松ニ先生の思い出

京大宝生会で私がお世話になった先生方で、冬の寒い日になると思い出すのが小川芳先生ですが、また夏の暑い日に思い出される先生がいらっしゃいます。

坪光松ニ先生です。

坪光先生には謡を教えていただきました。

先生は宝生流職分でありながら、大阪大学で教授までされていた、数学の先生でもありました。

その話を聞いて、高校で使っていた数研出版の教科書を見ると、なんと著者一覧に坪光先生の御名前もありました。

今も「数研出版  坪光松ニ」で検索すると先生の著書が出てくる筈です。

如何にも学者然とした、静かで知的な風貌の先生の謡は、しかし迫力と味わいに満ちた「本物」の謡でした。

また僅か一文字も疎かにせずに技巧を凝らした謡い方と、曲全体を見渡した正確な位取りには、「謡に微分積分の考え方が応用されているようだ」と感じたりしました。

先生の鸚鵡返しの謡は、たとえ相手が経験の浅い学生だからと言って、一切手加減の無いものでした。

今でも残っている当時のテープを聴くと、学生のまだ幼い謡に対して、先生は何度でも繰り返して正確無比な本物の謡を謡って下さっています。

私などは、相手に応じて「ここはまだ出来なくて良いかな」などと注意を先送りすることがままあるので、先生の姿勢には本当に頭が下がります。

実は数年前に渡独した若手OBのT君は、その坪光先生の鸚鵡返しのテープを繰り返し聴いて謡の勉強をしていて、ドイツにも持って行っていました。彼が坪光先生最後の弟子と言えるかもしれません。

今の現役達も、出来れば坪光先生のテープを聴いてほしいものです。

実際には先生に4年間フルに習ったのは、私の学年が最後でした。

先生が亡くなられたのは8月の暑い日で、葬儀は教会で執り行われました。

先生がクリスチャンだったのをそこで初めて知って驚きました。

また、教会なので当然謡は謡えず、「先生をお送りするのには、賛美歌よりも謡が良いのになあ」と内心思ったことを覚えています。

いつか坪光先生のあの鸚鵡返しのように教えられるようになるのが、私にとっての遠い目標なのです。