国立民俗学博物館にての公演

今日は大阪の国立民俗学博物館の特別展「驚異と怪異〜想像界の生きものたち」に関連した能楽公演に出演して参りました。

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この特別展は、私の好みの正にど真ん中ストライクの分野のものでした。

しかし今日はあくまでも能「土蜘」の地謡と楽屋の仕事に集中です。

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京都の宿から電車を乗り継いで、「万博公園駅」に到着しました。

あの有名な「太陽の塔」の足元を通って、民俗学博物館に向かいます。

同行した山内崇生さんのお姿も。

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民俗学博物館はかの黒川紀章氏設計の美しい建築物です。

そのエントランスホールにての能「土蜘」の演能でした。

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その「土蜘」以外にも、石黒実都さんが「龍女」に扮しての”動く彫像”というパフォーマンスもありました。

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世界中の妖怪や神獣達が集合した今回の特別展で、いわば日本代表として「土蜘の精魂」と「龍女」が活躍した今日の舞台。

能楽が「想像界の生きものたち」という方向からスポットを当てられるとは、大変に面白い企画だと思いました。

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ただ繰り返しですが、今日はゆっくりと特別展を拝見する時間はありませんでした。

特別展は11月26日までやっているようなので、何とかその期間中に改めて民俗学博物館を訪れたいものです。

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帰り道。

見たことのなかった「太陽の塔の背中」です。

今回の特別展に出てきそうな、なにやら怪しげな太陽が描かれていました。

行きと同様に、同行の山内師、石黒師と共に撮影タイムです。

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そして今は帰りの新幹線で、頂戴した「驚異と怪異」展の図録を開いて至福の時を過ごしております…。

1件のコメント

あんな髪型やこんな扮装に…

今日は早朝より夜まで、大阪のNHKにて、歴史番組の収録に参加いたしました。

「観阿弥と世阿弥」をテーマにした回で、私は下のような髪型や…

さらに下のような扮装になりました。

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今回収録した番組は11月中旬に放映されるということです。

意外な人の意外な姿や台詞があり、きっと楽しんでいただけると思います。また改めて詳しく告知させていただきます。

皆さま是非ご覧くださいませ。

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今日は色々なプロフェッショナルに囲まれて、興味深い経験満載だったのですが、少々疲れましたのでまた改めて書きたいと思います。

院展の迷宮・2019秋

今日は宝生能楽堂にて「五雲会」が開催されました。

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私はその前の午前中に、わずかな時間ですが上野の東京都美術館で「院展」を見て参りました。

田町稽古場の会員さんが毎回出品されているのです。

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行く度に「日本画の迷宮」をあてどなく彷徨うことを楽しみにしている院展です。

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もう7〜8回目になるかと思われますが、最近ではその時の自分の心境によって好みの絵が変わる事に気付きました。

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今回強く魅かれた絵は、

「異形の神々が立ち並ぶ神殿」

「”天狗風”で洗濯物が飛ばされるところ」

「真白い”ヤク”と、その背後の沢山の仏像達」

「バリ島のヴィシュヌ神」

…などでした。

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つまり、何か「人知を超えた存在」をモチーフにした絵に惹かれたようなのです。

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しかし勿論それ以外にも印象的な絵はありました。

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今回最も心に残ったのは、ある二頭の動物の絵でした。

静かに澄んだ瞳で、並んで遠くを見つめる彼らに付けられた題名は「美しい二人」。

二人の佇まいと、その周囲を包む静謐な空気は、本当に美しく見えました。

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その動物は、「ブチハイエナ」でした。

おそらく多くの人々からはあまり良い印象を持たれていないと思われる”ハイエナ”。

しかし我々の持つそういった印象は、所詮一面的にしか過ぎないのです。

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美しい二人のハイエナの姿に、大切なことを再認識させられた気がいたしました。

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田町稽古場の会員さんの絵も勿論素晴らしく、遠くで鳴る雷が聴こえて来るような画風でした。

今週遭遇した雷雨を思い出しました。

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今回も僅かな時間の滞在でしたが、心地よい浮遊感を味わうことができました。

「院展」は明後日まで開催されています。

皆さまもご自分の好みの絵を見つけに、是非院展にいらっしゃることをお薦めいたします。

懐かしい「藝祭」

今日は午前に水道橋宝生能楽堂での「月並能」の申合にて能「鵺」の地謡を勤めました。

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終わって大阪に移動して、これから明日の彦根城能の申合があります。

こちらは能「望月」の地謡です。

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一方で今日から東京上野の東京藝術大学では、通称「藝祭」と呼ばれる学園祭が始まっているはずです。

私が教えている1年生の青年は、今日午後の能楽専攻の発表会の舞台を終えた頃と思われます。

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藝祭は私が在学中の頃も大変な盛り上がりでした。

音楽学部邦楽科では、「葵」という出店を出して、焼き鳥やビールを売っていました。

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能楽専攻の学生達も、店長や焼き鳥係、会計など色々な役を割り振って、慣れない接客業を頑張ったものです。

講師の先生方も入れ替わりでいらして、無礼講で盛り上がったのが懐かしいです。

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藝祭は明後日日曜日まで開催されているそうです。

能楽専攻の舞台は終わっていますが、「葵」はやっているはずです。

また、藝術大学ならではの見応えのある学園祭です。東京近郊の皆さま、よろしければ覗いてみてくださいませ。

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また関西近郊の皆さまは、明日土曜日は是非「彦根城能」

にご来場くださいませ。

彦根城博物館能舞台にて、16時開場16時半開演です。

どうかよろしくお願いいたします。

暑さのピークはいつまで…

今日は夜に田町稽古でした。

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その前に、用事があって先ず水道橋宝生能楽堂に向かいました。

地下鉄日比谷線を秋葉原で降りて、さらに郵便局にも用事があったので、歩いて御茶の水方面へ出発しました。

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いつもなら何でも無い外堀通りの緩やかな上り坂なのですが、今日は途中で尋常ではない汗が出て来ました。

坂を上りきった御茶の水駅の郵便局で、エアコンの空気にホッと一息。

用事を済ませてまた水道橋へ歩き出しました。

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熱中症は大丈夫なのだろうか…

と思うほどの発汗量でしたが、能楽堂に到着してまたエアコンで少し涼んだら、すぐに汗も引きました。

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思えば昨年の今頃は、松本城薪能でもっともっと暑い思いをしたのでした。

暑さは苦手ですが、耐性は意外にあるようです。

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そういえば、昨年の松本城薪能では台風13号の影響に一喜一憂いたしました。

今年もまた台風が近づいているようです。

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今頃から台風がいくつか過ぎて、お盆の終わり頃に少し涼しくなったと去年のブログにありました。

もし去年通りならば、あと1週間ほどで暑さのピークが過ぎてくれるはずなのです。

それを信じて、明日からまた暑さに負けずに稽古して参りたいと思います。

東京五輪に向けたプレイベント

今日は国立能楽堂にて、2020東京オリンピック・パラリンピックに向けたプレイベント「ESSENCE能」に出演して参りました。

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今から55年前の前回の東京五輪の時には、10日間にわたる大規模な能楽公演があったそうです。

そして来年の2020東京五輪期間中には、なんと合計12日間にわたって”史上最大規模”の能楽公演が企画されていると伺っております。

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スポーツの祭典であるオリンピックに向けて、来年は全世界から物凄い数の人々が日本にやって来ることでしょう。

せっかく日本で開催されるのですから、その方々にスポーツだけでなく日本の伝統文化も味わっていただくというのは、とても大事なことだと思います。

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私は残念ながら今後の人生においても、五輪競技に選手として参加することは出来そうにありません。

しかし能楽師として、来年の五輪期間中に日本全体を盛り上げるためのお手伝いが少しでも出来るならば、それは有り難く嬉しいことです。

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今日はその来年のためのプレイベントに参加させていただき、大変意義深い1日になりました。

そして遠い先だと思っていた東京オリンピック・パラリンピックが、今日1日の体験でなんだか目前のことのように思えてきたのでした。

聞く心

今日は予定の稽古がキャンセルになり、ポッカリと休みになりました。

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夕方に三ノ輪の自宅から外に出ると、京都よりはだいぶ過ごしやすい気温です。

「東京で蝉の声をまだ聴いていない気がする」と思って散歩に出たのですが、大通りから裏道に入ると、近所の寺や社の小さな森から湧き立つような蝉の声が賑やかに聴こえてきました。

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やはり最近少々忙しかったので、私の耳に入っていなかっただけのようです。

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「音を聴く」

という行為は、いくつかの能の曲において、非常に重要なシーンで使われます。

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例えば能「小督」のいわゆる「駒之段」ではシテ源仲国が、

「峰の嵐か松風か それかあらぬか 尋ぬる人の琴の音か…」

と小督の局の琴の音を探して耳を澄まします。

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また能「砧」では、

「砧の音 夜嵐 悲しみの声 虫の音。交じりて落つる露涙。ほろほろ。はらはらはら…」

と、周囲全ての音が渾然一体となり、独り残された妻の痛切な悲しみとして表現されています。

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他にも能「班女」においては、シテ花子が、

「秋風は吹けども 荻の葉のそよとの便りも聞かで。鹿の声 虫の音も 枯れ枯れの契り。あら よしなや…」

と恋人からの音信が絶えてしまったことを自然の音に喩えて嘆き悲しみます。

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上記のシーンでは、シテはいずれも「聞く心」という型をします。

ある切実な思いを持って「音」に耳を澄ませる様子を表現する型です。

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機械音や人工音に囲まれた現代ですが、東京都心であっても蝉の声や鳥の声、場所によっては蛙の鳴き声を聴くこともあります。

「聞く心」を出来るだけ忘れないでいたいものだと、今日近所で蝉時雨を聴きながらしみじみと思ったのでした。

猛暑とゲリラ豪雨

今日は午前中から京都丹波橋にて紫明荘組稽古、夕方に京大に移動して夜まで稽古でした。

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紫明荘組稽古は今日は10人で、能「羽衣」を始め舞囃子、仕舞、独吟、素謡など、9月21日開催の「澤風会大会」に向けた稽古をいたしました。

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京大宝生会は、大学院試や帰省でお休みの人をのぞいたやはり10人ほどが来てくれました。

それぞれ仕舞を稽古した後に、能「竹生島」の地謡の稽古などをしました。

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特別な出来事が無くて、淡々と真面目に稽古して終わる1日もあります。

今日はそんな日だったのですが、特筆することがあるとしたら「暑さ」と「ゲリラ豪雨」でしょうか。

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丹波橋から京大までは、通常ならば京阪電車一本で「神宮丸太町」で下車して、歩いて10分で到着します。

ところが今日の京都は最高気温39℃。

京阪電車を待つホームでの僅か3分ほどで、あまりの暑さに心身ともに疲弊してしまいました。。

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結局電車で終点の「出町柳」まで行き、そこから市バスで京大BOX近くまで戻るというやや贅沢な方法をとりました。

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そしてBOX舞台で稽古を始めて終盤に差し掛かった頃、今度はスマホに「京都市に大雨警報」の緊急速報が入りました。

BOXは地下なので外の様子がわからないのですが、雨雲レーダーで見ると確かに強い雨の赤い表示がちょうど左京区上空辺りにかかっています。

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最後にやって来た部員は、かわいそうにその雨に降られてしまったようで、カバンがびしょ濡れになっていました。

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この京都の「猛暑」と「にわか雨」は、おそらく9月くらいまでずっと続くのでしょう。

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この先ひと月ほどは、体調管理に気をつけて何とか夏を乗り切っていきたいと思います。

過ごしやすい夏

ニュースによれば、今日の東京は7月に入ってから初めて、30℃を超える真夏日になったそうです。

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「去年はとても暑かったなあ」と思い去年7月のブログを読み返してみると、

「激暑エレベーターホール稽古」

「祇園祭の花傘巡行が猛暑で中止」

「酷暑を超える”極暑”をさらに超える”超極暑”」

などと恐ろしげな内容が並んでいました。。

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しかし、

「喉元過ぎれば熱さ忘れる」

という通り、去年の記録的猛暑はすでに遠い記憶になり、

「今年はあまり暑くなくて有り難いなあ」

と思いながら過ごしております。

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今日は午後から西荻窪稽古だったのですが、30℃くらいだと外に出ても意外に凌ぎ易く感じました。

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今年のような夏だと、「歩く」というのが全く苦になりません。

因みに去年6月の合計歩数が約20万歩、今年6月は約28万歩でした。

去年7月はわずか18万歩でしたが、今年7月は25万歩ペースです。

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去年は「松本城薪能」などもあり、猛暑の野外で働くことも多く、むしろ鍛えられた記憶があります。

今年は薪能のシテも無いので、その分出来るだけ外を歩いて健康維持に努めたいと思います。

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もちろん暑さが控えめとはいえ、熱中症には充分に気をつけないといけませんが。

宵山見物

私は祇園祭の”宵山”というものに、実はほとんど行ったことがありません。

何しろ宵山は、人がめちゃくちゃに多くて物凄く暑いという、私の苦手要素が二つ重なっているのです。

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しかし今年はある事情により、久しぶりに宵山に行ってみることにしました。

京大宝生会の現役の1人が、とある鉾で、粽や御守りなどを売っているというのです。

それを宝生会の何人かで応援に行こうという話になったわけです。

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昨夜9時過ぎに私が四条烏丸の交差点に到着すると、京大宝生会の面々が三々五々集まって来ました。

私「ところで今日は何人来るの?」

部員「え〜、どうなんでしょうね…」

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この辺の適当さが実に京大宝生会らしいのです。

10人ほど揃ったところで、何となく出発。

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目指すのは「綾傘鉾」でした。

烏丸通から細い綾小路を西に折れると、急に人口密度が高くなります。

鶏鉾などを横目に人波をかき分けていくと、やがて「綾傘鉾」に辿り着きました。

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綾傘鉾の手前にあるテントには、御守りや手拭いなどが所狭しと並べられて、その向こうに浴衣を着た現役の姿が。

我々「来たよ〜!」

現役「わー、ありがとうございます!御守り、匂い袋、手拭いなどいかがですか?匂い袋は残りあと1つです‼︎」

と、暑い中を頑張って働いている様子でした。

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綾傘鉾の手拭いを皆で買って、記念撮影などもして宵山最大のミッションは無事に終了しました。

あとはブラブラと鴨川方向に歩きながら、”船鉾”、”岩戸山”などを見物しました。

途中仏光寺通では、久しぶりに洛央小学校の子供用手作り鉾「洛央鉾」にも再会できました。(2017年7月18日のブログに書きました)

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1回生もカメラを持って楽しそうに参加してくれて、思い出に残る”良い”宵山になりました。

鴨川を渡って、祇園四条の駅前で解散しました。お酒を一滴も飲まないのも最近の学生の特徴で、大変健全なのです。

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森見登美彦の世界のような不思議な事は起こりませんでしたが、こんな宵山ならばまた来てみたいと思ったのでした。