「兼平」への再挑戦

長いことブログの更新が滞っておりました。

私は至って元気に過ごしております。

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今日は水道橋宝生能楽堂にて、8月15日に開催される「五雲会」の稽古がありました。

この「五雲会」は4月公演が延期になったもので、私は能「兼平」のシテを勤めます。

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4月初め頃に一度ほぼ出来上がった「兼平」でしたが、延期が決まってから一旦スッパリと忘れることにしました。

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その後は仕事が殆ど全て無くなって、家を出る用事も無い日々でした。

しかし「兼平」の延期公演までに身体がなまってしまうのは避けないといけません。

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私の三ノ輪の自宅からは、あまり人に会わずに「隅田川」と「荒川」という大きな川に行けます。

日々その河川敷などを長距離歩きまわりました。

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さらに、電車にも出来るだけ乗らずに歩くようにしました。

例えば三ノ輪から用事で江古田の実家に行く時には、先ず三ノ輪からJR鶯谷駅まで歩きます。

そして山手線で目白まで行き、目白から江古田まで歩くのです。

もちろん帰りも同様にします。

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このようなことを3ヶ月以上続けて、7月に入って再び「兼平」に取りかかりました。

すると4月頃よりもずっと身体が軽くて、今日の稽古でもキリの部分で舞台と橋掛を高速で往復しても、息が全く乱れなくなっていました。

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今身体的には「勝修羅」を舞うために申し分ない状態にあります。

あとは8月15日の本番までに、もう一度謡や型の細部を練り直していきます。

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4月にあった筈の「兼平」よりも更にグレードアップした舞台をお見せしたいと思っております。

桃源郷から

2017年4月10日に「桃源郷へ」という題名でブログを書きました。

もう3年以上前のことになります。

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松本稽古に行く途中の甲府盆地の”桃の花”があまりに綺麗で、桃源郷のように見えたのです。

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その甲府盆地にある「御坂果実郷」というところから、先日見事な”桃の実”が届きました。

私の掌に余るくらいの大ぶりな桃で、冷やして食べると甘くて何とも美味でした。

そして桃の実がこんなに良く香るということを久しぶりに思い出しました。

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この桃は「がんばれ観光農園!」というキャンペーンの商品で、京大宝生会の大先輩が注文して私のところに送ってくださったものです。

コロナウイルスの影響でお客さんが激減してしまった観光農園を力付けようという企画だそうです。

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今年は桃の花が咲く前からずっと、松本稽古に行けておりません。

あの「桃源郷」のような甲府盆地の風景は残念ながら見られませんでした。

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しかし今回その甲府盆地から送られてきた桃の実から、「桃源郷」の香りと味を楽しむことができたのです。

今月下旬には、久しぶりに特急あずさに乗って松本稽古に行く予定にしております。

甲府盆地を通る時、「御坂果実郷」の辺りの景色を眺めながら、この桃源郷から送られてきた桃の味を思い出すことでしょう。

七葉會 十周年記念公演のお知らせ

宝生流若手能楽師7人が集まっての合同社中会「七葉会」。

本年8月8日、9日には「七葉会10周年記念大会」を予定しておりましたが、情勢を鑑みて来年に延期させていただくことになりました。

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そしてその上で七葉会同人7人で、今我々に何か出来ることは無いか話し合いました。

その結果8月9日に「七葉會」という名前で7人による演能会を開催させていただく運びになりました。

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宝生能楽堂にて13時半〜16時半頃まで開催。

舞囃子6番に半能「橋弁慶」、仕舞、連吟などが演じられます。

私は舞囃子「井筒」と、「橋弁慶」の地謡などを勤めます。

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チケットは全席自由4000円(学生2000円)で7月9日朝10時より「能LIFE Online」にて、先着100名様限定で販売いたします。

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チケットご購入にあたっては、

①購入手続きの前に先ず「能LIFE Online」(http://nohlife.com )に登録をお願いします。

②その上で発売日以降にやはり「能LIFE Online」( http://nohlife.com )より購入手続きにお進みください。

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少々手間のかかる購入方法になります。

しかしながら、コロナウイルスが収まらない状況下での舞台開催にあたっては、万が一の場合にはお客様全員と連絡をとる必要があります。

「能LIFE Online」に事前にご登録いただくことでお客様により安全に舞台をご覧いただけると考えてこの方法をとらせていただきました。

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このような状況下の舞台で何かとご不便をおかけいたしますが、様々な安全対策をして開催させていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

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チラシ表面

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チラシ裏面

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※なお、七葉会各会の社中の皆様につきましては、チケットに関してはそれぞれの先生にお尋ねくださいませ。

素戔嗚神社の「手ぬぐいあわせ」と「茅の輪くぐり」

今日から7月になりました。

東京は雨模様でしたが、午後に思い立って久しぶりに近所の「素戔嗚神社」に行ってみました。

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境内に入るとちょっと意外な光景が広がっていました。

たくさんの”日本手拭い”が風に靡いていたのです。

彩り豊かな手拭いがヒラヒラと舞い踊る様は、なんとも涼しげに感じられました。

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これは「手ぬぐいあわせ」というもので、江戸時代から続く行事だそうです。

素戔嗚神社の氏子61町の手拭いが境内にそろって、趣向を凝らした柄を競い合うものです。

江戸情緒溢れる何とも粋な行事だと思いました。

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素戔嗚神社は3月の雛人形と言い、「目で楽しむ」行事が多くて、毎回訪れるのが楽しみです。

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そして境内にはもうひとつ、普段とは違うものがありました。

「茅の輪くぐり」です。

毎年6月晦日に「茅の輪くぐり」のご神事が行われているそうで、つまり昨日がそのご神事の日だったのです。

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1日遅れですが私も「茅の輪くぐり」をしてから本殿に参拝いたしました。

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折しも小学校の下校時刻で、本殿の前をたくさんの子供達が通り過ぎて行きます。

そして以前も書きましたが、その子供達が本殿の前で必ず止まって頭を下げて行くのがなんとも好ましく目に映りました。

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参拝を済ませてから千住大橋を渡って、隅田川沿いを少し歩きました。

すると天気予報はずっと雨マークだったのに、橋を渡り切る頃には雨は上がって青空までのぞいてきたのです。

「茅の輪くぐり」の御利益が早速あったのかもしれません。

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東京都の感染者がまた増えているようですが、疫病退散の「茅の輪くぐり」の御利益で、何とか収まっていってほしいものです。

全宝連があるはずだった日

今日6月27日と明日28日には、金沢の石川県立能楽堂にて「全国宝生流学生能楽連盟自演会」が開催される予定でした。

しかし残念ながらコロナウイルスの影響で開催見合わせになってしまいました。

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全国から舞囃子もたくさん出る予定だったので、間違い無くとても熱い舞台が繰り広げられたはずなのです。

誠に無念の極みです。

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しかしながらこのような状況でも、京大宝生会の学生達は出来る稽古に地道に取り組んでいます。

昨日もzoom稽古をいたしました。

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交代で声を出しての鸚鵡返しで、1人最低ひとつは改善すべき点を指摘するようにしています。

今回は特に2回生がいくつか大事な節を覚えてくれました。

皆着実に進歩しています。

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さらについ先日には部長から、

「活動再開したら見学したいという新入生がいます。zoom稽古でも見学してもらって良いでしょうか?」

という内容のメールが来ました。

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きっと全国の宝生流の学生達も同様に、今出来る活動を懸命に模索して頑張っているのでしょう。

その努力が報われる日が早く来るように、そしてたくさんの学生達が一堂に会しての賑やかな舞台がまた戻ってくるように心から願っています。

私も出来ることを地道に続けて参りたいと思います。

七葉会の話し合い

一昨日の土曜日には、水道橋宝生能楽堂にて「五雲会」が無事に開催されました。

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見所の座席の半数には、「全国宝生流学生能楽連盟」の学生達から募集した「能に出て来る和歌」が貼られて、地謡は顔の下半分を覆面でおおい、切戸は換気のために開け放してあり…

等々、これまでの舞台とはいくつかの点で異なる様子でした。

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それでも200人近いお客様にいらしていただき、華やいだ見所を前にして勤める舞台は本当に久しぶりで、「ようやく帰って来たなあ…」としみじみと嬉しく思いました。

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その五雲会終了後に、「七葉会」のメンバー7人がこちらも数ヶ月ぶりに顔を揃えて会合を開きました。

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8月に予定していた「七葉会10周年記念大会」は、残念ながら来年に延期することになりました。

7人が主宰する各会とも、稽古がほとんど出来ない状況が未だ続いているのです。

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しかし、七葉会として今年全く何もせずに終わってしまって良いのか、何か出来ることは無いだろうか…と7人で相談しました。

その結果、

「七葉会10周年記念公演」

という形で、我々7人の若手楽師を中心とした玄人による能楽公演を開催することにいたしました。

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日時は8月9日(日)13時半開演予定。

場所は宝生能楽堂です。

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夜までかけて話し合い、番組もほぼ決まりました。

仕舞、連吟、舞囃子、半能と盛り沢山の番組です。

早急にチラシなどを作成いたしますので、番組詳細はまた追ってお知らせいたします。

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七葉会のそれぞれの会員の皆様と、世の中の人々に、少しでも元気をお届け出来るような熱い舞台にしたい。

その意気込みで7人とも張り切って準備を進めて参ります。

どうか続報を今少しお待ちくださいませ。

4ヶ月ぶりの五雲会開催

今日は水道橋宝生能楽堂にて、明後日20日に開催の「五雲会」の申合がありました。

私は能「杜若」の後見を勤めました。

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「五雲会」の開催は2月以来なので、実に4ヶ月ぶりになります。

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この五雲会を皮切りにお客様を前にしての公演がようやく再開されるわけですが、これからの舞台は

「楽師が安全に演ずること」そして

「お客様に安心してご覧いただくこと」

が何より重要になってきます。

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今回の五雲会も、

「見所の座席数を定員の半数(約230席)に減らす」

「地謡は覆面をした上で5人が横一列に離れて座る」

などと言った沢山の対策をとりつつ開催されます。

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そして座席を減らすにあたっては、座らない座席の上にある工夫をすることで、お客様に少しでも楽しんでいただけるようにしてあります。

なんとその工夫には京大宝生会の学生も一部関わっているのです。

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能楽を含めた舞台芸術全体が、この先は感染症と共存しながら生き残る道を探っていかねばなりません。

明後日の五雲会にどのくらいのお客様がいらしてくださるか、またそのお客様の反応、ご感想は如何なるものなのか。

今後の舞台活動のひとつの基準となるかもしれない重要な「五雲会」になりそうです。

夜の鹿の鳴き声

先日お伝えしました、宝生夜能「野守」と「いとうせいこうの能楽紀行」の有料動画配信。

ありがたいことに、ご覧いただいた何人かの方から感想のメールを頂戴いたしました。

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その中で、

「夜の鹿の鳴き声がどんなものか、聴いてみたくなった」

というものがありました。

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「能楽紀行」の中で私といとうせいこうさんが、

「奈良公園の夜の鹿の鳴き声は怖いんですよね!」

と2人して盛り上がったシーンがあったのです。

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…あれは平成の初めの頃のことです。

当時京大宝生会では、私を含めて何人かが車を所有していました。

今よりも車にかかる費用が格段に安かったのです。(駐車場が月8000円、ガソリン代はリッター90円前後でした)

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金曜日の夜に稽古を終えてから、しばしば皆で深夜のドライブに行きました。

その時に奈良公園辺りまでも何度か繰り出したわけです。

車を置いて、夜の奈良公園を探検しました。

東大寺周辺など、街灯も少なくて真っ暗闇です。

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恐る恐る歩いている途中、出し抜けに我々のすぐ横から、

「ピョー❗️」

という甲高い声が聞こえて全員飛び上がりました。

暗闇を透かしてよく見ると、そこには数頭の鹿のシルエットが。

さらに目が慣れてくると、森の中にはたくさんの鹿が休んでいるとわかりました。

我々が逆に鹿達を驚かせてしまったのでしょう。

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いとうせいこうさんが、

「奈良公園の夜は真っ暗で、鹿が鳴いてね…」

という話をされた時にあの鳴き声が鮮やかに思い出されて、思わず、

「夜の鹿の鳴き声、怖いんですよね!」

と2人で盛り上がったというわけなのです。

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先日の撮影では、いつか「いとうせいこうのリアル能楽紀行」として奈良ツアーを組みましょう、という話も出ました。

もしも奈良ツアーが実現したら、オプションで「奈良公園の夜の鹿の鳴き声を聴きに行く」という企画を是非やってみたいものです。

夜能「野守」まもなく配信されます

先日撮影された夜能「野守」と、私も出演しております「いとうせいこうの能楽紀行」の動画が、本日18時より有料動画配信されるそうです。

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配信に先駆けて、宝生和英宗家といとうせいこう氏の特別対談が以下より視聴できます。

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また18時より始まる有料動画配信の視聴方法は以下より調べられます。

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今回の動画配信のプラットフォームである「能LIFE Online」は、動画配信だけでなく公演情報やチケット、グッズの購入なども可能な、コロナ後の世界を見据えた宝生会の新しいプラットフォームです。

皆様是非この機会に体感してみてくださいませ。

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能「野守」と「いとうせいこうの能楽紀行」

をご覧いただき、御感想などコメントしていただけると大変有り難く思います。

どうかよろしくお願いいたします。

「コロナ後」を考える月に

6月に入りました。

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緊急事態宣言は解除されたとは言え、東京ではまだ連日2桁の感染者が出ており、決して気を緩める事が出来ない状況です。

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しかしながら、そろそろ先の事も考えていくべき時期だと思います。

先ずは延期している「第7回澤風会郁雲会大会」の開催日程を発表させていただきます。

9月21日(敬老の日)

に渋谷のセルリアン能楽堂にて、今度こそは何としても開催する所存です。

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そして澤風会の稽古は、今月いっぱいは様子を見て、7月より再開しようと考えております。

いきなりコロナ以前の頻度と密度には戻さずに、時間と空間に余裕を持って、”三密”を避けて稽古できるように心がけたいと思っております。

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そして通常稽古と並行して「遠隔稽古」も週末を中心に続けて参ります。

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6月は、「コロナ後」のことを色々と考える月にしたいと思います。