阿漕の平治が獲った「やがら」

昨年夏に「いとうせいこうの能楽紀行」のための取材で阿漕ヶ浦の「阿漕塚記念館」という資料館に行きました。

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そこで、実は能「阿漕」のシテは母親の病気を治すために密漁をしていたこと、また密漁で獲った魚が「やがら」という名前であることを知りました。

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下は「阿漕塚記念館」にあった説明書きです。

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そして先日、私は思いがけずその「やがら」と初対面を果たしたのです。

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今週月曜日のこと。

私は午前中に大山崎稽古を終えて、午後の亀岡稽古の前に昼ごはんを食べようと思いました。

場所はJR二条駅近くの「三条通商店街」、目当てのお店は海鮮料理の「あみたつ」というところです。

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「あみたつ」は店内に鮮魚がたくさん並んでいます。

その日私が店に入ると、変わった魚が目に入りました。

近寄ってみると…

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なんと「ヤガラ」と書いてあります。

そして大きい!

80cmはありそうです。

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これは何としても食べてみなければ!

早速「ヤガラ」の刺身を注文して定食にしてもらいました。

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するとなんと刺身には長〜い頭がついて出てきました!

割り箸と比較すると大きさがわかるかと思います。

店内のお客さん達が「おお…」と驚きの目で見ています。

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刺身は白身で、淡白で上品な美味でした。

“阿漕の平治”はこの魚を獲ったために海に沈められてしまったのか。そして母親はこの魚を食べて病気を治すことができたのか…

と考えると、なんだか神妙な気持ちになりました。

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しかしそれにしても「やがら」は本当に美味しく、思わず定食のご飯をおかわりしてしまい、大満腹大満足で亀岡稽古に向かったのでした。

またどこかで「やがら」に出会ったら必ず食べたいと思います。

大山崎の梅、桜、松

今日は緊急事態宣言が解けてから初めての大山崎稽古でした。

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謡の稽古は今回から新しい曲「鉢木」です。

人数分の謡本を携えて、宝寺に向かうあの天王山の急坂を登っていきました。

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すると坂の途中でちょっと驚く事があったのです。

坂の路面に「大山崎町」と書かれたマンホールがありました。

そのデザインが「鶯、桜、松」だったのです。

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鶯と言えば「梅に鶯」。梅の花を思い起こさせます。

そして今日これから稽古を始めようという「鉢木」という曲では、シテが「梅、桜、松」の鉢の木を薪にして燃やすシーンがハイライトになっているのです。

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何かとても縁起がいい気がして、良い気分で稽古に向かいました。

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それにしても、大山崎町と「梅、桜、松」は何か関係があるのだろうか…。まさか群馬県の佐野と姉妹都市とか…。

稽古を終えて坂を下りながら、何か手掛かりは無いかと探してみました。

すると…

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ありました!

観光用の大きな地図の看板に、「町の花・鳥・木」として「さくら、うぐいす、赤松」と書いてあったのです。

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なんと、ではマンホールの「鶯(梅)、桜、松」のデザインは、鉢木とは全く関係ない偶然の組み合わせだったのですね。

しかし偶然にしては出来過ぎな気がします。

やはり何か縁起がいい気がして、更に良い気分で次の亀岡稽古に向かったのでした。

谷中を歩けば…

おとといの院展鑑賞記に、「今は行ける場所がごく限られてしまっている」と書きました。でも裏を返せば「限られてはいるが行ける場所はある」のです。

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その場所のひとつが”徒歩で行けるご近所”です。

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今日は午前中に水道橋宝生能楽堂にて「五雲能」の申合があり、その後に自宅から歩いて行ける「谷中」の界隈を散策して参りました。

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谷中は東京芸大からも近く、芸大生だった頃にも度々散歩した思い出深い街です。

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小さな路地が迷路のように入り組んでおり、その奥には例えば…

小さなお稲荷さんがひっそりとあったり…

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古いお地蔵さんが祀られていたりします。

山手線の内側とは思えないような風景が点在しているのです。

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“現代版・黒塚”みたいな物凄い家を発見。

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味のある石垣と石段、そして猫一匹…

よく見ると陶器の猫でした。

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猫と言えば、今日の谷中では何故か猫にたくさん会いました。

ねこ注意。この写真だけで何匹の猫がいるでしょうか?

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ところがこの電信柱を回り込むと…

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なんとさらに猫だらけでした。

「谷中を歩けば猫にあたる」という感じです。

谷中は猫好きな方には是非おすすめいたします。

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まだまだ歩いていくと…

三ツ辻の角に大きな木が。樹高15m以上はあるでしょう。

その大木の根元に隠れるように…

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なんとも懐かしい佇まいのパン屋さんがありました。

まるで私の子供の頃のような”昭和の風景”です。

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売っている物は割と現代的でした。

あの木はどうやら「ヒマラヤ杉」のようですね。

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散歩の最後にもう一本、ある木を見に行きました。

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知る人ぞ知る、谷中の最北端、つまり台東区最北端に立つ木(枝垂れ桜)です。

写真右下の尖った角までが台東区、ここより北は私の家のある荒川区になります。

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という訳で、ご近所の谷中を散策するだけでも、たくさんの楽しい風景や出来事に遭遇する事ができました。

皆さんもよろしければ谷中を歩いて、写真の場所を探してみてくださいませ。

きっと別の意外な風景ともたくさん出会えると思います。

いろんな五人囃子が…

去年の今頃、近所の「素戔嗚神社」に飾られている雛人形の中に面白い「五人囃子」がいたのをブログでご紹介いたしました。

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今日はちょうど雛祭りの日なので、今年も素戔嗚神社に行ってみたのです。

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定点観測。去年と全く同じように桃の花が咲き始めていました。

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そしてお参りをしてから、早速雛人形のところに行ってみました。

すると期待通り(?)色々と突っ込みどころ満載の「五人囃子」に出会うことができたのです。

いくつかご紹介します。

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わぁ❗️なんだかビックリ‼️

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私はなんだか疲れちゃった…。

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僕も、疲れました…。

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この太鼓の中から、何か聴こえてくるような気がするぞ。

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おーい、中に誰かいませんか〜?

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この太鼓、食べたら美味しいかも…。

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小鼓も美味しいよ。

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大鼓も美味い!

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などなど、個性豊かな御囃子方が揃い踏みでした。

そして帰り際に境内の池を覗いてみると…

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たくさんの”おたまじゃくし”が泳いでいました。

コロナ禍の中でも、花や虫や動物達は確実に明るい春を迎えようとしています。

おたまじゃくしに少しパワーをもらって、良い気分で素戔嗚神社を後にしたのでした。

1件のコメント

いろんな小鼓方が…

今日は久しぶりに近所の「素戔嗚神社」に行ってみました。

そろそろ「桃まつり」の時期だと思ったのです。

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やはり期待通り桃の花が咲き始めていました。

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そして素戔嗚神社にはこの時期、境内と社務所に無数の「雛人形」が飾られるのです。

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社務所の中の様子はこんな感じです。

とにかくズラリと隙間なく並んだ雛人形に圧倒されます。

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その中で、「五人囃子」の「小鼓」に注目すると、色々面白い事になっていました。

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上の小鼓方は、一見正しそうですがよく見ると…

これは多分本当は「太鼓方」なのだと思います。

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他にも…

初めて小鼓を見てビックリしている人…

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なんだか恥ずかしそうな人…

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うう、苦しい…

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上から叩いてみようかな…

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そして「太鼓方」にもこんな人が…

僕が気合入れて持っているので、誰か打ってください!

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などなど、突っ込みどころ満載なのでした。

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素戔嗚神社の桃まつりは、来月上旬まで開催されています。

皆様是非いらしてみてくださいませ。

綺麗な桃の花と、能楽関係者だけにわかる”面白五人囃子”が出迎えてくれることと思います。

面白写真〜2020冬〜

最近ネタが集まらずに御無沙汰していた、旅先などでの「面白写真」です。

およそ一年ぶりくらいになりました。

先ずはこちらから。

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神保町にて。”激安居酒屋 きぬちゃん”というお店でした。

しかしこの看板…ほぼ確実に蕎麦屋のリサイクルですよね。。

“ちゃん”がなんとも哀愁をそそって、ツボに嵌りました。

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浅草の唐揚屋さんです。”ご当地ずり”ですね。

しかし急いでいたので「スカイずりー」そのものを目視できなかったのが残念でした。

次は時間を見つけて食べに行ってみたいと思います。

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ここは青森駅片隅の、むしろ殺風景な場所でした。

そこに唐突に津軽弁を使うセンス。

やはり青森県人のユーモアは計り知れません。。

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京都駅にて。最近爆発的に増えた外国人観光客向けのお土産です。色々考えるものですね。

読み方が中々難しいものがいくつかありました。

「家仁威寿」とか。「ケニーズ」ですかね…?

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こちらも京都にて。

面白そうな古本屋さんを見つけると入ってみるのが常なのですが、ここは入口が本で塞がれて入れないという恐るべき古本屋でした。。

店員さんは一体どうやって出入りしているのでしょうか…?

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これは能「藤戸」を知っている人だけにわかるネタです。

後ワキの謡う一句に、この二社の社名が出てくるのです。

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もう最後の写真になります。

三ノ輪のご近所の根岸にある交差点です。

スクランブルどころか、交差点をとにかく全部横断歩道にしてしまったようです。

こういうヤケクソ気味のセンスも私は大好きなのです。

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今回はこの辺で失礼いたします。

皆さまからいただいた面白写真もあるので、また機会を見て掲載させていただきます。

2019大晦日下町散歩

日曜日の急な発熱も、その後の30時間睡眠で何とか回復しました。

そして昨日今日は完全休日で、頑張って部屋の掃除をいたしました。

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掃除は無事に終わりましたが、私にはもう一つ年内にやり残したことがありました。

“歩くこと”です。

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今年1年は、とにかく去年よりもたくさん歩くことを心掛けて過ごして参りました。

順調に歩数を増やして来て、今月にはかつて達成したことのない「月間40万歩」を密かな目標に設定していたのです。

目標達成には毎日1万3千歩以上歩くことが必要です。

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しかし一昨日の日曜日は発熱のため、まさかの「17歩」…

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回復した昨日午後と今日1日、掃除の合間を縫って私は東京の下町を歩き回りました。

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能「隅田川」ゆかりの「梅若塚」のあるお寺。

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「2014全国頑張る商店街30選」に選ばれたという人情味あふれる商店街。

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逆さ富士ならぬ「逆さスカイツリー」。

どこから撮ったかわかりますか?

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猪の牙に似た形の「猪牙舟」の模型が置いてあった山谷堀公園では…

「正法寺」という今年お世話になった岩手のお寺と同じ名前を冠する橋に行き合い驚きました。

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そして今年最後の夕陽が沈んで家に帰り着く頃に、目標の「月間40万歩」を達成することができました。

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昨日今日の下町散歩では、ちょっと不思議な体験などもしたのでまた改めて書きたいと思います。

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令和元年も残すところあと3時間になりました。

今年も本当にたくさんの方々に助けていただいて1年を送ることができました。

心より感謝申し上げます。

そして来年もどうかよろしくお願いいたします。

超高速「奥の細道」

今日は朝に水道橋宝生能楽堂で、土曜日開催の「五雲会」の申合がありました。

私は能「俊成忠度」の地謡を勤めました。

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「俊成忠度」は”和歌”に深く関わる曲です。

そして今日5月16日(旧暦では3月27日)は、和歌ではありませんが”俳句”の松尾芭蕉が、千住大橋のたもとから「奥の細道」の旅へと出発した日だそうなのです。

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全くの偶然ですが、今日私は五雲会申合の後に夕方から仙台稽古の予定でした。

千住大橋ならぬ上野駅から、徒歩ならぬ東北新幹線に乗って超スピードで白河の関を越えて、奥へと旅立ったのです。

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あっという間に仙台に到着すると、長いアーケード街を通って稽古場に向かいました。

すると、こんな光景が目に入りました。

祇園祭の”山鉾”のようですが、これは今週末に行われる「青葉まつり」で巡行する山鉾でした。

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しかしよく見ると、京都の山鉾とはちょっと趣きが違います。

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恵比寿様がドーンと載っているもの。

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巨大な和太鼓が据えられたもの。

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大きな鯛の載った鉾の周囲には、何故か無数の”絵馬”が下がっています。

こうなると、もはや「森見登美彦」の世界のようです。。

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他にもこんな鉾が。

上に載っているのは…

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なんと兜を被った伊達政宗公でした。

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実はこの仙台の「青葉まつり」は、1985年に伊達政宗公の没後350年を記念して復活したお祭りだそうなのです。

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ちょっとシュールな山鉾達を鑑賞しつつ稽古場に到着しました。

俳聖芭蕉ならば、山鉾のことを一首の俳句に詠んだかもしれません。

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しかし全く心得の無い私は、稽古を終えると再び東北新幹線に乗って、超スピードで白河の関を越えて上野へと帰ったのでした。

わずか数時間の”みちのくの旅”でした。

面白写真〜八十八夜〜

今日は「八十八夜」だそうです。

この日にお茶を飲むと長生きするということなので、是非美味しいお茶をいただきたいと思います。

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少し前に街を歩いていたら、下のような幟を発見しました。

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風にはためいていて少々見づらいですが、

「茶神ハチジュウハチヤー」

というご当地ヒーロー(?)のようでした。

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私は実はご当地ヒーローが大好きなのです。

沖縄の「琉神マブヤー」とか、郡山の「商店ガイレンジャー」などなど。

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茶神ハチジュウハチヤーは、よく見ると手に急須を持っていて、顔は「茶」という漢字で出来ています。

静岡茶のお店だったので、静岡に行けば会えるのでしょうか…。会って一緒にお茶を飲みたいものです。

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ついでに、最近の面白写真を何枚かご紹介いたします。

お店の看板ばかりなのですが、先ずは…

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浅草にて。「珍品を売る店 つる亀」。

開いていなかったのが非常に残念でした。業種も謎です。

どんな珍品なのか、次回必ず確認したいと思います。

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ジャズとラーメン。色んな組み合わせがあるものです。

しかしゆっくり聴いているとラーメンが伸びそうです。。

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次は2枚連続で。

そして、

純和風な店名と業種が微妙にズレているような気がしませんか?

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逆に考えると「和風居酒屋 アレクサンダー」

とか、「和惣菜 チンギスハーン」とかになってしまいます。。

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こちらは「居酒屋」と「スナック」の中間という意味なのでしょう。

店名と業種はぴったり合っていますが、入るのには相当勇気が要ります。。

カウンターに目つきの鋭い店主がいて、間違えて店主の背後を取ると撃たれてしまう、とか…

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最後に店名ではありませんが…

「応仁の乱以来」というネタを久しぶりに見ました。

ブラックサンダーがついに都に攻め上って来たのですか。

京都のお菓子もその衝撃に戦々恐々と…しているのでしょうか…??

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今日はこの辺で失礼いたします。

皆さまも今日はどうか美味しいお茶を。

面白写真〜平成最後〜

今年最初の、そして平成最後の”面白写真”シリーズです。

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先ずは自宅の近所にて。

これまで”美容室 翁”とか”そば処 おきな”などがありましたが、今回はマンションでした。

しかし夜の路地裏に浮かび上がる看板は、むしろ”スナック オキナ”という雰囲気でした。

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次は江古田にて。

ディナーは女人禁制、ランチは男子禁制なのでしょうか…⁇

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そして次は私がよくやる、「逆に読んでしまう看板」です。

根津辺りにて。

…「しゃば祭」。

「出所して娑婆に戻った人が大宴会をしているところ」を想像したところで、下の壁の文字が目に入りました。。

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次は仙台にて。

夢のような企画です。

しかし、お店の経営とお客さんの身体、どちらも非常に心配です。大丈夫なのでしょうか…?

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そして京都にて。

別に獣じみた人々がうろついてる訳ではなく、普通の小さな公園でした。

とは言っても、実はこのあたりが「本能寺町」なのでこのネーミングはまあ当たり前かも…

と思ったところで、振り返った先にあった町家の壁に下のポスターが。

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「本能ボウリング大会」…ッッ!

これは思わず笑ってしまいました。

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野獣のような参加者達が、目をつぶって投げたり、場外乱投を繰り広げたりする破茶滅茶なボウリングを想像してしまったのです。

密かに愛好する漫画家の荒木飛呂彦さんか、島本和彦さんなどが描いたら、きっと面白い漫画になると思うのですが。。

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最後に、上野駅構内の毎年恒例のあれです。

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今年のお花見パンダのテーマは、「ジャイアント・ジャイアントパンダ」のようです…。

身長5〜6m。可愛いというより、むしろちょっとホラーな感じもします。。

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最近「アンドレ・ザ・ジャイアントパンダ」

という巨大な着ぐるみレスラーがいるそうですが、こんな感じなのかもしれませんね。

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…というわけで、平成最後の面白写真でした。

次は新元号になって少し経った頃にまたお届けいたします。