「居囃子」と「独調」

昨日は松本稽古、今日は朝に松本を出て大阪香里能楽堂に移動して、今週土曜日開催の「七宝会」の申合がありました。

私は能「玉葛」の地謡でした。

.

申合を終えて、今は綺麗で雄大な夕焼け雲を眺めながら新幹線で東京に向かっております。

.

.

先週末の「澤風会京都大会」の話題をまた一つ。

.

今回の澤風会の番組では、「居囃子」と「独調」が計5番も出ました。

これは14回の歴史の中でも初めてのことです。

.

最初の居囃子「船弁慶クセ」は、京大宝生会の2回生が4人揃ってそれぞれ地謡、大鼓、小鼓、笛を勤めました。

御囃子の稽古を始めてまだ日が浅い彼らですが、実に一所懸命に稽古していました。

.

本番では彼らの悲愴感すら漂う真剣な顔と、それとは相反してどこかほのぼのとした雰囲気の演奏とのギャップが、実に良い味を出していました。

2回生は本当はもう1人いて、彼が揃うと太鼓も含めた「五人囃子」が完成するのです。

次回以降の五人囃子が非常に楽しみです。

.

続く「独調」も、小鼓と謡、大鼓と謡、太鼓と謡、というように楽器のバリエーションが豊富でした。

今回たまたま京大宝生会の現役同士、またOBOG同士だけの組み合わせになりましたが、京大以外の会員さんも御囃子を稽古している人が多いのです。

次回にはそのような方々も「居囃子」や「独調」に挑戦されると良いと思います。

.

.

普段の澤風会や京大宝生会の舞台では、玄人の御囃子方が、舞や謡に合わせて演奏してくださいます。

しかし謡も御囃子も素人という今回の「居囃子」や「独調」のような番組では、互いに謡の節を覚えて、また御囃子の手を学ばないと上手く合わせることが出来ません。

.

これは能を理解する上で大変に勉強になる経験だと思うのです。

.

澤風会会員や京大宝生会は今後も「居囃子」や「独調」に積極的に挑戦して、その経験を能や舞囃子の地謡に、また自分の舞う能や舞囃子に活かしてもらいたいと願っております。

大事な意味を持つ「羽衣」演能

先週土曜日の「第14回澤風会京都大会」は、おかげさまで無事に終了いたしました。

.

今回出た能「羽衣」は、大きな意味を持つ番組でした。

.

シテの会員さんは、学生能などの経験も無く、紫明荘で全くのゼロから私が稽古を始めた方です。

その方が10年ほどを経て、「教授嘱託」といういわばセミプロの免状を取るまで上達されて、その嘱託免状取得の披露として今回「羽衣」の能を舞われたのです。

.

澤風会だけで稽古を受けて嘱託まで上達されたのは、実はこの方が初めてです。

その披露の「羽衣」を何としても良い舞台にしたいと思い、澤風会の皆様にも色々とご協力をいただいて9ヶ月間頑張って稽古して参りました。

.

その甲斐あって、本番は非常に良い舞台でした。

キリの最後の辺りでは、これまでの長い道のりや、植田竜二先輩のことなどが思い出されて、後見座で見ていて胸が熱くなりました。

.

.

また今回「羽衣」の地謡前列は、女性の会員さん達に勤めてもらいました。

これはその方々に、この先いつか嘱託になってもらえたら、という願いを込めた布陣でもあったのです。

.

.

今回の能「羽衣」はおかげさまで無事に終わりました。

しかしこの舞台は最終目標ではなく、ひとつの通過点なのだと思います。

嘱託になられた会員さんや、地謡前列の方々は、今回の経験を糧により高いレベルを目指して稽古を続けていただきたいと願っております。

.

.

今は松本稽古に向かう特急あずさ車内です。

澤風会のことはまだまだ書きたいのですが、仕事のヤマ場が続いており、覚える謡や型が目白押しなのです。

しばし勉強時間に突入したいと思います。。

見事な熊坂、立派な牛若丸でした

今日は宝生能楽堂にて「和久荘太郎演能空間」に出演して参りました。

.

秋分の日というのに真夏に逆戻りしたかのような暑さでしたが、空は晴れて絶好の能楽日和(?)になってくれました。

.

.

昨年台風が直撃した名古屋の舞台を覚えていたので、今日の晴天、そして超満員の見所を見て私まで大変に嬉しくなりました。

.

能「烏帽子折」はもちろん大変素晴らしい舞台でした。

.

個人演能会の舞台は、熱気を帯びた独特の緊張感が漂っています。

その中で90分間の長丁場を立派に演じ切った子方の和久凛太郎くんが最後に幕に入る時、 万雷の拍手が湧き起こりました。

.

こんなに盛大な拍手は久々に聴くと思うくらいでした。

.

親子で大きな舞台を大成功させた和久荘太郎さんと凛太郎くん。

その姿は見ていて本当に格好良くて、私も負けずに頑張らねば!と決意を新たにいたしました。

.

和久荘太郎さん本日も誠にありがとうございました。

そしておめでとうございました。

第14回澤風会が無事に終わりました

既に日がかわって昨日のことになりますが、「第14回澤風会京都大会」はおかげさまで無事に終了いたしました。

書くことは無限にあるのですが、ともかく皆様に心より感謝を申し上げます。

また明日以降に落ち着いて舞台の模様などを書かせていただきたいと思います。

今回お世話になりました皆様、重ねてどうもありがとうございました。

“秋”を満喫した薪能

今日は群馬県の甘楽町にある「楽山園」という”大名庭園”で開催された「甘楽薪能」に出演して参りました。

.

午後に最寄駅の「上州福島」に到着すると、日差しがとても強くて夏の名残の暑さでした。

上州福島駅は、小さな電車の止まる小さな無人駅です。

私はこういう駅舎が何故か好きなのです。

.

.

楽山園に到着して少しすると、日が傾いて気温が急速に下がっていきました。

.

高く晴れた空には、数え切れないほど沢山のアキアカネが飛び交っています。

乾いた風に芒がたなびいて、辺りは一気に秋の景色に変わりました。

.

.

そして日が暮れると、今度は秋の虫の大合唱です。

「面白や 千草にすだく虫の音の 機織る音は きりはたりちょう」

という能「松虫」の一節そのままの風情でした。

.

薪能の演目は能「黒塚 白頭」で、こちらも秋の雰囲気にぴったりな曲です。

満員のお客様もきっと”秋”を満喫されたのではないでしょうか。

.

.

舞台が無事に終わって、またあの小さな上州福島駅に戻って来ました。

やって来た電車に乗り込むと、車内のいたるところに絵が貼ってあります。

.

これはなんの企画だろう…と思って見回すと、

「絵手紙列車」でした。

.

.

こんな絵手紙や…

.

.

こんな絵手紙。

終点の高崎駅まで、色んな絵手紙を楽しみました。

.

.

三ノ輪の家に帰って少し休んだら、明日は早朝から京都に移動して、いよいよ「第14回澤風会京都大会」です。

.

良い舞台になるように、精一杯頑張ろうと思います。

準備万端

今日は京都大江能楽堂にて、いよいよ明後日に迫った「第14回澤風会京都大会」前の最後の紫明荘組稽古をいたしました。

.

仕舞、独吟、舞囃子、そして能「羽衣」を、本番と同じ舞台で稽古したのです。

細かな位置取りや見る方向などを最終確認することが出来ました。

.

羽衣に使用する”羽衣の松”の作り物も、今日のうちに作りました。

.

そして稽古の前には、楽屋に出す飴やお菓子や珈琲などの買い出し。

稽古の後には、宴会場のホテルに行って宴会の打ち合わせ。

.

.

本番前にすることは、今日のうちに全部終えることができました。

.

明日は一度群馬県の甘楽町に行って薪能に出演します。

そして明後日の朝にまた京都に戻って来るのです。

.

.

澤風会の最早”名物”となっている台風がこのタイミングで発生したようなのですが、土曜日はなんとか天気持ち堪えてほしいです。

.

皆さま明後日21日土曜日には、「第14回澤風会京都大会」にどうかお越しくださいませ。

大江能楽堂にて午前11時始曲です。

能「羽衣」は12時40分頃〜13時40分頃の予定です。

.

どうかよろしくお願いいたします。

1件のコメント

あんな髪型やこんな扮装に…

今日は早朝より夜まで、大阪のNHKにて、歴史番組の収録に参加いたしました。

「観阿弥と世阿弥」をテーマにした回で、私は下のような髪型や…

さらに下のような扮装になりました。

.

.

今回収録した番組は11月中旬に放映されるということです。

意外な人の意外な姿や台詞があり、きっと楽しんでいただけると思います。また改めて詳しく告知させていただきます。

皆さま是非ご覧くださいませ。

.

今日は色々なプロフェッショナルに囲まれて、興味深い経験満載だったのですが、少々疲れましたのでまた改めて書きたいと思います。

少年から青年へ

今日は水道橋宝生能楽堂にて、来週9月23日に開催される和久荘太郎さんの「演能空間」の申合がありました。

能は「烏帽子折」です。

.

この曲は滅多に出ない大曲であり、シテが大変なのは勿論ですが”子方”もシテに準ずる重要な役割を担います。

子方の卒業の曲とも言われます。

.

今回の子方は、和久さんの御長男の凛太郎君です。

年齢も背格好も、ちょうど”元服する若者”の役にぴったりで、実に清々しい演技でした。

.

.

数年前に、私が教えていた少年が辰巳満次郎先生シテの「烏帽子折」で子方を勤めさせていただきました。

.

その少年は「烏帽子折」で子方を卒業して、今ではすっかり”青年”になり、東京芸大邦楽科に入って宝生流の若手予備軍として修行しています。

あの時の「烏帽子折」で満次郎先生に元服させていただいたのだと今でも感謝しております。

.

和久凛太郎君も、今回の舞台でお父様の荘太郎さんの手で元服を果たして、その先は立派な青年になっていくのでしょう。

ひとりの少年が大人への一歩を踏み出す、一生に一度しかない貴重な舞台です。

皆さま、23日開催の「演能空間」はどうかお見逃しないようにお願いいたします。

20周年記念松実会大会に出演して参りました

今日は大阪の山本能楽堂にて、石黒実都師主宰の「20周年記念松実会大会」に出演して参りました。

.

20年前はまだ私は東京芸大の学生でした。

松実会の20年の遥かな道のりを想像いたします。

無数の出来事や、別れや出会いを経て、今日の晴れやかな舞台があるのでしょう。

.

.

能「絵馬」も大変素晴らしい舞台でした。

その後ツレである男神と女神を勤めた2人が、朝から実に息の合った行動をしていました。

舞台上でも、難しい「神楽相舞」を良く揃えて舞っていたのです。

.

.

終わった後の宴会で、2人は京都女子大宝生会の同期だったことがわかりました。

現役の4年間で喜怒哀楽を共にした2人が、少しの時を経て舞台の上でふたりの神様になり、同じ舞を舞うのです。

.

入部当時の彼女達は、将来そんな出来事が起こるとは夢にも思わなかったでしょう。

しかし、大学を卒業してもコツコツと稽古を続けてくれたこと、そしてもちろん石黒実都師が20年間息長く「松実会」の稽古を愛情を持って続けてこられたことで、「同期の神楽相舞」という奇跡のような舞台が実現したのです。

.

この上なくパワフルな石黒実都師は、この先も松実会をずっと盛り上げていかれることでしょう。

また次回以降も、今日の記念大会のようなドラマチックで素晴らしい舞台に出会えることを楽しみにしております。

.

石黒先生、松実会の皆様、本日は誠にありがとうございました。

予祝いの晩御飯

今日は朝から京都に移動して、久しぶりに「ゲストハウス月と」にて紫明荘組稽古でした。

.

21日に開催の「第14回澤風会京都大会」直前の稽古だったので、沢山の方々に来ていただきました。

.

.

京大宝生会のOBOGも沢山で、稽古が終わってから神戸大宝生会OBの方も含めて5〜6人で晩御飯を食べに行きました。

.

話題は京大神大、現在過去未来と360度以上に及んで、終盤は半ば混沌としていたのですが、その中で早くも来年の「澤風会15周年記念大会」の話が出ました。

.

.

4年前の「10周年記念大会」では能「加茂」が出ました。

更に9年前の「5周年記念大会」に遡ると、能「夜討曽我」、「藤」、「井筒」、「船弁慶」と4番の能が出たのです。

.

今年の第14回大会の能「羽衣」を経て、来年はどんな能が出ることになるのでしょう。

しかし勿論、先ずは今週末の第14回大会が肝心です。

.

.

晩御飯の途中でOBのM君が、「確か新潟辺りでは”予祝い”という慣わしがあるそうですよ」

と言いました。

物事の成功を予めお祝いしてしまう、という風習だそうです。

.

あらかじめ盛大にお祝いをすれば、成功に向けてのモチベーションは確かに上がると思います。

それでは今日の晩御飯は「第14回澤風会大会」の”予祝い”になるのだろうと、我々は一層盛り上がったのでした。