名古屋宝生会の能「草紙洗」

今日は朝9時前に名古屋能楽堂に入りました。

能「草紙洗」の申合が10時開始で、更にその前に下合わせをすることになっていたのです。

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「草紙洗」は、子方天皇、シテ小野小町、ツレ紀貫之、立衆3人にワキ大伴黒主と、舞台に同時に7人が立ち並ぶ華やかな曲です。

謡の合わせどころや、立ち居の場所とタイミングなどをよくよく合わせておく必要があるのです。

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広めの名古屋能楽堂の舞台での立ち位置、座り位置を十分に確認して、申合に臨みました。

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申合が約1時間で終わり、その後に今度は仕舞「兼平」、「杜若クセ」、「野守」の地謡を合わせました。

それからお昼のお弁当を手早く食べると、もう時間は12時。

「草紙洗」は13時開始なので、ぼちぼち装束を付け始める時間でした。

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そしてシテ方6人が装束に着替えると、すぐに本番が始まりました。

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…実は、能「草紙洗」は、ツレの足が痺れることで有名な曲でもあるのです。

私はツレと言っても、途中で4回ほど立ち上がる場面がある”貫之”なので、他の3人の”立衆”に比べれば、まだ足は楽なはずでした。

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しかし今朝からの申合と仕舞合わせ、そして昨日の五雲会の「鵜飼」シテの影響もあってか、今日は本番冒頭から足が痺れてしまいました。。

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一旦痺れると、むしろ途中4回も立ち上がることが難行苦行になってしまいます。

終盤に小野小町に”烏帽子”を付けに行って、戻って座ると「これで最後まで立ち上がらなくていいんだ!」と密かに喜びを感じてしまったのでした。

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その「草紙洗」のツレ紀貫之も大過なく終えることが出来、これで今年上半期の役は全て無事に終わったことになります。

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次の役は9月になる予定なので、後半もまた気持ちを新たに頑張ろうと思います。

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名古屋宝生会にいらしてくださった皆様、また昨日の五雲会から名古屋に移動して観に来てくれた学生の皆さんどうもありがとうございました。

能「鵜飼」無事終了いたしました

皆様 本日は雨の中五雲会に大勢お越しくださいまして、誠にありがとうございました。

おかげさまで私の能「鵜飼」もなんとか大過なく終えることが出来ました。

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今回の「鵜飼」では、謡の強弱や調子の高低などを、普段よりも細かいところで文字単位で調整してみました。

終わってからの打ち上げでは、京大宝生OB会の皆様に、その謡に関しての御感想をじっくりと伺い、大変勉強になりました。

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そして同時刻、その打ち上げ会場から徒歩30秒の居酒屋では、京大宝生会、東大宝生会、自治医科大学能楽部の皆さんが別途打ち上げをしていました。

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打ち上げ一次会を終えて、私は何人かで別途打ち上げ居酒屋に合流し、更にそこに東京芸大の新入生も加わっての二次会になりました。

自治医科大学の教授や、ドイツからのOBなども交えて盛り上がっていたところに、なんと今度は今日の能「加茂」でツレを勤めた先生が、お弟子さんと一緒にお店に入って来られました。

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なんだか気分としては、京大百万遍か芸大上野仲町通の頃のような混沌とした楽しい盛り上がりのひと時を過ごしました。

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楽しい打ち上げを終えて、私は宝生能楽堂に戻りました。

つい先ほど鵜飼を終えて、干していた胴着などを片付けて一つにまとめ、今度は新幹線で名古屋に移動です。

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明日は名古屋宝生会で能「草紙洗」の紀貫之を頑張って勤めたいと思います。

記憶に残る日にするために

私が能「鵜飼」のシテを勤める「五雲会」が、いよいよ明日本番を迎えます。

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今回は澤風会郁雲会の皆さんに加えて、京大宝生OB会の方々、また京都からは京大宝生会現役達、そして松本から、仙台から、青森からも、合わせて50人を超える知己の方々が観にいらしてくださる予定です。

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そして驚いたことに、15年前に京大宝生会で能「鵜飼」のシテを舞ったOBが、ドイツから今回の私の「鵜飼」に合わせて一時帰国して観に来てくれることになりました。

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さらに。

京大宝生会から今春自治医科大学に転学した青年が、早速能楽部を立ち上げた話を先日ブログに書きました。

その自治医科大学能楽部員と顧問の教授が、明日初めて宝生能楽堂にやって来るというニュースもあるのです。

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明日は色々な意味で記憶に残る日になることでしょう。

でも先ずは能「鵜飼」の舞台を無事に勤めることが第一です。

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今朝は渋谷のNHKに行き、ラジオ録音で「采女」の地謡を謡いました。

その後に水道橋に行き、昨日の申合で御指摘いただいた点をいくつか修正するための稽古をしました。

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胴着など明日必要なものの準備も終わって、あとは静かに本番を待つばかりです。

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皆様明日はどうかよろしくお願いいたします。

秘密の稽古スペース

私は今週土曜日開催の五雲会にて能「鵜飼」のシテを勤めますが、その申合がいよいよ明日に迫りました。

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一方今日は夕方に京都駅前の「メルパルク京都」に学生と一緒に行って、全宝連レセプションの打ち合わせをするという用事がありました。

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京都駅に到着すると、学生が来るまでまだ少し時間があります。

普段ならコーヒーでも飲んで待っているところですが、今日は…

「鵜飼」の稽古をしたい!

と無性に思いました。

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京都駅構内には、実は広くて人気が殆ど無いスペースが何箇所かあるのです。

私は烏丸中央口から東側に上がっていくエスカレーターに乗りました。

そしてエスカレーターを4本乗り継ぎます。

改札前は観光客や修学旅行生でごった返しているのですが、上に昇っていく程にその喧騒が嘘のように静かになっていきます。

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4本目のエスカレーターを降りると、結婚式に使うと思われる西洋風の鐘が下がっています。

その鐘の横手のスペースが、能の稽古にちょうど良い感じなのです。

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もちろん結婚式があると人が大勢集まるのでしょうが、平日午後には人は滅多にここまで上がって来ません。

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駅構内のスペースでは、色々と禁止されている行為があると思われます。

しかし控え目の声量で、5m四方を摺り足で動くだけならば、まず迷惑行為にはならないと判断して、稽古を始めました。

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思えば「国栖」、「舎利」、「夜討曽我」、「雲林院」など最近舞った能は全て、一度はこのスペースで稽古した覚えがあります。

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今日もやはり人は殆ど通りかからず、じっくりと「鵜飼」の稽古をすることが出来ました。

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このブログを読んだ方が稽古に殺到するとちょっと困りますが、今後もこの秘密の稽古スペースを年に数回、大事に使わせてもらいたいと思います。

良きライバル心

今日は夕方から京大宝生会の稽古でした。

先月の「関西宝連」以来の稽古になるので、ちょっと久しぶりの京大BOXでした。

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稽古の前に、一昨日に水道橋宝生能楽堂にて開催された「関東宝生流学生能楽連盟自演会」通称「関宝連」の感想を少しだけ話しました。

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東大の無本の素謡「葵上」が非常にハイレベルだったこと。

やはり東大の最後の舞囃子「敦盛」がとても良い舞台だったことなどなどです。

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東大宝生会の皆さんは、実は昨年末の関西宝連で京大宝生会が出した能「経政」をわざわざ東京から観に来てくれたのです。

勿論京大宝生会の面々はその東大さんの熱意を覚えていて、今回東大宝生会のレベルが高かったという話を聞くと

「うおお…!」

と感嘆の声を上げました。

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そしてなにかメラメラとやる気が燃え上がるのが見えたような気がしたのです。

ライバル心というやつでしょうか。

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稽古を始めてみると、大半の学生が関西宝連から仕舞を変えてきていました。

それにもかかわらず、皆ほぼ八割がた仕上がっていたのです。

関西宝連からわずか2週間で、しかも自分でここまで稽古してくれるとは嬉しい驚きでした。

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本番の全国宝生流学生能楽連盟自演会は、6月29、30日の朝11時より京都金剛能楽堂にて開催されます。

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東大さん始め全国から集まるたくさん学生さん達と、それをお迎えする関西の学生達。

先ほども書きましたが、良いライバル心は上達に繋がると思います。

色々な大学の舞台を観て、お互いに大いに刺激し合ってくれることを期待しております。

能「鵜飼」に向けて

今日は水道橋宝生能楽堂にて「月並能」の申合がありました。

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その後に来週土曜日開催の「五雲会」の稽古があり、私は能「鵜飼」のシテを勤めるのでその稽古を受けました。

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「鵜飼」という曲は、私が京大宝生会を指導するようになって初めて教えた能なので、とても思い出深いものがあります。

その時の事は去年2018年5月11日のブログに詳しく書きました

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当時数十回は稽古を重ねました。

その時の蓄積と、それから現在までの経験を掛け合わせて、今の私なりの「鵜飼」を舞台に出せればと思っております。

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京大宝生会の「鵜飼」でシテを勤めたOBが、もしかして見に来られるかも…という話もあり、とにかくまだまだ頑張って稽古して、良い舞台にしたいと思います。

話題は豊富なのですが…

今日は午後に国立能楽堂にて能「藤栄」の地謡を謡い、その後宝生能楽堂にて私自身の能「鵜飼」シテと能「草紙洗」ツレ貫之の稽古を受け、さらにその後夜に田町稽古でした。

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田町稽古では、産経新聞の読者投稿欄に先日京都大江能楽堂にて開催された「関西宝連」をご覧になった方の投稿が載っていた話を聞き驚きました。

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更に、今日も自治医科大学から授業を終えて田町に来てくれた青年より、「自治医科大学能楽部」の大学への申請が認められたとの嬉しいニュースもありました。

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色々話題は豊富なのですが、今日は帰宅してからも細かな仕事がまだまだ残っており、短いのですがこれにて失礼いたします。

芦屋が舞台の能「藤栄」

今日は朝に松本を出て新宿に戻り、そのまま千駄ヶ谷の国立能楽堂にて明日開催の能「藤栄」の申合に向かいました。

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この能「藤栄」は能「鉢木」と並んで、最明寺時頼の「世直しシリーズ」のうちの一曲です。

変則的な構成の曲で、シテ、ワキ、ワキツレ、間狂言、子方が複雑に絡んでストーリーが展開します。

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地謡も通称「根白節」という有名な難しい箇所があるなど、中々に手強い曲です。

松本からの特急「あずさ」車内でも小本を広げて、念入りに地謡を浚いながら国立能楽堂に入りました。

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いざ申合が始まってみると、変な話ですが改めてこの曲が”芦屋”を舞台にした話なのだと思い出しました。

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私は芦屋稽古の時に、阪急芦屋川駅から稽古場に向かう途中にある「月若公園」という細長い公園の横を度々通っていました。

実は能「藤栄」の子方の名前が「月若」なのです。

おそらくあの「月若公園」のある辺りから、芦屋川を下って海に出る辺りの土地で能「藤栄」のストーリーが展開されていたのでしょう。

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そう考えると、手強いと思っていた「藤栄」の地謡も、なんだか親しみのあるものに思えて来たのです。

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明日は午後から国立能楽堂での本番です。

月若公園と芦屋の風景を思い出しながら、頑張って地謡を勤めたいと思います。

第14回涌宝会大会に出演して参りました

昨日今日と、名古屋能楽堂にて開催された「涌宝会大会」に出演して参りました。

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20番近くの舞囃子と能「羽衣 盤渉」を初め、実に膨大な量の充実した番組でした。

会主の和久荘太郎さんは、金土日の三日間、申合と本番を殆ど謡い通し。

しかも昨日は番外舞囃子「当麻」、今日も舞囃子「橋弁慶」のシテまで舞われて、いつもながらその無尽蔵なバイタリティには驚かされました。

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盛りだくさんの番組で特に印象に残ったのが、名東高校の学生さん達による舞囃子「氷室」でした。

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シテ、地謡、大鼓、小鼓、太鼓、笛を全て高校生が勤める舞囃子です。

しかも「氷室」という曲は、かなり難易度も高く、大学の能楽部でも滅多に出ない曲なのです。

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その難しい舞囃子を、全ての役が見事に調和して完成させていました。

高校生なので、稽古を始めてから長くても2年程のはずなのに、このハイレベルな舞台は本当に驚くべきことでした。

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京大宝生会で囃子を習っている学生達も、今日の「氷室」のような全員現役学生の本格的な舞囃子に、定期的に挑戦出来たら良いと思いました。

舞台ではシテや地謡も多い彼らなので、そんな挑戦が可能かどうか、折を見て相談してみようかと思います。

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今回もまた大いに刺激を受けた「涌宝会大会」でした。

涌宝会の皆様、和久荘太郎様、誠にありがとうございました。

明日も頑張ります。

今日は舞囃子「当麻」などの地謡をなんとか無事に終えることができました。

諸般の事情によりまして、詳しくは明日まとめて書かせていただきたいと思います。

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明日も地謡など色々頑張ります。