“初めて”尽くしの待謡

今日は大阪の香里能楽堂にて「七宝会」に出演して参りました。

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今年第1回目の七宝会で、私にとっては2020年の一番最初の舞台でもありました。

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その七宝会の最初の番組は舞囃子「志賀」です。

私はその地謡でしたが、左端に座っていたために冒頭のワキの「待謡」を謡うことになりました。

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本年初めての舞台である第1回七宝会の、初めの舞囃子の謡初めの役を仰せつかった訳です。

なんだか”初めて”がたくさん重なって、大変目出度い感じです。

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しかし逆に、「これは絶対に間違えずにきちんと謡わなければ!」と思いました。

そしてこの「志賀」という曲はあまり頻繁には出ない曲であり、その「待謡」を謡うのもまた”初めて”でした。

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…というような諸々の”初めて”が重なった結果、私は大変に緊張してしまいました。。

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こういう時は、たとえ短い待謡であっても長い一曲を覚えるくらいの最大限の努力をするしか無いと考えています。

なので今週に入ってからはずっと「志賀」の小本を持ち歩き、時間があれば待謡を呟いておりました。

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その甲斐あってか、本番はなんとか無事に謡い終えることができました。

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今年最初の舞台を無事終えて、ここからは次々と舞台が控えております。

今日の待謡のような緊張感を維持しつつ、今年の舞台も頑張って勤めて参りたいと思います。

佐野弘宜さん結婚披露宴に出席して参りました

今日は宝生流若手能楽師の佐野弘宜さんの結婚披露宴に出席して参りました。

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虎ノ門のホテルオークラでの披露宴でした。

広大な会場に大勢の人々が列席する華やかな披露宴で、料理もとても美味しいものばかりでした。

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しかし、同じテーブルの東川尚史君は、何故かその美味しい料理に殆ど手をつけず、硬い表情をしています。

「どうしたの?」

と聞くと、

「…この後に、各テーブルを回って新郎関係者の祝福コメントをいただくコーナーの司会をするんだよね…」

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なるほど。それは緊張しますね…。

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その祝福コメントコーナーは、東川君の円滑な進行で和やかに終わりました。

テーブルに帰って来た彼は、別人のような晴れやかな顔になっていて笑ってしまいました。

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最後には、新郎新婦の産まれた時の体重と同じ重さのぬいぐるみを自分のご両親に渡す、というセレモニーがあり、色々な感謝の表し方があるものだと感心いたしました。

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去年「道成寺」の披きを無事に終えて、この度は御結婚された佐野弘宜さん。

人生の大きな節目を越えて、これからのますますのご活躍を楽しみしております。

2020年あけましておめでとうございます

皆様 2020年明けましておめでとうございます。

本年もどうかよろしくお願い申し上げます。

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私は例年通り朝から水道橋宝生能楽堂にて「賀詞交換会」に参加して参りました。

在京職分が新年の挨拶を交わし、舞台で全員並んで家元の御発声のもとで「七宝」を謡いました。

子方を卒業した中学生の男の子が、1年会わないうちに私と同じくらいの身長になっていてビックリしました。

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そして今年から舞台の「揚幕」が新調されたそうです。

色などの見た目は正確に再現されているので、ぱっと見では気がつかないかもしれません。しかし隅々まで綺麗な揚幕を見ると、何やら新年らしく気持ちが晴れやかになりました。

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個人的なことを申しますと今年は、

•8月8、9日(土・日)に「七葉会10周年記念大会」宝生能楽堂

•9月20日(日)に「京都澤風会15周年記念大会」大江能楽堂

•10月18日(日)に「松本澤風会10周年記念大会」松本音楽文化ホール

と、大きな節目が重なる年です。

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夏以降が非常に忙しくなることは間違いないので、

①夏までに身体を鍛えてスタミナをつけること。

②番組作りなど早めに計画的に行動すること。

をとりあえずの今年の目標にしたいと思います。

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このブログも相変わらずなるべく更新して参りたいと思いますので、こちらもどうぞよろしくお願い申し上げます。

2019各地の”稽古納め”

今週は”今年の稽古納め”が続く週です。

京都紫明荘組、田町で稽古納めが無事に終わりました。

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師走の後半のこの時期では、「仕事の山場で稽古に行けません…」という人が何人かおられました。

あるいは、

「インフルエンザにかかってしまいました…」

という方も…。

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その中でも大勢の方々にいらしていただきました。

そして、話題は来年の舞台に及びました。

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来年の「京都澤風会15周年記念大会」での能の話や、その前の「東京澤風会第14回大会」における舞囃子の話などなど。

能や舞囃子のニュースはまた改めて詳細をお伝えさせていただきます。

来年は「独吟」や「独調」などの謡の出番も増やしたいと思っており、そのような稽古も新年から始めて参りたいと思っております。

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明日以降の各地での”稽古納め”でも、そのような来年に繋がるお話が出来ればと思います。

各地の皆様よろしくお願いいたします。

2019年最後の舞台

今日は横浜能楽堂にて「眠くならずに楽しめる能の名曲・羽衣」という舞台に地謡として出演して参りました。

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羽衣はいわゆる「三番目」の曲で、全体的にとてもゆったりとした雰囲気です。

つまり、眠くなる危険性の比較的高い曲なのです。。

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しかし舞台の前に見どころの詳しい解説などもあり、地謡座から拝見する限り、お客様には最後まで熱心にご覧いただけたようでした。

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今日の「羽衣」が、私にとって2019年最後の舞台でした。

そして今年いただいた舞台の役は、全て滞りなく勤めることが出来ました。

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それは当然のことではあるのですが、無事に一年間の舞台を勤めおおせることが出来て安堵しております。

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舞台は終わりましたが、今週1週間はまだ各地の稽古などがあります。

年末ギリギリまで、もうひと頑張りして働きたいと思います。

第49回宝門会に出演して参りました

今日は大阪の香里能楽堂にて「宝門会」に出演して参りました。

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能「松風」、舞囃子「当麻」などを謡わせていただき、大変勉強になりました。

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宝門会は今回が第49回ということで、来年が第50回記念大会になるそうです。

ますますお盛んになる事を祈念いたしております。

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私の年内のお社中会は今回の宝門会が最後でした。

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明日は横浜能楽堂にて年内最後の舞台があります。

「年内最後の…」という事柄がいよいよ増えて参りました。

今年も残すところあと10日です。

「地水火風」再始動

昨日の朝のこと。

私は東京都内のある会社のロビーで、「岩手未来機構」の方々と待ち合わせしていました。

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岩手未来機構の皆さんとは、11月の岩手正法寺での「地水火風」公演以来の再会になります。

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待ち合わせた会社ビル内には立派なホールがあり、実はそこで「地水火風」を再演するという計画が立ち上がっているのです。

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会社の方に説明を受けながらホールを下見いたしました。

照明、音響、プロジェクター。

せり上がりも可能な舞台、可動式の客席。

舞台の出入り口と楽屋の配置。などなど…。

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色々な設備はとても充実しており、「地水火風」の舞台には理想的な場所だと思いました。

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計画はまだまだ再来年の話で、それまでに「地水火風」の舞を今一度練り直して、改良していきたいと思っております。

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未来機構の皆さん、尺八奏者ラルフ・サミュエルソンさん、写真家マグダレナ・ソレさん達と再びご一緒に仕事が出来るとは非常に有り難いことで、良い公演になるように全力を尽くして参ります。

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また計画が進んで詳細が見えて来たらご報告させていただきます。

都内なので、より多くの方々にご覧いただければと願っております。

関西宝連”謎かけ”

日曜日の「関西宝連」の後席でのことです。

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各大学の卒業生が交代で挨拶をすることになりました。

するとある卒業生が冒頭で、

「実は関西宝連に関する”謎かけ”を考えたのですが…」

と始めたのです。

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それは面白そうだなと思った次の瞬間…

「やっぱりやめておきます!」

ガクッとなりました。。

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挨拶を終えて席に戻って来たその卒業生に、

「”謎かけ”とても気になります!言えば良かったのに!」

と残念そうに言ったところ、なんと昨日このホームページのお問合せフォームを使って”謎かけ”を送って来てくれたのです。

その内容は…

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「今年春の関西宝連とかけまして、今回の卒業仕舞と解きます。その心は、どちらもいいはんのう(半能、反応)があったでしょう」でした。

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そう、今年の5月に開催された「春の関西宝連」は「第120回記念京宝連大会」でもあり、記念の半能「高砂」が演じられました。

そして他ならぬ”謎かけ”を考えた卒業生が、その「高砂」のシテを勤めたのです。

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今年の春秋の関西宝連を上手く繋げた”謎かけ”、笑点ならば「座布団1枚持って来て!」となるところでしょう。

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謎かけの内容が聞けて、すっきりしました。

卒業生さんありがとうございました。

卒業してもこのセンスを活かして頑張ってくださいね。

門松の準備

今日は朝から京都大山崎の宝寺での稽古でした。

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宝寺に着くと、稽古場の玄関に太い孟宗竹が何本も寝かせて並べてありました。

全てが1mほどの長さに斜に切られています。

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聞くと、お正月の「門松」の準備だそうです。

こういう光景を目にすると、「今年ももう終わるのか…」と、何か感慨深い気持ちになります。

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大山崎稽古も今日で今年最後でした。稽古を終えると、

「どうか良いお年をお迎えください」

と挨拶して稽古場を後にしました。

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そして昨日「関西宝連」を終えたばかりの香里能楽堂へ。

今日は今週土曜日に開催される「宝門会」の申合があったのです。

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昨日は学生の熱い舞台が繰り広げられましたが、今日は今日で能「松風」、舞囃子「当麻」などの難曲がずらりと並ぶ”熱い”申合でした。

特に「松風」は申合で1時間半以上かかり、終わると「またひと山越えられた…」とホッといたしました。。

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明日からは暫し”稽古モード”の日々です。

何ヶ所かの稽古場で、

「良いお年をお迎えください」

と挨拶して、今年の稽古を締めくくって参ります。

魂のこもった卒業仕舞

2019年冬の「関西宝生流学生能楽連盟自演会」は、おかげさまで無事に終了いたしました。

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例によって書きたい事は山積しています。

やはり先ずは京大宝生会のことを書かせていただきます。

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今日最初の出番は素謡「杜若」、最後の出番は仕舞「蟬丸」でした。

それら全ての舞台において、京大宝生会は非常な緊張感を持続しつつ、稽古したことを稽古した通りに発揮してくれました。

私の視点ではほぼミスは無かったと思います。

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番組を見るだけではわからないのですが、彼らは「自分の仕舞」、「誰かの仕舞の地謡、地頭」、「受付や”めくり”などの運営業務」、「素謡の役」、「素謡の地頭」…

と言った複数の要素を一日中、目まぐるしくこなしているのです。

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特に終盤の3、4回生ゾーンでは、難曲のシテと地謡が交替でやって来ます。

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同じように舞台を勤める身として見ると、それらの働きは”超人的”と言って良いのだと思います。

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その激務の最後に行われた、今回で現役を引退する4回生の「卒業仕舞」。

それはそれぞれの4年間の重みが集約されているような舞台で、見ていて心が震えました。

魂のこもった舞台でした。

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この人達を稽古出来たことは幸せだった。

もし叶うならば、この先もこの人達と稽古していきたい。

そう心から思いました。

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関西宝連の続報はまた書かせていただきます。

今日はこれにて失礼いたします。