学生仕舞の地謡は…

澤風会郁雲会の1日目には、京大宝生会と自治医大宝生会の現役部員の仕舞がありました。

そのうち京大宝生会現役の仕舞は、番組に地謡をあえて書きませんでした。

それは現役が交代で地謡に入って、お互いに謡い合う事にしていたからです。

一応私が地頭には入りましたが、謡ってみると皆とても大きな声で、彼らだけでも充分に謡えるだろうと思われました。

途中で切戸口には、次の出番の京大若手OBが集まって来ました。

私「せっかくなので地謡一緒に謡う?」

と若手OBに声を掛けて、最後の現役仕舞は5人の賑やかな地謡になりました。

一方、自治医大宝生会の仕舞は普通に能楽師で地謡を謡うつもりでおりました。今回は4年生2人だけの出演予定だったのです。

しかし楽屋に入って来た自治医大宝生会達は…

自治医大宝生会4人「「こんにちは‼︎」」

おお、仕舞を舞う4年生の他に、試験を終えた1年生と3年生も久しぶりに顔を見せてくれましたか!

しかも全員が舞台に出られる格好をしています。1年生と3年生に、

「もしかして仕舞の地謡に…」

と聞くと、

自治医大「「はい出ます‼︎」」

なんと!それは嬉しい事です。

というわけで、自治医大の仕舞2番は私以外の能楽師はお休みいただき、京大と同じく私と学生達で元気良く地謡を謡ったのでした。

今月中には京大も自治医大も合宿がある予定です。

またみっちりと稽古して、次の「全宝連京都大会」やその前の新歓に向けて頑張ってもらいたいと思います。

二十周年記念澤風会大会・郁雲会大会無事終了いたしました。

おかげさまで「二十周年記念澤風会大会・郁雲会大会」は昨日無事終了いたしました。

御出演いただきました皆様、見所で応援してくださった皆様、裏方で色々とお手伝いしてただいた方々に心より御礼申し上げます。

舞台は私の期待以上の熱気あふれるものでした。

これまで、番組に書いてありながら当日出られない方はいらっしゃいました。

しかし今回は番組に名前がある人は全員が無事に参加できて、逆に番組に載っていないけれど当日地謡に参加という人が何人もいらしたのです。

そんな皆様の熱量に今回も背中を押されて、2日間の会を走り抜ける事ができました。

特筆すべき事は無数にあるので、次回以降に思い出したものから書いて参りたいと思います。

実習の合間をぬって

一昨日は宝生能楽堂での能稽古の後で、栃木にある自治医大宝生会の稽古に行って参りました。

自治医大はやはり実習や試験が多くて大変そうです。

5年生の1人は年明けから遠い南の島で実習、また1年生と3年生は非常に難しい試験があったりして、中々稽古に来られないのです。

その中でも、5年生の2人は学内での実習の合間をぬって稽古に来てくれています。

先月に一度稽古に行った時には、実習が大変そうなので短い仕舞「安宅」と「猩々」を稽古しました。

ところが2人とも、この短い2番をすぐに出来るようになってしまいました。

さすがに優秀な記憶力です。

なので、ちょっと長めの仕舞「嵐山」を追加で稽古する事にしました。

これは3月9日、10日の「澤風会郁雲会」に向けての稽古でもあります。

一昨日は2人だけの稽古だったので、「嵐山」2回ずつを2セット稽古できました。

先月と今回の稽古で、2人とも「嵐山」をほぼマスターしてくれました。

澤風会郁雲会本番が楽しみです。

今は試験や実習が終わっていない人達も、澤風会郁雲会本番には試験や実習を終えて応援に来てくれると思います。

来月末には第2回目の自治医大宝生会合宿も計画されています。

次の大きな舞台である6月の全宝連京都大会に向けて、そしてその前の4月の新歓に向けて、自治医大宝生会もまた全員揃って盛り上がっていってほしいと思います。

2022年あけましておめでとうございます

皆様 2022年あけましておめでとうございます。

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昨年はコロナ禍が収まらない中でも3月に京都、10月に松本で澤風会を開催する事ができました。

学生の活動も全宝連は映像配信になりましたが、関宝連と関西宝連、そして京大の自演会は何とか有観客で開催されました。

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今年は先ず3月の5日(土)6日(日)に水道橋宝生能楽堂にて「東京澤風会・郁雲会大会」を開催いたします。

東京での澤風会は1年半ぶりで、能「井筒」、能「葵上」、能「夜討曽我」を始め舞囃子も多く出る予定です。

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そして9月24日(土)には京都大江能楽堂にて「澤風会京都大会」、10月には「松本澤風会大会」を開催予定です。

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私の演能予定としては、

①1月15日(土)五雲能にて能「巴」

於宝生能楽堂

②4月23日(土)七宝会にて能「羽衣盤渉」

於枚方市総合文化芸術センター

③5月27日夜能にて能「小鍛冶白頭」

於宝生能楽堂

の3番が予定されております。

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コロナの先行きはまだ不透明ですが、気をつけながら何とか頑張って稽古して参りたいと思います。

皆様本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

東西合同学生zoom稽古

昨日の日曜日は江古田稽古場にて終日リモート稽古でした。

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SkypeやLINEを使って、松本、京都、東京の澤風会会員さん達と1人ずつ謡の稽古をしていきます。

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日が暮れて最後のリモート稽古になりました。

zoomのリンク先にアクセスすると、それまでの個人稽古と違って何やら賑やかな雰囲気です。

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zoom会議室には、8人の大学生が集まってくれていました。

京大宝生会の2回生から大学院生、また日本女子大、國學院大の学生達です。

普段はこれに自治医科大も加えて、東西4大学が合同で「夜討曽我」の謡の稽古をしているのです。

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当初は8月に2回だけ、夏休み特別企画として東西合同zoom稽古をするつもりでした。

しかしやってみると意外にスムーズに稽古できて、それぞれの学校にとって良い刺激になっていると感じたのです。

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そこで9月に入っても東西合同稽古を継続して、昨日で4回目になりました。

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未だに大学ではオンライン授業が主で、友達と皆で賑やかに過ごす事もできない大学生達です。

せめてこのzoom稽古の中で、全国に同じ宝生流を稽古している仲間がいる事を実感してもらえたらと思います。

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そしてそう遠くない未来に、彼らが現実の舞台で思う存分に競演してほしいと願っているのです。

挑戦の関宝連

少し前になりますが、12月12日土曜日に水道橋宝生能楽堂にて「関東宝生流学生能楽連盟自演会」が開催されました。

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例年は年2回開催のところ、6月が中止になったため今年唯一の関宝連になりました。

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私は関宝連においては、日本女子大2人、自治医科大6人、そして江古田稽古場でずっと稽古してきて今年國學院大に入学した学生1人を教えています。

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ところが残念ながら自治医科大は、感染拡大防止で学外に出られないために今回参加が叶いませんでした。

つまり、京大宝生会出身の自治医科大の青年が来られなくなった訳で、「地頭がいない」という危機的状況になってしまったのです。

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しかし日本女子大の2人と國學院の1人は非常な頑張りを見せてくれました。

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素謡「竹生島」では日本女子大がシテとツレを、國學院がワキを勤めました。

そして通常よりもかなり距離を取って3人が横一列に並びます。

常座、正中、ワキ座、という感じの距離感でした。

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距離が離れると謡を合わせるのが難しくなってしまいますが、3人の地謡は声が良く揃っていました。

更に、回数を重ねたzoom謡稽古によって個々の声量が格段に大きくなっていて嬉しい驚きでした。

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この3人はそれぞれ「紅葉狩」「竹生島」「玉葛」の仕舞も舞って、こちらも少ない稽古回数ながら急成長のあとを見せてくれました。

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そして地謡も。

國學院大4年生の舞囃子「船弁慶」では、江古田で稽古してきた國學院1年生が初めての”舞囃子地謡”に挑戦したのです。

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その船弁慶の地謡は、4年生1人と1年生1人の合計2人だけです。

しかも1年生は初舞囃子地謡。これはかなり困難なチャレンジです。

本番ギリギリまで、國學院宝生会指導者の佐野玄宜さんと一緒に稽古舞台で稽古をしました。

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舞囃子船弁慶の本番は、私は能「加茂」の装束付けをしていて見られませんでしたが、佐野玄宜さんによれば無事終わったという事で安堵しました。

玄宜さん「終わって帰ってきたら、シテも地謡も座り込んで放心状態でしたよ(笑)」

それはそうでしょう…。

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このように今回の関宝連は、それぞれの学生が高いハードルに挑んでそれを何とかクリアするという、非常に貴重な経験を積む事が出来ました。

コロナの影響を逆手にとって、皆が一気に大きく成長してくれたのです。

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そして今回参加が叶わなかった自治医科大宝生会も、勿論zoom謡稽古は続けています。

今年は新しく2人部員が増えて、合計6人になったとのこと。

その自治医科大が戻ってきたら、次回以降の関宝連ではより強力な布陣で目を見張るような舞台をお見せ出来ると思います。

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一方で関西では京大宝生会が、もがきながらも懸命に活動を続けています。

全国の大学の中でもおそらく最も厳しいサークル活動制限が敷かれている中での京大宝生会の不屈の苦闘の様子は、また数日後に書きたいと思います。

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zoomでの舞台参加

第7回澤風会・郁雲会の本番まで2週間ほどとなった9月上旬、自治医科大学能楽部の青年からメールが届きました。

残念ながら大学からの外出が許可されず、澤風会への参加が困難になってしまったという内容でした。

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自治医科大学からは青年も含めて数人が参加予定で、中でも困ったことに素謡「土蜘」の後シテ、前ワキ、ツレの役謡が来れなくなってしまったのです。

通常ならば、代役を考えるべき状況でした。

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しかしこの素謡「土蜘」は、コロナウイルスでサークル活動が出来なくなった大学生達が、自治医科大学、日本女子大学、國學院大学の3大学合同で4月から始めたzoom遠隔稽古の成果を発表するものだったのです。

なんとか半年間一緒に稽古してきたメンバーで謡わせてあげたい!

と強く思いました。

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そして考えたのが「稽古がzoomで出来るのだから、舞台にもzoomで参加出来ないだろうか?」ということでした。

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先ずはセルリアン能楽堂に問い合わせて、舞台上でWi-Fiが使えることを確認しました。

あとひとつ大きな問題は「スピーカー」です。

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舞台上では4人の学生が実際に謡います。

その生の声に負けない音量が出せるスピーカーはあるだろうか。色々と調べてみました。

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その結果、20Wという大音量(私がこれまで稽古用に使っていたスピーカーは5W)で、サイズは500mペットボトル程という小型高性能のスピーカーが入手出来たのです。

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本番の3日前には、実際にセルリアン能楽堂の舞台でzoomとスピーカーを使って学生と繋いで試験をして、上々の成果を得ました。

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そしていよいよ本番。

舞台上でzoomを起動すると、画面には自治医科大学の寮の自室で紋付袴をキッチリと着付けて正座している青年の姿が写りました。

こちらはスマホのカメラを笛柱の前から見所方向に向けて、少しでも舞台で謡っている気分が出るようにしました。

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そして素謡「土蜘」のzoom参加の結果は…。

私の不手際で前ワキの謡が一部途切れてしまったのが申し訳なかったのですが、それ以外は音量、音質共に申し分無いものでした。

舞台上のメンバーもそれぞれzoom稽古の成果を存分に発揮してくれて、元気な「土蜘」を披露することができたのです。

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このzoomでの舞台参加は、もちろん今回のような特殊な場合に限られる”裏技”と言えるでしょう。

しかし、不意の怪我や台風などで能楽堂に急に来られなくなった非常時などに、この方法は有効かもしれません。

コロナウイルスの影響で始めたzoom遠隔稽古から派生して、「zoomでの舞台参加」という新たな可能性に辿り着いた今回の舞台でした。

全宝連があるはずだった日

今日6月27日と明日28日には、金沢の石川県立能楽堂にて「全国宝生流学生能楽連盟自演会」が開催される予定でした。

しかし残念ながらコロナウイルスの影響で開催見合わせになってしまいました。

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全国から舞囃子もたくさん出る予定だったので、間違い無くとても熱い舞台が繰り広げられたはずなのです。

誠に無念の極みです。

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しかしながらこのような状況でも、京大宝生会の学生達は出来る稽古に地道に取り組んでいます。

昨日もzoom稽古をいたしました。

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交代で声を出しての鸚鵡返しで、1人最低ひとつは改善すべき点を指摘するようにしています。

今回は特に2回生がいくつか大事な節を覚えてくれました。

皆着実に進歩しています。

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さらについ先日には部長から、

「活動再開したら見学したいという新入生がいます。zoom稽古でも見学してもらって良いでしょうか?」

という内容のメールが来ました。

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きっと全国の宝生流の学生達も同様に、今出来る活動を懸命に模索して頑張っているのでしょう。

その努力が報われる日が早く来るように、そしてたくさんの学生達が一堂に会しての賑やかな舞台がまた戻ってくるように心から願っています。

私も出来ることを地道に続けて参りたいと思います。

炎を絶やさないために

昨日は昼から夜にかけて、学生関係のzoom稽古を3団体続けていたしました。

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最初は京大宝生会若手OBOGの皆さん。

炎に例えれば、長い時間をかけて燃え続けて、燠火のように安定した強い火力を持っている彼らです。

今回は新しい課題曲「難波」の初め〜クリまでを鸚鵡返ししました。

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次の団体は京大宝生会の現役達。

こちらは炎で例えると、今まさに元気よく燃え盛る大きなキャンプファイヤーのようです。

前回に続いて「兼平」を、今回は最後まで鸚鵡返しし終えました。

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そして最後は、自治医科大と日本女子大の合同稽古でした。

そこに、澤風会で幼稚園から稽古を続けて今春もう大学生になった女の子も加わって、賑やかな団体稽古になりました。

彼らはようやく灯されたばかりの、小さく若い炎のようです。

「土蜘」を一番最初から、ゆっくり解説しながら鸚鵡返ししました。

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大きさや形はそれぞれ異なりますが、これら学生関係の団体はどれもとても大切な炎なのだと思います。

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今はその炎に向けて、不恰好なあおぎ方で遠くから風を吹かせることくらいしか出来ません。

しかし今回の大変な災厄に負けずにずっと燃え続けていけるように、なんとか少しずつでも新しい薪をくべて、新鮮な空気を送っていきたいと思っております。

目指せ最多人数更新

今日は午後から江古田で個人稽古の稽古始め、その後に田町に移動しての稽古始めでした。

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江古田では主に舞囃子の稽古をみっちりとして、夕方に終えて急いで田町稽古場へ。

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稽古場の引き戸をカラカラと開けると、中からはガヤガヤと、いつもよりもなんだか賑やかな声が聞こえてきました。

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田町の謡は団体稽古なのですが、今日から新しい方がまた1人稽古を始める事になったのです。

団体稽古は合計で7人になりました。

これは田町稽古場を始めてからの最多人数に並ぶ数字なのです。

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一時は人が少なくなって、稽古場存続が危ぶまれたこともある田町稽古場ですが、ここ2年ほどで着実に人が増えて参りました。

団体稽古の後も、元気の良い韓国人留学生さんや、自治医大の青年なども来てくれました。

結局稽古場が閉まる合図の”蛍の光”が流れるまで、密度の濃い稽古をすることができました。

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例年よりも活気を増して稽古を開始した田町稽古場です。

この勢いで、今年は最多人数を更新できればと思っております。