全宝連京都大会が盛大に開催されました

昨日一昨日と京都金剛能楽堂にて、

「全宝連京都大会」

が盛大に開催されました。

コロナ禍の時には開催見送りやオンラインでの開催、また開催されても学校毎に固められた番組で、学生同志の交流が制限されていました。

しかし今回からは、番組も色々な大学がランダムに配置され、また初日終了後には京都ガーデンパレスホテルにて、全国の学生と、宝生和英御宗家始めシテ方能楽師も参加した「レセプション」も開催されました。

完全にコロナ以前に戻った雰囲気の2日間で、特にレセプションでの学生達の楽しそうな様子は、見ているこちらも思わず笑顔になってしまうほどでした。

そしてもちろん、2日間にわたる舞台は非常に熱気溢れるもので、見所も学生やOBOG、また学生のご家族などで終日賑やかでした。

舞台でも楽屋でも、またレセプションやその前後にも、本当に多くの素敵なエピソードが生まれた「全宝連京都大会」でした。

また個別のエピソードも改めて書かせていただきます。

今回の全宝連に関わったすべての皆様、特に運営を担って大会を成功させた全宝連委員の皆様に心より御礼申し上げます。

全宝連での得難い経験

いよいよ明後日から「全宝連京都大会」が2日間にわたって開催されます。

私が全宝連委員長を勤めたのは確か平成3年の全宝連京都大会で、会場は四条室町上ルの旧金剛能楽堂、レセプション会場はコープイン京都でした。

今は金剛能楽堂は御所の西に移り、コープイン京都も無くなりました。

あれから幾星霜、コロナ禍も乗り越えて、また京都に全宝連が帰ってくるのは実に感慨深いです。

と言っても私が委員長を勤めた時は、私自身は2日間ほぼずっと玄関に座って、全国から来る皆さんや、能楽師の先生方をお迎えしたり、色んなトラブルへの対応に終始していました。

自分が出る時以外の舞台は全く見られなかったので、舞台の記憶は殆ど無いのです。

正直しんどい仕事でした。

しかし、例えば目上の人への手紙の書き方、口のきき方、フォーマルなレセプションでの挨拶の仕方などは、この全宝連委員長の時に初めて経験しました。

そしてその経験が今の私の日常にも確実に活かされているのです。

今回も神戸大の委員長さんを始め、全宝連委員や関西の大学の学生は、これから本番終了まで、間違いなく大変な数日間になる事でしょう。

でもその大変な経験は、将来きっと自分を助けてくれる、得難い経験になるというのもまた、間違いない事なのです。

全宝連京都大会が実り多い舞台になるように、私も全力でお手伝いしたいと思います。

全宝連京都大会のお知らせ

今週末の6月29(土)30日(日)に京都金剛能楽堂にて、

「全国宝生流学生能楽連盟自演会京都大会」

が開催されます。

東京、名古屋、金沢、関西を中心に、宝生流を稽古する全国の学生達が一堂に会する盛大な催しです。

29日10時半〜15時まで学生自演会

30日は10時〜13時まで学生自演会、15時から鑑賞能があります。

学生自演会は入場無料、鑑賞能は有料の催しになります。

鑑賞能は宝生和英御宗家による

能「鞍馬天狗 白頭」

ほか、各大学を指導する能楽師による仕舞が多数演じられます。

番組は下の通りです。

詳細情報、また鑑賞能チケットの購入は下のリンクをご覧くださいませ。

鑑賞能チケットは当日受付でもご購入いただけます。

学生達の熱い舞台と、その後の盛りだくさんな内容の鑑賞能を観に、週末は是非京都金剛能楽堂にお越しくださいませ。

よろしくお願いいたします。

https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=10193

https://zenporen2024.peatix.com/?lang=ja

自治医大の集中力

今日は自治医大宝生会の稽古に行って参りました。

先日の「関宝連」は、6年生の地元実習の関係で、本番2日前に1度だけしか稽古できずに本番を迎えました。

しかも私自身が関西で舞台があり、仲間の若手楽師に自治医大の事をお願いして関西に向かったのです。

今日自治医大に到着すると、真っ先にその関宝連の様子を聞いてみました。

すると笑顔で「いや〜絶対無理だと思っていたのに、本番はノーミスで出来ました〜!」

おお!さすが普段から集中力が求められる医大生です。

1度だけの稽古の音源や映像で、本番直前までみっちりと自主練したようです。

そして今日は、来週末に迫った「全宝連京都大会」に向けての稽古です。

関宝連前は差し迫った本番のための必要最低限のことしか言えなかったのですが、今回はまだ時間もあるので、より細かな稽古ができました。

自治医大はこれでもう全宝連本番を迎えるわけですが、彼らは今回もここから集中して自主稽古をしてくれるはずです。

6月30日の全宝連本番は、今度こそは私も行けるので、金剛能楽堂での彼らの奮闘をしっかりとサポートしたいと思います。

明後日の舞台のために

今日は自治医大稽古に行ってきました。

5月の1ヶ月間は、6年生が地元研修でそれぞれの出身地に戻っており、また入院していた部員が先日無事退院したりして、今日は本当に久しぶりに大勢が揃っての稽古でした。

更に嬉しい事に、新入生が1人入部していました。

秋田出身の6年生が、同じ秋田出身の新入生に声をかけたら入ってくれたそうなのです。

早速「紅葉狩」の仕舞を稽古しました。

嬉しいニュースが多かったのですが、実は自治医大能楽部としては中々に大変な状況なのでした。

「関東宝生流学生能楽連盟自演会(関宝連)」

の舞台が明後日に迫っているのです。

このひと月の間は部員が全国に散らばってほとんど稽古出来ず、仕舞のシテと地謡との合わせも勿論出来ていません。

今日1日の突貫工事で、明後日の舞台に備えないといけないのです。

とりあえず仕舞は、私と一緒に地謡を謡いながら2回稽古して、更に今度は部員だけで地謡を謡ってもう2回。

合計4回稽古しました。

素謡「桜川」も、一度謡ってもらって、とにかく直せるところを出来るだけ修正して稽古を終えました。

部員達は、「これから晩御飯行って、その後帰って稽古しよう」

「明日は実習が早く終わるはずだから、後はずっと稽古しよう」

と明後日までの限られた時間を有効に使う相談をしていました。

日々の実習や授業が本当に過酷な彼らにとって、仕舞や謡まで覚えるのは大変な事だと思います。

なんとか明後日の「関宝連」を無事乗り切って、月末にある「全宝連京都大会」では、より稽古を積んで舞台に臨めるように、私も頑張ってお手伝いしたいと思います。

医大生と能楽

自治医大宝生会の学生さんと話していた時の事です。

6年生で実際に病棟で実習があり、色々な事情を抱えた患者さん達をたくさん見て、しんどくなった事があったそうです。

その時に、能の事を思い出して、

「医師は”ワキ方”に徹すれば良いのだ」

と考えて気持ちが救われたというのです。

ワキ方は、まずシテに話しかけます。

そして、シテの出身地を聞いたり、外見上の特徴を指摘してその理由を尋ねたりします。

するとシテは詳しい身の上話をワキに語ります。

身の上話や悩み事を聞くと、大抵はそれに対して何かアドバイスを与えたりするでしょう。

しかし能楽に置けるワキはそれを聞いても、すぐにシテに影響を与える立場にはならず、最後の方までひたすら聞き役に徹します。

自治の学生さん曰く、

「ワキとシテの間には一本線が引かれていると思います。

一方でシテとツレは同じ立ち位置で繋がっていると思います」

なるほど確かに。

ワキがお医者さん、シテが患者さんで、ツレが患者さんの御家族とします。

医師がワキに徹すれば、過度にシテツレに干渉する事なく、適切な関係を保てるでしょう。

その同じ学生さんは3月の澤風会郁雲会で能「砧」などの舞台を観て、

「このシテの心情は現代の患者さん達と変わらないなあ」

と、そこにも何か救いを感じたそうです。

病棟での実習は命との向き合いの日々で、本当に大変な事ばかりだと思います。

能楽がそういう人の気持ちの助けになるならば、それは私のような能楽師にとって何よりの喜びです。

自治医大宝生会では、普通の稽古とはまた違った意味で、気持ちを込めて大切に稽古させてもらいたいと思ったのでした。

自治医大も新歓スタートです

今日は自治医大稽古に行って参りました。

自治医大も新歓の季節です。

全寮制の学校なので、新歓の呼び込みも寮の共用スペース「大ラウンジ」という所で行いました。

先ず寮の玄関に入ったところで驚きました。

広いエントランスが「家電」の大きな段ボールで埋め尽くされているのです。

聞けば全部が新入生用の新しい家電製品だそうです。

新生活が始まる高揚感を感じる光景でした。

呼び込みを学生部員達に任せて、私は紋付に着替えて正座して謡を謡っていました。

すると…

「こんにちは…」

という声と、部員の

「お〜!」

という喜びの声が聞こえてきました。

先日に一度見学に来てくれたという新入生が再び来てくれたようなのです!

早速サークル棟に移動して、稽古を体験してもらいました。

鹿児島から来たという新入生は、高校時代は演劇部だったという事で仕舞も謡も中々筋が良いです。

ひと通り体験稽古をした後は、部室で能の写真などを見ながら色々お話しをしました。

「能はなぜ幽霊と生きている人が普通に話せるのですか?」

などと能の核心に迫る質問もしてくれたりして、興味を持ってくれたようです。

私は今は稽古を終えて東京に戻る途中ですが、今ごろ部員達が新入生と楽しく晩御飯を食べに行っているはずです。

次回月末に稽古に行く時に、今日の新入生が入部していてほしいと願っています。

筑波山”下山”記

自治医大合宿は下のような素敵な雰囲気の古民家ゲストハウスで行われました。

午前中に稽古を終えて、昼頃に宿をチェックアウトして、合宿は無事終了いたしました。

そしてその後は全員予定が無い事が判明したので、日が暮れるまでの間に「筑波山」に行ってみようという話になったのです。

山麓の「筑波山神社」に到着したのが13時半頃。

登山にはちょっと遅いので、ケーブルカーを使って一気に山頂に行く事にしました。

ケーブルカーは10分足らずで筑波山山頂駅に到着します。

山頂駅は男体山と女体山の中間部にあり、我々は「女体山」経由で、巨石や奇岩の多いという「白雲橋コース」を通って下山することにしました。

山頂からは黄砂に霞んではいましたが、関東平野や霞ヶ浦が見えて絶景でした。

またちょうど時期が良く「カタクリ」が咲いているのも見られました。

道は中々の急坂です。

しかし途中ですれ違った登山者の中には高齢の女性や小さな子供、また小型犬を連れた人までいて、皆さん健脚でびっくりしました。

そして山道の途中に確かに様々な巨石奇岩が点在していました。

「ガマ石」や…

「裏面大黒」など、個性的な名前が付けられています。

ここは何と「高天原」と呼ばれており、この先には神々が座す天上世界があるというのです。

またこの山にも「弁慶」に関係する場所がありました。

これは「弁慶七戻り」で、巨岩が落ちそうで恐れた弁慶が七回後戻りしたという伝説があるそうです。

弁慶は修行でここまで来たのでしょうか…

急だった山道も、ようやく緩やかになって来ました。

そして程なく、無事に麓の鳥居まで降りて来る事ができました。

今回は時間の制約があって、登山というより筑波山”下山”でした。

また機会があれば、次回はちゃんと”登山”して、男体山にも登頂してみたいです。

自治医大合宿は筑波山観光まで付いて、大変盛りだくさんなものになりました。

自治医大宝生会の皆さんありがとうございました。

自炊もしながら

昨日から筑波山の近くにある古民家ゲストハウスで自治医大能楽部宝生会の合宿をしております。

筑波山を間近で見るのは初めてなのですが、何となく比叡山に似た姿だと思いました。

ゲストハウスの周りは見事な日本建築の大きな農家が多く、栗や梨が名産品だそうです。

京大合宿所の民宿きつねと違って、今回のゲストハウスではご飯は自炊になります。

昨夜は秋田出身の部員が「きりたんぽ鍋」を作ってくれました。

比内地鶏の出汁で、非常に美味しかったです。

そして今朝は、京大からゲスト参加のOBが腕を振るって、大変豪華な朝ごはんになりました。

焼き鮭、焼きウインナー、空豆とベーコンのオムレツ、味噌汁、昨夜のきりたんぽ鍋の出汁で作った雑炊、などです。

食べる話ばかりですが、稽古もちゃんとしています。

謡は「三笑」、仕舞は「花月キリ」「巻絹クセ」「忠度」などを一通り稽古しました。

これから授業が始まるととても忙しくなる自治医大生ですが、実習や授業の合間をぬって、次の関宝連や全宝連に向けて頑張ってもらいたいと思います。