お正月気分かと言うと…

一昨日の元旦は宝生能楽堂にて謡初、昨日は三重の実家に日帰り帰省と、一見お正月らしい生活をしております。

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ところが実は心の中は全然お正月気分ではないのです。

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1月9日(日)の「月浪能特別公演」にて能「正尊」立衆。

1月15日(土)の「五雲能」にて能「巴」シテ。

と、正月早々に太刀や長刀を振り回す激しい役が続くのです。

なので正月行事と並行して毎日稽古も重ねております。

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能「巴」は14年前に大阪の「七宝会」で勤めさせていただきました。

二度目の演能でしかも前回から14年経っております。

今回はよりレベルアップした舞台になるように、頑張って稽古したいと思います。

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また明日からは3月5、6日の「澤風会郁雲会」に向けた舞囃子と能の稽古もスタートします。

明日だけでも舞囃子「山姥」「天鼓盤渉」「乱」「雲雀山」「三輪」、

能「井筒」「葵上」「夜討曽我」の稽古が予定されています。

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とりあえず3月の澤風会郁雲会までは「仕事全力モード」で進んで参ります。

2022年あけましておめでとうございます

皆様 2022年あけましておめでとうございます。

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昨年はコロナ禍が収まらない中でも3月に京都、10月に松本で澤風会を開催する事ができました。

学生の活動も全宝連は映像配信になりましたが、関宝連と関西宝連、そして京大の自演会は何とか有観客で開催されました。

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今年は先ず3月の5日(土)6日(日)に水道橋宝生能楽堂にて「東京澤風会・郁雲会大会」を開催いたします。

東京での澤風会は1年半ぶりで、能「井筒」、能「葵上」、能「夜討曽我」を始め舞囃子も多く出る予定です。

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そして9月24日(土)には京都大江能楽堂にて「澤風会京都大会」、10月には「松本澤風会大会」を開催予定です。

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私の演能予定としては、

①1月15日(土)五雲能にて能「巴」

於宝生能楽堂

②4月23日(土)七宝会にて能「羽衣盤渉」

於枚方市総合文化芸術センター

③5月27日夜能にて能「小鍛冶白頭」

於宝生能楽堂

の3番が予定されております。

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コロナの先行きはまだ不透明ですが、気をつけながら何とか頑張って稽古して参りたいと思います。

皆様本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

声が大きくなった!

私が学生の稽古をしている時に、一番嬉しいと思うのは、実は学生の謡を聴いて

「声が大きくなった!」

と感じた瞬間なのです。

非常にシンプルなことですが、小さかった謡の声が大きくなっていくのを聴くたびに、しみじみと感動してしまいます。

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私は関東と関西で大学生を教えていますが、コロナがようやく落ち着いてきた秋以降には、以前のように月2回ペースで稽古ができるようになりました。

そして最近、東西それぞれの大学で「声が大きくなった!」と感動した瞬間があったのです。

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先ずは京大宝生会で、11月の自演会に向けた稽古をしている時でした。

今の現役には何人か、元々とても声の大きな学生がいました。

それに比べるとやや声量が少なかった学生が、仕舞のシテ謡で驚くほど大きな声を出してくれたのです。

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周りの大きな声に乗せられて、それまでの殻を突き破った感じでした。

今後さらに声量が増える事を期待しています。

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そして関東では、先週末にあった「関宝連自演会」に向けた稽古でのこと。

江古田稽古場で日本女子大学と國學院大学の学生が合同で素謡「小袖曽我」の稽古をしていました。

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今回の「小袖曽我」では途中でツレ母の長い語りがあり、その中で母が激昂して声が大きくなる箇所があります。

それまでの稽古でも母は大きな声を出せていたのですが、私はあえて

「一番怒っている時の謡の声量を標準にして、そこから更に大きくしていけると良いね」と言ってみたのです。

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すると母の謡が劇的に大きくなって、それにつられるようにシテ十郎とツレ五郎の謡も大きくなったのです。

私は「声が大きくなった!」×3乗の感動を味わうことができたのでした。

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しかし、まだまだ満足してはおりません。今回は本を見ながらの素謡でした。

次回来年6月の「全宝連東京大会」では、無本で、更に大きな声で謡ってもらおうと思っています。

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次回の全宝連は、東西の学生が無本で大きな声で謡を競い合う、熱い舞台になってほしいと願っております。

大山崎の梅、桜、松

今日は緊急事態宣言が解けてから初めての大山崎稽古でした。

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謡の稽古は今回から新しい曲「鉢木」です。

人数分の謡本を携えて、宝寺に向かうあの天王山の急坂を登っていきました。

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すると坂の途中でちょっと驚く事があったのです。

坂の路面に「大山崎町」と書かれたマンホールがありました。

そのデザインが「鶯、桜、松」だったのです。

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鶯と言えば「梅に鶯」。梅の花を思い起こさせます。

そして今日これから稽古を始めようという「鉢木」という曲では、シテが「梅、桜、松」の鉢の木を薪にして燃やすシーンがハイライトになっているのです。

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何かとても縁起がいい気がして、良い気分で稽古に向かいました。

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それにしても、大山崎町と「梅、桜、松」は何か関係があるのだろうか…。まさか群馬県の佐野と姉妹都市とか…。

稽古を終えて坂を下りながら、何か手掛かりは無いかと探してみました。

すると…

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ありました!

観光用の大きな地図の看板に、「町の花・鳥・木」として「さくら、うぐいす、赤松」と書いてあったのです。

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なんと、ではマンホールの「鶯(梅)、桜、松」のデザインは、鉢木とは全く関係ない偶然の組み合わせだったのですね。

しかし偶然にしては出来過ぎな気がします。

やはり何か縁起がいい気がして、更に良い気分で次の亀岡稽古に向かったのでした。

8年後には…

先日の松本稽古でのこと。

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新宿を昼過ぎ発の特急あずさで松本に到着すると、まだまだ夏の暑さが残っていました。

松本城近くにある大手公民館に到着すると…

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「こんにちは〜!」

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お母さんと男の子の親子が待っていてくれました。

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お母さん「この子は今日ちょうど10歳の誕生日なんです」

おお!それはおめでとうございます!

ちなみに何歳から稽古を始めたのでしたっけ?

お母さん「4歳からです」

なんと、ではもう稽古歴6年目になるのですね。

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男の子は今「経政キリ」を稽古しています。

扇を2本使う難しい仕舞なのですが、凛々しい若武者の表情で謡も型も大人顔負けの出来映えです。

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しかし稽古が終わると、誕生日プレゼントにもらったという超巨大な雷鳥のぬいぐるみ(彼とほとんど同じサイズ!)と戯れて、すっかり少年の表情に戻っていました。

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鳥や虫、植物や石など自然全般が大好きな彼は、最近京大で植物を研究する大学院生と話す機会があって京大に興味を持ったそうです。

私「じゃあ京大に入って宝生会に入部してよ!」

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男の子は「え〜京大?」と言って笑うだけでしたが、8年後には京大宝生会に期待の新人が入部してくれるかもしれません。

その日を夢見て、これからも頑張って稽古を続けていきたいと思います。

東西合同学生zoom稽古

昨日の日曜日は江古田稽古場にて終日リモート稽古でした。

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SkypeやLINEを使って、松本、京都、東京の澤風会会員さん達と1人ずつ謡の稽古をしていきます。

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日が暮れて最後のリモート稽古になりました。

zoomのリンク先にアクセスすると、それまでの個人稽古と違って何やら賑やかな雰囲気です。

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zoom会議室には、8人の大学生が集まってくれていました。

京大宝生会の2回生から大学院生、また日本女子大、國學院大の学生達です。

普段はこれに自治医科大も加えて、東西4大学が合同で「夜討曽我」の謡の稽古をしているのです。

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当初は8月に2回だけ、夏休み特別企画として東西合同zoom稽古をするつもりでした。

しかしやってみると意外にスムーズに稽古できて、それぞれの学校にとって良い刺激になっていると感じたのです。

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そこで9月に入っても東西合同稽古を継続して、昨日で4回目になりました。

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未だに大学ではオンライン授業が主で、友達と皆で賑やかに過ごす事もできない大学生達です。

せめてこのzoom稽古の中で、全国に同じ宝生流を稽古している仲間がいる事を実感してもらえたらと思います。

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そしてそう遠くない未来に、彼らが現実の舞台で思う存分に競演してほしいと願っているのです。

新人アナウンサーは…

昨日は水道橋宝生能楽堂にて「月浪能特別公演」が開催されました。

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宝生能楽堂の定例公演では、開演前などにアナウンスが流れます。

携帯電話の電源をお切りいただくことや、様々なコロナウイルス対策など重要な内容のアナウンスです。

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そして昨日、そのアナウンスの声が初めて聴く人のものになっていました。

年度がわりで人も入れ替わったのかな…

と思いながら聴いていたのですが、途中で

「何か聴いたことのある声だな…」

と気が付いたのです。

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放送マイクのある事務所に行ってみると…

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やはりマイクの前に立っていたのは良く知っている顔でした。

幼稚園の時からずっと私が稽古をつけている、大学生の女の子だったのです。

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彼女がまだ幼稚園の時に、この宝生能楽堂で開講された謡曲仕舞教室に自分の意思で(!)入門してきました。

それ以来小学生の頃までは、毎回必ず着物を着て(!)稽古に通ってくれました。

その後も江古田稽古場で中学、高校と稽古を続けて、昨年大学に入学してからは「関東宝生流学生能楽連盟」の一員としても活躍してくれているのです。

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その大学生が新年度からの宝生能楽堂定例公演手伝いのアルバイトに入ることになった、というのは前もって聞いていました。

しかし、バイト初日にアナウンスを任されるとは…

しかも長い原稿を淀みなくスラスラと読んでいて驚きました。

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幼稚園から慣れ親しんだ宝生能楽堂で、おそらく能楽公演も少しは観ることができるであろうこのアルバイトは、正に彼女のために打って付けだと思います。

これから事務所の皆さんや先輩に色々と教わって、長く続けてもらいたいと願っています。

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私にとっては、定例公演のアナウンスを聴くのも楽しみのひとつになりました。

集大成の能「鶴亀」

先日の「第15回澤風会大会」では能「鶴亀」と能「小督」の2番の能が出ました。

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そのうちの能「鶴亀」のシテを勤めた京大若手OBは、今回が初シテでした。

彼は卒業して10年にもならない本当の若手なのですが、この度”教授嘱託免状”をとる事になり、その披露の意味の演能でもあったのです。

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数ある能の中で何故「鶴亀」を選んだのか。

実は彼は、京大宝生会に入部してすぐの”初舞台”が大江能楽堂で開催された「京宝連」での素謡「鶴亀」でした。

更に彼は同じく大江能楽堂での「澤風会」における初舞台も仕舞「鶴亀」だったそうなのです。

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そして今回は能の初シテとして、やはり大江能楽堂で能「鶴亀」を舞う事になったわけです。

初舞台から10年と少しの間、たゆまずに稽古を続けた成果のひとつの集大成としての能「鶴亀」を、彼は堂々と演じてくれました。

若いながら風格のある重厚な皇帝でした。

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またこの能「鶴亀」には曲名にもある”鶴”と”亀”が登場します。

子方が演じる事が多いこの鶴と亀ですが、今回は京大宝生会を今年卒業する4回生の2人に舞ってもらう事にしました。

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この1年はコロナ禍の影響で、学生自演会が軒並み中止や延期になってしまいました。

京大宝生会の最高学年として、2人は本来ならば難しい曲に挑戦したり、沢山の地頭を経験したり出来た筈なのに、結果的に無観客の「冬の関西宝連」だけしか舞台に立てなかったのです。

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現役時代の最後にせめて、お客様の前で華やかな舞台に立ってほしいと鶴亀のオファーを出したところ、2人は快諾してくれました。

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実は京大宝生会の2人にお願いしたのは別の意味もありました。

京大能楽部BOX舞台には能「鶴亀」で使うのと同じサイズの「一畳台」があり、四隅の柱になる棒も完備されています。

そこで稽古すれば、能面をかけての「相舞」も合わせやすいと考えたのです。

ところが…

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今年に入って早々に発令された緊急事態宣言により、京大能楽部BOX舞台が使用禁止になってしまったのです。。

コロナウイルスはとことん意地が悪いと、やり場の無い憤りを感じてしまいました。

しかし鶴亀の2人はその逆境にもめげずに頑張ってくれました。

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自分で公民館などを借りて自主練をして、卒論や卒業研究の合間に澤風会稽古にも頻繁に通ってくれたのです。

大江能楽堂での申合、また当日朝の最後の合わせを経て、相舞のシンクロ率は急速に上がっていきました。

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そして本番では、鶴と亀の相舞もその後の座る場所も、すべて完璧な舞台を見せてくれました。

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シテにとっては初舞台から今までの10年あまりの稽古の集大成でもあり、また鶴と亀の4年間の現役生活の集大成でもあった今回の能「鶴亀」。

この能もまた記憶に残る素晴らしい舞台になりました。

第15回澤風会大会が無事終了いたしました

今から8日前のことになりますが、3月7日日曜日に京都大江能楽堂にて「第15回澤風会大会」を開催させていただきました。

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元々は昨年9月に開催予定でしたが、コロナ禍の影響により半年延期しての開催でした。

今回も様々な感染防止対策を施しましたが、開催から1週間以上が平穏に過ぎてひとまず安堵しております。

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このような大変な時期にもかかわらず、能「鶴亀」と能「小督」という2番の能、また舞囃子、仕舞、素謡に独調という盛り沢山の番組になりました。

能「鶴亀」シテと能「小督」前シテの京大宝生会若手OBはこの度めでたく嘱託免状をいただくことになり、その嘱託披露のための能でもありました。

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今回は大々的に宣伝はいたしませんでしたが、ご家族やお知り合いの方々にたくさんいらしていただき、見所は程よく華やいだ雰囲気でした。

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ご出演いただきましたシテ方と、囃子方、ワキ方、狂言方の三役の先生方、また応援にいらしてくださった見所の皆様、そして毎回感染防止に心を配りながら稽古に励んだ会員の方々に感謝の気持ちは尽きません。

誠にありがとうございました。

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舞台のいつもの緊張感に加えて、コロナ対策の緊迫感もあり、一生忘れられない舞台となりました。

舞台上ではそれぞれが稽古の成果を遺憾なく発揮して、今回もまた熱い舞台でした。

詳しい模様は何度かに分けて書かせていただきたいと思います。

いよいよ明日から

お正月三が日も今日で終わりです。

正月休みが早くも終わってしまいます。。

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年末年始の休み期間は当然ながら遠出はせずに、もっぱら部屋の収納スペースを増やす作業に没頭しておりました。

新しい本棚とスチールラックを南千住のホームセンターで購入して、自力で運び、組み立てて、積んでいた本や溜まった書類、番組、謡本などを収納すると、部屋が見違えるほど広くなりました。

型付け類も分類して収納し、見やすくなりました。

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そして明日からいよいよ仕事始めです。

と言っても、「遠隔稽古」での仕事始めになります。このような年はもちろん初めてのことです。

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休みを人とほとんど会わずに静かに過ごして、仕事を始めてもスマホ画面を通じての遠隔稽古、というのはなんだか不思議な感じがします。

しかし、今年はそのような生活に一層慣れていかなければならないと思います。

遠隔稽古を通じての久々の再会、というようなこともきっとあることでしょう。

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新しい年の、新しい生活スタイルでの仕事始め。

片付いてスッキリした部屋で、気持ちも新たにまた稽古に舞台に頑張って参りたいと思います。