イグルーの達人

今日は冷たい北風が強く吹く中、松本稽古に行って参りました。

松本もやはり寒く、気温も前回より大幅に下がりました。

松本駅から見える北アルプスの山々も、半ば雪雲に覆われていました。

きっと山の上は非常に厳しい寒さなのでしょう。

そして稽古場には、久しぶりに「イグルー作り日本一」の方がいらしてくださいました。

前回まではイグルー講習会の講師でお休みだったのです。

稽古が終わって晩御飯をご一緒しながら、イグルーのお話を色々伺ってみました。

「○○岳のリフトを降りて3分くらいの所に、イグルー作りに最適な場所があるのですよ」

「先ず私が3〜40分で見本のイグルーを作って、それから参加者の皆さんに2〜3時間かけてイグルー作りをしてもらいます」

なるほど、やはり初心者だと2〜3時間かかるのですね。

イグルーに向いている雪は3000m近くの高所にあるそうです。それだけで私には未知の世界です。

先程の松本駅から見えた北アルプス山上のような厳しい環境でも、イグルーの中では快適に過ごせるそうです。

イグルーの世界はやはりとても魅力的です。

「この間は、1人用の小さなイグルーを12人で12個作りました。それを全部トンネルで繋げて、自由に行き来できるようにしたのです」

おお、なんだか子供の頃の”秘密基地あそひ”みたいでワクワクします。

イグルー講習会には何人くらいの受講者が来られるのか聞いてみると、

「多くて30人ほどですかね」

では私もいつかそこに参加したいものです。と言うと、

「いや先生ならマンツーマンで教えますよ」

…何か非常に厳しいイグルー講習会になりそうですが、機会があれば2〜3時間かけて作ったイグルーの中で寛いでみたいと思っています。

晩御飯を終えて松本駅前の宿に戻る途中、駅の気温計は氷点下でした。

イグルーの恋しくなる寒さです…

能楽堂稽古で確認する事

来たる3月9日(土)10日(日)、水道橋宝生能楽堂にて

「20周年記念澤風会大会・郁雲会大会」

を開催させていただきます。

9日に能「野宮」、10日に能「敦盛」能「砧」

が演じられ、他にも舞囃子、居囃子、一調、仕舞、素謡、独吟などがたくさん出る予定です。

今日は能「砧」と能「野宮」の稽古を宝生能楽堂でいたしました。

どちらの曲もシテはベテランの会員さんです。

しかしやはり能楽堂での稽古だと普段の江古田稽古場とは色々と勝手が違います。

稽古場と能楽堂で最も異なる要素は、

「橋掛」

だと私は思います。

私が稽古している場所で「橋掛」が真っ直ぐに能楽堂と同じくらいの長さにとれる所は1箇所も無く、普段は四角い舞台をぐるぐる回って橋掛の替わりにしているのです。

なので、今日のような能楽堂稽古では例えば「幕内から橋掛の”三の松”まで行くには何歩くらいかかるか」

と言った江古田では出来ない要素を確認するのが非常に大事です。

他にも、

「宝生能楽堂本舞台の中心線の目印はどこか」

「常座に立った時に前に何が見えるか」

など、型や謡以外にも確認する点は多数あるのです。

今日は限られた時間でとても有効な稽古ができました。

あとは来週の「申合」でまた色々と確認して微調整して、本番に備えたいと思います。

車内ごはんの裏技

昨夜は松本稽古を終えてから最終20時31分発の特急しなのに乗って名古屋まで行って泊まりました。

今朝の大山崎稽古に間に合うためには名古屋まで行っておく必要があったのです。

名古屋に着いてから晩御飯だととても遅くなるので、特急の中で晩御飯を済ませようと思いました。

松本駅近くのバスターミナルの地下に大きなスーパーマーケットがあり、昨夜のような時にはそこで食料を買い込む事にしています。

20時を過ぎてお惣菜はとても安くなっています。

しかし逆上して無差別に買うと大変な事になるので、私なりの一応の基準で素早く買い物をしていきます。

先ずは栄養バランスです。揚げ物は大抵安いのですが、そこは控え目にして野菜物を多めにします。昨日は”エビと青菜の中華炒め”とか。

また地元の物があればひとつは混ぜてみたいです。

昨日だと”鯉の煮付”とか。

そして地味に重要なのが、

「セロテープで蓋が止められている」

という事なのです。

なんの事かと思われるでしょう。

しかし、中央本線のようなカーブが多い路線だと、テーブルに並べたお惣菜類がカーブ毎に左右に振られて、最悪落ちてしまうのです。

なので、蓋からセロテープを慎重に外して輪っかにして、それでお惣菜をテーブルに固定する訳です。

この”技”に気づいてから、特急や新幹線車内の晩御飯が非常に快適になりました。

松本は地酒も非常に美味しいので、昨夜は15分程で素早く吟味したお惣菜を肴に、純米酒の小瓶と共に至福の車内ごはんをいただいたのでした。

稽古お休みの理由は…

今日は松本稽古日でした。

2週間前に大雪で行けなかった分の代替稽古です。

今回は無事に行けて安堵しました。

松本は晴れて気温も上がり、16時前の気温が17℃もありました。

今回は代替稽古日という事もあり、お休みの方もいらしたのですが、そのお休みの理由がなんと、

「本日のお稽古はお休みさせていただきます。
昨日のH3ロケット打ち上げを観に種子島に来ています。
申し訳ありません」

というものでした。

それは羨ましい…

また別の方は、

2/18はイグルー講習会をやる予定で残念ながらまた次回、よろしくお願いいたします」

イグルーとは雪洞の事で、この方はイグルー作りにかけては日本一という凄い方なのです。

私も一度イグルー作りに挑戦したいと思っております。

更に稽古にいらした方のお一人は、

「この度世界一周旅行に行こうと思いたちまして、5月頃までお休みさせてください」

なんだか松本稽古場の皆様は、私のやってみたい事ばかりされているようで、繰り返しですが実に羨ましい限りです。

世界一周旅行の方は、

「お土産話を楽しみになさってください」

確かにとても楽しみです。

私は皆様のお土産話を期待しながら、日々の稽古と舞台を引き続き頑張っていきたいと思います。

京大宝生会若手OBOG達の近況

今日は京大宝生会の若手OBOG達の近況を。

コロナ禍で色々な活動が制限されていた時期にも、若手OBOG達は弛まずに稽古を続けておりました。

その成果として、この数年で4人の30代若手OBが”教授嘱託”の資格を取りました。

現在彼ら4人は「七宝会」など関西宝生流の公演にも地謡として出演しております。

澤風会大会においても、京都大会で能「鶴亀」「小督」「蝉丸」「龍田」のシテとツレ、東京大会で能「夜討曽我」ツレなどを始め、実に多くの熱気溢れる謡や舞を披露してくれました。

そして今年も、3月9日(土)10日(日)に宝生能楽堂にて開催される「20周年記念澤風会東京大会郁雲会大会」において、

舞囃子「八島」を始め能「敦盛」地謡、素謡「昭君」、また仕舞10番ほどを若手OBOGが勤める予定です。

そして今年新たに教授嘱託取得を目指している人もおり、コロナ制限が無くなった今、彼らの活動はますます盛んになっていくと思われます。

実は今日明日とその京大宝生会若手OBOGの稽古合宿をいたします。

先ほど書いた澤風会郁雲会の舞台の他にも、今月末に予定されている「京大宝生会仕舞100番舞う会」に向けての仕舞稽古、また秋の「京都澤風会大会」に向けた舞囃子稽古など、みっちりと稽古したいと思います。

松本での新しい試み

信州松本で私が謡と仕舞の稽古を始めてからもう14年目になります。

途中から太鼓と小鼓の先生も加わり、段々賑やかになりました。

澤風会郁雲会大会で松本から能を出したり、夏の松本城薪能の前座で天守閣前で仕舞や太鼓を披露したり…

そしてこの度、小鼓方の先生より

「今年松本で新しい試みをしませんか?」

という打診がありました。

それに伴いこれまでは”仕舞と謡”、”小鼓”

、”太鼓”

と分かれていた教室を統一するような、新しい団体名を考えようという事になりました。

しかしこれが意外に難しいのです。

「松本」「能楽」「舞」「鼓」

などに関係するキーワードを挙げたり、小鼓方と太鼓方と私の3人を表す単語を探したり…

その「新しい団体名」と「新しい試み」に関しては、また話が進んで行く段階で発表して参りたいと思います。

松本で能楽が深く根付いて発展していくための新プロジェクト、私も今からとても楽しみです。

舞台上での「高い」と「低い」

先日ある稽古場で舞囃子の稽古をしている時の事です。

私「そこは大小前のもっと高めで前を向いてください」

シテの方「?高めと言うのは、前めですか?後ろめですか?」

私「…!すみません、前の方という事です」

なるほど、確かに舞台上で前寄りを「高い」後ろ寄りを「低い」というのは、能楽師の使う専門用語です。

他にも謡の速さで「運ぶ」は早くする事、「締める」は遅くする事、と言った専門用語が沢山あります。

普段私は、これらの専門用語はあまり積極的に使わずにより平易な言葉で稽古するようにしています。

しかし、専門用語でしか表現できない微妙なニュアンスもあるので、これらが廃れてしまうのは良くないと思います。

時間がある時には用語の解説も織り交ぜて稽古する事が大切だと思いました。

大雪で…

私は普段から電車に乗る事が多いので、どうしても電車遅延に巻き込まれる事も多くなってしまいます。

今年に入ってからまだ1ヶ月ほどですが、合計ですでに約180分の電車遅延に巻き込まれて、稽古に影響もありました。

こうなると警戒心も強くなります。

今日は松本稽古の予定でしたが、昨夜に松本澤風会会員さんより、

「月曜日は昼頃から大雪だそうです」

とメールをいただき、それ以降はニュースと天気予報を随時確認するようにしました。

そして今朝10時の時点で、

「今日は松本に向かうと、雪で特急あずさが遅延したり、最悪運休になるぞ」

と判断して、稽古を延期にいたしました。

その後昼頃より東京でも雪が降り始めました。

松本の北の池田町に住む会員さんからは、

「2時間ほどで一気に10㎝雪が積もりました。今日は稽古があっても出て行けるか不安でした」

とメールと写真をいただきました。

夕方には特急あずさが雪の重みによる倒竹で止まっているとのニュースもあり、今日は稽古延期にして本当に良かったです。

急な事故での電車遅延は避けようがありませんが、大雪や台風など事前に予想可能な時は無理せず外出を控えたいと思います。

色々情報をいただいた松本の皆様ありがとうございました。

“千本の花盛り”とは?

今朝は松本の宿からリモートで「嵐山」の謡稽古をいたしました。

「嵐山の桜は、時の天皇が吉野の”千本の桜”を移植したものです」

と説明をしていて、ある別の謡が頭に浮かんで「あれ?」と疑問が湧きました。

その謡は「西行桜クセ」です。

クセの中で、

「千本の桜を植え置き その色を処の名に見する 千本の花盛り」

という一節があるのです。

西行桜を謡っている時には、何となくこの”千本の花盛り”とは京都の”千本通り”の事だと思っておりました。

しかし、「嵐山」に吉野の桜を移植して、尚且つ「千本通り」にも移植していたのでしょうか。

それでは都からちょっと離れた嵐山の桜の存在意義が薄れてしまうのでは…

と思い、ちょっと調べてみたのです。

結果は意外なものでした。

「千本通り」の名前の由来は、「千本の卒塔婆が立っていたから」

という説が有力だというのです。

しかし、別の説でやはり千本の桜が植えられていたからというものもあるそうで、真相ははっきりしないようです。

そもそも”千本の花盛り”とは千本通りの事では無い可能性もあり、そこもちょっと調べたのですが、京都にそれらしい桜の名所は見つかりませんでした。

「千本の桜を植え置いた」というのを地名の由来とした「千本の花盛り」…

いったい何処のことなのか、何か他に情報がありましたら是非お知らせくださいませ。

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第16回澤風会京都大会を開催いたします

皆様 大変ご無沙汰いたしております。

世の中は依然として不安定な状況が続いておりますが、今週末の9月24日に京都大江能楽堂にて、

「第16回澤風会京都大会」

を開催させていただきます。

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2019年までは秋に大江能楽堂で澤風会京都大会を開催するのが常でしたが、コロナ禍以降は中止や延期をせざるを得ず、秋の京都大会開催は3年ぶりになります。

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番組もコロナ以前と比べるとやや少なめですが、舞囃子4番と、最後には能「蝉丸」が出ます。

能「蝉丸」の逆髪民谷渉君と蝉丸村井伊織君は、この度宝生流教授嘱託の資格を取る事になり、今回の能が嘱託披露の舞台になります。

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「蝉丸」は特に謡が逆髪蝉丸ともに難しく、それぞれが独りで謡う部分と、2人の掛け合いの部分で如何に曲の雰囲気を出せるかが大事だと思います。

本番前日まで稽古があるので、最後まで妥協せずに、より良い舞台を目指して頑張って稽古いたします。

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他にも初舞台の人、久々に仕舞を出す人、長刀に挑戦する人など、制約のある中でそれぞれが新たな目標に取り組んで参りました。

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これからはまた毎年秋に澤風会京都大会を開催したいと思っております。

澤風会のリスタートとも言える今回の舞台を、どうかご覧くださいませ。よろしくお願い申し上げます。

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第16回澤風会京都大会

9月24日午前11時半始曲

於京都大江能楽堂