傘がない…!

今日は午前中から江古田稽古でした。

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時間は遡って昨日の夜。

大槻能楽堂にて大阪養成会が無事に終了したのが20時40分頃でした。

そして東京行きの最終新幹線が新大阪を21時23分発。

私は20時50分には紋付袴のままで呼んでおいたタクシーに乗り込み、新大阪を目指しました。

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幸いに道は流れており、21時10分に新大阪駅に到着。

何とか最終新幹線に乗ることに成功しました。

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新幹線が静岡県にさしかかる頃から、窓を叩く雨が強くなってきました。

「これは傘が役に立たない程の降りだな…」

と思ったところで、傘をタクシーに忘れたことに気がつきました。。

この雨の中、傘無しでしかも今日は紋付袴の格好です。普通に帰ったら酷いことになってしまいます。

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ウームと考えて、「そう言えば、日暮里駅のタクシー乗り場は日暮里舎人ライナーの高架下にあって、雨が防げたはずだ!」と思い出しました。

さっき大阪でもタクシーに乗ったばかりで、非常に心苦しくはありましたが、紋付袴を無駄にするよりはマシです。

山手線で日暮里に向かい、屋根のあるタクシー乗り場から濡れずにタクシーに乗り込み、自宅マンションの前まで着けてもらって何とか無事に帰宅したのが午前0時半でした。

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色々ありましたが、昨日自宅まで帰れたおかげで今日は万全の状態で江古田稽古を1日頑張れました。

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実は明日は午前中から京都で紫明荘組の稽古なのです。

折角苦労して帰って来ましたが、明日はまた頑張って早起きして関西に向かいたいと思います。

緊張感MAX

今日は大阪の香里能楽堂にて、第13回澤風会京都大会の申合がありました。

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今回は舞囃子「忠度」、「玉葛」、「草紙洗」、そして能「小袖曽我」が出るので、シテと地謡を合わせて10数名の方々が参加されました。

初めての舞囃子の方、初めて能装束を着る方なども多くいらして、皆さん緊張感MAXという感じでした。

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私のこれまでの稽古の方針としては、申合で色々と注意点をチェックして、申合から本番までの間にそれらを修正、そして本番では基本的に何も手出し口出しはしないことにしております。

つまり、私自身としても実は申合の時が一番緊張して舞台を見ているのです。

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今日もまた五感をフルに使って、チェックポイントを色々と探しておりました。

その甲斐あって、実りの多い有意義な申合になったと思います。

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毎回のことですが、ここから本番までが最も集中力が高まる期間になります。

今日申合を頑張った皆様は、どうか本番までもうひと頑張りしていただいて、最高の舞台を作っていただきたいと思っております。

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もちろん私も、ここから更に気合いを入れて稽古させていただきます。

会員の皆様、どうか本番までよろしくお願いいたします。

一杯のワインの物語

今日は松本稽古でした。

しかし、偶々お仕事や体調不良やご家族の付き添いなどが重なり、稽古にいらしたのは4人で、早めに終わってしまいました。

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稽古場を出て松本駅に向かう帰り道に、会員さんのイタリア料理店”クチーナにしむら”があります。

連休中の今日はもちろん営業されていました。

忙しそうだなと思って通り過ぎようとしたら、これも偶々お客様が入っていかれる所で、

「いらっしゃいませ!あ、先生も、いらっしゃいませ!!」

と私を見つけて声をかけていただきました。

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そこでついつい、「いえ、実は18時半の電車に乗るのですが…では、一杯だけいただきます。」

と席についてしまいました。

時間はまだ30分ほどあったのです。

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お任せで出していただいた一杯の赤ワイン。

ワインの知識の無い私は、「美味しい!」

という感想しか述べられないのです。。

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しかしそこで会員さんから、このワインに纏わる物語を聞かせていただきました。

このワインを作った方がつい最近若くして亡くなられたこと。

でもお嬢さんが跡を継いでいるということ。

会員さん御夫婦は、この方のワインに出会ってからお店のワインの方向性が定まったのだということ…

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そのお話を伺ってから飲むと、ワインの味が違って感じられました。

色々な歴史や人生が関わり合って、私の前にこの一杯のワインがあるのです。

何だかこのワインを飲んだら無くなってしまうのが勿体ないような気持ちになりました。

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その旨を会員さんに伝えたところ、

「それがワインですから。」

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成る程。

さっき素通りしていたら全く知らなかった筈のワインと、そこに内在する物語を、会員さんのおかげで体感することが出来ました。

あの一杯のワインとは一期一会ですが、”クチーナにしむら”さんにお邪魔すれば、また違うワインの物語と出会えるのでしょう。

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何か能楽にも通じる大切なことを教わった気がして、感謝してお店を出ました。

そして今、特急の窓からは中秋の名月が見えています。

今日も記憶に残る松本稽古になりました。

文化祭の出し物は…?

今日は8月末以来久しぶりの江古田稽古でした。

「9月も下旬になれば涼しくなっている筈なので、稽古日を後半に固めましょう」という目論みで今日と来週にしたのですが、思惑通りすっかり秋めいてきて、帰りはむしろ肌寒いくらいでした。

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今日も終盤に高校生が何人かやってきました。

そのうちの1人が「明後日から文化祭なのです!」

というので、何の気なしに「へえ、クラスで何をやるの?」

と聞いたところ、

「カジノです!」

と返って来てひっくり返りそうになりました。

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「カジノ!?どんなギャンブルをするの?」

と聞くと、ルーレットやトランプだということでした。

ルーレットは市販のものですが、台は生徒達の手作りだそうです。そしてゲームに勝つと、生徒が持ち寄った景品がもらえるとか。

成る程、そのくらいならば、学校の許可も出そうですね。

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高校の文化祭の出し物というのは、学校や時代によって千差万別なのです。

ちなみに私のいた頃の都立富士高校では「演劇」が8割を占めていました。

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先日の京大宝生会では、吹田東高校宝生会のOGの部員が「明日は高校の文化祭の仕舞の発表を手伝ってきます!」と言っていました。文化祭で仕舞を出す高校生もいるのです。

また別の宝生会部員は、「高校の文化祭ではお化け屋敷のお化けをやって、本気で怖がられました!」お化け屋敷は王道ですかね。

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そして今日最後にやって来た高校2年生に、若干の期待を込めて「文化祭では何を出すの?」と質問してみました。やはり何かとんでもない出し物かもしれません。すると…

「綿菓子屋さんです!」

…意外と普通なのでした。。

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文化祭で面白い出し物をした経験のある方、よろしければコメント欄で教えてくださいませ。

“夏物”から”秋冬物”へ

今日は田町稽古でした。

田町は2回ほどお休みを挟んだので、なんと会員の皆さんにお会いするのは8月4日の七葉会以来になります。

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何となく”懐かしい”という感覚もありつつ田町の港勤労福祉会館に向かいました。

和室の玄関に入ると、部屋の中から皆さんの楽しそうな話し声が聞こえてきます。

私「こんばんは!若干お久しぶりです。」

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皆さん変わらずお元気な姿でお揃いで、大変嬉しく思いました。

「先生!机の上のお菓子は、Kさんのマチュピチュ土産ですよ!」

なんと!それは羨ましい。

Kさんは11日間のペルー旅行で、マチュピチュの他にもアマゾン川でクルーズしたり、ピラニアを釣ったりしてきたそうです。

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それぞれの夏の話を少しずつ伺って、稽古に入りました。

謡の曲は「氷室」。

しかしこの曲は夏の前から稽古を始めており、その頃は「暑いから曲だけでも涼しげなものを」という意図で選曲した”夏物”の曲なのでした。

会員さん「早く氷室を終えないと、むしろ謡うと寒くなってしまいますね。」

確かにその通りです。

田町は夏に休んだ分、10月から11月には毎週のように稽古が続きます。

頑張って「氷室」を稽古し終えて、次の”秋冬物”の曲に移行したいと思います。

四つ葉タクシー!

今日は午前中から夕方までノンストップで紫明荘組稽古、そこから間髪いれずに京大に移動して、21時過ぎまでみっちり稽古しました。

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その時間まで稽古すると、京都駅まではバス移動だと最終の新幹線に間に合いません。

贅沢だとは思いながら、京大BOX棟の前からタクシーに乗ることになります。

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今日の京都は雨模様だったのでタクシーの需要が大きいのか、なかなか空車が通りません。。

一緒に待ってくれている現役に、「雨だからもういいよ」と声をかけて、1人で待とうと思っていると、ようやく遠くに空車のタクシーが見えました。

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すかさず手を挙げて止まってもらうと、クローバーマークの”ヤサカタクシー”でした。

そして私は瞬時に気づきました。

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「おお!四つ葉タクシーだ!!」

ヤサカの四つ葉タクシー!

普通は三つ葉のクローバーマークが”四つ葉のクローバー”になっている車です。

半ば都市伝説的に噂を聞いていましたが、京都に来てから数十年、一度たりとも姿を見かけたこともありませんでした。

それが遂に私の目の前に…!

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大喜びで乗り込んで、「四つ葉ですね!初めて見ました!!」と興奮気味に話しかけると、「夜道で、乗車される前に気がつく方は珍しいですね。」と笑いながら運転手さん。

そして、「これは記念にどうぞ」と何やら差し出してくれました。

見ると、乗車記念カードでした。

なんと、1300台のうち4台しか無いと書いてあります。

ましてや他の会社のタクシーも入れると、出会えたのは全く奇跡的なことです。

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せっかくなので、運転手さんに色々聞いてみました。

私「四つ葉以外にも、レアなタクシーがあった気がするのですが…」

運転手さん「はい、上賀茂神社さんとのコラボ企画で”ふたばタクシー”があります。それは2台だけです。あとは、バレンタイン期間限定で女性ドライバーの車がピンク色のクローバーになります!」

おお、ヤサカタクシー色々頑張っているのですね!

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私「四つ葉タクシーのドライバーはどうやって選ばれるのですか?」

運転手さん「様々な規定に照らして、会社から任命されるのです。」

その時は、後ろ姿なのに運転手さんがちょっとだけ胸を張ったような気がしました。

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話しながら気がつくと、京都駅に向かう道順がいつもと少し違うことに気づきました。

車は東大路をひたすら南下して、やがて七条も越えた先の細い路地を右折しました。

私「珍しい道を行くのですね…」

すると、

運転手さん「この道をずっと行くと、”京都タワー”が真正面に見えて来るのです。お客様のようにこれから京都を発って行かれる方に、思い出でも無いのですが最後に京都タワーを見ていただきたくて、この道を通るようにしております。」

なんと、たしかに道の向こうには、京都タワーが”ドーン”と屹立していました。

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今日も朝から晩までノンストップ稽古で少々ハードな1日だったのですが、最後に”四つ葉タクシー”に出会えて非常にハッピーな気分になりました。

そして、「乗る人皆が幸せな気持ちになる車」を運転出来るあの運転手さんが、ちょっとだけ羨ましいと思ったのでした。

時間が足りない!

今日は紫明荘組の稽古でした。

京阪電車光善寺駅の近くにある、楽寿荘という広い施設を何部屋か借りてのちょっと規模の大きな稽古です。

10月7日に開催の澤風会京都大会に向けての特訓、というのが一番の目的でした。

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午前11時から午後6時まで、舞の部屋と謡の部屋を行き来しながらノンストップで稽古したのですが、結局時間が足りなくなってしまいました。。

能小袖曽我、舞囃子草紙洗、玉葛、忠度に加えて仕舞がたくさんと、素謡や、松本澤風会での居囃子や独調まで稽古したら、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

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仕方なく、最後の2人の京大宝生OBOGは京都駅に移動して、眺望テラスの一角で仕舞の稽古という事になってしまいました。

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先ほど何とか終えて、東京に向かう新幹線に乗った途端に意識が途切れて爆睡してしまったようです。

そして、なんと夢の中でブログのことを考えていて、「今日はこのネタにしよう!」と決めて、無事に書き終えて満足したところでハッと目が覚めました。

残念なことに、書いたブログの内容は全く覚えておりませんでした。。

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新幹線は間もなく品川にさしかかるところです。

今日はこの辺で。

昨日の台風の被害

今日は予定していた稽古がキャンセルになり、ぽっかりと空いた1日になりました。

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なので、先延ばしにしてしまっていた京都澤風会の番組を作ろうと、”ゆいの森あらかわ”に向かいました。(家では作業出来ない人間なのです…)

外は台風一過の晴天でしたが、風はまだ時折強く吹いていて、テラスに出ると本を読むのにちょっと苦労するほどでした。(番組作りは…?)

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風に吹かれながら、今回の台風21号の恐ろしさを改めて思い返しました。

昨日の午前中のこと。

京大宝生会と私は、仁和寺駅から嵐電に乗って北野白梅町へ移動しました。

北野天満宮に素早く参詣後、まだ動いていた市バス203に乗り、烏丸今出川で私は京大宝生会と別れて下車。

それから速やかに地下鉄烏丸線で京都駅へ向かいました。

新幹線ホームに上がると、ちょうど11時5分発の”のぞみ”が定刻にやって来たところでした。

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乗り込んでホッとしたのも束の間、車内アナウンスが。

「米原地区強風の為、ただ今より運転を見合わせます」

なんと…これは暫く待って動かなければ、降りて京都市内で台風の通過を待つか…、と覚悟しました。

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幸いに間もなく「強風がおさまったので、発車いたします。」とアナウンスが流れて、のぞみは京都駅を出発しました。

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名古屋まではノンストップで到着し、風雨も少し落ち着いたように見えました。

しかし静岡県に入った辺りから再び嵐になり、窓外が雨の飛沫で全く見えない状態になりました。かつてこれ程の状態は見た覚えがありません。

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いつ止まるか、徐行運転になるか…とハラハラしながら、見えない車窓を見ていたのですが、不思議に新幹線は止まることなく新横浜に無事に到着しました。

そして更に品川駅に無事滑り込んだところで、私は「やれやれ、ここまで来れば安心」と、ホッとため息をつきました。

ところがまたその瞬間にアナウンスが。

「東海道新幹線はただ今より、上下線とも運転を見合わせます。再開には相当な時間がかかる見込みです。」

なんと…

しかし品川ならば在来線が通っています。他の乗客と共に下車して、山手線に乗り換えて無事に帰宅出来たのでした。

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そして帰宅後のニュースや様々な映像で、京阪神の惨状を知りました。

我々がつい午前中に参詣した北野天満宮や仁和寺が、倒木などで大変な被害を受けています。

また嵐山渡月橋や、下鴨神社も。

更にはつい先ほど新幹線に乗ったばかりの京都駅の天井が崩落して、怪我人が何人も出るという信じられないニュースも見ました。

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大阪や神戸は、高潮や猛烈な風で更に大きな打撃を受けていました。

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京都の知人達はとりあえず大丈夫そうですが、大阪神戸の方々が本当に心配です。

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今回の台風で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、また未だ続く停電や交通障害などの1日も早い復旧を併せてお祈りいたします。

松本再始動

今日は先月の松本城薪能以来の久しぶりの松本稽古でした。

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あの松本城薪能前座で見事な仕舞を披露した小中学生の子供達が、3人とも日に焼けた顔を見せてくれて、相変わらず元気に稽古をしました。

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もちろん大人の会員さん達もいらして稽古したのですが、今回は「新しい短めの仕舞を始める人」と「薪能前座で一度出した仕舞を引き続き稽古する人」、更に「前に稽古していた仕舞を再び稽古する人」に分かれました。

これは、次の舞台までの期間が少なめだからなのです。

10月7日の京都澤風会まで約1ヶ月、10月21日の松本澤風会まででも2ヶ月弱しか無い稽古期間です。

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一度出した仕舞を続けて稽古するのは、モチベーションを保つという点では難しいものがあります。

しかし反面、前回の舞台で上手くいかなかった箇所を再び稽古する事で、格段に改善されるという利点もあるのです。

今日は何人もそのように型や謡が劇的に良くなった人がいました。

また、より細かな謡と型の合わせどころなども指摘できたので、同じ仕舞でも2回目はグレードアップして見えるはずです。

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次の京都澤風会と松本澤風会の舞台では、新しい仕舞に挑戦される方はもちろん楽しみですが、2回目の人達のグレードアップした仕舞も大変楽しみになってきました。

怒涛の8月を終えて

今日から9月になりました。

思えば8月は、水道橋宝生能楽堂にて能「鵺」を稽古しながら迎えたのでした。

そして正に怒涛のように過ぎていきました。

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9月は一応静かに布団の中で迎えたのですが、果たしてどんな月になるのでしょうか…?

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9月1日といえば、小中高生の頃は始業式の日でした。

ひと月半ぶりに教室で同級生達と再会して、夏休みの話などをしたものです。

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高校の時には陸上部だったので、夏休みも毎日練習でした。

始業式で会う運動部の連中は、私も含めてひと夏の練習で黒く日に焼けて、筋肉がついて一回り大きく逞しくなったように見えました。

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時は流れて、私の今年の9月1日は通常の亀岡稽古でした。もう始業式は無いのです。

そしてこの夏は、陸上部のようなトレーニングも勿論しませんでした。

しかし今年の8月を思い返してみると、心に強烈に残る出来事がいくつもありました。

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ひと月で4回通った岡山吉備津神社の子供能楽教室。

薪能で初めてシテを勤めた松本城薪能では、雨雲が逸れてくれるように天に祈りながら能「鵺」を舞いました。

東広島のこども園での能楽教室では、1〜4歳児40人を相手にするという得難い経験をしました。

初めて銀座の観世能楽堂にて舞囃子を舞った佳名会。

そして8月最終日の昨日には盛岡で、伝統文化活動の担い手が集まってのセミナーでの発表という、これも全く初めての経験をいたしました。

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他にも七葉会の舞台や、琥珀の会立ち上げの稽古や、京大宝生会合宿などなどがあり、それら全てがまた自分の肥やしになったと感じます。

日焼けもしていないし、筋肉も増えておりませんが、夏の前の自分よりも少しだけ強くなった手応えがあります。

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宝生流の在京能楽師にとっては、始業式に近いのが9月9日の月並能だと思います。

8月は定例会が無いので、宝生能楽堂に約ひと月半ぶりに楽師達が集まるのです。

皆さんどんな経験を積んで、どんな顔でまた水道橋の楽屋に戻ってくるのでしょうか。とても楽しみです。

私もこの夏の経験を活かして、また秋の能楽シーズンに全力で向かっていこうと思っております。