GNHとは?

年末から高野秀行著「未来国家ブータン」という本を読んでおりました。

早稲田大学探検部出身の高野さんの本は、いつも辺境地が舞台の破天荒な探検行の話で、大変面白いのです。

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今回も「雪男」の話や、秘境ブータンの中でも最奥に位置する村の珍しい暮らしの話など、旅行に行った気分で楽しく読ませていただきました。

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その本の中で特に興味深かったのが、「国民総幸福量」という言葉です。

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国民総生産量= GNPではなく、ブータンでは国民総幸福量= GNHの増加が最大の政策目標らしいのです。

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「国民一人一人がより幸福になれば、社会全体もより幸せになれる」という夢のような政策を、政府が真剣に考えて施行しているのがブータンという国だそうなのです。

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持続的な幸福の為に、自然や文化も大事に保護保全しているようです。

またなんと国王が自ら国内を行脚して、国民の暮らしを見ながら世直しをしているという、まるで「水戸黄門」か能「鉢木」か、という話も書いてありました。

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高野さんは、「日本がそうなったかもしれない未来を目指している国」というような表現をしていました。

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確かに現代日本がこれからブータンのような政策をとることはまず出来ないと思います。

しかし、少なくとも私自身の生き方の中では、周りの人たちを含めた「幸福量」が増えること、またその幸福が刹那的なものでなく長く持続することを、ひとつの目標にしてみたいと思いました。

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私の文章ではなかなか伝わりにくいのですが、興味を持たれた方は集英社文庫「未来国家ブータン」を是非お読みくださいませ。

奇妙な孤島の物語

最近読んだ本の中で、不思議な話がありました。

1979年2月にハワイ沖で、乗組員5名の小さなボートが嵐のために行方不明になりました。

10年近く後、その「サラ・ジョー号」の残骸が3600キロも離れたマーシャル諸島の無人の環礁で発見され、しかも残骸の横には簡易なお墓があって、乗組員の1人スコット・モーマンが埋葬されていたというのです。他の4人の行方は杳として知れませんでした。

とても想像力を掻き立てられる話です。

「奇妙な孤島の物語」という題名の本なのですが、驚くのはこの本の作者は一度も行ったことのない50の孤島の話を書いていて、それぞれが上の様な不思議な余韻を残すエピソードなのです。

この本の持つ雰囲気が能楽に通じると私は思いました。

・自らが体験したのでは無い話を、主に伝聞を基に物語にしている。

・全てを説明せずに、読者に想像力を働かせる余地を多分に残している。

・歴史に埋もれて忘れ去られた人物や、名も無い市井の人々に光を当てて、そこにも壮大な物語があることを教えてくれる。

普段は文庫本しか読まないわたしですが、この大判ハードカバーの本は毎日少しずつ大事に読んでいます。

ニュージーランド沖の無人島で、ペンギンの大群に囲まれて行方不明になった兵士は、その後どうなったのか。

10数人の男だけが暮らす、インド洋に浮かぶ絶海の孤島の観測所で、それでも彼等が感じている自由とは一体どんなものなのか。

そしてサラ・ジョー号の4000キロ近くにわたる漂流の旅路と、5人の乗組員の運命。

今夜も能を観るように「奇妙な孤島の物語」を少しだけ読んで、一生行かないであろう海の彼方の孤島のドラマを想像しながら、休もうと思います。