稽古の結晶の輝き

明日、京大能楽部自演会「能と狂言の会」が京都観世会館にて開催されます。

京大宝生会の能「竹生島」もいよいよ本番を迎えます。

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これまで何十年もの間、繰り返して現役達に言い続けてきたことがあります。

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「ちゃんと稽古を積んできた舞台は、必ず見所にその努力と想いが伝わる」ということです。

そういう舞台では、もしも何ヶ所かの失敗があろうとも、その稽古の結晶の輝きには何の影響も無いのです。

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そして今回も、我々京大宝生会は能「竹生島」に向けて、個々人の持つ最大限の力をひとつに合わせて、其々の想いを持って懸命に稽古して参りました。

その結晶は既に眩しい輝きを放っています。

明日の舞台でその輝きは間違いなくお客様に伝わることでしょう。

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なので現役達は明日の本番ではどうかあまり気負わずに、緊張し過ぎずに、稽古と同じように冷静な心持ちで臨んでほしいです

そして一期一会の「竹生島」の舞台を五感で存分に味わって楽しんでほしいのです。

このメンバーでひとつの舞台を作るのはこれで最後、という気持ちよりも、このメンバーで「竹生島」を作れた喜びを舞台上で感じてくれたらと思います。

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京大宝生会が120%の本気を出して作り上げた稽古の結晶「竹生島」を、皆様どうか御覧くださいませ。

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京都大学能楽部自演会「能と狂言の会」

京都観世会館にて明日11月26日午前10時始曲。

能「竹生島」午後12時35分開始予定です。

どうかよろしくお願いいたします。

ジャケットとマフラーの出番は…

一昨日の京大「竹生島」申合の時のこと。

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申合の舞台上では、色々バタバタと動いたり考えたりしてとても暑いと感じていました。

そして終わって着替えて外に出ると、夕方の冷んやりした空気に包まれて大変心地良い気分になりました。

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京都駅行きの殺人的に混雑した市バスでまた暑い思いをして、ようやく帰りの新幹線に乗ってホッとした時。

なにやら身が軽すぎることに気がついたのです。。

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私はその時薄手の長袖シャツ1枚で、行きに身に付けていた筈のジャケットもマフラーも京都観世会館に置いてきてしまっていたのです。

それでも全く寒さを感じなかったのは、申合で心身ともにフル回転していたからだと思われます。

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今日は改めて観世会館にそのジャケットとマフラーを受け取りに伺いました。

事務所の方に「帰りお寒くなかったですか?」

と聞かれて、

「いや〜、むしろ暑いくらいだったのです…」

と答えて呆れられてしまいました。

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しかも、今日は天気が良かったので観世会館からブラブラ歩き始めたところ、そのまま京都駅まで歩いてしまい結局また暑くなってしまったのです。

そして受け取ったジャケットとマフラーは鞄に押し込まれたまま、身に付けることはありませんでした。。

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これから夜遅くまで芦屋稽古なので、終わった後の帰り道でようやくジャケットとマフラーの出番となりそうです。

能「竹生島」申合が終わりました

今日は京都大学能楽部自演会「能と狂言の会」の申合がありました。

京大宝生会の能「竹生島」がいよいよ申合を迎えたのです。

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本番用の大ぶりな船と宮の作り物。

初めて身に付ける能装束。

宝生流の謡本と微妙に異なるワキの言葉。

御囃子の手組と地謡との何ヶ所かのズレ。

思ったよりも長い橋掛り。

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などなど、本番前に修正すべき点の最終チェックが色々と出来て、得るものの多い申合になりました。

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1週間後の11月26日火曜日。

京都観世会館にて、京都大学能楽部自演会「能と狂言の会」の本番が開催されます。

宝生流能「竹生島」は12時半頃からの予定です。

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京大宝生会の竹生島へと向かう旅は、遂に終盤に差し掛かりました。

私の稽古は本番までにあと1回。

今日の申合を踏まえて、本番が少しでも良い舞台になるようにギリギリまで改善したいと思います。

新しい月の生まれる頃に

今日は朝からずっと電車で移動しています。

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日が落ちて暗くなってくるとともに、東の低い山脈から濃い黄色をした巨大な月が上って来ました。

今年見た中で一番大きく見える満月な気がします。

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ちょうど1週間前には、亀岡で冷え冷えとした半月を眺めました。

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そしてあと1週間後、この満月が半分になる頃には京大宝生会の能「竹生島」の申合がある予定です。

更にその1週間後、この月が消えてまた新しい月が生まれる頃に「竹生島」は本番の舞台を迎えるのです。

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私が「竹生島」の稽古を出来るのは、おそらくあと3回ほどでしょう。

全身全霊をかけて残りの稽古をして、なんとかこの能を成功させたい。

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右手の車窓の空にかかる巨大な満月を、今祈るような気持ちで眺めています。

京阪神巽会など

今日は朝から香里能楽堂にて京阪神巽会でした。

昨日は朝に水道橋で月並能申合、その後香里能楽堂に移動して巽会申合、更にその後に京大宝生会の能竹生島の稽古を満次郎師にしていただきました。

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書くべきことは山積しており、大変心苦しいのですが本日はこれにて失礼いたします。

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あまねく会・東京巽会に出演して参りました

今日は朝から水道橋宝生能楽堂にて「あまねく会・東京巽会大会」に出演して参りました。

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毎年京大宝生OB会からも多くの舞囃子や仕舞、独吟などが出る舞台です。

今日特に感銘を受けたのは、舞囃子「春日龍神」でした。

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この舞囃子のシテは、第1回京宝連にも参加され、卒業してから60年経つという大・大先輩でした。

そして春日龍神には、「三回廻り返し」の後に「抜き足」など、とても激しい型が連続しています。

更にシテ謡や足拍子も非常に複雑です。

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その難曲を、大先輩はひとつひとつの型や謡を実に正確に、そして大きく軽快な動きで最後まで舞われたのです。

地謡座で謡っていて、思わず拍手をしたくなってしまいました。

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今日はもうひとつ嬉しいことがありました。

去年まで亀岡稽古場で稽古をなさっていて、その後東京に引っ越された方が、東京で再び稽古を始められて今日久しぶりに舞台でお会い出来たのです。

しかもお仲間を増やして3人での参加でした。

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色々な方の元気な舞台を見て、私も頑張ろうと思いました。

あまねく会・東京巽会関係者の皆様、どうもありがとうございました。

鏡板の前で

今日は夕方から京大宝生会稽古でした。

そして今日の稽古は私にとってある特別な意味を持っておりました。

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渡辺三郎先生のお嬢様とお孫さん一家が、京大能楽部BOXの「鏡板」を見るために、遥々東京からいらっしゃる事になっていたのです。

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京大能楽部BOXの鏡板は、元々は東京練馬の渡辺三郎先生の御自宅舞台にあったものでした。

それが4年前に京大に移設された経緯は、拙ブログ「二枚の鏡板の話」に詳しく書かせていただきました。

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私は小学生の時に初めてこの鏡板の前で渡辺先生の稽古を受けました。

その頃にはお嬢様とお孫さんもひとつ屋根の下で暮らしておられて、お孫さんと私は順番に稽古を受けた後に一緒に遊んだりもしました。

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それから幾星霜を経て、練馬舞台から遠く離れた京大能楽部BOXであの鏡板を前に再会することになるとは、これもまた実に不思議な運命を感じます。

鏡板の前で記念撮影をして、京大宝生会の稽古を少しご覧いただきました。

渡辺先生の写真をお持ち下さったので、渡辺先生にも稽古をご覧いただきました。

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舞っている現役はそのプレッシャーを感じたようで、まるで本番のように緊張していたのがまた良かったです。

先生もきっと「最近の若者達も頑張っているじゃないか」と満足されたことと思います。

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渡辺先生のご家族に鏡板の今をご覧いただくという長年の願いが叶って、心から嬉しく思いました。

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京大稽古を終えて私は東京に蜻蛉返りです。

実は今週末にアメリカ人尺八奏者との舞台が控えており、今週は連日その稽古もあるのです。

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今日は他にも見学者が訪れたり、書くことが色々多いのですが、それらはまた明日にさせていただきたいと思います。

離れては近づいて

昨日は昼間に水道橋で申合があり、夕方から江古田稽古でした。

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夜になって最後に江古田稽古場に来たのは、北陸在住の京大宝生会若手OGさんでした。

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今週は出張で東京に来て、霞ヶ関のある官庁でずっと仕事をしていたそうです。

夜まで働いて疲れているのに稽古に来てくれるとは、とても有り難いことです。

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そしてOGさんからちょっと嬉しい話を聞きました。

彼女が仕事をしていた官庁で、偶然にも京大宝生会同期の若手OBが働いていて、昨日は霞ヶ関でランチを共にしたそうなのです。

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京大を卒業する段階では全く異なる職種を選び、住む場所も互いに遠く離れた彼らです。

それが巡り巡って近い分野の仕事をするようになり、ついに同じ仕事場で再会を果たした訳です。

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そして若手OBさんもまた澤風会で稽古をしたいと言ってくれたそうです。

遠く離れてはまた近づいて、人の縁とは不思議なものだと昨日改めて実感しました。

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今日は水道橋で昼間に日曜開催の別会の申合、そして夕方からは明日土曜開催の藪克徳くんの会の申合が続いてありました。

“能繁期”らしいスケジュールで、謡や諸々を覚えるのに些か苦労しております。。

今日はこれにて失礼いたします。

目をつぶって…

昨日は夕方から京大宝生会の稽古に行きました。

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11月26日の自演会「能と狂言の会」に向けて、皆稽古に一層熱が入っていました。

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能「竹生島」は、シテ、前ツレ、後ツレがそれぞれ初めて面をかけての稽古になりました。

面をかけると無意識のうちに手や肩に力が入ったり、距離感が掴めずにいつもの場所に行けなかったりします。

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シテ、ツレともにほぼ想定内の動きをしてくれたので、何点か注意をしました。

おそらく次回の稽古までに修正してくれることでしょう。

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稽古が終わると23時近くになっており、そこから皆で晩御飯を食べに行きました。

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その席でも能面をかけた時の話を色々しました。

話の流れの中で「もし目をつぶって全部舞うことが出来たら、面をかけた状態でも楽々舞えるだろうね」

と半ば冗談のつもりで口にしました。

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すると…

シテ「はい、この間目をつぶって稽古してみました。回り返しで変な方向を向いてしまって…」

後ツレ「私もやってみたら、回り返しで同じことになりました」

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更に一昨年の能「巻絹」のシテを舞ったOGさんもいたので、「もしかして君も…?」と聞くと、

OGさん「ええ、そりゃまあ…やりましたよ」

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なんと”目をつぶっての稽古”は京大宝生会では当たり前のようになされていたのですね。。

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試しに「じゃあ一歩進んで、目をつぶって生活してみたら、より能面の影響が少なくなるかもしれないよ」

と言おうかと一瞬思いましたが、彼らは本気でやりそうで、怪我をしてもらっては困るのでやめておきました。

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しかし考えてみれば彼らがこのブログを読む可能性もあるのでした。

京大宝生会の人は、危ないのでどうか目をつぶって生活しないようにしてくださいね。

自治医科大学での能楽教室

今日は栃木県の「自治医科大学」にて能楽教室を開催いたしました。

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金春流を習っている哲学の先生、更にその師匠である金春流シテ方の先生、大鼓打ちさん、元京大宝生会で現自治医科大学能楽部部長の青年、そして私という異色の組み合わせでした。

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しかしその内容はバラエティに富んでおり、宝生流仕舞「清経クセ」「殺生石」、金春流仕舞「半蔀クセ」、小鼓独調「船弁慶クセ」、大鼓独調「駒之段」、金春流舞囃子「松虫」に加えて、楽器の説明と型の体験をいたしました。

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参加者はそれほど多くなかったのですが、全員が能楽教室終了後も残って大鼓の楽器体験などをしてくれました。

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そして更にそのうちの何人かは、仕舞と謡の稽古までしてくれたのです。

来月の稽古にも来てくれそうな手ごたえを感じました。

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自治医科大学における初めての能楽教室は、幸いに大成功と言って良い結果でした。

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自治医科大学能楽部としては、次の大きなイベントは「関東宝生流学生能楽連盟自演会」への初参加となります。

その舞台に向けての稽古もしっかりと出来て、今日は密度の濃い1日になりました。

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自治医科大学の皆様どうもありがとうございました。