足の裏が見えるシーン

先日の五雲会での能「舎利」の数日前に、「舎利では見所に足の裏が見える可能性が高いので、新しい足袋を履きます」

という内容のブログを書きました。

今日はその後日談を。

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能「舎利」の冒頭、舎利殿を表す台が舞台の正先に出されて、更にその上に”三宝”に載せられた舎利珠が据え置かれます。

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そして前シテは中入の直前に舎利珠を取り上げた後、この”三宝”を睨みつけ、高く上げた右足で「グシャリ!」と三宝を踏み潰してから飛び去っていくのです。

舎利殿の天井を蹴破る様子をこの型で表現しているそうですが、初めて見るとちょっと驚くシーンです。

しかし能面を掛けているために、実は踏み潰す瞬間には”三宝”はシテからは見えていないので、綺麗に潰すのがとても難しくもあるのです。

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この”三宝”は、形は神社などでよく見る三宝そのものなのですが、全体が黒い布で覆われています。

この特殊な”三宝”は舎利が出る度に内弟子が手作りします。

私も何度も作ったのですが、真上から踏むと簡単に綺麗に潰れて、尚且つシテの足に刺さったり絡まったりしないように、素材や構造に工夫が凝らされているのです。

中々に手間のかかる作り物です。

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今回も楽屋で見ると、大変丁寧に作られた”三宝”でした。

これは心して踏み潰さないと。

そしていよいよ能「舎利」が始まり、話が進んで前シテが舞台の真ん中で「下に居」をするところまで来ました。

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「下に居」をすると、ちょうど正面に”舎利珠”が見えます。

そしてその先、見所の最前列のど真ん中になんと京大宝生会の若手OB2人が正に「かぶりつく」勢いで観ているのが見えたのです。

普段は脇正面に座っている2人です。これは私のブログを読んで、「足の裏が見えるシーン」を狙って正面最前列に座っているに違いありません。

これは益々失敗出来なくなりました。。

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いよいよ中入前。

私は台に飛び乗り、三宝の右横で「くるくる」と一回転してから素早くしゃがみ込んで”舎利珠”を取り上げました。

そして一度立ち上がり、三宝に向けて顔を切ってから右足を振り上げます。

するとそれを見上げる京大の2人が目を丸くしているのが一瞬だけ見えました。

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「グシャッ!」という手応え(足応え?)があった後、私はすぐに三宝から足を離し、飛び返って台から降りて幕へと走り込みました。

「果たして三宝は上手く潰れただろうか…?」

と気になって、中入してすぐに楽屋で見ていた楽師達に聞いてみると、

「ばっちり潰れてましたよ!」

との答えが返ってきて安心しました。

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そして後日、あの最前列で観てくれた2人に「どうだった?」

と聞いてみたところ、

「はい、足の裏が見えました!」

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…というわけで、”三宝”を丁寧に作ってくれた内弟子さんにも、ブログを読んで観てくれた人達にも面目が立ってホッとしたのでした。

76往復目

このところ連日「今年最後の…」という話題ですが、今日はまた「2018年最後の新幹線」に乗ったというお話です。

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試みに手帳を見て数えてみたのですが、今年は東海道新幹線(京都、大阪)と東北新幹線(青森、仙台)を合わせて76往復152本の新幹線に乗ったようです。

今は76往復目の帰りの新幹線に乗っている訳です。

改めて、私の日々の稽古や舞台は”新幹線”あってこそ可能なのだと感謝しております。

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思えば去年2017年は鉄道関係のトラブルに巻き込まれることが多かった気がします。

青森駅が全面停電で東京に戻れないとか、岡山駅でペットの犬がホームから線路に逃げて遅延とか…。

今年2018年は不思議にそんなトラブルが少ない年でした。

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今もクリスマスイブだからか新幹線はとても空いており、ゆったりと座って東京に戻れそうです。

次に乗るのは年が明けて少し経ってからになる予定です。

来年も今年と同じような移動の日々になりそうですが、願わくばトラブルの少ない1年になってほしいものです。

2019年舞台出演予定を更新いたしました

日頃ブログの更新ばかりでホームページの他の部分の更新が滞っておりまして、誠に申し訳ございません。

来年の舞台出演予定をようやく先ほど更新いたしました。

来年2019年は東京、大阪、京都、名古屋などで出演予定があります。

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5月には京宝連120回記念にあたる関西宝連大会が開催されます。

京宝連加盟大学による合同演能という話も持ち上がっております。また詳細がわかり次第発表したいと思います。

ちなみに10年前の京宝連100回記念では合同演能「竹生島」が前シテ京大、後シテ同志社、ツレ京女、地謡京大同志社連合、後見京女、という布陣で演じられました。

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…今日は久々の休みでした。これから年末年始にかけては何日か休みがあり、いよいよ今年が終わっていくという気分になって参りました。

ブログの最初の頃はカテゴリー分けが出来ていないので、その作業なども休み中にしたいと思っております。

短いですが今日はこれにて。

2018年冬の関西宝連が無事終了いたしました

本日香里能楽堂にて、関西宝連の舞台が無事に終了いたしました。

例年にも増して沢山見所に応援にいらしてくださった皆様、誠にありがとうございました。

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色々な出来事がありましたが、まだ終えたばかりで消化してお話するのが中々難しいです。。

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とりあえず能「経政」が成功裡に終わったことがやはり大きな収穫でした。

「次の能を来年冬の関西宝連で出すのは可能か、そして地頭を3回生にしても大丈夫か?」という相談を学生から受けたのが1年ほど前。

そこからの1年間の道のりは決して平坦なものではなく、部員達はそれぞれが様々な試練を乗り越えなくてはなりませんでした。

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また4月に入った1回生達は、ギリギリまで一緒に能地の稽古をして、その成果か例年よりも部員全員が一体感を持って本番を迎えられた気がします。

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そのように実に沢山の良いことや辛いことを経てついに始まった能「経政」は、とても熱い舞台になったと思います。

シテも地も気迫が漲っていて、しかし決して舞い上がること無く「静かに燃えている」という感じでした。

申合で出た修正点もことごとく改善されています。

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舞台が佳境に入ったのはクセが始まったところでした。

「月に双びの丘の松の…」という地の謡い出しは、それまでの丁寧に道を辿るような雰囲気から、ついに何かが弾けたような激しい調子になりました。

溜まっていたもの、熟成されたもの達が一気に発散されて気化していくような、なんとも言えない感情に後見座で聴いていて胸が熱くなりました。

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この舞台を間近で体感した1回生達も、きっとそれぞれに感じることがあったと思います。

その想いがまた来年再来年に能の舞台で花開き、発散されてさらに次の世代に伝わっていけば良いと思います。

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学生の皆さん今回も素晴らしい舞台をありがとう。

幹事の皆さんお疲れ様でした。

五雲会の能「舎利」無事終了いたしました

本日五雲会にて能「舎利」が無事に終了いたしました。

ご遠方からの方々も含めて、たくさんの皆様にお越しいただきまして、誠にありがとうございました。

能「舎利」の感想はまた改めて詳しく書かせていただきます。。

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今年の私のシテは今日で全て終わりました。

一応ホッと一息なのですが、今は新幹線で関西に移動中です。

明日は香里園能楽堂にて「関西宝生流学生能楽連盟自演会」が開催されて、京大宝生会は能「経政」を出すことになっているのです。

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明日は学生達にとってはある意味、人生の中での山場の1日になるわけです。

私はその1日が少しでも充実したものになるように、頑張ってサポートしたいと思います。

私の「舎利」と京大の「経政」

昨日のブログでも書きましたように、次の日曜日の12月16日朝10時半より、香里能楽堂にて「関西宝生流学生能楽連盟自演会」が開催されます。

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京大宝生会からは能「経政」が出るのですが、実はその前日には東京で私自身が能のシテを勤めます。

水道橋宝生能楽堂にて12月15日正午始めの「五雲会」にて、能「和布刈」、能「巻絹」に続いて私が能「舎利」を舞うのです。

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因みに京大宝生会の能と私自身がシテの能が連続してあるのは初めてではありません。

そもそも私が”初シテ”を勤めた時がそうだったのです。

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平成17年11月19日土曜日、水道橋宝生能楽堂の「五雲会」にて、私は初シテの能「忠信」を舞いました。

そしてその前日の11月18日金曜日、京都観世会館での「京都大学能と狂言の会」にて京大宝生会の能「箙」があったのです。

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私はその「箙」の後見を勤めて、無事に終わったのを見届けるとすぐに東京に戻りました。

「能と狂言の会」が終わった後には、盛大に打ち上げをするのが常なのですが、この時は有り難いことに現役や若手OBOG達は打ち上げもそこそこに皆夜行バスなどで東京に移動してくれました。

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翌日私の「忠信」を観て、その後の初シテ記念パーティを京大の「箙」の打ち上げと兼ねてやる、ということにしてくれた訳です。

おかげさまで「忠信」と「箙」の2番ともに無事に終わり、パーティは能2番分の大変な盛り上がりを見せて最終的には江古田舞台で大勢で夜を明かしました。

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今回は逆に私が、自分の「舎利」を終えて土曜日のうちに関西に移動します。

京大宝生会としては2年ぶりの能となる「経政」と、その他の仕舞や謡も含めて、良い舞台になるようにしっかりとサポートしたいと思います。

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…それにしても、初シテから13年経っても私の行動パターンはあまり変わらないのだなあと、少々可笑しくなりました。

植田竜二先輩を思いながら

今日12月10日は、京大宝生会の植田竜二先輩の一周忌でした。

私は昼間に紫明荘組の稽古、夜は京大宝生会の稽古に行って、植田先輩と縁の深い人々と1日稽古をしました。

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特に京大宝生会は、次の日曜12月16日に迫った関西宝連前の最後の稽古でした。

今度の関西宝連は、「京宝連」としては第119回を迎えます。

植田先輩が第1回目から参加されて大事に育ててくださった「京宝連」は、来春には120回の節目になる訳です。

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今年入学した1回生は植田先輩と会ったことは無いのですが、今日の稽古で聞いた1、2回生素謡「土蜘」は、シテ、頼光、ワキ、地謡ともに力のこもった大きな声で、とても良い謡でした。

植田先輩が聞かれたらきっと「今年の1、2回生、すごいねぇ!」と言ってくださったと思います。

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そして上回生中心の能「経政」も、最後の最後まで改善すべき点を頑張って稽古しました。

植田先輩に褒めていただけるように、本番までもうひと頑張りしてほしいです。

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植田先輩の命日は毎年冬の京宝連の直前にやって来るので、近づく京宝連と共に毎年必ず思い出されることでしょう。

植田さん、今年の京宝連の舞台もどうか能楽堂のどこかで見守っていてくださいませ。

1件のコメント

「琥珀の会」大成功でした

本日金沢県立能楽堂にて、稽古会「琥珀の会」が無事に終了いたしました。

私にとっては少々不思議な舞台でした。

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午前中に申合があり、午後から本番が始まりました。

私は見所の正面の特等席に座っています。

そして舞台ではそれぞれ稽古を重ねてきた舞囃子などが、熱いテンションで披露されています。

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ところが”披露”といっても見ているのは私、出番の無い琥珀の会メンバー、メンバーのご家族の合計4〜5名だけなのです。

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普段舞台を正面から観ることが無い私は、何とも不思議な気分になった訳です。

しかし申合を経ての本番では、メンバーによってはそれこそ必死の気合を見せてくれて予想を上回る良い舞台になりました。

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ずっと観ていた私は、「この舞台をもっと沢山の人に観てもらいたい!」

と心から思いました。

今日はまだ「琥珀の会」としては第1回目の舞台でしたが、そう遠く無い未来にはこの会がより充実して一般公開される時が来ると思います。

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その時は私は正面の特等席からは観られなくなるのですが、私にとってはその方がきっと嬉しいことなのです。

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「琥珀の会」の皆さん今回は渾身の舞台をありがとうございました。

また今回参加出来なかった若手OBOGや現役の皆さんも次回以降是非「琥珀の会」に参加して、より賑やかな舞台にしてもらいたいと思います。

先輩も後輩も同様に

今日は午前中に水道橋宝生能楽堂にて月並能申合があり、私は能「雨月」の地謡を勤めました。

その後昼からやはり水道橋にて五雲会稽古があって私は能「舎利」を舞い、更にその後京都に移動して夕方から22時まで京大稽古をしました。

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京大稽古では、何故か最初の人に注意した点がその後の人でも気になってしまうことがあります。

今日で言うと、「構えの左手の親指が曲がっている」という点と、「足拍子の音にムラがある」という点を何人かに注意しました。

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1回生だけでなく、先輩であっても気がついたら全く同様に注意するようにしています。

これは、先輩の型をきちんと直さないと結局後輩に良くない型が伝わってしまうことがあるからです。

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また、先輩達には卒業してもなるべく続けてほしいので、長期的な視点で型や謡を良くしていってもらいたいという気持ちもあります。

なので、明日金沢である「琥珀の会」のメンバーのようなOBOGであってもやはり同様に気がついたことは直していきたいと思います。

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この方針には勿論自戒の心もあって、京大BOXや江古田稽古場などの鏡がある稽古場では、誰かの注意をしながら自分の型も見て、おかしいと思った箇所は修正するように心掛けています。

「琥珀の会」が近づいて参りました

来たる12月8日の土曜日に、石川県立能楽堂にて稽古会「琥珀の会」が催されます。

非公開の稽古会で、何度かこのブログでも書きましたように京大能楽部の若手OBOG及び一昨年ドイツに行った「ブレーメン能楽隊」のメンバーが中心となっています。

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宝生流舞囃子「箙」「紅葉狩」「龍田」「雲雀山」「邯鄲」

宝生流仕舞「兼平」

観世流仕舞「天鼓」「鵺」

独調「井筒」「杜若」

狂言「寝音曲」「文山立」

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というなかなかに盛りだくさんの内容です。

そして上記の番組には、実は私は一番も参加いたしません。

私はあくまで監督の立場で、シテも地謡も囃子も全て京大能楽部現役と若手OBOG、ブレーメン能楽隊などの”琥珀の会メンバー”が勤めるのです。

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メンバーの年齢は20〜40代と若いのですが、中にはもう20年程もお囃子の稽古を続けているベテランもいます。

そして一方で、稽古を始めて2〜3年の若手もいます。

京大宝生会ではここ最近お囃子の稽古を始める学生が激増しており、「琥珀の会」のような機会にベテランの先輩達と交流してどんどん経験値を上げてもらいたいものです。

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5番の舞囃子は先週土曜日の稽古の数時間でほぼ仕上がりに近い状態になりました。

あとは当日の午前中に申合をして、午後から本番になります。

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週間天気予報では土曜日の金沢は雪マークです。

私は朝一番のサンダーバードで京都から向かうので若干心配ではありますが、雪の寒さに負けないような熱い稽古会にしたいと思います。