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亀岡の花々〜秋の気配と鷺草〜

今日は久しぶりの亀岡稽古でした。

亀山城址のお濠は一面浮草に覆われていました。

能「草紙洗」で小野小町の詠んだ「まかなくに 何を種とて 浮草の 波のうねうね 生い茂るらむ」という歌が思い浮かびます。

あの歌は夏の歌でしたが、稽古場の亀山城址には、既に秋の気配を感じさせる草花もいくつか咲いていました。

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アザミにちょっと似た花を見つけました。

調べると、大陸原産の「ヒゴタイ」という花のようです。

なんとなくですが、井上陽水の歌に出て来る「夏が過ぎ風あざみ…」の”風あざみ”とはこの花かもしれないと思いました。

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そして秋の七草のひとつ「女郎花」

シジミチョウの仲間が蜜を吸っていました。

流石に種類の特定は無理でした。どなたか蝶に詳しい方がいらしたら教えてくださいませ。

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鈴虫が鳴く頃に咲くという「鈴虫花」

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さらに、こんな花も見つけました。

小さな花火が一斉に開いているように見えます。これは「うどの花」でした。

「それは八月末の 空の花火みたいに…」と今度はサザンの歌が思い浮かびました。

今日は何故か色んな歌が頭に浮かぶ日なのです。

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そして更に歩いていくと、ハッと目につく印象的な花が咲いていました。

ヒガンバナの仲間だというこの花は、その名も「きつねのかみそり」と言うそうです。

その姿同様に印象に残る名前です。

近い種に「むじなのかみそり」というのもあるそうで、こちらも気になります。

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最後に鉢植えが沢山並ぶ一角に行ったところで、今日一番驚く光景を目にしました。

一目でわかる「鷺草」が沢山咲いていたのです。

一羽一羽はせいぜい3〜4cmくらいの小さな鷺ですが、本当に群れて飛んでいるように見えて驚きました。

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この鷺草は、野生種は既に絶滅危惧種になっているようですが、その理由がとても悲しいものです。

野生の鷺草を見て、あまりに綺麗なので掘り返して持って行く人が多く、それが絶滅の大きな要因になっているというのです。

しかも持ち帰っても育てるのは殆ど不可能で、すぐに枯れてしまうそうです。

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美し過ぎる故に、それを自分の物にしたい人が沢山現れて、結局花の命を縮めてしまう。

何かお伽話にありそうな構図です。

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東京の世田谷には、薄幸のお姫様と鷺草に纏わる悲しい伝説があるそうで、調べるほどに鷺草の可憐な姿はどこか儚く見えてくるのでした。

今日はこの辺で失礼いたします。

フジバカマや萩など、次の季節の花々もしっかりと成長して、まるで切戸口で出番を待っているかのようでした。

豪雨の後の亀岡浴衣会

今日は亀岡で「浴衣会」がありました。

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亀岡は先日の豪雨の時はJR山陰線も、また「老ノ坂」と呼ばれる山越えの幹線道路も寸断され、一時完全に京都市内との交通が不可能になりました。

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私も先週土曜日の稽古には山陰線が不通で行けず、今日はどうなっているか心配しながら東京を出ました。

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しかし京都から山陰線に乗って、嵯峨嵐山から保津峡を越えて亀岡盆地に入る間、豪雨の痕跡は全く見られずに、保津峡も少し水量が多いかな、くらいの流れでした。

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亀山城址にある稽古場も、大きな被害は無かったのとこと。少し安心いたしました。

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能楽には「祈り」の思いが込められています。

浴衣会の初めに主催者代表の方より、「今回被災された方々への祈りの気持ちを込めて、今日の浴衣会の舞台を勤めさせていただきます」とのご挨拶がありました。

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ニュースでは、今日になってからも広島で河川やため池が決壊しそうだと度々報道しています。

「祈る」しか出来ないのは何とも歯がゆいのですが、今はこれ以上被害が広がらないように、祈りたいと思います。

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亀岡の皆様は、先週土曜の稽古が出来なかったにもかかわらず、頑張って謡い、舞ってくださいました。

先週土曜の分の代替稽古日程も決まって、また私も新たな気持ちで頑張って稽古させていただきます。

亀岡の皆さま、本日はどうもありがとうございました。

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おまけですが、亀岡稽古場の「業平の杜若」に種子の入った莢が出来ておりました。

もう少し経つと、莢が茶色になって割れて、種子が見えてくるそうです。

種子から育てて花を咲かせるには3、4年かかると言うことですが…。

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亀岡の花々〜梅雨から夏へ〜

今日は亀岡稽古だったので、午前中に東京を出ました。

大荷物で汗をかきながら新幹線に乗り込んで、やれやれと扇子で涼をとりつつ携帯のニュースを見ると、「関東甲信で梅雨明け宣言」との文字が。

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今週の晴れ間は梅雨の合間のものかと思っていたら、もう夏が来ていたのですね。

しかし亀岡に到着すると、雨が時折パラつく空模様で、関西はまだまだ梅雨の雰囲気でした。

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稽古場では、まず去年の7月上旬の「亀岡の花々」に載せた「半夏生(はんげしょう)」の葉が、もう白くなっていました。

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やはり今年は季節の進み方が早いのでしょうか。

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次に目に付いたのは、下の花でした。

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南天の花です。

南天は「難を転ずる」に通じる名前で縁起が良い木だそうで、江戸時代には火災避けとして玄関先によく植えられたそうです。

そういえば門の脇に植えてある南天をよく見かける気がしますが、あれは火災避けの意味があったのですね。

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次に変わった実を見つけました。

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この植物は「相思子様人参(そうししようにんじん)」という舌を噛みそうな名前でした。

「相思豆」という豆の種子の様な実がなる人参、というのがこの複雑な名前の由来だそうです。

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また、去年は最後の一花を見た記憶がある絶滅危惧種の「オグラセンノウ」が、今年はちょうど盛りでした。

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ナデシコの仲間の可憐な花です。

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ホタルブクロにちょっと似ている花が咲いていました。

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これは「麝香草」という名前で、振ると麝香の香りがするのが名前の由来…

の筈なのですが、実はそんなに強い香りはしないそうです。

なんだかややこしいです。。

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今回は、ちょっと名前のわからない面白い花も咲いていました。

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黄色と白の風車のような花です。

どなたか名前がわかったら教えてくださいませ。

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そして何枚か写真を撮っているうちに、辺りが暗くなって来ました。

やがてバケツをひっくり返したような土砂降りの雨が。

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写真では伝わりませんが、ゴーッという音がする程の凄い降りでした。

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本当に亀岡はまだまだ梅雨だと感じました。

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1週間後もまた稽古に来るので、その時は梅雨明けしているかもしれないですね。

今日はこれにて。

亀岡の花々〜蛍袋とカムパネルラ〜

今日は雨模様の亀岡稽古でした。

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去年のちょうど今頃に、ブログで「ホタルブクロ」の写真を載せました。

今年もそろそろ咲いているはずです。

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やはり雨に濡れながら綺麗に咲いていました。

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去年は赤い花だけでしたが、今年は白い花も撮れました。

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このホタルブクロの花は「釣り鐘」のようにも見えます。

今日また色々調べたところ、ホタルブクロ属の学名「カンパニュラ」は、実はイタリア語で「小さな鐘」を意味する「カンパネッラ」に由来していると知りました。

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去年のブログで、「カンパニュラ」が銀河鉄道の夜に出てくる「カムパネルラ」に似ているが、共通点が明確に見つからなかったと書きました。

しかし、小さな鐘「カンパネッラ」は、「カムパネルラ」とも書くことがあるようなのです。

やはり「ホタルブクロ」と「カムパネルラ」は、どちらも「小さな鐘」という意味で繋がっていたのですね。ようやくすっきりしました。

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そして今日は、もうひとつ楽しみがありました。

稽古が終わった20時半頃、あの杜若が咲いていたお堀に行ってみました。

すると…

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暗いお堀の奥で明滅する光がたくさん見えます!

星座のように瞬いているのは、今年初めて見る蛍でした。

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実際にはこの10倍程も光っていて、今年はもしかすると蛍の当たり年かもしれません。

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飛んでいる蛍を捕まえて、ホタルブクロに入れてみる時間は残念ながらありませんでした。

しかし今シーズンの蛍はまだどこかで見られるはずです。

そこにホタルブクロが咲いていたら、チャレンジしてみたいと思います。

亀岡の花々〜杜若 花あやめ〜

一昨日のことになりますが、亀岡稽古がありました。

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昨年5月にも書きましたが、毎年今頃には亀岡稽古場のお堀に杜若が咲きます。

今年もお堀をのぞいてみました。

おお!やはり期待通り杜若が沢山咲いています!

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昨年よりは少し時期が遅かったので、わずかにしおれかけている感じでした。

しかしやはり「顔好花」とも呼ばれるだけあり、実に鮮やかな立ち姿です。

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しばし眺め入ってから稽古場に向かうと…

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途中でまた別の紫色の花が目につきました。

なんと「あやめ」もちょうど満開なのでした。

能「杜若」のキリの謡「色はいずれ 似たりや似たり かきつばた 花あやめ…」という一節の通りの光景です。

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1月16日のブログで書いたのですが、源頼政の妻となった絶世の美女が「あやめ御前」という名前でした。

「五月雨に 沼の岩垣水越えて 何れかあやめ 引きやわずろふ」

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この歌は、頼政が鵺退治をした手柄により帝から「あやめ御前」を賜った時に詠んだ歌です。

帝が悪戯心で、「あやめ御前」に似た背格好の美女3人(5人とも)を御簾の向こうに並べて、頼政に何れが「あやめ御前」かを当させたそうです。

困った頼政が即興で詠んだ上の歌に帝は感嘆して、頼政と「あやめ御前」は目出度く夫婦になったということです。

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「いずれあやめか かきつばた」

という慣用句はこの頼政の歌が基になっていると初めて知りました。

優れた歌人でもあった頼政らしいエピソードです。

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亀岡の花々〜百花の王〜

今年は桜が早く咲きましたが、他の花もだいたい2週間くらい早く咲いているようです。

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なので、おそらく亀岡稽古場にある牡丹園がもう満開を迎えているのではと、楽しみにして亀岡に向かいました。

すると期待通り、色とりどりの牡丹が咲き乱れています!

牡丹には様々な別称があり、「百花王」、「百花の王」などとも呼ばれるそうです。

「百獣の王」である獅子とは組み合わせが良いとされており、能「石橋」でも大きな牡丹の花が咲き乱れる舞台上で、獅子が豪快に舞うのです。

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牡丹園には色々な種類の牡丹の花が咲いていました。暫しお楽しみくださいませ。

真紅の牡丹。

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純白の牡丹。

宝生流の通常の「石橋」では、上のような紅白の牡丹が舞台に出されます。

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そして「連獅子」という小書が付くと、このような桃色の牡丹が追加で出されるのです。

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その他にも様々な牡丹が。

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どれも舞台に出したくなるような綺麗な花ばかりでした。

今日は他にも、いくつか花を見つけました。

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アヤメのような花が咲いていましたが、これは「いちはつ」というそうです。

アヤメの仲間の中でも一番最初に咲くことから、「一初」と名付けられたのです。

昔は茅葺き屋根の上にこの「いちはつ」をたくさん植える風習があったという事ですが、その風景はさぞかし美しく、農村に初夏の訪れを告げていたことでしょう。

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黄色と橙色が混じった小さな花が、低木一杯にびっしりと咲いている奇妙な木を見つけました。

これはその名も「むれすずめ」という植物で、細い枝に雀が鈴なりに止まっているように見えることに由来する名前だそうです。

上手いこと名付けるものだと感心いたしました。

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こちらは白く小さな花が無数に咲いて、清楚な美しさを感じます。

「ひめうつぎ(姫卯木)」という名前で、これも成る程というネーミングでした。

旧暦四月を「卯月」というのは、「卯の花(卯木の花)が咲く頃の月」という意味です。

「卯の花」という言葉は、「杜若」や「歌占」、「雲雀山」など多くの能に登場しますので、謡本をお持ちの方は是非探してみてください。

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これらの花々を見ている間、周りには誰もおらず貸し切り状態で、実に贅沢で静かなひと時を過ごしました。

亀岡の花々〜コノハナザクラ 〜

亀岡稽古場の敷地内には数多くの珍しい植物がありますが、その中でも最も稀少なのが、この場所で1953年に発見されたという「コノハナザクラ 」ではないでしょうか。

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コノハナザクラはヤマザクラの変種で、花は八重、ひとつの花に雌しべが2本あるのが特徴です。

平成に入って三重県で数本が発見されるまでは、野生のものは亀岡にある原木の只1本だけだったのです。

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能「桜川」のシテの故郷では「木花咲耶姫」を信仰しており、御神体が桜の木だったと言います。

その木花咲耶姫に由来する名前の「コノハナザクラ 」は、正に能「桜川」に出てくる御神木の桜に相応しい木だと言えるのではないでしょうか。

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例年だとこの時期が見頃である「コノハナザクラ 」ですが、今年はやはり早く咲いたそうです。

もう花は残っていないかと思いながら、稽古の合間に原木があるお堀の近くまで行ってみました。

すると…

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幸いなことに、まだ少しだけ咲き残っていました。

これが「コノハナザクラ 」です。

花だけが満開になるソメイヨシノと違って、花と青葉が同時に見られるヤマザクラは、何か自然な美しさを感じて、私は実はこちらの方が好みです。

この原木は本当に貴重なので、根の保護の為に近くには寄れません。少し離れて、「この先も末永く花を咲かせてください」と祈りました。

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今日は本当は他にも沢山の花々が見られたのです。

写真だけ載せておきたいと思います。

美人の代名詞「立てば芍薬」の一種「ケヤマシャクヤク」

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能「胡蝶」で「八重山吹も…」と謡われる「ヤマブキ」が正に七重八重に重なって咲いていました。

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「石楠花」の花がもう満開でした。

唱歌「夏の思い出」のイメージがあるので、石楠花を見ると水芭蕉と並んで「夏の尾瀬」を思い出してしまいます。

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なんと水辺にはその「水芭蕉」も咲いていました。

本当に夏の尾瀬のようでした。

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そしてつい先月には新芽だった「牡丹」が、もうこんなに蕾を膨らませていました。

次回の稽古では花が見られるかもしれません。

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それにしても前回からほんの10日ほどで花がガラリと入れ替わっていて、驚かされました。

春は正に「百花繚乱」の季節なのですね。

亀岡の花々〜春の使者達〜

「スプリング・エフェメラル」という言葉を初めて知りました。

日本語では「春の妖精」とも呼ばれる一群の花々のことをさす言葉です。

春先のほんの数週間だけ広葉樹林の林床を華やかに彩り、初夏にはもう跡形も無くなってしまうという儚い花達なのだそうです。

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今日の亀岡稽古ではその「春の妖精」に沢山出会うことが出来ました。

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先ずはカタクリです。

今日は天気が良かったので、花がよく開いて反り返っていました。

「片栗粉」はこのカタクリから作ると思っていましたが、採れる量が少ないために近年はジャガイモやサツマイモのデンプンで作られているそうです。

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キクザキイチゲ。漢字で書くと「菊咲一華」。

漢字の方が綺麗な名前だと感じます。

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また下の花は近い仲間の…

ユキワリイチゲ(雪割一華)。

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そしてムラサキケマン。

これらの花々は全て「スプリング・エフェメラル」に属するそうです。

年間の大半を暗い地中で過ごす彼ら(彼女ら?)は、ようやく地上に出られた喜びを競って表現するかのように、美しく可憐な花を咲かせているように見えました。

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「春の妖精」に近い表現で、日本でも古くから、「雪割草」と呼ばれるいくつかの花々があります。

このスハマソウもそのひとつです。

因みに先ほどの「菊咲一華」や「雪割一華」を「雪割草」と呼ぶ地方もあるそうです。

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ミツマタも満開になりました。

和紙の原料となるこの植物は「サキクサ」とも呼ばれます。

その意味は、「春になると他の花に先駆けて咲く」からとも、またこの花が縁起の良い花とされていたので「幸草」と称されたからとも言われるようです。

「三枝(さえぐさ)」さんという苗字の語源もこの「サキクサ」だそうです。

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新芽を取り囲むように小さな花が沢山咲いている変わった木がありました。

「クロモジ」です。

こちらは「楊枝」の原料になるので有名ですね。こんな花だとは知りませんでした。

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今日は他にも、

トキワイカリソウ

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トサミズキ

などなど、調べるのが追いつかないほどの多くの花々が咲いていました。

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桜も満開になり、まさに春爛漫という風情でした。

亀岡の花々〜春の訪れ〜

今日は松本から亀岡に移動しての稽古でした。

朝の松本はまだまだ冬の冷え込みだったのですが、特急しなので名古屋に着くと外はポカポカ陽気でした。

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亀岡も晴天で暖かく、この分ならば何か春の植物が見られるかも…とちょっと期待して稽古場に向かいました。

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先ず目についたのは、鮮やかな黄色でした。

去年の3月1日のブログにも載せた、「福寿草」です。

去年は曇り空の下で花は閉じていたのですが、今日は陽射しを浴びて大きく開いていました。「春が来た〜!」と喜んでいるようです。

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すぐ隣には…

「節分草」がありました。

福寿草と比べると如何にも控え目に咲いている可憐な花は、現在は乱獲と環境破壊によって希少なものになっているそうです。

そう思って見ると、何処と無くさびしそうにも見えます。。

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陽の当たる広場には「蕗の薹」が顔を覗かせていました。

私はこの天ぷらが大好きなのです。

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もちろん梅も、木によっては満開になっていました。

花はこのくらいだったのですが、もうひとつ目を引いた植物がありました。

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牡丹園の牡丹に新芽が出ていたのです。

あの牡丹の花の大きく艶やかなイメージそのままに、なんとも力強く勢いのある芽吹きに目を奪われました。

春のパワーが漲って、それが限界を超えて吹きこぼれて来たような姿でした。

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次に亀岡に行くのは来月下旬になります。

その頃はきっと、すっかり春になって沢山の花々が見られるだろうと、今から楽しみにしています。

亀岡の花々〜木の実の段〜

今日は暦の上では「立冬」だそうですね。

冬の気配を感じる筈の日ですが、亀岡稽古に行ってみると日中は暖かく、小春日和でした。

この時期になるとさすがに花は殆ど咲いていませんが、かわりに色々な「木の実」が見られました。

遠目にも鮮やかな赤色の中に、黒い実が点々とあってなかなかインパクトがあります。

これは「ベニバナヤマシャクヤク」の実です。

花は「芍薬」の名前の通りにピンク色の楚々とした風情なのですが、実の方は何か妖艶な美しさでした。

赤い実の「ヤブサンザシ」です。

名前の由来はこの実が「サンザシ」の実に似ているからで、全く違う植物だそうです。

美味しそうに見えるこの実なのですが、食用になるのは「サンザシ」の実の方で、残念ながら「ヤブサンザシ」の実は食べられないらしいです。

「ハクサンボク」です。

こちらの実も何となく食べられそうですが、これはホワイトリカーに漬けて果実酒に出来るそうです。

因みに「赤い実」は、鳥に食べてもらい易いように目立つ色をしているが、じつはそんなに美味しくなくて、目立たない色の実の方が美味しい、という説を聞いたことがあります。

次はそのような地味な色の実を紹介します。

これは「シロヤマブキ」。

こちらは前に花も紹介した「ヤブラン」です。

「ヤブラン」の実は、実際食べて美味しいと書いている人がいました。「シロヤマブキ」の方は調べてもわからなかったので、おそらくアウトなのでしょう。

どちらも「草木染め」の材料になるようです。同じ黒い実でも、染めると「シロヤマブキ」は薄緑色、「ヤブラン」は紫系の色になるようで、実の色と全く違う色になるのが草木染めの面白いところです。

石の隙間に本当にひっそりと、小さな花が咲いていました。

これは「キチジョウソウ(吉祥草)」だそうです。

この花が咲くと良いことがあるということなので、最後に見られて何か嬉しい気分になりました。

能「通小町」には、小野小町の霊であるツレが様々な木の実を歌うように紹介する内容の箇所があり、「木の実の段」とも呼ばれます。

私の紹介ではそれこそ「花」がありませんが、これにて「亀岡版・木の実の段」をお終いにさせていただこうと思います。