自分の周りを平和にすること

今日は朝に松本を出て、江古田稽古に直行して夜まで稽古いたしました。

東京も猛暑でしたが、昼からたくさんの方にいらしていただきました。

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眼の手術をされてお休みだった会員さんより、手術が無事終了したとのメールをいただき安堵しました。

小学生の男の子は、頑張って稽古した後に、西武ドームでナイター観戦があると勇んで帰っていきました。

最後に母親と、芸大生を稽古して1日が終わりました。

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小さな出来事を積み重ねて、今日という日を私はいつも通りに過ごすことができました。

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74年前の今朝、母親の家族達も広島でそれぞれの生活をいつも通りに過ごしていたのです。

私がこの世にいる間は、そういう家族の暮らしが確かにあったこと、そしてそれが一瞬で消えてしまったことを忘れないでいようと思います。

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今朝特急あずさの車内で見た携帯ニュースの、広島の小学生達の「平和への誓い」に心が動きました。

「自分の周りを平和にすることは、私たち子供にもできることです」

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もしかしたら、綺麗事だと言う人もいるかもしれません。

しかし私はこの子供達のような考え方に深く共感するのです。

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私の周りの縁あって知り合った方々と、私はこの先も小さな日常を、平和に穏やかに積み重ねていきたいと改めて強く思いました。

東京五輪に向けたプレイベント

今日は国立能楽堂にて、2020東京オリンピック・パラリンピックに向けたプレイベント「ESSENCE能」に出演して参りました。

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今から55年前の前回の東京五輪の時には、10日間にわたる大規模な能楽公演があったそうです。

そして来年の2020東京五輪期間中には、なんと合計12日間にわたって”史上最大規模”の能楽公演が企画されていると伺っております。

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スポーツの祭典であるオリンピックに向けて、来年は全世界から物凄い数の人々が日本にやって来ることでしょう。

せっかく日本で開催されるのですから、その方々にスポーツだけでなく日本の伝統文化も味わっていただくというのは、とても大事なことだと思います。

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私は残念ながら今後の人生においても、五輪競技に選手として参加することは出来そうにありません。

しかし能楽師として、来年の五輪期間中に日本全体を盛り上げるためのお手伝いが少しでも出来るならば、それは有り難く嬉しいことです。

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今日はその来年のためのプレイベントに参加させていただき、大変意義深い1日になりました。

そして遠い先だと思っていた東京オリンピック・パラリンピックが、今日1日の体験でなんだか目前のことのように思えてきたのでした。

過ごしやすい夏

ニュースによれば、今日の東京は7月に入ってから初めて、30℃を超える真夏日になったそうです。

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「去年はとても暑かったなあ」と思い去年7月のブログを読み返してみると、

「激暑エレベーターホール稽古」

「祇園祭の花傘巡行が猛暑で中止」

「酷暑を超える”極暑”をさらに超える”超極暑”」

などと恐ろしげな内容が並んでいました。。

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しかし、

「喉元過ぎれば熱さ忘れる」

という通り、去年の記録的猛暑はすでに遠い記憶になり、

「今年はあまり暑くなくて有り難いなあ」

と思いながら過ごしております。

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今日は午後から西荻窪稽古だったのですが、30℃くらいだと外に出ても意外に凌ぎ易く感じました。

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今年のような夏だと、「歩く」というのが全く苦になりません。

因みに去年6月の合計歩数が約20万歩、今年6月は約28万歩でした。

去年7月はわずか18万歩でしたが、今年7月は25万歩ペースです。

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去年は「松本城薪能」などもあり、猛暑の野外で働くことも多く、むしろ鍛えられた記憶があります。

今年は薪能のシテも無いので、その分出来るだけ外を歩いて健康維持に努めたいと思います。

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もちろん暑さが控えめとはいえ、熱中症には充分に気をつけないといけませんが。

涼しげなお坊さん

今日は昼から江古田稽古でした。

三ノ輪の自宅を出ると、外は完全に夏の暑さです。

暑さの苦手な私にとって辛い季節が、早くもやってきてしまったようです。。

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上野で山手線のホームに上がったところで、1人の若いお坊さんが電車を待っていました。

紗のような薄手の夏用の僧衣を纏っていて、頭は当然ながら丸坊主です。

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これが私には実に涼しそうに見えて、

「坊主頭羨ましいなあ…」

などと不謹慎にも思ってしまいました。

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江古田稽古が終わって、帰りの電車で携帯のニュースを見ると、週末の京都はなんと35℃まで上がる予報です。

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土曜日には大江能楽堂にて「第120回京宝連」にあたる関西宝連が開催されます。

学生達はさぞかし暑い思いをすることでしょう。

我々能楽師も最後に番外仕舞を舞うことになっております。

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「いっそのこと丸刈にしていこうかな…それは無理か。でもせめて着物はもう夏用の絽にしたいなあ。。」

とは思えども、5月ではまだ絽にするわけにもいきません。

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昼間の涼しげな若いお坊さんを思い出して、「やっぱり羨ましいなあ…」と溜息をついた帰り道でした。

面白写真〜八十八夜〜

今日は「八十八夜」だそうです。

この日にお茶を飲むと長生きするということなので、是非美味しいお茶をいただきたいと思います。

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少し前に街を歩いていたら、下のような幟を発見しました。

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風にはためいていて少々見づらいですが、

「茶神ハチジュウハチヤー」

というご当地ヒーロー(?)のようでした。

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私は実はご当地ヒーローが大好きなのです。

沖縄の「琉神マブヤー」とか、郡山の「商店ガイレンジャー」などなど。

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茶神ハチジュウハチヤーは、よく見ると手に急須を持っていて、顔は「茶」という漢字で出来ています。

静岡茶のお店だったので、静岡に行けば会えるのでしょうか…。会って一緒にお茶を飲みたいものです。

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ついでに、最近の面白写真を何枚かご紹介いたします。

お店の看板ばかりなのですが、先ずは…

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浅草にて。「珍品を売る店 つる亀」。

開いていなかったのが非常に残念でした。業種も謎です。

どんな珍品なのか、次回必ず確認したいと思います。

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ジャズとラーメン。色んな組み合わせがあるものです。

しかしゆっくり聴いているとラーメンが伸びそうです。。

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次は2枚連続で。

そして、

純和風な店名と業種が微妙にズレているような気がしませんか?

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逆に考えると「和風居酒屋 アレクサンダー」

とか、「和惣菜 チンギスハーン」とかになってしまいます。。

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こちらは「居酒屋」と「スナック」の中間という意味なのでしょう。

店名と業種はぴったり合っていますが、入るのには相当勇気が要ります。。

カウンターに目つきの鋭い店主がいて、間違えて店主の背後を取ると撃たれてしまう、とか…

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最後に店名ではありませんが…

「応仁の乱以来」というネタを久しぶりに見ました。

ブラックサンダーがついに都に攻め上って来たのですか。

京都のお菓子もその衝撃に戦々恐々と…しているのでしょうか…??

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今日はこの辺で失礼いたします。

皆さまも今日はどうか美味しいお茶を。

三種の神器と能楽

今日から年号が改まり、いよいよ「令和時代」が幕を開けました。

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今朝「剣璽等承継の儀」をテレビで拝見いたしました。

三種の神器のうちの「草薙の剣」と「八尺瓊勾玉」を、テレビカメラ越しとはいえこの眼で見ることが出来るとは、実に感慨深いことでした。

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というのも、「三種の神器」は実は能楽にも深く関わっているのです。

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例えば「草薙の剣」は、能「草薙」においてシテ日本武尊が実際に手に持ち、その神剣の力で東夷を征伐した時の戦いを再現します。

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また「八咫の鏡」と「八尺瓊勾玉」は天照大神の「天の岩戸開き」の時に使われたと言われています。

この岩戸開きの有様が能「三輪」と能「絵馬」の中で詳しく描写されています。

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そして三種の神器は「壇ノ浦の合戦」において、平家と共に一旦海中に沈みます。

それを源義経がすくい上げたのです。

その壇ノ浦の合戦の模様は、能「大原御幸」のシテ建礼門院によって切々と物語られます。

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このように神話の時代や源平合戦での出来事を、我々能楽師は能の中で擬似体験しています。

とは言えそれらは余りにも遥かな昔の出来事で、もしかするとフィクションなのではないかと思ってしまう時もあります。

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しかし今回の「剣璽等承継の儀」で、「三種の神器」がその神性を古のままに保ちつつ、現代まで引き継がれているのを目の当たりに出来ました。

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連綿と継承されて来た「三種の神器」は、能の中の世界が遥か昔に確かに存在していた証のように私には思われて、なにか力強い気持ちになるのです。

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奇しくも今月は「草薙」を2回謡い、「絵馬」に関わるワークショップをする予定があります。

神秘なる「三種の神器」に思いを馳せつつ、新しい令和時代も一層能楽の道に励んで参りたいと思います。

“遠く”のカングリ

新しい元号「令和」が発表されました。

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思い返すと、「平成」が発表された1989年1月8日には、私は浪人中で予備校の冬季講習に行っておりました。

帰りの駅前で号外が配られていて、その見出しで新元号「平成」を知ったのです。

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そして私はそれから間も無い平成元年の春に京都へ。

平成8年春に東京芸大へ。

そこからの平成時代は、とにかく修行の日々でした。

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今は全国あちこちを動き回る日々で、昨日は大山崎稽古、今日はこれから松本稽古、明日は亀岡稽古という中で新元号「令和」を三ノ輪の自宅で知りました。

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能「隅田川」のシテ北白川の女は、自身の境遇を伊勢物語の在原業平の東下りになぞらえて、

「思えば限りなく 遠くも来ぬるものかな」

と謡います。

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“遠く”という部分に、宝生流だけが「カングリ」という非常に高い音の特殊な節を使います。

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この”遠く”のカングリを謡う時、私は何とも魂が震えるようなシテの寂しさを痛切に感じてしまいます。

都と隅田川との距離感に加えて、シテが過ごして来た平坦では無かった人生が、このカングリに凝縮されている気がしてしまうのです。

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そして今、松本に向かう車中で「平成という時代」の自らの日々を振り返ると、やはり”遠くのカングリ”を謡う時のように遥かな寂しいような気持ちになってしまいます。

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まもなくやって来る「令和」の時代には、どんな出来事が待っているのでしょうか。

前を向いてこの先を考えると、寂しさは消えて何だか漠然とした希望が湧いて参ります。

進める限り前へ前へと歩んで行きたいと思います。

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先ずは目の前のことから一歩一歩です。

今日これからの松本稽古も全力で頑張ろうと思います。

3億4000万km先の竜宮城

今朝のニュースで探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」への着陸に成功したというのを読み、実に感慨深い気持ちになりました。

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というのも、先代の「はやぶさ」が2010年に、満身創痍の苦しい旅路の末に地球に帰って来たニュースで感動した事を思い出したからです。

大気圏に突入して寿命を終える直前の「はやぶさ」が撮影したという、半分かすれたような地球の写真をその時見ました。

JAXAのスタッフが、「はやぶさ」に最後に地球の姿を見せてあげたいという気持ちで撮影させたのだと聞いて、なんだか涙が出ました。

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そしてその「はやぶさ」の経験を活かして作られた後継機「はやぶさ2」が、2014年暮れに打ち上げられたのです。

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今から4年と少し前。

例えば京大宝生会で今年卒業を迎える学年が、まだ京大を目指して受験勉強をしていた頃です。

それからの4年間に、地球全体でも私の周りでも色々様々なことがありました。

沢山の人と新しく出会い、いくつかの別れもありました。

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その間に「はやぶさ2」は遥か3億4000万㎞の飛行を続けていて、そして日本時間の今朝にその目標地点である「リュウグウ」にたどり着いたというのです。

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能楽における「竜宮」は、「面向不背の珠」とか「獅子丸」という琵琶の名器などの宝物があり、それらが守護神によって厳重に護られているちょっと怖い場所、というイメージです。

能「海人」のシテ海人は、命懸けで竜宮に赴いて「面向不背の珠」をとって地上に還ります。

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今回「はやぶさ2」は小惑星「リュウグウ」の地表から、土砂などのサンプルを持ち帰ってくる予定だそうです。

そして今朝の着陸後にそのミッションの成果を尋ねられたJAXAの方の返答がふるっていました。

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「成果は玉手箱なので、地球に帰って開けてみるまでわかりません」

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「はやぶさ2」が命懸けの旅路の末に地球に還って来るのは、2020年の暮れになるそうです。

それまでの間に地球全体でも私の周りでも、また沢山の出来事があるのでしょう。

その間にまた遥かな旅路を辿って故郷を目指す「はやぶさ2」。

その帰還のニュースを聞いたら、またきっと私は深い感慨に包まれることでしょう。

彼の旅の無事を祈りつつ。

明日はセンター試験

大学入試センター試験がいよいよ明日になりました。

今年はよく見知った高校生達が何人か受験するので、私も例年よりドキドキしています。

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先ずは良い体調で、予定通りに試験会場に到着できますように。

東京は穏やかな天気になるようですが、全国的には厳しい気候の所もあるでしょう。

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能の舞台とセンター試験には全く接点がありませんが、「とにかく冷静に、稽古(模試)のつもりで普段通りに臨むのが一番良い」という点は似ているかもしれません。

…とは言いながら私の場合、昔受験した時には試験会場で本当に直前までジタバタと暗記をしていた記憶があるので、実は全く冷静ではありませんでした。。

しかし、とりあえず解答用紙に名前と受験番号を確実に記入したところで「ああ、模試と同じ感覚になってきた」とちょっと落ち着いた記憶があります。

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また去年の試験では”ムーミン”の問題が話題になりました。ムーミン好きの受験生は問題を見て、内心ちょっとニヤリとしたのではないでしょうか。

私の時のセンター試験の国語では、馬場あき子さんの能に関係する文章からの出題があって、私は思わずニヤリとしてそこから少しリラックスできました。

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明日明後日のセンター試験、近しい高校生達、そしてこの春に京大宝生会に入るかもしれない受験生の皆さんが、頑張ってきた勉強の成果を発揮できるように、心よりお祈りしております。

恒星間天体・岩船?

今日は夕方から田町稽古でした。

行きの地下鉄で読んだニュースに興味を引かれました。

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昨年発見された「オウムアムア」という耳慣れない名前の小天体のニュースです。

「オウムアムア」とはハワイの言葉で「遠方よりの最初の使者」という意味で、この葉巻型の小天体は天体観測史上初めて太陽系の外から飛来した”恒星間天体”だそうです。

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そしてニュースによると、アメリカ・ハーバード大学の天文学者が「オウムアムアの正体は異星人の送った探査機かもしれない」との説を発表したそうなのです。

太陽から遠ざかる速度が予想より早く、これは太陽光をエネルギーとする”ソーラーセイル”という人工的な装置を搭載している可能性があるとか。

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実は能にも「宇宙から飛来した船」の話があります。

能「岩船」のストーリーは神話における「天磐船」の話を基にしており、「岩で出来た船が、天から地上に宝物を積んで降りて来た」というものです。

この話は何やら今回の「オウムアムア」に通じるところがある気がするのです。

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天体観測が始まるはるか前の時代に”恒星間天体”が遠くの宇宙からやって来て、その岩で出来た天体は実は宇宙船であり、中から異星人と、他の星の珍しい品物が地球にもたらされたかもしれない。

そしてその話が神話になり、やがて能「岩船」が作られた…

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つまり”岩船”こそが真の”オウムアムア”ではなかろうか。

…などと夢想するのは実に楽しく、地下鉄はあっという間に三田駅に到着したのでした。