60人の初舞台!

今日は大阪の香里能楽堂にて「枚方市能楽体験教室発表会」が開催されました。

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午前中に大人の部、午後から子供の部の合計60人ほどが、ひと夏の間稽古した仕舞を披露したのです。

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何がすごいと言って、今日舞台に立った60人全員が「初舞台」なのです。

ズラリと並んで出番を待つ生徒さんに声をかけてみました。

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私「普段我々が出る発表会では、1人でも”初舞台”の方がいると大変おめでたいことなのです。今日はめでたさなんと60倍なのですよ!」

すると、

生徒さん「へえ〜、そうなのですか!それはギネスブックものですね!」

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確かに1日に60人の初舞台は、私の経験した舞台では最多記録更新です。

ギネスに申請して、登録されるかは大変微妙なところですが…。

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ともあれ大人から子供達まで、短期間の稽古で驚くほどの成果をあげた今日の舞台でした。

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才能があると思う人が本当にたくさんいらしたので、この教室が今後も続いていけば、更にレベルの高い仕舞が見られるだろうと想像いたしました。

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繰り返しになりますが、今回の能楽体験教室では枚方市のスタッフの皆様には大変お世話になりました。

今日も朝7時半頃から夕方まで、猛暑の中を走り回って舞台のサポートをしてくださいました。

心より感謝申し上げます。

大人向けの寺子屋能楽教室

私の日常は、大抵は予定通りに淡々と進んでいきます。

しかしやはり全く予想外の展開になる日もあります。

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今日は先ず午前中に京都大山崎稽古でした。

朝から容赦ない暑さの中、稽古場の宝寺への坂を登っていくと、辺りの森から”ツクツクボウシ”の鳴き声が聞こえていました。

この蝉が鳴き出すと「今年の夏も終わっていくなあ」と少し切ないような気持ちになります。

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大山崎稽古を終えて、今度は熊野神社近くの「ゲストハウス月と」に向かいました。

「月と 寺子屋キャンプ」という2日間のイベントに、能楽の講師として参加させていただくのです。

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どんな子供達がいるのだろうか…

と、ドキドキしながら「月と」の玄関を開けると…

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そこには何人かの大人と、何故か京大宝生会のメンバーが数人正座しています。

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私「えーと、寺子屋キャンプの参加者の方は…」

亭主さん「こちらの皆さんです!」

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なんと!

寺子屋というのでてっきり子供達相手の能楽教室だと思っていたのですが、大人も募集していたようなのです。

そして結果的に能楽教室には大人の皆さんだけが応募されたということでした。

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京大宝生会のメンバーは、寺子屋キャンプの手伝いをお願いした最若手OBのO君が声掛けしてくれたそうです。

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という訳で、小学生を想定したとても簡単なテキストを使って、大人と京大宝生会を相手に能楽教室を開講したのでした。

大人の参加者の皆さんには、

「今回の簡単なテキストを使って、是非周りの子供達にレクチャーしてみてください!」

とお願いしておきました。

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寺子屋キャンプ終了後は、手伝ってくれた最若手OBのO君などと一緒にタコ焼き屋さんに行き、O君の壮絶な「熱々タコ焼き40個10分間早食いチャレンジ」を見届けて帰りました。

チャレンジの結果は…

言わぬが花でしょうかね。

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というように、今日は全く予想外の”大人向け寺子屋能楽教室”になりました。

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明日は枚方市能楽体験教室発表会で、大勢の大人達と子供達とともに舞台で過ごす、熱い1日になりそうです。

今年初めての”秋”

今日は松本稽古でした。

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前回40℃の猛暑だった松本。

今回も台風一過で暑くなっていそうだな…

と覚悟して特急あずさを降りました。

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すると、意外なことに乾燥した風が吹いて快適な空気でした。

駅前の気温計を見ると…

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やはり前回よりも10℃ほども低くなっていました。

31℃でも、乾いてとても過ごしやすい気候です。

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今日の稽古場はいつもより遠い「城北公民館」でしたが、暑くないので歩いていくことにしました。

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久しぶりに松本城をじっくりと眺めつつ、お城の北の公民館へ。

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前回永平寺に行って来た話をしてくれたお母さんと男の子、そして日に焼けたサッカー少年などなど、今日も夜までみっちり稽古いたしました。

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そして20時前に公民館を出て驚きました。

とても涼しかったのです。

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辺りは秋の虫の声に包まれていて、ひと月ほど先に短いタイムスリップをしたような錯覚を覚えました。

今年初めて”秋”を感じた一瞬でした。

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思えば去年も、ちょうど今頃のブログに「今日初めて”秋”を感じた」という内容を書いた気がします。

季節が少しずつですが、確実に移ろっていることを実感できた今日の松本稽古でした。

相模原薪能に出演して参りました

今日は相模女子大グリーンホールにて開催された「相模原薪能」に出演して参りました。

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予定では野外の会場で行われるはずでしたが、大型の台風10号が近づいているということで、早い段階で屋内開催に変更するとの連絡がありました。

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今日の日中は晴れ間も見えて、「もしかして外でも出来たのかな…」と思ったりもしました。

しかし、午後に三ノ輪を出て最寄り駅の相模大野に到着する直前に、スコールのような雨がザアアッと電車の窓に降りかかってきたのです。

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野外会場で予定していたら、開催そのものが危うかったかもしれません。

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屋内会場では、かなりリアルな篝火型のライトが何本も置かれて、雰囲気は野外の薪能に非常に近いものでした。

お客様も雨風が時折強くなる中を大勢いらしていただき、最後の能「船弁慶」まで安全な環境で楽しんでいただけたようです。

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今回の大型台風では、西日本で激しい雨が降り、強い風が吹いたようです。

被害が出来るだけ少ないように祈っております。

4大学合同稽古

今日は午前中から江古田稽古場に向かいました。

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しかし今日はいつもの澤風会江古田稽古とは少々趣きが違うメンバーが、三々五々稽古場に集まって来ます。

「こんにちは。」「お邪魔します〜」「よろしくお願いします!」

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集合したのは、日本女子大、自治医科大、東京芸大の学生達です。

自治医科大の1人はこの春まで京大宝生会にいたので、実質4大学の宝生流を稽古する学生達が江古田稽古場に揃ったわけです。

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日本女子大の学生達は、今稽古している仕舞「羽衣キリ」。

自治医科大の1人は仕舞「鶴亀」、元京大宝生会の学生は仕舞「枕慈童」と「田村キリ」。

東京芸大は仕舞「藤クセ」を、代わる代わる稽古しました。

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京大宝生会の合宿形式で、ぐるぐると何周も稽古します。

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日本女子大の1人の学生は、最終的に「羽衣キリ」を皆の前で本番形式で舞ってくれました。

もう1人は、月末に母親の「郁雲会」の稽古会で同じく「羽衣キリ」を披露することになっています。

それが終わると、日本女子大の2人は今度は12月の「関宝連」の舞台に向けて、新しい曲を始めるのです。

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自治医科大の「鶴亀」さんも、やはりその「関宝連」での初舞台を目指して、仕舞「鶴亀」を頑張って最後まで稽古しました。

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東京芸大の学生は、この先何十年にわたって今日のメンバー達と一緒に稽古していってほしいと思います。

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元京大宝生会の自治医科大生は、これから京大と自治医科大、日本女子大の橋渡し役となってくれるように願っています。

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ある意味で歴史的な邂逅だったかもしれない今日の「江古田4大学合同稽古」。

それぞれ頑張ってとても充実した稽古になりました。

時空を越える紋付と袴

世間ではお盆休みの真っ只中のようです。

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周りの人からちらほらと、海や山に行く予定、遊園地や野外フェスに行ってきた楽しい話などを聞いて「羨ましいなあ…」と思いながら、私自身は普段と全くかわり映えのしない生活を送っております。

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先週末の七葉会のエピソードを、思い出したものから書いてみたいと思います。

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今回澤風会の最年少出演者は小学5年生の男の子でした。

楽屋で紋付袴を着付けている時、袴を見て大変懐かしいと思いました。

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黒地に金色の格子模様が入った、子供用の袴です。

実はこれは私が小学3〜5年生の時に舞台ではいていた袴なのです。

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その後、今回の男の子のお兄さんが小学生の時に、暫くの間この袴を使ってくれていました。

お兄さんは今はもう東京芸大に入学して、宝生流の若手予備軍として修行を始めています。

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私がこの袴で、今回と同じ宝生能楽堂で仕舞を舞ってからもう40年が経ちます。

そして今年七葉会デビューを果たした弟くんが、またこの黒地金格子の袴で舞ってくれたわけです。

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これはしみじみ嬉しいことだなぁ…と思っていたら、高橋憲正さんの憲宝会の男の子がやはり仕舞で初舞台ということで、楽屋で着替え始めました。

憲正先生自ら、男の子に綺麗な空色の紋付を着付けながら、

「この紋付いいでしょ、僕が子供の時に来ていたものなんだよ」

と話されました。

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着付け終わった男の子の凛々しい姿は、憲正先生の子供の時の姿を想像させてくれました。

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私の黒地の袴も、この憲正さんの空色の紋付も、また時間と場所を飛び越えて、次の世代がいつかどこかの舞台で使っていくのでしょう。

一層しみじみと感慨深い気持ちになったのでした。

無人島に連れていくとしたら…

七葉会から一夜明けて、私は早朝の新幹線で静岡県の掛川に向かいました。

「初秋の千人の宴」という能楽公演に出演するためです。

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能は辰巳満次郎師による「黒塚 白頭」でした。

午前中のワークショップを終えて、私は若手能楽師と一緒に、久しぶりに「藁屋」の作り物を製作いたしました。

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竹の柱と台輪を、さらしを細く裂いた”包地(ぼうじ)”というもので巻いて固定していきます。

柱がグラグラしないように固定するのには、いくつかのコツがあって若手能楽師が最初に鍛えられる作業のひとつなのです。

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私が包地を巻いているのを、たまたま横で見ている人がいました。

私が「このやり方で、筏を組んだりすることも出来るのですよ。小屋を作ったり」

すると見ていた人が、

「ヘェ〜そうなんですね〜。じゃあ、無人島に誰か一人連れて行くとしたら、能楽師が良いかもしれませんね〜」

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成る程。確かに我々は包地を使って縄をなったりすることも出来ます。

能楽師は意外にアウトドアに向いた職業かも…

などと思いながら、柱を立てて壁と扉を取り付け、屋根を乗せて、安達ヶ原の鬼女の棲家である「藁屋」が完成しました。

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朝には七葉会の重たいような疲労感もありましたが、一日働いて帰りの新幹線で爆睡すると、東京に到着した頃には何だかスッキリした気分でした。

やはり疲労は動きながら徐々に回復させるのが一番だと思いました。

世間はお盆休みに入りましたが、私は今週も淡々と仕事をして参りたいと思います。

第9回七葉会2日目が終了しました

2日間にわたる七葉会がおかげさまで先ほど無事に終了いたしました。

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来年は”10周年”を迎えるので、その舞台に向けての話などもある打ち上げでした。

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七人の若手能楽師と、七つの会で稽古している沢山の方々、そしてその知り合いの大勢の方々が織り成す、夢のような「第9回七葉会」でした。

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来年の記念大会で、一層稽古を重ねられた皆様とお会いするのを、心から楽しみにしております。

どうもありがとうございました。

第9回七葉会1日目

今日は宝生能楽堂にて「第9回七葉会」が無事開催されました。

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終了後にも色々ドラマチックなことがあり、日付変更ギリギリで帰ります。

また明日もよろしくお願いいたします。

第9回七葉会のお知らせ

明日明後日と、水道橋宝生能楽堂にて「第9回七葉会」が開催されます。

今日はその舞囃子と能の申合がありました。

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なんだかんだでもう9回目になった「七葉会」。

ここ数年は、土曜日に仕舞と謡、日曜日はそれに加えて舞囃子が10数番あり、一番最後に能が出るというパターンが続いております。

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七つの同門会が一堂に会する、なんとなく”夏祭り”のような雰囲気もある賑やかな舞台です。

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土日両日とも朝10時始曲です。

明日土曜日の17時過ぎからは、7人の主宰能楽師による番外仕舞も予定されております。

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また日曜日の最後の番組は能「加茂」で、昨年に続いて内藤飛能さんの「飛雲会」の会員さんがシテとツレを舞われます。

今日の申合でも、外の猛暑にも負けない程の熱量がある元気一杯の”別雷の神”を演じてくださいました。

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その他にも、何人かの主宰楽師のまだ小さな子供達の仕舞などもあり、見どころ盛りだくさんです。

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もちろん澤風会からも、舞囃子「氷室」、素謡「箙」、「歌占」、「草紙洗」に加えて沢山の仕舞が出ます。

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暑い日に、エアコンの効いた能楽堂で、熱い舞台を観るという週末は如何でしょうか。

皆さま明日明後日はどうか宝生能楽堂に、我々「七葉会」の応援にいらしてくださいませ。

よろしくお願いいたします。