新しい歴史を刻みつつ

今日は先週木曜日に続いての江古田稽古でした。

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そして先週に引き続いて、日本女子大の学生2人が夕方に稽古に来てくれました。

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昨年末の「関宝連」での初舞台が無事に終わった後、それぞれ新しい仕舞に取り掛かっています。

「高砂」と「熊野クセ」です。

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やはり初舞台を終えると、構えや型が一段階上手になっています。

この2番の仕舞を、先ずは来月の「澤風会郁雲会」で一度舞ってもらう予定です。

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そしてその舞台を経て、さらに稽古して6月の「関宝連」で完成させる計画なのです。

3月の澤風会郁雲会では、ついに京大宝生会との競演も実現します。

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去年の今頃にはまだ影も形も無かった日本女子大宝生会が、着実に新しい歴史を刻みながら、一歩ずつ進み続けているのです。

今年の日本女子大の活躍にもどうかご期待くださいませ。

サードマンと彼方のアストラ

今日は松本から移動して、夕方から矢来能楽堂にて辰巳大二郎君の「橙白会」の申合でした。

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松本からの特急あずさでは、専ら読書に専念いたしました。

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と言ってもいつものように比較的読みやすい内容の文庫本です。

今日は新潮文庫の「サードマン」という本でした。

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探検家が海や山で遭難した時に、自分以外の不思議な”存在”が現れて生還に導いてくれたという「サードマン現象」を科学的見地から研究した本です。

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サードマン現象そのものよりも、それが現れるまでの遭難の凄まじい状況に圧倒されました。

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ヒマラヤの8000m峰での滑落事故、南極大陸での壮絶な越冬、また大海原に放り出された小さな救命艇での絶望的な漂流…

私ならばきっと”サードマン”が現れる前に音を上げてしまうでしょう。。

しかし、極限状況を強かに生き延びた人々の話に勇気をもらえた気がいたしました。

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特急あずさ車内では、最近スマホで雑誌や本が読めるサービスが始まったのでそれも利用してみました。

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と言っても漫画です。。

以前から一度読みたいと思っていた

「彼方のアストラ」

という漫画の1、2巻を読んでみました。

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私の好きな漫画家の星野之宣さんの作品に通じるような、宇宙SF漫画でした。

そう言えばこの作品も、宇宙での”遭難”を描いています。

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今日の特急あずさの旅は、様々な遭難エピソードを終始ドキドキしながら読んで過ごしました。

新宿駅に無事に到着したのが何か奇跡のように有り難く思えたのでした。

お腹が空く稽古場所

今日は松本稽古でした。

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稽古場の公民館の都合で、最初の1時間は和室が使えませんでした。

その代わりに空いていた部屋がなんと…

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“調理実習室”です。

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過去色々な場所で稽古をして参りましたが、これは初めてのパターンでした。

据え付けの調理台の間に1〜2m幅の通路が縦横に走っている構造です。

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この通路を縫うように動いて調理台をうまく避けるようにして、試しに仕舞「加茂」の稽古をしてみました。

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もちろんとても不思議な感覚でしたが、ちゃんと一通り稽古出来て、内容も有意義なものになったのです。

部屋全体に微かに美味しそうな匂いがして、途中お腹が空いてきましたが…。

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1時間してから和室に移り、通常の稽古形態になりました。

いつもの大きさの和室が、なんだかとても広々と感じられました。

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稽古場所の可能性がまたひとつ広がった今日の松本稽古だったのでした。

節分の京都稽古

今日は京都紫明荘組稽古でした。

いつものように朝の地下鉄日比谷線は殺人的混雑でしたが、東京駅と新幹線車内はいつになく空いていると感じました。

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そして京都の「ゲストハウス月と」に到着して亭主さんに伺うと、やはり新型肺炎の影響で京都の観光客は激減しているとのことでした。

最初にいらした会員さんも、

「錦市場に人が少なくて、すいすい通れてびっくりしました!」

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なるほど。それはちょっと有り難い面もありますが、節分の日の観光客を期待している方々は大変なのだと思います。。

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紫明荘稽古の後は京大宝生会稽古に行きました。

今は吉田神社の節分祭が開催されていて、そこで購入した面を掛けた人の舞も披露され…

今日も賑やかに稽古を終えることが出来ました。

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順番は逆になりますが、今朝は富士山に珍しい雲がかかっておりました。

ちょうど富士山と上下対称に見えたのです。

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世間は色々騒がしいですが、今日の京都稽古は節分を祝うように穏やかに終始いたしました。

立春の舞台

今日は水道橋宝生能楽堂にて「立春能」に出演いたしました。

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能「巴」、「吉野静」、「加茂物狂」、「鵜飼」と4番出て、私は留の「鵜飼」の地謡を勤めました。

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「鵜飼」は、数ある能の中でも地謡の謡出しが最も遅い曲だと思われます。

正午から始まった「立春能」の舞台で、私が留の「鵜飼」の地謡を謡い始めたのは17時頃でした。

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長く待った分、気合が充填されています。

そして「鵜飼」の地謡は、始まるといきなり「鵜之段」なので、一気に高いテンションで謡に入りました。

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そして中入の後も、”早笛”で後シテの閻魔大王が出てきて、最後まで力強い型やシテ謡が続きます。

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今日はシテの気持ちが非常に入っており、それに伴いやはり地謡もハイテンションで終始して、謡った時間は短いながらも謡い終えると全力を使い果たした感がありました。

私にとって今月最初の舞台で、また「立春」の名に相応しい、どこか爽快感のある「鵜飼」だったと思います。

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明日からまたしばらくは稽古の日々になります。

新型肺炎の心配などもありますが、気をつけつつ頑張って参りたいと思います。

悪夢にうなされずに済む方法

今日は朝から水道橋宝生能楽堂にて、日曜日開催の「立春能」の申合がありました。

私は能「鵜飼」の地謡でした。

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立春能申合に行くために起床する、その直前の夢の中でのお話です。

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以前にも書きましたが、私がたまに見てうなされる悪夢があります。

「やったことの無い曲のシテを舞うことになっており、鏡の間で幕が上がるのを待っている」

というシチュエーションの夢です。

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知らない型や謡を舞台上でどうやって誤魔化そうかと必死で考えるうちに目が覚めて、ホッと安堵するのが常のパターンでした。

しかし今日はちょっと違う展開になったのです。

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シチュエーションは常と同じで、今回は”勝修羅”の格好で”平太”の面までかけて鏡の間に座っていました。

一度も稽古しておらず、謡も型も全く頭に入っておりません。

「ああ、いつも見る悪夢と同じ状況だなぁ。ついに悪夢が現実になってしまうのか…」

と嘆いていたのです。

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しかし今日の私はそこでハッと気付きました。

「待てよ、今の状況ももしかしたら夢なのでは…」

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そして良く考えてみると、確実に夢だということがわかったのです。

夢の中で、

「なんだ夢か。良かった良かった。」

と安心して舞台に出て行ったあたりでアラームが鳴って目が覚めました。

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…というわけで今後はこのパターンの悪夢を見ても、夢の中で夢かどうか確認する事で、うなされずに熟睡出来そうです。

頼もしい若者達

今日は江古田稽古でした。

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夕方から小学生、中学生、高校生、東京芸大と日本女子大の大学生達が次々とやって来ました。

合計6人の小〜大学生を稽古したことになります。

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大学生達は皆1年生で、後期試験がちょうど終わったところだそうです。

大学生活最初の1年が無事に終わって、皆晴れ晴れとした顔に見えました。

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そのうち東京芸大の青年は、去年の今頃はまだ芸大の受験曲ばかり稽古していました。

その頃が遠い昔のように感じられます。

まだ修行は始まったばかりですが、この1年で多くの経験をして、確実に一回り成長しました。

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また幼稚園から稽古をしている女の子は、もう高校3年生になり、今まさに大学受験真っ只中なのです。

センター試験は無事に終わったそうで、先ずは安心しました。

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まだ二次試験があるのに稽古に来たのは、実はある大学の試験の一部に能楽を使うからなのです。

力を出し切れるように、これから1カ月間で作法を含めてしっかりと稽古したいと思います。

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小さな頃から稽古して来た若者達が、成長して自分の力で道を切り拓いていく姿は、とても頼もしく見えました。

松本の雲海

今週は目まぐるしく気候が変わり、予想外の景色を見てばかりいる気がします。

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今朝の松本では、雲海の上に浮かぶ北アルプスが見られました。

撮影の腕が足りず、実際の荘厳な雰囲気をお伝え出来ず申し訳ございません。。

しかし松本でこういうスケールの大きな雲海を見るのは初めてでした。

この後すぐに、また山は雲に覆われてしまいました。

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東京に戻ると、早速江古田で郁雲会の皆さんの舞囃子と仕舞の稽古をしました。

そして田町に移動して、夜までみっちり稽古いたしました。

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今年も早ひと月が過ぎようとしております。

そして3月7日の郁雲会澤風会の舞台も近づいて参りました。

ここから徐々にエンジンをかけて、本番に向けて盛り上げていきたいと思います。

トンネルを抜けるとそこは…

昨日松本から東京に戻って、国立能楽堂の稽古会にて袴半能「石橋」の地謡を勤めました。

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そして今日また別の仕事で松本にとんぼ返りしたのです。

ちなみに一昨日のブログに載せた写真がこちら。

塩尻の手前くらいの松本平です。

晴天でした。

北アルプスの上の方だけが雪を被っていますが、平地には全く雪は見られません。

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そして今日、諏訪からトンネルをくぐって松本平に出て、ほぼ同じ位置で撮った写真がこちらです。。

なんと1日で一面の雪景色になっておりました。

このような経験をすると、”自然の力の気まぐれさ”のようなものを改めて実感します。

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私の乗った特急あずさは雪による倒木の影響で15分遅れで松本に到着しました。

今日はまた一昨日とは別の方々に、能楽の魅力をお伝えして参ります。

能楽を通じて結ばれた御縁

昨日の松本ワークショップはおかげさまで無事に終了いたしました。

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60人のお客様のうちの多くは、実は見知ったことがある方々でした。

松本澤風会会員さん、そのご家族、そして以前に稽古されていた方、またそのご家族など。

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それらの皆さんは、10年の時をかけて松本澤風会稽古を通じて御縁が出来た方々なのです。

ワークショップをしながら見知ったお顔、懐かしいお顔を見つけるたびに、感慨深い気持ちになりました。

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ワークショップの途中の休憩時間に、私はひとりの記者の方に声をかけられました。

なんとその記者さんは、8年前まだ稽古を始めて間もない頃に、松本澤風会新年会の記事を書いてくださった方でした。

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そして当時、その記事をタウン情報紙で読んだ1人の男性が新年会に来てくれました。

彼は私の京大時代の知人で、金春流太鼓を長く稽古している人でした。

そしてすぐに彼が太鼓の稽古場を開設することになり、松本澤風会と密に連携しながら、この8年間で松本の能楽の裾野を広げてきてくれたのです。

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記者さんは今度は太鼓の稽古場を取材してくださるとのこと、またその記事が元で御縁が繋がっていくと良いです。

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今回のワークショップでは、また新しい方とも何人もお知り合いになれました。

こうして松本で能楽を通じた御縁を広げていって、やがて能楽堂建設へ、さらにこの地が能楽の大きな拠点のひとつになることを目指していきたいと思います。

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昨日のワークショップに関わった皆様、そしていらしてくださった皆様まことにありがとうございました。

今後もどうかよろしくお願いいたします。