今日も京大稽古に何人か新入生が見学に来てくれました。今頃現役と晩御飯を食べているはずで、何とかそのまま入部してくれると良いです。
今日は曲名看板シリーズです。正確には「こぐー」と読むらしいですが、能楽関係者は是非「こごー」と発音してほしい所です。
今日は以上です。曲名では無く、能楽用語看板シリーズも集めていますので、いつか公開したいと思います。
「立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花」とは美人の例えですが、牡丹の花は能「石橋」においては、作り物として舞台を華やかに彩ります。
宝生能楽堂の作り物の牡丹は実際の牡丹と比べるとかなり大きく、花の作り物の中では最大の大きさだと思います。
通常の石橋では紅白二色の牡丹が出ますが、宝生流の小書「連獅子」になると、紅白に加えて薄桃色の牡丹も出て、より華やかさが増します。
今は丁度牡丹が咲く季節です。亀岡稽古場には牡丹が沢山あるので、上手くすると満開の牡丹が見られるかもしれません。今日は期待して稽古場に向かいました。すると…
一番見事だったのがピンク色。なんと石橋連獅子に使う3色が揃っていたのでした。
作り物では偶に本物の草花を使うことがありますが、石橋の場合は作り物が本物よりも大きいので、それは難しいと思います。
しかしこの見事な亀岡の牡丹が三色揃って舞台に出たら、さぞかし舞台映えするだろうと思いました。
月曜日の夜に京大宝生会の部長からメールがあり、「嬉しいご報告です。本日新入生が入部してくれました!」とありました。
新歓企画の「女子会」(パフェを食べてお話しをする会だそうです)に来てくれて、その後も通常稽古や、先週金曜日の新歓ワークショップにも顔を出してくれた女の子です。
月曜日の謡の師匠稽古に来て、そのまま入部してくれたようです。
毎年新入生が入部すると、「ああ、とりあえず今年も京大宝生会の歴史が、4年先までは繋がったのだなあ」と、何とも言えない感慨深い気分になります。
今年は出足が遅く、観世、金剛、狂言、宝生の4会で初めての入部者らしいです。
しかし、例年最初の1人が入るとそれに続いて何人か入ってくれているので、これから5月27日の京宝連までにたくさん入ってくれて、1、2回生の連吟が賑やかになると良いです。
私は明後日にまた京大稽古に行くので、新入生の稽古をするのが楽しみです。
新歓委員始め、現役達は本当にお疲れ様です。もうひと頑張りしましょう。
もしこれを見た未入部の新入生は、どうか明後日京大能楽部BOXに見学に来てくださいね。
今シーズン初めて、藤棚に藤の花が下がっているのを見つけました。家の近所の小学校です。
能「藤」の舞台は現在の富山県の氷見辺りですが、私の父方の先祖は氷見の出身らしいのです。
私は藤も未だ舞ったことが無いのですが、いつか舞ってみたい曲です。
この藤という曲はちょっと珍しい曲で、宝生流と観世流で、前シテが引用する和歌が違ったり、クセなどの詞章も所々微妙に異なっているのです。
囃子方やワキ方にとってはやっかいな曲なのだと思います。
また笑えない笑い話で、「今度の舞台は、ふじと、紅葉狩をお願いします」などと頼まれた囃子方が、「藤」と「紅葉狩」のつもりで舞台に行ったら、「藤戸」と「紅葉狩」だった…というのを聞いた事があります。
曲名もなかなか紛らわしい曲なのです。
舞台出演予定を更新いたしました。
近々では5月6日(土)13時半より、香里能楽堂にて七宝会端午公演が催されます。
七宝会では初シテとなる辰巳和磨師の能「花月」が初番です。春の清水寺を舞台に、少年花月が様々な芸を尽くしてみせます。若手のホープである和磨師にぴったりの演目です。
また山内崇生師の能「阿漕」は、釣竿や網を使って密漁の様子を再現しますが、この竿や網の扱い方が難しく、また謡も緩急がある難曲です。
これに加えて辰巳満次郎師の仕舞「杜若クセ」があります。これは二段グセと言ってとても長く、見せ場の多い仕舞です。
そしてもう一番の仕舞「土蜘」は、私がシテ土蜘の化身(能では僧侶の姿をしています)を、辰巳孝弥師が源頼光を演じます。
能土蜘における前半の山場、怪僧と頼光の戦いのシーンを仕舞にしたものです。
実は恥ずかしながらこの歳まで土蜘のシテを勤めた経験が無く、あの白糸のような蜘蛛の巣が上手く飛ぶかどうか若干心配ではあります。
心して稽古をして本番に臨みたいと思います。
これ以外に大蔵流狂言「飛越」シテ善竹忠亮師も演じられます。
今回も見処満載の七宝会端午公演に、皆さまどうかお越しくださいませ。
今日は水道橋宝生能楽堂にて、柏山聡子師の同門会「芦雲会」の20周年記念大会に出演して参りました。
柏山さんは、私が小学生の時に渡辺三郎先生のお稽古場で初めてお会いした、少し上の先輩です。
お母様が渡雲会会員で、ご本人は大学で能楽部に在籍し、卒業後に職分を目指したという点で私と似た道を歩んで来られた方なのです。
20周年記念大会は大変盛大な素晴らしい舞台でした。しかし私はもうひとつ別の点で深い感銘を受けました。
今日の番組の最初が素謡「鶴亀」で、最後が番囃子「猩々」でした。
この鶴亀で始まって猩々で終わるというのが、渡辺三郎先生の同門会「渡雲会」の決まりのスタイルだったのです。
師匠から引き継ぐ物事は芸だけではなく、番組の組み方や会の進行、更に言えば普段の稽古のやり方や、極端な話だと生活パターンにまで及ぶことがあります。
柏山師の番組を拝見して、「渡辺先生から、しっかり色んな物事を受け継いでおられるのだなあ」と感動いたしました。
私の澤風会は、毎年定型のスタイルは無く、その都度出揃った番組で組んでしまっているのですが、柏山師のような精神も本当に大事だと、思いを新たにいたしました。
今朝の紫明荘稽古の行きがけに、京大若手OBのY君から久しぶりにメールが届きました。
数年前に京都から仕事で神奈川に引っ越して、それから中々稽古に来れなかったのですが、「転勤でまた関西に帰って来ました。今日の紫明荘稽古に伺います」とのこと。
これは嬉しいと思いながら紫明荘に到着すると、今日はその後の稽古でもなんだか目出度い話題が多い日になりました。
最年少4歳の男の子は、2人目のおめでたで大きなお腹のお母さんと一緒に来てくれました。
「この子は大きくなったら京大宝生会に入りたい、と言っているのです」とお母さん。おお!それは10数年後を期待しています!
英国帰りの京大若手OBのS君は、やはり久しぶりに紫明荘に稽古に来てくれて「秋の澤風会の一週間前に祝言を挙げることになりました」とのこと。こちらも目出度い!
今日の紫明荘は最後までずっと賑やかで、外は天気も良く、田村クセの「花の都の春の空、げに時めける粧ひ。あら面白の春辺や」という文句がぴったりな雰囲気で、何となく浮き立つような華やかな一日になりました。
本日18時半より、京都大学能楽部BOX舞台にて、京大宝生会の新歓企画の能楽ワークショップを開催いたします。
このホームページを見ている京大新入生が果たして存在するのかは不明なのですが、もし能楽をやってみたい、興味がある、という学生さんは京大新入生に限らないので是非ワークショップに来てください。
京大宝生会の新歓委員始め、部員達が力を合わせ、知恵を絞って考えたワークショップです。
能面や能装束を見て、能の型や謡を体験して、現役部員の仕舞や、囃子を習っている部員達の演奏も観てもらいます。最後には私が仕舞船弁慶キリを舞います。
今の京大宝生会は部員も沢山で楽しく活動していますので、入部してもらえればきっと楽しい学生生活を過ごせると思います。
先ずはお気軽に本日18時半に京大能楽部BOXを覗きに来てください。どうかよろしくお願いします。
江古田稽古場は、澤風会稽古場の中でも子供の数が一番多かったのですが、その子供達がみんな立派に大きくなって来ました。
幼稚園から始めた子供達2人が、この春からもう高校生になったのです。
芸歴で言えば10年位になり、京大宝生会で言うと4回生位のレベルの仕舞を稽古しています。
そのうちの1人が先ほど稽古に来たのですが、入学した高校には日本文化に興味がある人が多くて、ひとりは「能を習いたい」と言っているそうなのです。
大阪や名古屋では高校にも宝生流のクラブがあるので、もしかすると東京のその高校でも宝生流のクラブが作れるかも、という話になりました。
まだどうなるか全くわかりませんが、色々な事が上手く進んで、何人か興味ある高校生が集まれば、新しい能楽クラブが発足する可能性は充分あります。
幼稚園で自発的に稽古を始めてくれたその子が、今度はまた自らが中心になって能楽クラブを作ってくれたら、これは本当にうれしいことです。
春らしい希望に満ちた話があって、気分良く稽古を終えたのでした。
本日は水道橋で、今度の日曜日にある舞台の申合がありました。
その折に先輩から、先日の能百万に関して貴重な御注意をいただきました。
「曲の最後に子供と再会する場面で、再会出来た喜びや子供を慈しむ気持ちが、もうひとつ足りなかった」という事です。
いわゆる狂女物では、最も動きがあって華やかなのは、むしろ再会する直前までの部分なのです。
今回の百万でも、「笹之段」や「二段グセ」、また子供を探す特殊な「カケリ」の舞などには心を砕いていました。
しかしそれらが全部済んだ後の再会シーンは、決しておざなりにしたつもりは無いのですが、気持ちが足りないと言われると確かにそうだったかと思います。
武道における「残心」と、ちょっとニュアンスは違うとは思いますが、一番を通して微塵も油断無く最後まで演じ切る事の難しさを再認識いたしました。
次のシテである、7月15日の五雲会での能「半蔀」に、この教訓は必ず活かしたいと思います。