平仮名の地名、人名

今月27日(土)に大阪の七宝会にて能「昭君」のシテを勤めさせていただくので、今はその稽古に没頭しております。

「昭君」は紀元前の前漢時代のお話ですが、謡の中に出てくる地名や人名に”平仮名”が多く使われています。

そもそも前シテの老夫婦が住んでいるのが、

「かうほ(こうほ)の里」

という平仮名地名です。

また曲の前半には、

「しんやう」、「とけつ」

といった平仮名人名が登場します。

極め付けは、辺境に流されてしまった愛娘”王昭君”の面影が映る鏡の事を、

「えんとん」

という平仮名で書いてあるのです。

ある意味でこの曲の最も重要なはずのアイテムが、元の字がわからない状態で謡われている訳です。

不思議な心持ちになりますが、裏を返せば自分で色々な漢字を想像して当て嵌める楽しみもあるのです。

「えんとん」

は、たとえば「円団」かな…とか(“団”も中国では丸いものをあらわすようです。団扇とか)

「かうほ」の夫婦が「えんとん」の前で悲しみにくれるこの曲を、想像力を駆使して理解していきたいと思います。

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